ハルのウララの 2XXX海の向こうの甲子園 作:コンスタンチノープル
「う~ららぁ~」
「ウララ先生ご機嫌ですね」
滝山が試合前のウララに声をかける。笹井の提案した野球部と陸上部を掛け持ち受けて野球部の中でも比較的にウララと多くの時間をすごした彼は、ウララが機嫌が良い時に「う~ららぁ~」と発するのを知っていた。
「だって野球の試合はじめてなんだもん!」
「別にウララ先生が試合に出るんじゃないんですからもっと楽に構えてくださいよ」
話していると吹本が二人のことを呼んだ。
「じゃあ、オーダーを発表する」
吹本が決めたオーダーはこれだ。
| 7月◇△日 | |||
| 先・後 | 高知実業高等学校 | ||
|---|---|---|---|
| 打順 | 守備位置 | 選手名(ふりがな) | 背番号 |
| 1 | 5 | 5 | |
| 2 | 4 | 4 | |
| 3 | 2 | 2 | |
| 4 | 3 | ③ | |
| 5 | 7 | 7 | |
| 6 | 9 | 9 | |
| 7 | 1 | 1 | |
| 8 | 6 | 6 | |
| 9 | 8 | 8 | |
| 控え選手 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 10 | |||||
| 11 | |||||
| 12 | |||||
| 13 | |||||
| 14 | |||||
| 15 | 記録員 | 学年 | |||
| 責任教師 | ハルウララ | 監督 | 吹本肇壽 | ||
| 審判 | (球)比奈岡 | (一)豊沢 | (二)枩池 | (三)池葉 | (外) |
岸葉、吉保、名取の3人が相撲部からの助っ人である。
流石は正式な野球部部員、当然と言っては当然だが1番から4番までは野球部で固められている。有賀と加治も野球部員だが末松と同じピッチャーのためベンチで待機、末松が7番打者なのはピッチングに力を割いてほしいということであって実際のバッターとしての力量は中軸である3、4、5番を任せても問題ないほどで、その末松を差し置いて6番に座る相撲部からの助っ人で唯一スタメンとなった岸葉は吹本曰く、甲子園ベスト4常連校のレギュラーと比較しても遜色ないパワーの持ち主という評価である。
「みんな! いっぱいいっぱい楽しもうね!」
意気揚々とグラウンドに現れたウララだが早速係員に止められる。
「ええ~っ!? 責任教師ってグラウンドに出ちゃいけないの!? なんで? おかしいよ!」
「なんで、おかしいと言われても決まりなので……」
「す、すいません。ウララ先生、さ、ベンチに」
「ここでウララ先生が何かやったら試合できなくなっちゃいますからお願いします」
試合が出来なくなるかもしれないと聞いて不満たらたらではあるがベンチに下がった。
試合前にはノックが行われるが、高校野球では後攻のチームが先にノックを行う決まりとなっているのでこの試合先攻の高知実業は後からノックをするため、まだウォーミングアップなどの時間がある。
「おーい、みんな円陣やろうぜー」
誰となく円陣組もうと言い出す高知実業ナイン。先程のやり取りがあったのでウララも円陣の輪に加えようと言い出し加わることに。といっても選手たちはベンチ前で円陣を組みウララはベンチの中から輪に加わる。
「えっと、じゃあ末松一言」
「いやこういうのは
野球部員たちは今日こうして試合が出来るのは末松が野球部に入ってウララが部のために動いてくれたからであることを承知している。なのでキャプテンの隅本は末松に声掛けをしてもらおうとしたが末松が譲ったのである。
「え、じゃあ……今日、助っ人に来てくれた陸上部、バレー部、相撲部のみんな、本当にありがとう。4月にはこうして試合が出来るなんて思ってなかったから本当に助かった。絶対勝とうなんて言わないから、みんな怪我しないように、行くぞ!」
「おー!!」
そうしているうちに高校のチームがノックを終えて高知実業のノック開始時間となった。
内野は野球部員で固められ、唯一助っ人のショート庄埜も野球経験者でまずまず形になっている。センターの川田と意外にも相撲部からの助っ人、ライト岸葉も野球経験者であるがレフトの大芝は野球未経験で動きもどこかぎこちない。スタンドの観客からは冷めているものの、そこそこ好意的な声が聞こえる。
「高実のくせに内野結構サマになってるじゃん」
「あのショート上手くね?」
「でもレフトは全然駄目だよ」
そして注目はベンチのウララにも注がれる。
「ウマ娘に高校野球がわかんのかよ」
「今日もハルウララ目当てのカメラとか来てるってよ」
「正直やりにくいよなぁ~」
そんなこと気にも留めず、ウララはノックを受ける選手たちに声をかけていた。
中央トレセン学園
「ん? ライアンちゃん何見てるの?」
アイネスフウジンとメジロライアンは先程まで一緒に走っていたが今は学内のスポーツジムに場を移している。というのも、この日四国の天気は晴れだったが関東は雨。最初、また今度一緒に走ろうとアイネスが提案したがライアンが不良バ場を想定したいいトレーニングになると雨の中走っていたのである。
「あ、アイネスも一緒に観る?」
「これ……野球の試合なの?」
しかし雨脚がいよいよ洒落にならないほど激しい土砂降りになったのでジムで筋力トレーニングに変更し、今は暫し休憩中である。
「もしかして、ウララちゃんが先生やってる高校の試合なの?」
「そうだよ、これから始まるところ。いいなー、
2人は雨と汗でずぶ濡れになり、泥汚れも着いた学園指定のジャージは洗濯に出し、それぞれの勝負服の桃色と緑に白を合わせた陸上競技用のセパレートユニフォームに着替えている。当然身体も拭いているのでもうすぐ始まる夏合宿に体調を崩して行けない。という心配はない。ジャージでないことに加え、2人がウマ娘たちの中でもよく鍛え上げられた健康的な肉体美、所謂「美ボディ」の持ち主であるためジムを利用する他のウマ娘たちが羨望の眼差しを送っている。もしこの場に幼気な子供がいたら性癖が捻じ曲げられてしまうであろう神々しささえする肉体美である。
「マッ……ううん、なんでもない」
「もしかして、マックイーンちゃんも観てるかもしれないって思ったの?」
ライアンの幼馴染であるメジロマックイーンも野球好き、というよりはライアンが先に野球に興味を持ち、あとから誘われる形でマックイーンが野球の世界に足を踏み入れたのだが、今では「かっとばせー!」という自分の寝言で起きることがあるほどライアン以上に野球にのめり込んでいる。
「あー……アイネスにもバレてるか……」
「むしろ有名な話なの。あたしは野球場でもバイトしていて、そこにマックイーンちゃんがお客さんで来たことが何度かあって……でも、なんだかあたしから隠れようとしていて変な感じなの」
他のウマ娘たちの間でもマックイーンが野球好きなことは知れ渡っている。なのだが当のマックイーンはこの野球好きをスポーツ観戦が趣味という事にしてできる限り隠しているつもりなのである。なので最初ライアンも言いかけて躊躇ったのだがアイネスにはもろにバレている。アイネスも「変な感じ」とはいっているがそれは特別変な趣味・趣向でもないのにライアンとは違い野球好きを隠そうとしていることであり、恥ずかしがって周囲に隠そうとしている行動自体はなんだかんだ察して見て見ぬふりをしてくれているのであった。
「あ、違う違う! 今はウララちゃんの高校の試合なの! 勝てそう?」
「うーん、厳しいんじゃないかな……ウララちゃんが赴任した高校、高知実業の野球部って39年間公式戦で1回も勝ってないから野球の世界じゃそれである意味有名になっているぐらいだし、野球に力を入れ始めたなんて話、聞いたことも無いから……」
「でも、ウララちゃんが頑張って試合をするために他の部活から助っ人を集めたって聞くから勝ってほしいの」
しかし野球好きのライアンにはそれこそがこの試合高知実業が勝利することが難しい要因であると言う。
「アイネスみたいにバイトしながらトレーニングしてレースに挑むのとはわけが違うんだよ。ウララちゃんの高校の助っ人を例えるんなら、トレーニングも一切しないでいきなりレースで走るようなことなんだ。いや、どれくらい助っ人の子たちが野球の経験があったり、一緒に練習に参加する時間があったかはわからないんだけどね」
ウララが一度も勝つことが出来ずにレースの表舞台を去ることになったのは二人も知っている。だからこそアイネスは例えどんなに望みが薄くてもウララの高校に勝ってほしいと願いながら、ライアン手にするウマホに映される試合にともに見入るのであった。
それはこの二人に限らず、中央トレセン学園に在籍する多くのウマ娘たちがこの試合の生配信を目にしていたのである。
そして、試合前のホームベースを挟んだ両チームの整列、礼の挨拶が終わり、1番バッターの滝山がバッターボックスに入り運命のサイレンが鳴り響くのであった。
メジロライアンは引くことが出来たので一度育成して途中で目標が達成できずに終了してしまいましたがアイネスフウジンは引くことが出来ていないのでメジロライアンのイベントに登場したアイネスフウジンを参考に二人の会話を展開させてみましたが変なところがあれば言っていただければと思います。