イナリの奇妙な冒険   作:狐っ娘の幽波紋使い

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イナリの奇妙な冒険! 完ッ!

 看守や囚人たちを一人残らず叩きのめした妾は、応急処置として死なないように波紋で治療を行っていた。

 他の仲間には骨を探してもらっていたが、ふと再起不能にした者たちの様子がおかしいことに気づく。

 

「これは植物か?」

 

 そういう幽波紋(スタンド)も居るだろうし、こういう時は焦ったら駄目だ。

 

 とにかく状況を良く観察し、太陽の光に当たらないようにする。

 風で素早く囚人たちを日陰に移動させていく。

 

 すると植物の成長が止まったので、どうやらこれが正解のようだ。

 

「日向には出るでないぞ! 肉体を植物に変化させる幽波紋(スタンド)能力じゃ!」

 

 妾は懲罰房内にいる徐倫たちにそう告げる。

 どうやら近くに居たようで、すぐに返事があった。

 

「わかってる! でも! 骨が!」

 

 声が聞こえた方向に顔を向けると、骨が日向に転がっていった。

 そして、そこからは動く気配ないようだ。

 

 とにかく、ホワイトスネイクに見つかる前に回収したい。

 妾はいつも通りに風を操り、こちらに転がして無造作にヒョイッと掴む。

 

「ほれ、徐倫。骨を回収し──」

 

 続けようとしたが、妾は続きを喋れなかった。

 何と骨が自分の口に突然飛び込んできて、あろうことか驚いて飲み込んでしまったのだ。

 

「イナリ!?」

「ちょっと! 大丈夫なの!?」

「うげえっ! 気持ち悪うっ!」

 

 とにかくさっさと吐き出そうとするが、骨はなかなか出てこない。

 しかもそれだけではなく、気のせいかお腹が段々と膨れてきている。

 

 何だか物凄く嫌な予感がしてきて、普段呑気をしている妾も流石に焦り始めてしまう。

 

「いっ、嫌じゃ! 骨の子など! 孕みとうない!」

「そりゃあ、嫌でしょうよ!

 でも、このままだと本気で不味いわよ!

 何とか取り出せないの!?」

 

 こんな状況なのにネタ台詞を口にした妾だが、内心はかなり焦っていた。

 

 徐倫たちも動揺しているようだ。

 このまま放置したら確実にヤバいことになるのでは、心配そうにしている。

 

 だが正直に言って、打つ手がない。

 まあこの体は頑丈なので、本気で抵抗すればエイリアンのように食い破っては来られないはずだ。

 

 だがそれはそれとして、こんな状況で出産なんてしたくない。

 

(いっそ、幽波紋(スタンド)を解除するか?)

 

 しかし、もし本体の子狐が飲み込んだことになっていたらと不安になる。

 お腹がぷっくりして、何処かの狸のように動けなくなるだろう。

 

 それでも張り裂けて死亡というイメージがまるで沸かない。

 歩行が困難になったら、転がって移動することになるのだろうか。

 

 せっかく後方師匠腕組みポジションを維持してるのに、ここに来て大きなイメージダウンは小っ恥ずかしいにも程がある。

 

 なので仕方なく、妾は波紋の呼吸を最大限維持しておく。

 そして右手に風の刃を形成し、自らの腹をかっさばいた。

 

「イナリ! 何を!?」

「ぐううっ! いいから! 黙って見ておれっ!」

 

 すぐに目的のモノを探し当てて、むんずと掴んで取り出した。

 それを雑に地面に投げ捨てる。

 

 狐っ娘は生命エネルギーの塊で、実体を形作っているだけだ。

 頑丈でも自分の攻撃なら傷つけられて少し痛いが、その気になれば瞬時に復元できる。

 

「ふう、……何とかなったか」

 

 すぐに腹に開いた傷は塞がって、それどころか破損した巫女服まで完全に新品に戻る。

 血の跡も何処にも残っていない。

 

 本当の体ではない幽波紋(スタンド)というのは、こういう時には便利である。

 ただ痛いのが好きというわけではないため、正直二度とやりたくはなかった。

 

「しかしこの骨。かなりの生命エネルギーを吸い取りおったな」

 

 だが海の水を、どれだけがぶ飲みしようと大した影響はない。

 いつもよりも疲れたぐらいで済み、すぐに回復する。

 

「へえ、赤ん坊の姿になってるのね」

「でもこの子。誰かに似てるような?」

 

 まさか自ら切開して、赤ん坊を取り出すとは思わなかった。

 まだ薄いが、桜色の狐耳と尻尾が生えている。

 

 囚人たちが植物に変わるのが止まったのは良いが、それとは別の嫌な汗が頬を流れ落ちてしまう。

 

「ねえ、イナリ。この赤ん坊って、もしかして──」

「いっ、嫌じゃ! 認知しとうない!」

 

 徐倫だけでなく皆がそう思っているのは、口に出さなくてもはっきりわかる。

 そして、マジでどうしてこうなったと、妾は思いっきり頭を抱えてしまう。

 

 おまけに赤ん坊にしてはやけに賢く、行動力に溢れているようだ。

 目が覚めたあとはハイハイして近寄ってきて、母親の体によじ登ろうとしてくる。

 

「ああもう! 世話が焼けるのう!」

「その割には慣れてるのね」

「子育て経験だけはあるからのう!」

 

 透明な赤ん坊だった静を育てた経験が、こんな形で生きるととは思わなかった。

 

 取りあえずもう一人の狐っ娘を抱っこして、よしよしとあやす。

 すると、外から大勢の人たちが近づいてくることに気づく。

 

「どうやら異常に気づいた看守たちが、近づいてきておるようじゃ。

 ん? ……いや、待て」

「どうかしたの?」

「それとは別に、こちらに向かって来ている者もおるな」

 

 看守は全員車に乗っているが、一人だけ徒歩のようだ。

 まだ距離が遠いので詳しくはわからないし、ただの偶然という線もある。

 

 しかし妾の直感では、新手の幽波紋(スタンド)使いである可能性が非常に高い。そのことを皆に告げる。

 

 とにかく赤ん坊を抱えたままでは戦い難いため、空を飛んで刑務所から脱出する。

 最寄りのスピードワゴン財団に、預かってもらうのだった。

 

 

 

 

 

 

 赤ん坊は妾が離れると大泣きするので、寝かしつけるのに苦労した。

 けれど刑務所に帰ってきたら全てが終わっており、全ての黒幕はエンリコ・プッチ神父だということが明らかになる。

 

 流石に数の暴力には勝てなかったようで、再起不能どころかやり過ぎて完全に死んでいた。

 

 ちなみにウェス・ブルーマリンは記憶が戻り、刑務所を出てプッチ神父の妹に会いに行った。

 どうやら二人が結ばれるのは不幸しか生まないと思い、妹に対して恋人は死んだと嘘をついたらしい。

 

 実際に妾が助けに入らなければ死んでいたため、完全に間違いというわけではなかった。

 

 あとは徐倫とエルメェス、エフエフとアナスイは、刑務所に未練はなくなる。

 スピードワゴン財団が手配して、晴れて外に出してもらう。

 当分は監視がつくが、幽波紋(スタンド)を悪用しなければ大丈夫だと思いたい。

 

 

 

 承太郎も復活したし、これで妾も日本に帰れる。

 ただし狐っ娘の赤ん坊が増えたので、マジでどうしてこうなっただ。

 

 普通の人間ではないのは明らかで、育て方を誤ると人類の敵ルートも十分にあり得る。

 ガチになったら自分以外には止められないだろうし、色んな意味で目を離せないのだった。




最後まで書ききったので一度に投稿し、以上で完結となります。

ホワイトスネイクもガチれば瞬殺できるので、申し訳ありませんがナレ死となりました。
能力自体は弱くはありませんが、強化しないと戦闘向きなスタンドではないので……。

お読みいただきありがとうございます。少しでも楽しんでいただければ幸いです。
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