「退学…!?」
「そうだ」
相澤のその言葉に皆の顔からは笑顔が完全に消え去り、焦凍や爆豪もショックのあまり固まっていた。
「順を追って説明する。初めてこの話が出たのは、最終決戦の訓練の時だ。状況が状況だったから、俺やオールマイトさんは深くは聞かなかったが…闘いが終わってから詳しく聞いた」
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それは、遡る事2ヶ月程も前。
雄英高校の校長室にて。事前に時間を取っていた拳太郎は校長である根津に対して詳細を話した。拳太郎からその話を聞いた根津は難しい表情を浮かべながら尋ねる。
「本当に辞めてしまうのかい?」
「えぇ。もう決めた事です」
「そうか…」
その問い掛けに拳太郎は頷くと、根津も無理に止めはせず、言葉を出さなかったが、オールマイトがそれを止めた。
「ちょちょちょ神堂少年!考え直してみないかい!?前よりも警備は強化されるし、寮制度も続く感じだから、問題なく生活ができるよ!それに君のその肉体を鍛え上げるスタンスを授業にも取り入れようという声も上がってる!だから___」
「…引き止めてくれるのは嬉しいです。ただ、連日のニュースとか取材も来てますし、新聞記事も正直腹が立つ。直々に締め上げに行ってもいいですが、これ以上は学校に迷惑が掛かるので…。もう日本にいずらくて」
「…」
その言葉にオールマイト自身も拳太郎の決断の意味をようやく理解し、罪悪感のあまり表情を暗くさせる。
AFOを討伐する瞬間ではなく、追い詰める姿こそ世界に放映され、その強さが知らしめられたが、未だに拳太郎を責め立てる番組や記事が存在しており、連日放送されている。それどころか最近では敵連合の残党やトランペットの政党支持者達が迷惑系配信者や野次馬として何度も実家に押し寄せていたのだ。
ある時はインターホンを鳴らして、ある時は遠くから盗撮し、それを見るたびに拳太郎は何度も何度も追い返し、仕舞いにはその配信者を捕まえて尋問した後にそれを指揮する大元の集団を全員、病院送りにするほど痛めつけたとしても、未だに迷惑行為は止まらなかった。
度重なる迷惑行為に加えて一部のメディアによる偏向報道。それに耐えかねた拳太郎は日本を出る事を決意したのだ。
これは、拳太郎自身の選択ではあるものの、世間の声によってそうせざるを得なくなってしまったに過ぎない。
オールマイトは自身の不甲斐なさを噛み締めながら頭を下げる。
「そうか…本当に申し訳ない…私の力不足で君に酷な選択をさせてしまった…」
「別に…貴方に責任はありません。だけど、僕の意見も変わりません」
そんな中、今まで黙っていた根津が今後について尋ねた。
「聞きたいんだけど、退学したあとの転入先については決まっているかい?」
「…」
それについて拳太郎は首を横に振る。
「いえ。見切り発車なものでまだ決まっていません」
「なるほどね…海外にも知り合いはいるから幾つか当たってはみるけど、今からだと少し厳しくなりそうだな…」
拳太郎の返答に根津は腕を組みながら考え込む。この時期にいきなり転入を申請しても受け入れてくれる学校はかなり限られており、いくら多数のパイプを持つ校長でも厳しかった。
「君としては、今すぐにでも出ていきたい感じかな?」
「我儘を言わせて貰えばそうですね」
「う〜ん……」
そんな中であった。
「…そうだ。私にいい案がある」
同じく腕を組みながら拳太郎の今後について考えていたオールマイトが良いアイデアを思いついたのか、提案した。
「i・アイランドの高校はどうだい?」
「I•アイランドって…メリッサさんが住んでる?」
「うん!」
拳太郎の問いにオールマイトは頷く。
I•アイランドとは、世界中の科学者達が集まり、日々研究に没頭する移動型の島である。その島は1年に一度、観光地として変わり毎年、多くの観光客が訪れているのだ。拳太郎もそのイベントへと参加したことがあり、それがキッカケでメリッサと出逢ったのだ。
「君の望む道に特化してるし、君の成果と私の声があれば移住も可能だ。何よりも、メリッサがいるから、住む家もすぐ見つかると思うよ!」
「それは…大丈夫なんですか?」
説明するオールマイトに対して、拳太郎は考え込みながら尋ねる。
I•アイランドは守秘義務のため、住民が軽々しく島を出ることは許されず、逆もまた然り。特に科学者でもない一般人ならば移住など許可が降りるわけない。
「確か入国はそう簡単じゃない筈。なんなら、研究者じゃない僕は入国ができないような」
「そこについては安心してくれ。私もいくらか顔が効くし、何より君には私以上のネームバリューがある!それがあれば簡単さ!」
「そこまで…いいんですか?」
拳太郎が申し訳なさそうに尋ねるとオールマイトは胸を張る。
「お安い御用さ!確かに寂しい気持ちはある。だけどね、教師として生徒の君には望む道に進んでもらいたいのさ。それに、君には色々と助けられたからね。これくらいはさせてくれ!」
「なるほど……でも、僕やねじれさんの両親はどうすれば」
「その点についても心配無用さ。君や波動少女のご両親は国に掛け合って安心して暮らせる様に手配するよ!」
オールマイトの頼りある声と姿勢に拳太郎は少し考え込むと頷いた。
「分かりました。お願いします」
「決まった様だね」
拳太郎のその答えに根津も頷き話をまとめる。
「じゃあ準備を始めようか。私も全力でサポートするよ」
その後、数日を掛けて手続きが行われた。オールマイトのネームバリュー、拳太郎の過去の功績や名声もあってか、手続きはスムーズに行われ、あっという間に移住と転校の準備は整ったのであった。
そして何故か校長の粋な計らいによって、ねじれも壊利もその島のヒーロー事務所に所属できる様にしてもらったらしい。
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そして準備が整ったその日、皆がそれぞれの実家に戻り不在とする中で拳太郎は寮に戻り、部屋の荷物を運び出して行った。
それから全ての荷物をトラックに乗せ終え、走り出したトラックを見送ると、拳太郎自身も高校から去る準備をする。
「…」
荷物も全てまとめた拳太郎は、たった1年でありながらも、過ごした寮を見渡す。自分の部屋、廊下、そしてA組の皆と過ごしたロビー、校舎。
たった1年だが、その分厚い思い出が頭の中を駆け巡っていく。
「なんか、思い返せば、色々とあったなぁ…」
思い出を振り返りながら、校舎の門を潜る。
すると
「本当に良いのか?アイツらに何も言わなくて。特に心操は普通科の頃からずっと一緒にいただろ?」
「…」
今まで引越しの手伝いをしていた相澤が尋ねる。
それに対して拳太郎は表情を曇らせた。
退学といっても、あくまで世間から避けるためであり別にA組や普通科そして教員が嫌いな訳ではない。故に若干の抵抗はあったのだ。
だが、それでも拳太郎は首を横に振る。
「いいんです。あと、その事については、終わるまで黙っててもらえませんか?引き止められたら、なんか頷きそうなんで」
「そうか…」
その答えに相澤は寂しさを表しながらも頷く。
「分かった」
もう彼は決めたのだ。ここを去る覚悟を。無理に引き留めることも、それを連想させるような言葉も出さず、相澤は頷く。
「お前のお陰で俺も卒業生を見送る事ができたし、なによりアイツらの成長を見届ける事もできる。改めて礼を言わせてくれ。本当にありがとう」
相澤は拳太郎に対し、感謝の言葉を述べる。それに対して拳太郎は珍しく笑みを見せた。
「こちらこそ」
「皆には俺から上手く言っておく。向こう行っても元気でな」
「ありがとうございます。先生もお元気で」
その後、関わりのある数名の教師達に見送られる形で拳太郎は雄英高校を去った。相澤やマイクの一方で、ミッドナイトはハンカチを噛み締めながら泣いていたという。
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「____というわけだ」
全てを話し終えた時、皆の顔からは笑みが消えていた。
「そんな…拳太郎さん…」
「待ってくれよ!アイツのお陰で俺たちこうして新学期迎えれたんだぜ!?それにまだお礼もしてねぇんですよ!?」
「あぁ…」
八百万は俯きながら涙を流し、上鳴も抗議の声をあげると、それについて予想はしていたのか、相澤は説明した。
「だから俺も校長も、当初は引き留めたさ。どんな事があろうとも必ず学校が守ってやるってな。だが、それでも本人は了承することなく、退学を選んだ。日本に戻る予定もないらしい」
「「「「「……」」」」」」
もうなにも言えなくなってしまった。
この世界を救った英雄であり、自身らのクラスメイトでもあった彼にはもう会えない。先程までざわついていた空気が一瞬で静まり返り、皆の表情は新学期に見合わない程の暗いものへと変わっていった。
特に普通科の同じクラスかつ相棒に近い存在でもあった心操は相当ショックであったのか、歯を軋ませながら涙を流していた。
「アイツ…なんで俺には何も…ふざけんなよ…!!」
最後まで分かってあげられることも相談に乗ってあげることも出来ず、彼の力になれなかった自身に怒る様に心操は悔しさのあまり拳を握り締める。
そんな中であった。
「んで、これをお前らにと」
相澤は懐から束を取り出して見せると、全員に配布した。
「……え!?これって…」
配布されたチケットを見た芦戸に続き、皆も驚きのあまり目を大きく開かせる。相澤から配布されたのは、i・アイランドが1年に一度開催するイベント『i・エキスポ』の人数分の2泊3日のチケットだったのだ。
「毎年一枚、全員に送ってくれだとよ。アイツにとっても、お前らと疎遠になるのは寂しいらしいな」
「「「「〜!!!」」」」
そう相澤が告げると、皆の顔が再び輝きだし、大歓声に包まれるのであった。
「これで拳太郎さんに!!会える!!会えますわ!!」
「あの野郎!!カッコつけやがってよぉー!!!」
「おい!!早速予定立てようぜ!!」
八百万、峰田、上鳴などクラスの皆の喜びの声が響き渡り、飛び交う中、心操も、そのチケットを強く握り締めた。
「あのバカ野郎…!!!」
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場所は変わり、i•アイランドの拳太郎宅(メリッサの家のすぐ近く)にて。
「えへへ…拳ちゃん〜♡」
「ダ〜リ〜ン♡」
「ヒィ!?」
窓もカーテンも閉め切ったベッドの上で、ねじれとメリッサに押し倒され迫られていた拳太郎は顔面を蒼白させていた。
「ま…待って!引っ越してすぐだし少し疲れてるから!!もう少し!!」
「「だ〜め〜♪」」
必死に止めようとするも、二人の勢いは止まらず二人は服を脱いだ。
「やっとこうして一緒に暮らせるんだよ?それにこんな時じゃないと拳ちゃん抑えられないし」
「それにダーリンと会えない間、凄く溜まってたんだから…ね?」
そして二人の身体が拳太郎の身体に密着する。
「「たくさんしようね…♡」」
「いやぁあああああ!!!!!!助けて壊理ちゃぁああああああん!!!!!」
※因みに壊理ちゃんは正式な戸籍の手続きを終えるまで拳太郎の両親に引き取られており、優しく育てられてます。