俺の発現した個性が【オール・フォー・ワン】だったって、マジ?!! 作:AC6はいいぞ!!
「様子を見てこいと言われてきたが、普通に元気そうだな」
「これでも相当大変だったんだがな。後始末には苦労した」
日本式の屋敷の中のとある部屋で2人の人物が話し合う。片方は日本最大規模の極道組織である死穢八斎會の組長。もう片方は世界屈指のヴィラン組織のNo.2だった。
「まあ、大規模暴動が発生する寸前だったからな。マジで危なかった」
「それもあるが、裏で煽っている連中もそれなりにいた」
「裏は取れたのか?」
「取ったが、お前さんの思っているような相手じゃねぇ。暴動に乗じて稼ごうとしていたチンピラの類が大半。残りも似たような悪徳企業だった」
まあ、そうだよな。俺はそう思った。
あそこまで緻密かつ大胆なことを実行するような相手が簡単に尻尾を掴むとは思えない。
「1つ、聞いてもいいか?」
「なんだ?」
いつもは黙って控えている治崎が珍しく質問してきた。
「お前が『レイヴン』じゃないのか?」
その言葉に場は静まり返る。組長のほうを見ると、一瞬唖然としていたが次の瞬間には怒りをあらわにしていた。
「治崎。てめぇ」
「親父だって思っているだろ。年端も行かねえガキが最高峰のヴィランの資産のほとんどを譲り受け、しかも難なく使いこなす。国相手にビビりすらしねぇ。それに・・・あいつに似すぎている」
その言葉に組長も黙ってしまう。そして目の前の男を見つめる。先日、ただの高校生から世界最高峰のヴィランに上り詰めた男を。
「なぜそんなことを聞いたのかはある程度理解できるが・・・その答えは『No』だ。俺がレイヴンだとしたらいくつもの問題が立ちふさがるぞ」
「だいたい、ブランチは数年前から実働している。その頃の俺は小学生だ。いくら何でも小学生がヴィラン組織を立ち上げるとか常識的に考えて無理だろ」
「だが、お前なら」
「無理だろ。いくら何でも飛躍しすぎだ。それこそ悪魔の証明だぞ」
「だが」
「治崎。そこまでにしとけ」
組長が治崎をにらみつけるように一喝し、渋々治崎は黙り込む。
「すまねぇ。このケジメは」
「いらん、そんなもの。ただ・・・まさかレイヴン本人に会ってるやつがこんなことを言うとは思ってなかったな。確かに『俺=レイヴン』を匂わせるような噂はバラまいたが」
「そんなことしていたのか」
雄英高校襲撃事件を含めた諸々の対処をするためにレイヴンを使うという手もあった。だが、俺はそれをしなかった。
ブランチという組織が持つ優位性。オーパーツ的な技術、圧倒的実力を持つ人材、色々あるがその中でもトップの神秘性だと俺は考えている。
そもそもの話、レイヴンは名前が知られている程度で正体は不明。表にいたっては名前を知っていても実在しない、都市伝説なような存在だというのが大半の人間の認識だ。なぜなら、レイヴンは基本的に裏社会でも姿を見せず、見せたとしてもナイトフォールを身にまとった状態のため中身が本人なのか周囲からはわからないからだ。
だからこそ、裏では『レイヴンと言う存在は実は存在せず、自立型のロボによる演出』とか『レイヴンは複数人が名義を使いまわしている』などと言われている。
レイヴンが誰かわからない以上、暗殺を行うのは至難の業。仮に誰かがレイヴンを名乗る存在を打倒したとしても『果たしてそれは本物なのか』という疑いを周りは持つ。そうなれば仮に倒したのが本物だったとしても、誰もレイヴンが死んだとは思わない。むしろ、本当はまだ生きていると警戒する。
疑念が芽生えれば、疑心を晴らすことは生半可なことではない。偽物が出ればそれが本物だと思われるし、偽物が偽物だとバレても本物が隠れているのではないかと疑ってしまう。
心の憶測に棲みついた恐怖心はそう簡単に消えない。だからこそ、レイヴンを疎ましく思っていても敵対は避けようとする。正体不明でなおかつ神出鬼没なやつを相手にするなど雲を掴もうとするもの。少なくとも正体が明らかになるまでは敵対を避けようとするのが人の心ってものだ。
「つまり、レイヴンの神秘性を消さないようにするためにお前さんはレイヴンの跡を継いだってことか」
「そう言うことだ。レイヴンが表舞台に出れば組織としての動きに制限がかかるだろうし、一挙手一投足が監視された結果、正体まで突き止められる可能性があった」
「確かに、表舞台に引きずり出されるとそうなるな」
「その点、俺は既に表舞台にいたし、レイヴンよりは劣るが能力はある。表では俺が、裏ではレイヴンが自由に動き回れば何の制限を受けることはない」
むしろ、今のほうが若干やり易いまである。俺は制限を受けることはほとんどないし、影響力を表で発揮しやすくなった。
「まあ、治崎は心配性だから疑っただけで、レイヴンを知っている他の奴は俺のことをレイヴンだとは思わないだろう」
・・・・・・
「陰奪少年・・・君が、レイヴンなんじゃないのか?」
「オールマイトもかよ」
組長との会談を終えた翌日、HR開始前の雄英高校に来た俺は緑谷、校長の前でオールマイトからの爆弾発言に唖然としてしまった。
「なんでレイヴンを知っている人がこうも『俺=レイヴン』だと思うんだ・・・普通に考えて無理だろ。本人とも会ってるだろうに」
「いや・・・まあ、そうなんだが」
勘がいいが故の判断か、論理をすっ飛ばしているあたり質が悪いと思った。
「あの・・・オールマイト。さすがに全部君がレイヴンだというのは無理があるんじゃないですか」
「そうだね。いくら何でも飛躍しすぎているよ」
緑谷と校長はこっちの味方だった。ただ、校長に関しては疑っているかもしれないが。
「しょうもない話は横に置いといて・・・オール・フォー・ワンがついに動き出した。USJで起きた事件の裏に奴がいる」
「あの脳無とかいう化け物は複数の【個性】を持っていた。そう考えると辻褄は合う」
「問題はそれ以外。俺の冤罪、クリニックの一斉摘発などのほうだ」
そう言うと事件の概要を共有する。ある程度の概要は知っていたのだろうが、詳しくは知らなかったのか特に緑谷は大層驚いていた。
「そんなことが・・・本当に」
「まあ、公安って想像以上に闇が深いからな。今回はそれを突かれたわけだが、これはオール・フォー・ワンの手口じゃない。あいつにこんなことできる頭もなければ手段もない。だから別の誰かの仕業なんだが」
「誰なのか見当がついていないんだね」
校長からの指摘に思わず顔を顰める。存在自体はハッキリしているが、逆に言えばその程度のことしか現時点ではわかっていない。
「ワン・フォー・オールについても知っている可能性が高い。というか、出久が後継者なのもバレてそうなんだよな」
その言葉にオールマイトと緑谷が驚く。いや、ここまでのことをしでかすヴィランがオールマイトについて調べていないわけないでしょ。原作知識抜きにしても、知っている可能性は普通に高い。
原作でUSJ事件後に緑谷についてオール・フォーワンは死柄木から聞いていたし、たぶんオール・フォー・ワンにも感づかれただろうな。原作以上の実力があるのならなおのことバレる確率は高いだろうし。
「全部君。僕はどうすれば」
「とりあえず現状維持。最低でも体育祭までは【危機感知】以外は禁止・・・そういえば、体育祭はやるのか?」
ふと疑問に思い、校長のほうを見る。普通に考えれば中止するのが無難ではあるのだが。
「いや、開催する予定さ。ここで中止してしまったら、それこそ社会に与える不安が計り知れない」
確かにそう言う一面もあるのだろうが結局のところ、見栄の問題だろうな。
「はあ・・・これで襲撃を受けたらどうする気なんだ」
「そうならないように警備は例年の10倍、いやそれ以上の警備で対応する予定さ」
原作の5倍から一気に増えたな。ただ、数を増やしただけでは意味がない。そう考えるとトップもそれなりの数警備に回すつもりか。
「・・・まあ、俺がどういう言うのも間違っているか。ただ、一言言っておく」
そう言うとオールマイトと校長を威圧するように見つめる。
「間違っても襲撃を許すなよ。ここで許してしまえば、もう社会の崩壊は止められない」
念には念を押す。口うるさいようだが、これでも全然足りないと思っているほどだ。それほどに今の状況はかなり危うい。
それがわかっているのか校長も黙ってそうならないよう全力を尽くすと言ったが、政府は今だにてんやわんやしている。おかげで公安の立て直しもままならないし、ブランチとの関係も良くない。
「はあ・・・ほんと、どうしたものかな。俺の存在も政府にとっては見たくもない汚点だからまともに連携も取れない。まあ、無理もない。本来は俺みたいな存在を許容してはならないからな」
「全部君・・・君がそれを言っちゃうの?」
「いや・・・普通に考えてそうだろ。一高校生を冤罪まみれの犯罪者に仕立て上げたのも問題だが、ヴィランとして堂々と交渉し、あまつさえ完全に譲歩した形で交渉成立させた。本来なら絶対に在ってはならないことだ」
ブランチは義賊的な立ち位置とはいえヴィラン組織。本来であれば取引などしてはならないし、する必要があったとしても裏で秘密裏に交渉すべき・・・だった。
「でも君はそれをしなかったね」
「できるわけないだろ。ちゃぶ台返しするには世論を納得させる必要がある。あの会見を乗り切るにはどうしても俺らが脅して強引にでも流れを変える必要があった・・・仮に、俺があの場にいなかったらどうなっていたと思う?」
「最低でも世論からもうバッシング。最悪、信用の崩壊だろうね」
結局、諸々の状況を考えた結果、力技で返すことになったがその代償として政府が立て直した後にこちらが排除されないよう、表で影響を強める必要が出てきた。おかげでブランチの影響は日に日に上がる・・・ああ、それはそれで困るんだよな。
「まあ、今更愚痴を言っても仕方がないか・・・後やるべきことは出久の身辺警護だな」
「それに関しては秘密裏にヒーローを派遣することになった」
「人選がしっかりしていれば言うことはないか」
「そう言えば君はもうご両親とは再会したのかな。陰奪少女たちも会いたがってたが」
「ああ・・・もう会ったよ」
俺の何とも言えない表情をするとオールマイトは不思議がる。
家族と再会した時、父さんからは鉄拳制裁と言わんばかりに拳が飛んできた。薫たちからは泣きつかれて身動き後取れない状態で数時間過ごした。極めつけが母さんによる説教。無言の圧と言わんばかりのオーラを身にまとい、薫たちを置いてどこかに行ってしまったことに対して数時間説教された。
ヴィランになったことなどについてはいいのかと思ったが、それ以上に家族を置いてどこかに行ったことのほうがダメだったらしい。感性がズレている気もしなくはないが、最後に出来る限り人を傷つけないようにと言われたあたり、俺がヴィランになったことに思うところがないわけじゃないらしい。
「君は・・・もう少しご両親の心情を思いやるべきだね」
「ハハハ、ごもっともな意見。そうならないようそちらでも努力してくれ」
こうなったのはそちらの不手際でもあるんだぞと言外に伝えると、全員の表情を曇った。
「薫たちが俺のところに行きかけてたし、下手をすると雄英高校そのものが消滅してたぞ。ちゃんと認識してるか?」
「それって・・・全部君のところに行くってことだよね。でも、そうした場合君は縁を切るって言ってたじゃないか。それなのに危険を冒してまで行く必要なんてないよ」
緑谷の言っていることは正しい。危険を冒してまで俺の元に来た結果、縁を切られてしまっては本末転倒。だから俺の元に来ることはない・・・その意見は正しい。ある大前提が崩れてなければ。
「出久。確かに俺はそう言ったが・・・それを俺が実行できると思うか?」
「それは・・・できるわけがない」
そう、縁を切る真似なんてできない。俺を心の底から愛してくれている人との繋がりを絶つことなどできるはずもない。
「俺の元に来た場合、なんだかんだ言って受け入れていただろう。根本的な問題を解決しなければ送り返しても同じことの繰り返しだ」
彼女たちの今後のことを考え拉致という形にはなってたと思う。それを世間が信用するかはだいぶ微妙ではあるが。
「そうだね。今回の件で私たちは信用を大幅に失った。それを取り戻すために・・・全力を尽くすことを約束するよ」
そのためには最低でも体育祭は無事に乗り越えて欲しいものだと俺は心底思った。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
第6章【雄英高校襲撃編】の投稿はep53で終了となります。次章の投稿までまた期間を設けるため、気長に待っていただけるとありがたいです。