春のバンドリ祭に参加させていただきました。
※注意!この話には以下の要素が含まれています。苦手な方はブラウザバック推奨。
・多少のキャラブレはご了承ください。
・ましろの過去が思いっきり捏造されてます。
・直接ではありませんがオリキャラが出てきます。
・オリキャラの性別等は敢えてぼかして書いています。男でも女でも好きな方で想像してお読みください。
今年の桜は開花が遅かったらしい。
去年は中学の卒業式の頃だったがだいぶお寝坊さんだったようで。
新入生からしたら運がよかったのかもしれないし、実際高鳴る胸に不安と期待を覗かせながら月ノ森の門をくぐる彼女達に舞い散る薄桃色の花弁はよく似合うと思う。
少なくとも去年の私と比べると比較するのすら烏滸がましいレベルだ、皆キラキラしている。
教室から見下ろすその情景は映画のワンシーンのようでとても絵になる。
けれどもそれと同時に妙に感傷的な気分にもなってしまう。
『この1年間で自分は前に進めたのだろうか?』
ふと頭にそんな疑問がよぎる。
学校こそ違えど去年の2年生——香澄さん達のようになれただろうか?
煌めく星の輝きを求めて伸ばしたこの手は少しでも星に近づけたのだろうか?
思えばこの1年間色々な事があった。
目を閉じればまるで昨日のように思い出せる。
バンドを始めたり黒歴史のノートを大勢の前で詠唱させられたり無実の罪をきせられたり変な無人駅に迷い込んだり。
……変な思い出ばかり思い浮かぶのはそれだけインパクトが強かったからだよね、きっとそう。
お花見だったりもしたしちゃんと楽しい思い出も覚えてる。
こうして振り返ってみると兎に角濃い1年だったなぁと。
「あっ、そうだ」
おもむろに机の横にかけてあった鞄を漁りだす。
教科書、授業用のノート、作詞用のノート……違う。
「うーん、絶対このかばんにあるハズなんだけどな」
鞄の中という大迷宮を手探りに探索して大体40秒、やっとお目当ての物が指先に触れる。
手先の感覚を頼りに端をつまむとぐちゃっといかないように慎重に取り出す。
「あったぁ……!」
取り出したのはA4サイズの学校用とは別の小さめのクリアファイル。
昔大事な友達からもらったそれは中に入ってるもので少し分厚くなっている。
その中身は水色の便箋で纏めて買ったからまだ最初と比べても半分くらい残っている。
1枚ファイルから取り出して机の上に広げる。
この便箋もクリアファイルと一緒にもらった私の宝物。
中学の卒業式、あの日に離ればなれになるからと受け取ったものだ。
別に連絡先を知らないわけじゃないし実際結構な頻度で今でも電話でお話するが当人曰く『形として渡しとくのに意味があるの!』ということらしい。
というわけで何か大事な事は度々これで送ったりもしている。
相手もこの文通と言っていいのか分からない行事を楽しんでいるようであちら側からも時々送られてくる。
実際こうして便箋という形でもらうのは普段のメッセージのやり取りとは違った良さがあると思う。
なんというか趣きがあるというか。
歌詞を考える時と同じでこうして実際に文章として書きだすことで気が付けるものもあるし。
それにこういった連絡の取り方は.その.明治時代あたりの恋人同士の蜜月のようで凄くロマンティックだと思う。
いや別にあの人のことが好きとかそういうわけじゃなくてってなんで私誰かと話してるわけでもないのに言い訳してるんだろ.
1人赤面し慌てていると周りから少し変な目で見られてしまった。
誤魔化すように深呼吸をして、シャーペンの芯を少し出して改めて便箋と向き合う。
あの人の笑顔を思い浮かべながら想いをペンに乗せるように——
『お元気でしょうか? 会いたいです』
……そうはならないでしょ。
心の中のつくしちゃんがツッコミをいれた声がした。
落ち着け、ちゃんと落ち着くんだ私。
春休みに帰省してきた時会っているではないか、こんなのそれこそ恋人同士の会話だ。
私とあの人はただの友達であって決してそんな感情はない、ないはずなのである。
ただ長期休暇の度にいつ帰ってくるか念入りに確認したりバンドの練習や皆と遊ぶ予定と擦り合わせたりしているのも単に昔からの友達と長く過ごしたいだけでやましい気持ちとかは一切ない、ないったらない。
「なにやってるんだろ私……いつも通り書けばいいだけなのに」
消しゴムで丁寧に消した後気を取り直してもう一回。
今度は少し書き方を変えてみよう。
『何度も書いてるし知ってると思うけど、月ノ森に入学してからお友達が沢山できました。後輩もできて毎日忙しいけど楽しく過ごしてます』
そういえば普段の通話とかでもあちらで出来た友達のことを聞くことが日に日に増えてきた気がする。
最近なんてバレンタインにチョコ貰ったとかなんとか。
あの時は私もライブの時に来てくれた子に貰ったりしたしと張り合っていたのを覚えている。
るいさんとか学校でもとんでもない量が積まれてたっけ。
頂いたチョコはどれもとっても甘くて美味しかったけれどこの記憶は何故か胸がちくりと痛む。
実際あなたはモテると思う。
この1年でとんでもないべっぴんな人たちとお近づきになった今ですら整っていると思える容姿、そして一時期虐められていた私にすら手を差し伸べ当たり前のように一緒にいてくれたその内面。
当時は私と2人でいることが多かったしあまり他の子との関わりはなかったように思う。
だが今はいわゆるフリー状態、持ち前のその人の好さで数多の男女を誑し込んでいるに違いない。
というか実際そんな感じの写真だったりが何度か送られてきてるし。
もしかしたら恋人なんかもあっちで出来てこっちに帰省するようなことも段々と減っていくかもしれない。
そして大人になって届く知らない相手との結婚式の招待状、家に帰って1人で食べるバウムクーヘン.
ダメだなんかちょっと涙出てきた。
赤の他人に盗られるのはなんかすっごくイヤだ。
ずっと目を背けてきた気持ちがこんにちはして私の本心とご対面。
「これが、恋?」
無意識のうちに口からこぼれた言葉が耳に届くとスッと胸の奥に伝わってじんわりしみわたる。
恋、恋かぁ。
一度自覚してしまった想いはゴムボールみたいに心の中で暴れだして止まらない。
今までの思い出全部が前より何倍も煌めきだして脳裏を超特急で駆け回る。
どうしよう、私思ってたより何倍もあなたの事が好きでたまらないみたいです。
普段ならここで私なんかがってなるかもしれないけれど今日はいつもと違った。
少しでも星に近づくため、そしてその輝きに相応しい私になるために一歩でも前へ。
それに、この今にも爆発しそうな気持ちを早く伝えたくてたまらない。
便箋や電話、ましてやメールなんかじゃなく直に面と向かって私自身の言葉で。
けれども今日は月曜日で、朝のHRすらまだ始まっていない。
少ないお小遣いで電車だったりを使って行ったとしても片道数時間かかるのだからMorfonicaの練習がお休みの日を狙っても学校が終わってからじゃ到底時間が足りない。
つまりどれだけ私が急いでも今週末、数日間はこの荒れ狂う気持ちを吐き出せないで過ごす事になってしまう。
それに今のこのテンションが落ち着いてしまったら恥ずかしくてずるずると後に引きのばしてしまいそうだし。
「……よし!」
そうだ、今から学校抜けだせばいいんだ!
そうと決まれば早速——
「いや、そうはならないでしょ」
またつくしちゃんの幻聴が聴こえる。
けれどごめんねつくしちゃん、心が命じた以上今の私を止めることなんて.!
「幻聴じゃなくて現実だから」
「お願いつくしちゃん! 今日だけだから見逃して!」
いつの間にか目の前にいた彼女は少し悩んだ後こちらを見て相変わらずの眩しい笑顔で言う。
「だーめ」
「うぅ……」
やっぱりだめでした。
「ましろちゃん、週末に行こ? 今週の土曜ならバイトも練習も無いし」
「うん……えっ? もしかしてだけどつくしちゃんも一緒に来るつもりなの!?」
いやまぁ確かに一緒に来てくれたら心強いけれども。
「よくましろちゃんが話してる人でしょ? 前々から会ってみたかったんだよね。それにさ」
それに?
「1人だとましろちゃん告白しないでそのまま戻ってきちゃいそうだし」
「返す言葉もないよ……」
つくしちゃんは私のことをだいぶ理解しているらしい。
嬉しい反面少し複雑だ。
「そうと決まれば放課後、皆も集めて作戦会議しよ!」
「えっ!?」
とんとん拍子で話が進んでゆく。
こうなったら行けるところまで行くしかないのはこの1年の経験が物語っている。
ふと窓の外を見ると風に吹かれた桜が綺麗な舞いを見せてくれた。
もし告白が上手くいったらそのままお花見にでも誘ってみようかな。
何も知らない想い人にごめんね、と心の中で謝って私は机に置かれっぱなしだった白紙の便箋を鞄の中に優しくしまう。
あなたを次使う時は友人としてじゃなく、恋人同士のやり取りに使えるように。
消しゴムで消した跡が頑張れって背中を押してくれているように感じた。
大事な事はちゃんと顔を合わせて自分の言葉で伝えるってのは最近自分が感じたことなんですけどやっぱ大切だと思うんです。この後ましろは無事想いを伝えることが出来たのかはここまで読んでくれた皆様のご想像に委ねます。
ここからは自分語りのコーナーになるんですが、今回のお話は最近DLCが発表されたペルソナ3リロードをやってたら思いついたやつです。
昔P3Pは借りてやった事あったんですけど当時は小学生だったのもあって今やると味わい深いなと。でもやっぱ最後のシーンは泣いちゃいました。
4,5と比べて全体的に暗めのゲームですが個人的には一番好きです。
書いてる時は君の記憶ずっと流しながら書いてました。
今回は春のバンドリ祭ということで他の参加者様のお話も是非ご覧になってください。
最後に、ここまで読んでくださった皆様に最大級の感謝を。