「お前が見たのは(まぼろ)しなのだ」
 父はいつも私に云った。
 然し、私は視た。
 いつも冬になると、哀し気に吹雪の奥から揺らめくあの女の影が。

 武蔵の国に住むマタギの一家の長女、()ゆは、10人兄弟の長女として、日々を過ごす。
 かつて村一番の幸福な家庭と云われたこの家には、既に吹雪と共に母が消えた。

 男勝りとも劣らぬ、うまれついての怪力と、異様なまでの寒さへの順応力は、たしかに誰かの血なのだ。

 母が必ず冬になると、私に逢いに来る。実は、お雪は“雪女”だったのではないか。村人たちはそう噂をして、徐々に私達から離れて行く。

 なぜ?なぜ?母が去ったのか?なぜ?祖父を殺したのか?
 父が初めて“雪女‷にあったあの吹雪の夜。何をしたのか?

 私は、またきた冬の夜、母を見つけると、吹雪の山を登ろうと決めた。

 
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