スイスポとパルサーのバトルの前哨ではありますが、これの決着がつき次第、タケルと拓海のバトルに突入しようと思います。
活動報告欄にラストの展開についてどうすべきか、載せましたので、もしこうして欲しいというのであれば言っていください。
「おい聞いたか健吾…。今、群馬エリアの殆どを警察が張ってるらしいぞ…」
群馬のとある一角に位置するガレージにて、健吾と同じ新潟の走り屋の一人が、パルサーの横に腰を下ろす健吾に、群馬エリアの現況を教える。
しかし、事の元凶である健吾はというと、ゲスな笑みを浮かべながらこう話す。
「けっ…こちとら、群馬エリアのトップである高橋兄弟はおろか…秋名のハチロクともやり合ってねえってのに。もう動いちまったのかよ…。早く適当なとこで奴らを仕留めてやりてえのにな…」
「はぁ…元はと言えばこうなったのも全て、お前のせいでもあるんだぞ。地元じゃあお前が何人もの走り屋を潰してきたおかげで、サツに目付けられてるってのに…。そんな調子じゃ…俺はもう庇いきれんぞ…」
健吾は自分のしでかしたことがどれ程ヤバいのか全く気づいておらず。群馬エリアの頂点に立つ高橋兄弟と秋名のハチロクを潰してでも負かすことしか考えていなかった。
健吾の傍にいた新潟の走り屋が、健吾に対しよくそんなことが言えるなと呆れながら言う。
「とにかくだ…。もう警察が張ってる以上、好き勝手するのはお終いだし。俺達もとっとと新潟に戻った方がいいんじゃねえのか」
「ああん。ここまでやっておきながら、まだ高橋兄弟やハチロクを仕留めずにズラかるってのか?そんな半端な真似はするわけにはいかねえよ…」
「…あっそ。んじゃ、ことが収まるまでここで身を潜めておけよ。ただでさえお前は…お尋ね者になってるんだからな」
健吾に勝手なことをしないよう、新潟の走り屋が釘を刺すように言っていくが。そこに携帯の着信が鳴り、新潟の走り屋がそれを手に取って電話に出て話をし。話を済ました新潟の走り屋が電話を切るや、健吾にある情報を教えるのである。
「健吾…。どうやら今夜遅く、高橋兄弟が秋名を流すと情報が出回ってるそうだ…」
「ほぉ…ようやく高橋兄弟が出てきたってわけか…。地元のじゃバトルしねえあいつらが、秋名に出向くとは…丁度、いいタイミングだぜ…」
「おい。お前は警察に目を付けられてるって言ったのを、もう忘れたのか…」
「知るかよ…。今夜遅くに秋名に向かって行くから、お前はとっととコイツを走れるようにしとけよ」
「ったく、中学の時からの付き合いとはいえ…。ここまで来たからには、観念するしかないか…。とりあえず
、お前のパルサーは見といてやるから、ヘマするんじゃねえぞ」
新潟の走り屋が、健吾からの頼みを嫌々ながらも引き受け。今夜のバトルに備えようと作業に取り掛かろうとするのであった。
鈴木自動車工場
「おじさん。頼んでいた件に関してだけど…」
「おう、ばっちりだ。お前に言われた通り、スイスポのタイヤもノーマルに戻したし。セッティングも走り寄りにしたから、いつものように秋名を攻められるぞ」
「サンキュー。これで心置きなく、バトルすることができるよ…」
渋川市にある、とある自動車整備工場のガレージにて、タケルは政志に預けていたスイスポを引き取りに来た。政志がタケルのリクエスト通り、スタッドレスタイヤを外して走りに振った仕様に変えたと伝え。タケルは安堵するが。
その様子を、タケルの傍にいた遥香が心配そうにしながら聞くのである。
「タケル、本当に行く気なの?池谷君から聞いた話じゃ、あんたがやろうとしている相手は、危険な男だって…」
「あ〜それはそうだけど…。涼介さんから代わりにパルサーとバトルしてくれと頼まれたのを引き受けた以上、逃げるわけにはいかないからね」
「ほぅ…今度の相手はパルサーと来たか…。随分とまた、珍しい車に乗ってる奴がいたもんだな」
政志はパルサーのことを知っていたか、タケルがパルサー乗りである健吾とバトルするのを意外そうに見るが。タケルは嬉しそうな表情から一転して表情を引き締めるや、遥香に言う。
「とにかく…秋名には坂口って男が向かってると情報が入ったから、早く向かわないと…。姉ちゃんはおじさんと一緒に僕がここに帰ってくるのを待っててね」
「はぁ…いいわ。あんたがそう言って、どんな時にも帰ってくることはもう見慣れてるし。車を走らせるのはいいけど、ちゃんと無事に帰ってきてよ」
「へへっ…。わかってるって。んじゃ、僕は出発するから後はよろしくね」
そう言いながらタケルはスイスポに乗り込むと、エンジンを始動させて、マフラーから軽快な音を吹かし。
タケルは遥香達に手を振りながら車を発進させ、秋名山へと向かい始めるのだった。
「…タケル、ああ言っていたけど、本当に大丈夫かしら」
「心配いらねえよ。あいつのあの調子は昔からなのはお前が一番分かってるだろ。とにかく…タケルが帰って来るのを待ってやろうか」
タケルが無事に戻ってくることを心配しながら見続ける遥香に対し、政志が遥香に気遣うように声を掛けるのだった。
ガソリンスタンド
「え…?タケルがパルサーとバトルするって…。その話、本当なんすか?」
「ああ。スタンドに寄った時にそう言っていてな。高橋涼介が警察に見張られていて動けないらしいから、自分に頼んできたそうだ…」
「そう、ですか…」
タケルが健吾とバトルすると決意したその日の夕方。
シフトに入った拓海が、タケルが健吾とバトルをすると聞かされ、涼介が自分ではなく、タケルにお願いしたことを不満そうにする。
「でもよ、拓海…。相手は卑劣なだけじゃなく、あのレッドサンズですら手玉にとるほどの手練れなんだぞ…。そんな危ねえ奴を相手にバトルするなんざ、命がいくつあっても足りないよ…」
「イツキの言うとおりだな…。それにタケルの話によれば、高橋涼介はお前にも連絡はしていたと言ってたぞ。その時にお前が高橋涼介と連絡がつなげていれば、お前が代わりに行ってたかもしれねえしな…」
「……」
「ま、この一件に関してはタケルに託すしかねえってことだ…。俺達もできるならバトルを観に行きたいところだが、警察の目がタケル達に向かないよう、ここで大人しくしてタケルの帰りを待つ他ないからな…」
池谷がそう言い切って、タケルが健吾に勝つことを祈るしかないように言っていくが。それを間近で聞いていた拓海は、空を見あげながら内心呟く。
「(タケル…。お前のことだから、心配する必要はないかもしれないけど…。もし帰ってきたら、お前に話したいことがあるから、絶対に負けんじゃねえぞ…)」
そう言ってタケルに話したいことがあると呟く拓海は、バイトに集中することにし、タケルが戻ってくることを祈るのであった。
秋名山 旧料金所跡
静まり返った夜の秋名の頂上に、灰色のパルサーが駆け上がり。頂上の端に停めてある二台の新旧RX-7を見つけ、パルサーに乗っている健吾が口を開く。
「へっ…。ようやく高橋兄弟のお出ましってわけか…。さあ、今夜は最高に面白えバトルと行こうじゃねえかよ…」
健吾は、最初から高橋兄弟の二人を潰す気満々だったか、下品な笑みを浮かべたまま、道路の端に車を停めると、二台のRX-7へ近づき、着いてすぐさまFDの窓を乱暴に叩く。
「おいコラ、出てこいよオラァ…!!新潟から来てやったんだ。観念して出てきやがれってんだ!!」
健吾がチンピラ風情な雰囲気を出しながら声を荒げるや、車に乗っている高橋兄弟を呼び出そうとする。すると、運転席のドアが開き、中から出てきたのは啓介ではなかった…。
「坂口…。こんなところでお前と顔を会わせることになるとはな…」
「き、貴様…小野哲也…!?なんでお前が高橋啓介のFDに乗っていやがるんだ…!?」
なんと、啓介の黄色のFDに乗っていたのは啓介本人ではなく、小野哲也であり。哲也は殺気に満ちた目線を健吾に向けながら理由を話す。
「決まってるだろ。啓介からこいつを借りて俺が乗ってきたんだ…。お前をここにおびき寄せる為にな」
「な、何だと!?…じゃあ、そっちのFCに乗っているのは…」
健吾が弾かれたようにFCの方を見ると、FCから降りてきたのは涼介でもなく、白いワイシャツ姿の体格のいい人物だった。
「悪いな…。このFCは、涼介さんからメンテナンス名目で預かって、こっちへ持ってきた…。本物の涼介さんと啓介さんは来ていない…」
「…なんだと!!」
「しかし、よく高橋涼介がお前みたいな男によく車を貸してくれたな。お前とはどういった関係なんだ?」
「そうか…。お前にはまだ名乗っていなかったな。俺は松本って言って…。涼介さん達と同じレッドサンズにいてな。チーム内では、涼介さんのFCを見ているんだ」
「そういうことか。普段から車を見てきてる奴になら任せられると判断して、貸してやったというわけか…」
松本から、FCを持ってこれた理由を聞かされた哲也は納得したか頷くが。健吾の方は、二人を忌々しげに睨みつける。
「てめえら…よくも俺をハメやがったな…!!」
「悪く思うなよ坂口。警察が動いてる以上、お前を秋名へ引きずり込むには、こうする他なかったんだよ…」
哲也は健吾を秋名に引っ張り出させる為とはいえ、騙して悪かったと詫びるように言っていくも、その言葉は表面上だけだった。
「本来ならこっちにも警察の手が回るところだったんだが、涼介さんが群馬県警の隊長に目を瞑ってくれるよう話をつけてもらったんだ…。お前には、別の奴とバトルしてもらう為にな…」
「けっ…高橋兄弟じゃねえってんなら、誰が俺とバトルするってんだ…。まさか、ここらじゃ最速と呼ばれてる秋名のハチロクっていうんじゃねえよな?」
「生憎…ハチロクとは連絡がつかなくてな。その代わりといってはなんだが…。ハチロクと互角に渡り合える男を呼んでおいたんだよ…」
「はぁ…?お前は何を言って…」
ブォオオオン
「…来たか。あれがお前の相手をする男だ…」
健吾が哲也と松本の二人に文句を言っているタイミングで、麓の方から一台の車が駆け上がりながら近づき。そのシルエットを見た健吾は二人に文句を言う。
「なんだよ…スイスポじゃねえか…。あんな車で俺とやり合えると思ってるのか?」
健吾は、頂上に来た車がまさかのスイスポであることに文句を言うと、哲也は警告するような口調で健吾に言う。
「あのスイスポを甘く見ないことだな。啓介の話によれば、秋名で高橋涼介を負かしただけでなく、いろは坂では最速を誇る須藤京一を相手にも勝っているぞ…」
「なんだと!?あのスイスポが高橋涼介や須藤京一に勝ってるなんざ、本気で言ってるのか!?」
「小野の言ってることは本当だ。涼介さんとのバトルには俺も立ち会ってる。須藤に関しても直接本人がそう言ってたから、乗ってる車だけで相手を甘く見ないことだな…」
哲也が言う事に松本が肯定し、健吾がスイスポのドライバーはかなりの実力者であると知る。そこに麓から上がったスイスポがパルサーとは反対側の道路端に車を停め。ドアが開いて中からタケルが降り立ってくる。
「な!?…こんなクソガキが俺の相手をすると…」
健吾は、タケルを見ていきながら大したことがないように嘲るが。タケルから向けられる視線に、ただ者でない気を感じ取ったか再び注視する。
「どうやらお前にもわかったみたいだな、坂口。あそこにいるタケルは、お前が思ってる以上にやる男だ…。奴が地元としている
「けっ…。そう言っていられるのも今のうちだぜ。俺がこいつをここでぶっ潰した後には、今度こそ高橋兄弟のどちらかを俺のところに連れてくることだな」
健吾がそう言い放つと、タケルに視線を向け。そこからタケルに対し、呼びかけていく。
「てめえが俺の相手をするってことはわかった…。だがな、俺は相手がガキであろうと容赦なく潰していくから、覚悟しておけよ…」
「…そっちこそ。ここまでやってくれた礼は、ちゃんと返しますよ…。群馬の走り屋として、お前をここで叩き潰す…」
健吾が煽りながら言っていくと、タケルは負けじと健吾を真っ直ぐに見据え、ぶち抜いてやると言い返す。
「んじゃ、本日の主役が二人揃ったことだし…。警察の目がこっちに向かない内にとっとと開始するといくか…」
哲也がそう言いながら、二人にバトルするように言っていき。タケルと健吾は火花を散らしながら、端に停めている車をスタートラインに並べるのだった。
高橋邸
「兄貴…。松本からの情報によると、坂口は兄貴の仕掛けた罠にまんまと引っかかて、秋名に来たそうだ…」
「…どうやら、上手くことが運んだみたいだな」
「そうは言うけどな…。奴を秋名におびき寄せたのはいいが、問題は斎藤が奴に勝てるかどうかだ…。俺は坂口の走りがどんなものなのかは知らねえが、兄貴は知ってるのか?」
啓介が坂口の走りについて聞いていくと、涼介は弟からの質問にこう答える。
「奴と直接バトルした真希と小野の話によると、坂口は力でねじ伏せるタイプだと言うことはわかっている。ブレーキングドリフトで姿勢を作り、プッシュで相手を潰すやり方だ」
「スイスポに乗ってる斎藤からすれば分が悪い相手だな…。差を縮めても、そこで押し込まれたら車重の軽いスイスポじゃ厳しいんじゃねえか?」
「それもあるが…。一つだけ、斎藤に勝機があるとするならば…坂口が斎藤を潰すのに躍起になるあまり、パルサーの限界を読み取れるかどうかだ…」
「限界…?」
涼介はパルサーの特性も混じえながら、坂口の走りの欠点について語り始める。
「パルサーは、フロントにエンジンと駆動系が集中したフロントヘビーな四駆だからな。立ち上がりのトラクションは強いが、その分ノーズが入りにくく、限界を超えると一気にアンダーで押し出される。奴の性格からして、そこを読み取りながら走るのは、不可能と言ってもいいだろう…」
「つまり…。フロントに荷重が乗り過ぎて、スイスポより早く限界に来て、自滅する可能性があるってことか…」
「奴の走りはプッシュで相手を潰すやり方だが、それは車にとって負担が大きく、連続ヘアピンで無理を重ねれば、フロントタイヤのグリップは急激に落ちるからな。それに対し、斎藤のスイスポは、パワーにおいてパルサーに劣るが、その分車重が軽く、ノーズの入りと切り返しでは分がある。無理に前へ出ずに、イン側のラインを意識して走ることができれば、勝機があるかもしれない…」
「要するに…斎藤は無理に坂口のパルサーを追おうとせず、向こうのタイヤが限界に近づくのを待てば、あいつは勝つかもしれないと言いたいんだな…」
「そうだ。坂口が勝ち急いでパルサーを限界まで攻め込んだ瞬間、フロントは外へ逃げる。その隙をついて、内側から攻め込んでいけば…斎藤はバトルに勝つ可能が高いとみていいからな…」
涼介が淡々とパルサーの弱点とその攻略法を語るが、タケルはそのことに気づくことができるだろうか。
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