軛を解き放て   作:クマぴょん

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小話が無いのは、フラグ回収に必要な情報が無いってことや。


【男は踊る】

 

 

ロシア・サハリン

元準内地・豊原(ユジノサハリンスク)郊外

地下のブリーフィング室にて。

 

 

「もう、フレディ!子供が泣きそうなのに、まだ続けるつもり?大丈夫?フキちゃん?」

「すまん、イーダ・・・」

 

ラバトに注意した女性の名はチェコ出身のイーダ。

彼女がフキを励ましたり、頭を撫でて慰めていた。

 

「ルークにも言われたのに、相も変わらず昔から頑固で冷酷非情なんだから。ねぇ?フキちゃん。」

 

フキは慣れない「ちゃん」付けと温かみのある手で撫でられて複雑な気持ちになった。

それに気付いたイーダはフキの顔を覗き込んで、聞いてくる。

 

「お節介だった?」

「め、滅相もありません!」

「そう?なんかあったらこの堅物に言いなさい。」

「はぁ・・・」

 

フレディに対して強く言葉を放つのは今日で2回目・・・

いや、モモが泣き出したのも含まれると3回か?

フレディは私たちを卑下(ひげ)に見ているのではなく、扱い方が理解できず、自らの手で片づけようとする節がある。

それは傭兵集団に居た時から変わらなかった。

全て自力で解決しようとして当時、傭兵の頭目だったフリッツや中枢部の永埜一稀(ナガノカズキ)ことリーですら止めていたぐらい、歯止めが効かないほどだ。

フキは色々と考えている最中、フレディが口を開く度にイーダに止められた。

なんとか考えがまとまった。

 

「ラバト氏の変わりは誰が穴埋めに?」

「己が率いる軽槍騎兵(アイアン)連隊と独立斥候(スカーミッシュ)連隊、現在潜伏中の猟兵4個小隊が敵の強襲艦を足止めする。その間にルークと赤ん坊の亡命を同時に行うため、フキとイーダが護送列車でコルサコフまで南下する。」

 

あれ?

1人欠けている・・・

フキがふと思った時、フレディが続けて言う。

 

「ピエールか?ピエールは連邦(ロシア)政府と既に交渉に入り、連邦(ロシア)軍から”テロリスト”を航空攻撃で艦隊を撃滅せんと手を打っている。」

「それじゃあ、独立戦争っていうのは?」

「終戦調停まで持って行っている。沿海州が失われる代わりに、連邦(ロシア)にはウラジオストクの軍港とガス資源の共有で手打ちにしている。何よりもテロリスト排除の大義名分を与えているから問題ない。」

 

眼帯の男、ピエールもかなりの猛者だ。

類まれなる手腕でフレディをかつての性格に元に戻したまである。

これらの作戦は同時に行われる。

そのために実行部隊が時間を稼ぎ、ルークやフキたちの護衛兵たちがコルサコフに到着し、そのままDAの保護下にある日本に入るという作戦。

これを同時に行うという高難易度の作戦だ。

フキを始めとするDAはともかく、目の前にいる彼や慰めてくれる女性に眼帯の男は最初の一打の手腕がDAと全く違う。

1つ1つ全てが決定打となりうる(いくさ)の天才だ。

あとは・・・

彼が何故、内地に踏み入れることを拒んでいるかを聞きたい。

フキは率直に質問した。

 

「フレディさん、質問いいですか?」

「なんだいお嬢?」

「日本に戻らない理由って何でしょうか?」

「・・・そうだな。カレフは下がって作戦に向かえ。」

「了解いたしました。お気を付けてー」

 

とカレフはフレディに敬礼して去っていた。

フレディは一度、顔を下げたままイーダに言う。

 

「イーダ、お前はここに残れ。」

「フキちゃんを撫でながらでいい?」

 

イーダはフキの頭を撫でながら答える。

フキの答えなしにフキの頭を撫でるイーダ。

フレディは頷きながら応える。

 

「なら、良いんだが・・・ピエールもいいな?」

(おお)せのままに。」

 

息を整えてフレディがとんでもないことを言いだした。

 

「かつての婚約者に子供を得て亡命なんてリーが望むと思うか?」

「へ?」

「リーの元婚約者に手を出し、妊娠・出産した挙句にリーが聴いて呆れるだろ・・・ん?」

 

フレディがフキを見ると、フキは瞼をパチクリしながら口を開いたままだった。

イーダが呆れてモノを言う。

 

「流石にフキちゃんみたいな子供には刺激が強すぎたわね。」

 

確かに。

弱冠(じゃっかん)18歳の子供にはまだ想像が無いし、耐えられないだろう。

頭を掻きながらフレディはイーダに言う。

 

「イーダ、フキお嬢を連れてルークの元に行ってくれ。」

「はいはい。人使いが荒いんだから・・・」

 

イーダはフキをお嬢さま抱っこでブリーフィング室から去った。

大きくため息を吐くフレディにピエールが質問する。

 

「この後はどうしますか?特に、”白色の(くさび)”がフリーな状態ですが。」

 

ポリポリと頭を再び掻きつつ答える。

 

「奴ら特殊部隊にはルークの護衛に当たらせる。イーダに指揮系統を割り与えた。ピエールはどうする?」

「私は引き続き連邦(ロシア)軍と独立(緑ウクライナ)軍の目を通しておきます。」

「分かった。後は頼んだ。」

 

ピエールは頷いてブリーフィング室から去る。

1人になった男は椅子を引っ張り出しては座る。

深くため息をついて。

 

「女の扱いは解らん・・・」

 

と葉巻を取り出して、葉巻に火を付けた。

作戦は順調なれど、人扱いが失敗すれば北アフリカ戦線の連合軍になり兼ねない。

部下の突き上げは慣れているが、異性が相手ではなかなか難しい。

同等の相手がルークぐらいしかいない。

いや、ルークも元と言えばリーの下で動いていた人間だ。

葉巻を吹かしながら、小言を言う。

 

「余計なことになっちまったなぁ・・・」

 

男は1人寂しくブリーフィング室で嘆いた。

 

 

次回⇒【男が描く世界に】




Q:連隊の元ネタは?
A:アメリカ北軍。
Q:スカーミッシュ?軽歩兵やマークスマンでいいんじゃないの?
A:かく乱攻撃を主体とした部隊だから合っている。マークスマンの元々の由来は帝政ロシアで小隊狙撃手に近い形として生まれたモノ。軽歩兵は猟兵が肩代わりしている。
Q:いつフレディはルークに手を出したの?
A:第二次イエローケーキ戦争( https://syosetu.org/novel/299601/3.html )直前に出会い、日本の依頼を受ける前にルークはフレディの子を授かった。
Q:人扱いが失敗した北アフリカ戦線ってなに?
A:戦力の逐次投入という愚策を犯した英陸軍。我先に戦功を稼ごうとした結果、掠奪者ロンメルと名将メッセに駆られる始末。
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