あれから、一年が過ぎた。
その日、とある湖畔の中にある一軒の美術館が、待望の
「いよいよね、姉さん、愛」
「ええ、いよいよ」
「うん」
来生三姉妹がお互いの顔を見合わせて笑みを交わす。その傍らでは永石が感涙の涙を流し、俊夫達が晴れやかな顔でその時を待っていた。
◇ ◇ ◇
一年前のあの日。彼女らはハインツの個展会場で、シティハンター槙村香に驚くべき事実を伝えられていた。
「ハインツ氏は……生きています」
「え!?」
「何……ですって?」
香は話す。彼女らの見た手紙の通り、ハインツの殺しを依頼したのはハインツ自身である事。ゴルゴ13がそれを受けず、代わりに限りなくそれに近い状況を生み出す偽装殺人を演じた事。それにより娘達に罰と償いの意思を与えようとした事を。
彼女はハインツを保護した道中で、彼の意図の全てを聞かされていたのだ。
自分が獠を信頼しているように、ハインツもまたゴルゴ13に絶対の信頼を置いている。
彼ならば自分を殺さず、かつあの獠やファルコンにすら見破られない狙撃を実現するであろうと。
「だから頼む、槙村君。どうか私に協力して欲しい」
実の娘に罰を与え、償いの意思を持たせるために負傷覚悟で殺されるフリをする。それは自分が得られなかった父の愛と厳しさを、心の芯から感じることができる依頼だった。
『依頼人が俺の心を震わせたとき、俺は依頼を受ける』
いつかの獠の言葉に習い、香はその役目を引き受けた。
香は獠の夜遊びの隙に東京にいる教授と連絡を取り合い、ハインツが狙撃されたらすぐに保護して貰うように手はずを整えていた。そして応急処置を施した後、すみやかに闇医者に運び込んで手術に入った。
その手術が成功したとのメールが、ついさっき届いたのだった。
「でも、ハインツ氏は
香の言葉に、三姉妹や永石が思わず沈黙する。彼が娘達に課したのは、
その日から彼女たちは奔走を始めた。アメリカに保管してあるハインツ・コレクションを日本に持ち込み、新たに彼が描いた対の絵と共に、盗んだ絵の持ち主ひとりひとりに返却していったのだ。
俊夫たち『キャッツ特捜課』の面々と一緒に元オーナーを訪れ、自分たちがキャッツアイである事を隠さず、平身低頭で謝罪と絵の返却、そしてお詫びの対の絵を進呈していった。
幸いにも盗難にあった者達は、そこまでキャッツに憎しみを抱いてはいなかった。むしろ諦めていた絵が思わぬおまけ付きで戻って来たことに歓喜する者がほとんどだった。ハインツの絵は高額なだけに、それをコレクションしている者達は元々が金に困らない裕福層だったからだ。また、盗難の罪がすでに時効を迎えているのも要因の一つなのだろう。
他にも絵を盗まれる事で、隠していた犯罪を暴露されて服役中だった元オーナー達にも絵は返されていった。
もちろん今は受け取れる立場ではないが、釈放された後人生においてその絵の価値はきっと彼らの更生を助けるだろう。現にその絵を即売却して、現金を信頼できる身内に託したいという囚人も何人かいた。
泪たちはその願いに応え、時価の倍近い価格でハインツの絵を買い取ったのだ。
最後に、ハインツを長きに渡り苦しめた双子の兄、クラナッフが所有していた絵を元に戻すため、彼女たちは元々クラナッフが所有していた蔵内美術館の跡地に、新たに美術館『アトリエ・ハインツ』を設立し、そこに彼の所有していた絵と、その対の絵。そしてクラナッフ自身が描いた絵も展示されることになった。
◇ ◇ ◇
その『アトリエ・ハインツ』が今日、いよいよオープンの日を迎えるのだ。
「それでは只今より、美術館『アトリエ・ハインツ』の開館を宣言します!」
ドレスを纏った泪が高らかにそう宣言し、瞳たちがテープカットをする。俊夫や平野、浅谷達がクラッカーをパンパンと鳴らして紙吹雪を散らし、大勢のギャラリー達が拍手を送る。
「さって、俺達もオープン祝いを届けに行きますか、っと!」
駐車場の裏の木陰に止めてあったミニクーパーの中、冴羽獠がエンジンを始動し、けたたましいホイルスピンを上げて爆走を始める。
ギャアァァァァァァッ!
「な、何?」
「なんだなんだ、何事だ!」
「警備の物は何をしてる?」
そのまま駐車場から正面玄関に躍り出たミニクーパーは、そこで一回転半のスピンターンをして白煙を巻き上げ停車する。運転席のドアが開き、獠がタイヤスモークの中からその姿を現した。
「冴羽さん、何事ですか。今は大事な式典の途中ですよ?」
騒然とした空気の中、泪がクールにそう警告する。が、獠はやれやれと両手を広げて、軽い口調でこう返す。
「なーに言ってんの。頼まれた依頼を果たしに来たんだよ、俺達は」
そして助手席から降りて来た香がシートを倒し、後部座席からひとりの人物を抱えるように降ろす。
その瞬間、泪の、瞳の、そして愛の時間が凍り付き……
「泪、瞳……美しくなったな。愛……よく生まれてきてくれた」
彼女らの新たな時間が。待ち焦がれた
感動の再会を果たした来生一家を遠目に見ながら、獠と香はようやく終了した依頼の成果に満足した様子だった。
「っていうか、今回は香にやられたよ。まーったく、いつも俺の事を秘密主義とか言ってるクセに」
「ま、たまにはいいじゃない。サプライズサプライズ」
ハインツを巡る獠とゴルゴの攻防。その全容を把握して最終的にコントロールしたのは他ならぬ香だった。男たちが片手落ちの情報の中で死闘を演じていた時、全てを知っていた香の行動がお互いを死から救い、両者の目的を達成せしめたのだから。
「あ! そーだ。依頼達成したんだから、泪さんとのもっこり一発げっとおぉ~!」
香を褒めておいて油断を誘い、スキを突いてそう叫びながら駆け出す獠。だが……
「甘いわね獠。それを私が許すと思って? 海坊主さん、お願い」
いつの間にか装着していたインカムにそう告げると、向こうから”了解ぃ♪”との楽しそうな声が聞こえて来た。海坊主と香はトラップの達人師弟、まして獠の行動などお見通しである。
どっこおぉぉぉ……ん
派手な爆発音とともに、もっこり男が花火の尺玉と一緒に舞い上げられ……
どーんっ!
「たーまやー」
真昼の空に、派手な花火を彩った。
◇ ◇ ◇
とある港湾の際にある公園。船の警笛が響く中、ひとりの立派な体躯の男が黒い背広を纏い、その敷地内に入って来る。
やがて彼は向かいのベンチに座る人物を見止め、そこから後方に回り込んで、一歩また一歩と近づいていった。
そして、その男の背後に立った時。彼、ゴルゴ13は静かにこう言った。
「用件を、聞こうか」
♪BGM『GET WILD』前奏開始♪
ゴルゴのアップで停止する画面。そこからカメラが
両腕をベンチの背もたれにかけ、半分振り返った状態で、リラックスした表情で、ゴルゴを見上げる獠。
――世界一の
出演
冴羽 獠
槙村 香
伊集院 隼人
伊集院 美樹
♪チープなスリルに身を任せても 明日におびえていたよ♪
野上 冴子
野上 麗香
ミック・エンジェル
名取 かずえ
教授
芹澤 綾子
芹澤 政一
♪It`s your pain or My pain or somebodoy pain 誰かのために生きられるなら♪
来生 泪
来生 瞳
来生 愛
内海 俊夫
永石 定嗣
♪It`s your dream or My dream or somebodoy dream 何も 怖くはない♪
浅谷 光子
平野 猛
武内
デイブ・マッカートニー
ショーン・鍛冶屋
住職
ミケール・ハインツ
ゴルゴ13
♪Get wild and tough ひとりでは解けない愛のパズルを抱いて♪
原作
「CITY HUNTER」
北条 司 先生
「ゴルゴ13」
さいとう・たかを 先生
さいとう・プロダクション
♪ Get wild and tough この街で 優しさに甘えていたくはない♪
エンディングテーマ
「GET WILD」
楽曲使用コード 096-9029-8
♪Get chance and luck 君だけが 守れるものがどこかにあるさ♪
制作・二次創作
三流FLASH職人
「シティハンターvsゴルゴ13」製作委員会(仮)
掲載
小説投稿サイト「ハーメルン」
♪Get chance and luck ひとりでも、傷付いた夢を取りもどすよ♪
SPECIAL THANKS
YOU
――THE END――
お読みいただき ありがとうございました。