ひょんなことから、悪の組織の幹部と、魔法少女、その両方を兼ねることになった藁宮 亜久寺(わらみや あくじ)。『厨二のアクジ』として、組織の幹部という立場を盤石にしていく一方で、魔法少女としても、活躍していく。そんな1人の男の物語。つづかない

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まほうあくそし

魔法少女、というものが、この世界には存在する。

謎の組織『蒼黒拳魔会(ワールドブレイカー)』の魔の手から、この世界を守るため、人々の中に紛れ込みながら、その日常を守る正義のヒーロー達。それが、魔法少女である。

 

世間的には存在が公表されていない、ことになってはいるが、ネット上では実は存在が微妙に漏れていたり、漏れていなかったり……。中には、魔法少女の人気投票なんてものを行っている輩までいるらしい。まあ、でも、本当にごく一部だけだ。基本的に魔法少女達は認識阻害の魔法を駆使し、『蒼黒拳魔会(ワールドブレイカー)』と戦闘を行っているわけだから。

 

ん? じゃあ何で俺がそんな情報を知っているのかって?

なーんでーでしょー。

 

じゃあ、二つ選択肢をあげよう。

 

1、俺が悪の組織、『蒼黒拳魔会(ワールドブレイカー)』の幹部だから。

 

2、俺が魔法少女だから

 

さーて、どちらでしょう?

正解は………。

 

 

 

 

 

 

CMの後で!!

 

 

 

 

俺の名前は藁宮 亜久寺(わらみや あくじ)

悪の組織、『蒼黒拳魔会(ワールドブレイカー)』に所属していて、組織の幹部をやっている男だ。

で、ネタバレしちゃうと『蒼黒拳魔会(ワールドブレイカー)』は、『楽園』という異世界からやってきた人々により構成された組織で、目的はこの世界の破壊。厳密に言えば、この世界の全人類の死滅、だろうか。

 

まあ、勿論そう簡単には行かない。何故かって?

この世界には、正義の味方さんが存在するからである。

 

『未開』という世界からやってきた『守護者(ガーディアン)』と呼ばれる妖精達。そいつらが、人間の少女達に力を分け与えることによって誕生した存在、それが魔法少女だ。

 

そんな魔法少女に対して、『蒼黒拳魔会(ワールドブレイカー)』は人間を拉致して怪人に改造したり、記憶を失わせ、新たな異世界人として転生させ直すことによって誕生した戦力をぶつけることで対抗している。

 

つまり、この組織には3種の人種が存在するってわけだ。

俺はそれぞれ、異世界人、新生異世界人、怪人って呼んでる。

 

ちなみに俺は新生異世界人だ。

ま、本当は新生異世界人は自分が新生異世界人って自覚がないんだけどな。

 

じゃあ、俺は何でその自覚があるのかって?

 

……まあ、思い出したんだよ。前世の記憶ってやつ? いや、まあ見た目はそんな大きく変わったわけじゃないから、前世と呼ぶことに違和感を覚えるが。

 

で、多分原因は……。

 

「これ、だよなぁ……」

 

俺が今手に持っている魔法少女ステッキ、だろう。十中八九そうに違いない。

だって、このステッキ持った瞬間に記憶が濁流のように俺の頭に流れ込んできたからな。

 

多分このステッキ、さっき戦った魔法少女の子が持ってた奴だと思うんだけど。

え、どうする? 俺。いや、俺、さっきまで組織の幹部として魔法少女達と敵対してたんよ?

それなのにいきなり、落とし物でーす届けに来ましたーなんて言ってみろ。袋叩きにされてこの世界からさよならバイバイベイベーするしかなくなるぞ?

 

というか、記憶が戻ったわけだけど、これから俺はどうするべきなんだ?

元の生活………には戻れるわけないし、組織を離れたとして、そこから自力で生きていけることが俺にできるだろうか。いや多分無理だ。なんだかんだ言って組織での待遇いいし、やめてホームレスなんて嫌だし。

 

かといって『蒼黒拳魔会(ワールドブレイカー)』として悪事を働くのも嫌だ。名前に亜久寺ってついてるけど、俺自身は悪事は好きじゃない。勿論自分は大好きだ。亜久寺大好き。

 

いや、まじでどうしよう……。

 

「この辺じゃない?」

 

「多分……そうだと思う」

 

って、やっべ人が来た。隠れないと。

 

「にしても、ステッキを落とすなんて。普通、魔法少女とステッキは魔力で繋がってるわけだし、落とすなんてこと起きないと思うんだけど……」

 

「そう…………だね……」

 

って、もしかして俺が拾ったステッキの元の持ち主さん?

あーなら、適当な場所にステッキ捨てて、さっさとこの場立ち去ろうか。そうすれば勝手にステッキ見つけてくれるだろうし。

俺の今後についてはまあ……とりあえず一旦組織に戻ってから考えよう。うん、そうしよう。

 

「やっぱり、四天王のアイツの能力にやられたのかしら? ありえるわ。アイツ、今までの奴とは格が違ったもの。何かしてきてたっておかしくなんてないわ」

 

「…………」

 

ほう、俺の話題が出てきましたね。一瞬くしゃみしそうになりましたよ。危ない危ない。こんなとこで正体バレたら、戦闘まっしぐらですわ。俺としても、ここでドンパチやりたいわけじゃないし。

 

「アイツ……今度あったら絶対に倒してやるんだから! 日菜も、今度こそ負けないように、私達で力を合わせて……」

 

「美香ちゃん……。もう……いいの」

 

「日菜?」

 

「私もう………戦いたくない!! 本当は、最初から戦いたくなかった!! なのに、周りが勝手に……!!」

 

あのーステッキの返却をしたいんですけど…………。この感じだと、受け取ってくれなさそうですかね……。い、いや待て。これは覚醒イベントだ! ほら、こう、何やかんやで自分の中の迷いを取っ払うんだよ。そんで、仲間がピンチに陥ってる時に、『やっぱり私、皆と戦いたい!』とかなんとか言って一皮剥けた状態で再登場するんだよ。そうに違いない! もしかしたらちゃっかり強化形態手に入れちゃったりして、

 

あ、ほら、噂をすれば怪人が……。って怪人!?

 

「日菜!」

 

怪人が、日菜ちゃん、かな? の方に対して、襲いかかる。それを守るようにして、美香ちゃんが怪人と日菜ちゃんの間に割り込む。

 

変身(マジカルチェンジ)!!」

 

美香ちゃんがステッキを上にかざして、変身する。

あー変身後(この姿)、知ってるわ。

 

確か、魔法少女プリンセスラクトレディだっけ? 俺ってば記憶力良い〜! ま、組織の幹部って立場上、魔法少女の情報収集はかなり綿密に取り行ってきましたからね。当然知ってますとも。

 

「わ、私は知らない!!」

 

日菜ちゃんの方はステッキを持っていないからか、変身することはなく、そのままここから逃げていってしまう。

って、どうしよう俺。ステッキ持ったままじゃん……。日菜ちゃーんここにステッキあるからさぁ、拾いに来てくれないかな? ほら、美香ちゃん苦戦してるよ。って本当に美香ちゃん苦戦してるじゃん。どないすんねん。

 

「日菜……よかった……逃げれて………」

 

ボロボロになりながらも、日菜ちゃんの身を案じる美香ちゃん。

こんなん見せられたらさぁ……助けるしかないよね?

 

いや、でもこのままの姿で出て行くわけには行かんし‥‥。お前なんで助けたん? ってなるやん?

どうすればいい……。いや、日菜ちゃんが逃げなかったら適当にステッキ投げ捨てて拾ってもらうとかできたんだけどさ……。

 

ん、ステッキ……?

そういえば、このステッキ、日菜ちゃんとの魔力のパス、切れてるよな?

切れてるから、日菜ちゃんはステッキを落としちゃったわけだし。というか、普通ステッキとの魔力パスが切れるなんてありえない。あるとすれば、自分からパスを破棄する場合のみだ。ってことは多分、自らパスを破棄したんだろうな、日菜ちゃんは。

 

まあ、つーことは。

俺、ステッキ使えるんじゃね?

 

ステッキ使えばさぁ、魔法少女になるわけじゃん? 姿変わるじゃん?

いける………!

 

(変身(マジカルチェンジ)!!)

 

俺は心の中で変身(マジカルチェンジ)と唱える。すると、体中が光って……。

 

「あ、できた」

 

おぉ! 俺、魔法少女になってるぅ〜!? 声も可愛らしい!! いいね〜!

よしよし、早速胸を……。

 

「胸が………ない………」

 

俺はガックリ項垂れる。綺麗にorz状態になってしまった。ショックである。あのたわわを堪能しようという欲望も持って変身したというのに……。

 

「だ、誰……?」

 

あ、美香ちゃんに気づかれましたね。声出しちゃったからかな。まあいいや。

んーどうやって登場しようか。やっぱかっこよく、だな。うーんそうだなぁ。

 

「私は………闇の魔法少女…………」

 

俺は自己紹介をしながら、軽く怪人を捻る。って強っ! 俺強っ! 一瞬で怪人さん吹き飛んだんだけどぉ!?

まぁこれでも四天王が1人、『厨二のアクジ』として名を轟かせていたからな。強いのは当然とも言える。

 

「闇の……? というか、貴女の持ってるステッキって………」

 

「そう、私は闇の……」

 

「日菜のステッキ……やっぱり日菜、魔力パス切っちゃってたんだ……。ってことは、貴女が日菜の代わりに………」

 

「あの、私は闇の……」

 

「そっか、私のこと助けてくれたんだね。初戦闘は怖かったでしょ? ごめんね、不甲斐ない先輩で。にしても貴女強いわね! とんだ才能だわ」

 

「」

 

え、どうしよう。普通に日菜ちゃんの後継みたいな扱いされてるんだけど………。え、適当に倒して適当なこと言ってバイバイベイベーしようと思ったのに……。どうしよ……。

 

俺は通りすがりの一般少女Aとして認知されてるらしい。変身前が組織の幹部だとはまだバレていない……というかまあバレることはないだろうな。

 

「咄嗟に変身して、私のこと助けてくれたんでしょ? よくそんな判断できたわね、尊敬するわ。貴女からすれば、わからないことだらけなのに……」

 

「勘違いするな。私は別に、お前を助けたわけじゃない」

 

「?」

 

「そもそも、日菜とこのステッキの魔力パスを切ったのは私」

 

「それってどういう……?」

 

「それじゃ」

 

「あっ、ちょっと…!」

 

ええい! 追ってくるなよ! 

仮にも幹部の1人なんだ。逃げ足の速さは並じゃねぇぜ!

 

「まいた……か?」

 

ふぅ。とりあえずのところはよしとしよう。でもどうしようか。結局、ステッキ返せてないし…。

 

「驚いた。まさかこんな展開になるなんてね」

 

「っ! 誰だ!?」

 

「ボクは『守護者(ガーディアン)』のナイナイだナイ。人間からは妖精って呼ばれてる存在ナイ」

 

そうか、魔法少女には、必ずセットとなる、魔法少女に力を与える妖精が存在する。よくよく考えれば、魔法少女に変身するためには妖精の力が必要なので、つまりこいつは、俺に変身の許可を与えた存在ということになる。

ちなみに妖精の見た目は、黒猫かつ猫又で、結構可愛らしい感じだ。

 

「知っての通り、俺は幹部のアクジだ……って言いたいとこだけど、流石に誤魔化せないよなぁ」

 

「全部わかってるよ。君も蒼黒拳魔会(奴ら)の被害者さ。本当は、組織の幹部になんて変身させるつもりはなかったんだけど、あの時は美香がピンチだったからね。仕方がない」

 

「それで? 俺はこのステッキをどうすればいい? 俺としちゃ、お前が勝手に日菜って子に返しといてくれるとありがたいんだが……」

 

「いいや。返さなくていい。君には、スパイをやってもらおうかなと思ってね」

 

はい? スパイですと?

 

「そう、スパイさ。こんな稀有な例、今後現れるとは思えないし、君は蒼黒拳魔会(ワールドブレイカー)の中でも相当な立場にいる。蒼黒拳魔会(ワールドブレイカー)に身を置きながら、時に魔法少女に変身して、こちらに情報共有をしてほしい。ボクの言ってること、分かるかな?」

 

面倒くさそうだなぁ……。いや、俺の立場が立場だしさぁ……まあそうなるだろうなとは思うんだけど。

普通の生活に戻るってのは無理だ。新生異世界人だろうがなんだろうが、蒼黒拳魔会の奴らは皆殺されても文句は言えない。だから結局、俺に協力しないって選択肢は存在しない。

 

「見事蒼黒拳魔会(ワールドブレイカー)を壊滅に追い込むことができたら、その後の君の生活はボクが保証しよう」

 

俺はナイナイの手を取る。

 

この日をきっかけに、悪の組織の幹部と魔法少女の両方を兼ねる、俺の奇妙な日常が始まったのだった。




去年の夏に書いて放置してたやつ。多分続き書くことないから短編として供養。読みたいので誰か続き書いてください()

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