【注意】
※善逸が女の子たちにめっちゃ暴力してます、多分…エグいと思う!w
※簡単に言えば原作の善逸というより…無意識領域の善逸寄り!
※がっつりじゃなくて、事後のほんのりと匂わせあり
※凛音の妹出てくるけど、少し性格悪くしてます!wそれ以外はキャラ崩壊だったらごめん!

──

この話、主の性癖が多少詰め込んでます!
♡軟禁
♡ストーカー
♡暴力&虐待
♡メンヘラ
♡ヤンデレ
♡肢体切断
♡恋人奪い
♡浮気

そのくらいだっけ…(°▽°)マァイイヤ


ではでは、お楽しみくださいませ〜!!

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鬼の子の俺と鬼の僕

「……ちゃん…りんねちゃん……凛音ちゃぁん」

 

 誰かに呼ばれて目を覚ませば、目の前に金髪の男性が満面の笑みで自分を見ていた。

 その男性はどこかで見たことあるのか、思い出せそうで思い出せない凛音。

 

「えっと…」

「覚えてない?ほら、スタァバで働いている我妻だよぉ」

 

 凛音は男性の言葉によって思い出せば口を「あ」の形にした。

 

 

 いつも成績が悪い凛音は莉々愛と星羅に勉強を見てもらうために週に1回、スタァバで通っていた。この男性は確かにスタァバで働いていた。

 

 

「思い出してくれた?俺の事を覚えてくれたの嬉しいなぁ、これってさ、もう結婚に近いんじゃない?あ、もう結婚してるんだったぁ」

「は?結婚?何言って…」

「俺たち結婚してるよねぇ?」

「……っ」

 

 ずいっと凛音の顔に近付けた男性の目には光が無く、闇に染まっていた。そんな男性の目に恐怖を抱いた凛音は安全のために肯定するように頷いた。

「だよねぇ、じゃあさ…俺にキスしてよ」

「きっ、キス?」

「そう、凛音ちゃんの可愛らしい唇と俺の唇を合わせるんだよぉ」

 だから…ね?と名を知らずに少しだけしか喋ったことがない男性が口を軽くずぼめて、顔を近づけようとする。その近付いてくる男性に拒否反応を起こした凛音は小さな悲鳴を上げながら男性の胸を抑えた。

 だが、それが痛い目に遭うことを凛音は知らなかった。

 

「…は?俺のこと好きじゃないの?」

「そっ、そうだよ!吐き気がするほどキモイよ…僕から離れてくれない?」

「そっかぁ…俺の事好きじゃなかったんだぁ…じゃあさ…」

 

 すると、凛音の背中に柔らかい衝撃と息苦しさが襲ってきた。男性が凛音を押し倒し、首を絞めているのだ。

 

「俺の事好きになってよ?愛してよ?凛音ちゃんは俺のモノなんだからずっと、ずぅっと俺だけ見て?ねぇ?凛音ちゃァん?」

 

 息が出来ずに目から涙が溢れてくる。このまま死んでしまうという危機感を覚えた途端、横から衝撃に襲われた。

 その衝撃に理解出来ないまま、男性を見た。そこには、男性は不気味な笑みを浮かべながら手を上げる姿があった──。

 

 

⫘⋈*。゚⫘*.+゚⫘⋈*。゚⫘*.+゚

 

 

 捨てたはずの…忘れたはずの記憶が夢として現れる。

 

 妹の瑠奈が自分の彼氏に奪われたことを…。

 

『彼氏さんが可哀想だよ?だから代わりに私が愛してあげるから安心してね』

 

 そう言った瑠奈は妖しそうな笑みを浮かべ、彼氏だった彼に抱き着いた。

 

 

「やめてっ!!」

 

 がばっと起き上がった凛音。息遣いが荒く、心臓が体中に響くほど打っている。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 夢の内容を整理していけば、「何で今更…」と呟いた。そして、ふと気付く。

 下半身が露出しており、パンツのみになっている。しかも、いつの間にか着替えられていたのか、少し大きめのワイシャツを着ていた。

「何これ…」

 取り敢えずここから逃げなきゃと周りを見渡す。先程の男性の姿も気配もない。何処かへ行ったのだろうか。今はいないことをいいことに、部屋を出た。

 ここは2階になっているらしく、階段があった。その階段を恐る恐ると降りれば、やはり誰もいない。

「よし…」

 玄関の方を出ようとした時、後ろから男性の声がした。

 

「あれ〜?何処か出掛けるのかなぁ?」

 

 ヒッと悲鳴をあげた凛音。ギギギ…と壊れたロボットのような音が出るほど振り向けば、そこには満面の笑みで突っ立っている男性がいた。

「あっ、え、えっとね〜…」

 言い訳を探そうと思い巡らせている所、男性が凛音に近付いたら、凛音の縛っている片方の髪を掴み、何処かへ連れていこうとする。

「いっ!痛い痛い!!何するの!?離して!!」

「ねぇ凛音ちゃん、ご飯出来たから一緒に食べようねぇ」

 居間らしきの部屋に強制的に投げるように入れられた凛音。卓の上にはきちんとしたご飯があった。

「今日は鍋だよぉ、今年も冷えるよねぇ、ちゃんとあったかくしないとねぇ」

 ピシャリと襖を閉めた男性はまた凛音の髪を掴み、引きずるように卓の所へ近付いた。そして、凛音の後頭部を掴み、凛音の顔を鍋の中にぶち込んだ。凛音は痛々しく悲鳴を上げながらもがいているのに、男性は愛おしそうに微笑んでいる。

「こ〜ら、あんまり暴れると汁が無くなるよぉ?やっぱり仕上げは凛音ちゃんという出汁を出さないとねぇ、凛音ちゃんの出汁は美味しいだろうなぁ」

 

 少ししてから地獄のような熱さから解放された凛音の顔は酷く赤くなっていた。

「ちゃぁんとあったまったし、出汁を出せたみたいだねぇ、ウィッヒヒヒッ、可愛いなぁ凛音ちゃんは」

 ほら美味しくしてくれたご褒美だよと男性は教育されていない箸の掴み方で鍋からじゃがいも刺して取れば、冷まさずに凛音の口に突っ込んだ。

「んぐっ!」

 

 

 男性が食事をしている隣で、凛音はぐったりと寝転がっている。

 

 何でこんな目に…

 

 凛音は普通に暮らしていただけだった。それなのに何でこんな目に遭わさなければならないだろうか。

 チラリと男性の方を見やる。

 男性は美味しそうに頬張っている。男性が言っていた出汁、自分の出汁で味わっていると思えば、悪寒が走る。

 またアレをやらされる可能性があるため、やられる前に早くここから出なきゃと凛音は思った。

 

「ねぇ君」

「うん、なぁに?」

「下の名前はなんて言うの?」

「あ〜言ってなかったねぇ、善逸だよぉ」

「いい名前だね〜」

「そぉ?凛音ちゃんの方がいい名前だよぉ」

「何で僕のことを好きになってくれたの〜?」

 善逸と名乗った男性に媚びるように抱き着くようにもたれかかった。

「俺のことを笑いかけてくれたからだよぉ、だからもっと、凛音ちゃんの可愛い可愛い笑顔を俺だけに見せてねぇ?」

「う、うん!」

 顔を引きつる様に笑みを浮かべた凛音。そして、するりと善逸の手が凛音の腰に置き、抱き寄せた。

「ねぇ凛音ちゃん、急に聞いてきてどうしたのぉ?もしかして俺に興味持ったとか?」

「う、うん!そうだよ〜」

「えぇ〜嬉しいんだけどぉ」

「ねぇ、僕のスマホ知らない?一緒に写真撮りたいんだ〜」

 連絡を取るためにスマホの在り処を聞き出そうとする。しかし、善逸の言葉によって凛音を絶望の海に叩き落とした。

「あ〜悪いけど凛音ちゃんのスマホ、壊しちゃったんだよねぇ」

「え…っ」

 凛音にとって、そのスマホは大好きな友達との思い出が詰まっているのだ。それなのに、壊されてしまったのだ。

「でもさ、俺のスマホがあるんだしそれでいっぱい撮ろうねぇ」

 そんな時、凛音がグーパンで善逸の頬に殴った。

「酷い!何で壊したの!?スマホには宝物のような思い出が詰まっているんだよ!それなのに壊した…こんなのって酷すぎるよ!この馬鹿逸!!」

 善逸は殴られたにも関わらず、溶けるような笑みを浮かべた。

「でもさぁ、これからは俺との思い出を作っていけばいいじゃないか、だって凛音ちゃんには俺しかないんだからさ」

「うるさいうるさい!!僕には友達しかないんだ!その友達は…っ!僕にとって唯一の…大事な……親友たち、なんだもん…」

 弱々しく泣き崩れるように膝を着いた凛音。鼻をすする音をさせながら小刻みに肩を震わせた。

 

 

 そう、唯一の大事な親友なんだ、とっても、とってもとっても……

 

 

⫘⋈*。゚⫘*.+゚⫘⋈*。゚⫘*.+゚

 

 

 僕は鬼として生まれた。

 

 両親とも鬼の血が入っておらず、僕だけが何故か突然変異したんだ。

 だから、両親と妹に白い目で見られ、僕に暴言を吐く日々だった。

 

「こんなのが私たちの子だなんて気持ち悪い」

 

「何で生まれたんだ」

 

「いい加減に死んでよ!」

 

 家族だけじゃない。近所の人にも学校にも僕の居場所なんかなかった。

 

 それでも、僕を守ってくれたのが兄の瑠都と、その兄の親友の雫だった。

 

「凛音」

 

 人間とは変わらない優しい笑顔で接してくれたお兄ちゃんと雫。

 

 この2人だけが僕の居場所だった。

 

 でも、ある日突然、鬼となった父によってお兄ちゃんと母に喰われ、殺されていた。生き残ったのが瑠奈だけだった。

 

「アンタだけが死ねば良かったのに!!」

 

 でも、瑠奈を1人にさせる訳にはいかなく、2人暮らしすることになった。

 それでも瑠奈は僕に対する虐めが日々エスカレートしていった。

 暴言だけではなく、ノートや教科書を破いたり落書きしたり、僕の服を破いたり、僕の食事をひっくり返したり、学校で悪い噂を流したり…

 

「凛音がそんなヤツとは思わなかった、やっぱり瑠奈のほうがいい、だから別れよう」

 

 自分の彼氏までも奪われたり……

 

 

「凛音、大丈夫……じゃねぇよな…」

 

 雫だけが僕の味方でいてくれた。

 

 でも、高校卒業すると雫は別の進路へ進んでしまい、会えることが出来なくなってしまった。

 将来、独りぼっちで生きていくと思っていた。だから、鬼だと悟られないように普通の人間として振舞っていた。

 そして、大学で僕の事を受け入れてくれる人が現れた。

 

 それは莉々愛と星羅だった。

 

 自分が鬼だと知ったその人たちは嫌な顔をせずに、人間と同じように優しく接してくれた。

 それが嬉しかった。お兄ちゃんと雫と同じように受け入れてくれる人がいるってことを…。

 

 そんな…人たちが……大好きなの…っ。

 

 

 

 

 

 ふと、目を覚ませば、もう嫌ほど見慣れた天井。

 

「…………」

 

 あの男性に軟禁されてから何日経ったのだろうか。カレンダーも無く、数えるのを忘れるほどカーテンの向こうに感じる、明るくなったり暗くなったりと繰り返している。自分が居なくなって、警察に捜索願が出ているだろう。

 その間に凛音はあの男性に暴言吐かれ、暴力振るわれ、性的暴力され、生理が来ても虐待され、逆らえれば虫やゴミ入りのドッグフードを食わされ、逃げようとすれば首絞められたりなど殺されかけ、色々と虐待されている。

 

 もう嫌だって思うほど何度も心の中で悲鳴を上げてきた。

 

「はぁ〜…会いたいよ…助けて…莉々愛…星羅…雫……お兄ちゃん…」

 

 そんな時、下から何か割れた音と倒れた音が聞こえ、驚くように起き上がった。

「……っ!?」

 下で何か起こったのだろうか。息を潜めるように部屋を出て、階段を下りて行く。そして、階段を下りて、玄関に繋がる廊下の先を見れば、誰かの人影が倒れている様子があった。その人影は誰なのか、目を凝らそうとしながら近づいて行く。次第に暗闇に慣れてくると見えてきた。

 そこには、善逸が肩の方から酷く血を流しながら倒れていた。

 

「え…っ?」

 

 先程の割れた音は花瓶が割れる音だった。それなのに、何で善逸が倒れているのだろうか。

 でも状況は好機だ。

 やっと善逸から逃げられる。逃げて、警察に行って、善逸のことを話せば解放される。

 そう思った凛音は玄関のドアノブに手かけた。

 しかし、開けなかった。

 

「…………」

 

 このまま放置して逃げているうちに、この人は死んでしまうかもしれない。

 

 そんな思いが頭によぎった。

「…………しょうがないな〜…」

 善逸を引きずりながら居間まで運んでいく。

 居間に入れば善逸を寝かせ、救急箱やタオルがありそうな場所を探していく。

「えっと〜あ、タオルあったあった!……ん〜…救急箱は〜何処だろ〜…?……ってめっちゃ血流してるから血を止めなきゃ!!」

 見つけたタオルを持って、善逸の元へ駆け寄る。そして、患部を見えやすいようにするために、ジャンパーを脱がした。その時に気付いた。善逸の腰に剣が差してあった。凛音は何であるんだろうと疑問に思いながらVニットも脱がし、ワイシャツも脱がそうとボタンを外していく。

 すると、善逸に凛音の手首を掴んだ。

「ヒッ!?」

 すかさず、善逸が凛音を押し倒す形となった。しかも、いつの間にか抜いたのか、刃先が凛音の首にあてがっていた。

 命の危機に感じた凛音は冷や汗をかき、心臓も酷く打っている。

 凛音の目に映る善逸の表情は息をするのも忘れるほど怖かった。

「俺に何しようとしていたの?」

「ぼ、僕はただ…っ」

「口答えしないで!アンタの声なんか聞きたくない!」

「…っ」

 思い出す。瑠奈に言われたことを思い出す。

 そして、瑠奈の言葉と善逸の言葉が重なった。

 

「『アンタなんか死ねば良かったのにっ!』」

 

「…………」

「はぁはぁはぁ…」

 大声で叫んでいた善逸は肩を大きく上下しながら呼吸を整えようとしている。そして、肩から出ている血が凛音の頬に落ちれば、凛音は我に返った。

「ぜっ、善逸!手当てしないと!僕が手当てしてあげるから!」

 凛音の意思を汲んだのか、凛音の首にあてがっていた刃先が力が緩むように離れた。自分の言うことを聞いてくれた凛音は内心安堵しすれば、手当てするために善逸の胸板にそっと押し返し、ワイシャツを脱がした。

「…!?」

 凛音は驚いた。

 善逸の身体中に古傷だらけだった。鬼でもやられたのかいくつか爪痕があり、所々に煙草を付けた痕や刃物で切られた痕があった。しかも両腕にリスカした痕もあったのだ。

「引いた?」

 善逸は自分のことを軽蔑するような笑みを浮かべた。

「引くよねぇ、こんな傷だらけでさ…関わりたくないって思っちゃうよねぇ」

 

「引かないよ!!」

 

 凛音は汚れもないタオルで患部をおさえた。そして、真剣な瞳で善逸を見つめた。

 

「僕、鬼なんだ…どんなに怪我してもたちまち治ってしまう…そんな僕に気味悪がれてばかりだった…でも傷跡が残っている方が人間らしいと思う!人間は鬼でも化け物でもない…人間だから!そんな人間が……羨ましいんだ」

 

 思い出す。すぐに怪我を治してしまう自分のことを化け物のように見る人たち。自分と比べて、すぐには治らない血を流しながら泣いている人間の女の子。

 そんな違いさが何度も、数え切れないほど傷ついてきた。

 

「凛音ちゃん…」

 

 凛音が見た今までの善逸とは違った善逸が凛音を壊れ物を扱うかのように優しく抱き締めた。

 

 

 

 

 

⫘⋈*。゚⫘*.+゚⫘⋈*。゚⫘*.+゚

 

 

「うわ、鬼の子だ!」

 

「アイツに近付くなよ〜」

 

「近寄んな!!」

 

 

 小さい頃から"鬼の子"と勝手に呼ばれていた。

 

 母親が鬼だったから。

 

 いや、父親の再婚相手が鬼だったんだ。

 

 日光に当たらずに、暗闇の中でしか生きられない、血の繋がりもない母親だった。

 

「お母さんは何処にいるの?」

 

 そう泣きながら問いかけたことがある。

 継母は実母に嫉妬するように怒りながら俺に当たり、実父も実母のことを忘れろと言われたんだ。

 それだけでは済まなかった。

 父親が継母を捨て、他の女性と一緒になったことが分かった継母は更に怒りが狂い、毎日のように俺を暴言を吐き、暴力を振るっていた。

 そして、10歳の時が初めてだった、継母に性行為されたのが。

 

「アンタ、お父さんにそっくりねぇ」

 

 そこには愛なんてなかった。俺を通して、父親のことを見るように毎日、嫌という程毎日犯されていた。

 逆らえれば暴力される、暴言吐かれる。

 その恐怖から逃げるように、継母の言うことをただただ従うしか無かった。

 

 高校の時、俺に機会が訪れた。

 

「善逸くん!一緒にやろうよ!!剣道部やっているんだよね?私1人じゃ入隊するのなんか恥ずかしくて〜」

 唯一俺のことを話しかけてくれていた甘露寺蜜璃という先輩が誘ってくれた。それは……

 

  【鬼殺隊】

 

 鬼を滅する非公式の組織だった。

 鬼殺隊になれば、継母に復讐することが出来る。

 

 だから血反吐が出るほど鍛錬した。努力するのも地道にコツコツとやるのも苦手な俺が。

 

 だが、その鬼殺隊になるために鍛錬した後、継母にバレた。

 

「アンタ…私を殺すつもりなんでしょ」

 

 俺の部屋から持ってきたのか、竹刀を持った継母が俺を睨んでいた。

 まだ日輪刀を持たない身だった俺は久しぶりに反抗した。

 

「そうだよ」

 

 その鬼殺隊に恨みがあったようで、怒りに達した継母は俺を喰うために襲った。俺は必死に抵抗した。日輪刀がないからだ。

 一晩中、その継母に抵抗しているうちに、継母は太陽に焼かれ、塵となって消えた。

 

 その時の俺は、嬉しさでも解放感でもなかった。むしろ、自分の手で殺せなかったことの悔しさと怒りがあったのだ…。

 

 

 

 

 

「……だから凛音ちゃんを拐って、自分が苦しんだ分をその継母の代わりに与えて、殺そうとしたんだ……怖くなったよねぇ…?逃げたいよねぇ…?いいよ、逃げても…」

「逃げない」

「…………えっ?」

 凛音は話した。自分が辛かった過去のことを全て打ち明けた。家族や妹のことを…。

 

 鬼として生まれたことを後ろ指に指されていた凛音。

 

 陰口で鬼の子として呼ばれ、虐待されていた善逸。

 

 お互い持っている心の傷を共有し合う──。

 

 

 

⫘⋈*。゚⫘*.+゚⫘⋈*。゚⫘*.+゚

 

 

「凛音ちゃ〜ん、はい、凛音ちゃんの好きな草餅だよぉ、あと期間限定のスノーフラペチーノ」

 バイトから帰ってきた善逸は凛音が欲しいものを差し出した。

「えっ、僕の好きな食べ物じゃん!というか期間限定!?いいの!?」

「うん、食べたかったし飲んでみたかったでしょ?」

「うんうん!……ってか何で僕の好きな食べ物も知ってるの〜?」

「愛しの凛音ちゃんのことなら何でも知ってるよぉ、凛音ちゃんの誕生日とか、生理の周期とか、あとはぁ〜…」

「あっ、これ以上言わなくてもいいんで、キモいから」

 

 草餅を一口食べれば、おいひぃ〜♪と美味しそうな表情を浮かべる凛音。そんな凛音を見た善逸は愛おしそうに微笑んでいた。

 

「そういえば、善逸って好きな食べ物は〜?」

「甘い物が好きだよぉ、あと鰻重も」

「そっかぁ〜、誕生日は〜?」

「9月3日だよぉ」

「まだまだ先だね〜」

「…祝ってくれるの?」

「うん!だって友達だから!」

「……俺に酷いことされたのに?」

「あ…っ、……でもそんなことしたのはそのお母さんの影響なんだよね?善逸は悪くないよ!あと、僕の好きな物買ってくれたのもいい人だってことが分かるよ!」

「……ふひっ、ひひっ、いっひっひっひっ」

「なっ、なんだよ〜!?」

「ううん…凛音ちゃんらしいなぁってね」

「そう〜?」

「そんな凛音ちゃんも好きだよ」

 

 体育座りでコテンと首を傾げるように膝の上に頭を置いた善逸。引力によって流れるようにぶら下げた金糸の間からチラホラと見える琥珀の瞳が凛音に愛おしそうに見つめた。

 そんな善逸の仕草と声によってドキン…とときめかせた凛音。

 

「ぜん…」

「草餅もう食べないなら俺全部食べるよぉ?」

「えぇっ!?食べる食べる!!草餅は僕のだもん!!」

 

 

⫘⋈*。゚⫘*.+゚⫘⋈*。゚⫘*.+゚

 

 

「ん…凛音ちゃんはあったかいねぇ」

 

 布団で凛音の後ろから抱き締めた善逸。しかも、布団からお互い裸でいるのが見える。

「善逸もあったかいよ〜…ねぇ、善逸の顔が見たい」

「いいよぉ」

 凛音は善逸と向き合うように寝返った。そうすると、凛音は気付く。初めて出会った時は貧相そうな身体の印象を持っていたが、よく見れば鍛え抜かれた逞しい身体だった。この間聞いた、鬼殺隊という組織やっているから当然、鍛えられているのだろう。

「なぁに、ジロジロ見ちゃって〜凛音ちゃんの変態〜」

「へっ、変態じゃないもん!!」

「うひひぃ〜」

「…肩大丈夫〜?」

「少し痛むけど大丈夫だよ、しかも大好きな凛音ちゃんに手当てしてもらえて光栄だよぉ」

「そっかぁ〜」

 

 そんな時、善逸の逞しい腕が凛音の肩から背中にかけて包むようにし、抱き寄せた。そして、甘えた声で彼女の名を呼んだ。

「…っ」

 凛音は嫌がることも抵抗することも無く、善逸の腕の中でいることを何故か安心していた。そして見上げれば、善逸の顔がすぐそこにあり、目が合った。よく見れば、甘い蜂蜜のような色をした瞳があった。何でこんな人が虐められなきゃいけないだろうと不思議に思う程だった。

 凛音のか弱そうな腕が善逸の鍛え抜かれた背中に回し、抱き締め返した。そして、善逸の胸板に凛音の頭をそっと置けば、凛音はゆっくりと目を閉じた。

「善逸」

「うん〜?」

 

「大好き」

 

 凛音が甘えるように身を委ねている中、善逸は何故か申し訳なさそうな表情を浮かべていたことを凛音は知らない。

 

 

⫘⋈*。゚⫘*.+゚⫘⋈*。゚⫘*.+゚

 

 

「我妻くんお疲れさん」

「ありがとねぇ、村田先輩もお疲れ様」

 

 バイト帰りで歩いている中、善逸は浮かない顔をしていた。

 そんな時、何処からか善逸に話しかける声が聞こえた。

 

《そろそろいいんじゃないかなぁ》

 

「…………」

 

《あの子、"俺たち"に惚れ込んでるしさ》

 

「…………」

 

《ねぇ、何か言ってよぉ》

 

「…………うるさい…」

 

《……何であの子だけ"出てきた"のさ?》

 

「…………」

 

 

 

 

 

「アンタがいなけりゃ!幸せになれたのに!」

 

「アンタに生きる価値なんてない!!」

 

「アンタなんか死ね!!」

 

「アンタはアンタじゃない、アイツの代わりであり玩具であるんだからね」

 

 

 毎日、毎日毎日毎日…虐待の雨を浴びてきた。

 

 その雨に耐えきれず、俺は一旦……

 

  "死んだ"

 

 

《もう聞かなくてもいい…もう見なくてもいい…もうあんな思いはさせないよ…お前が嫌なこと…全部 "オレ" に任せて》

 

 

 同時に生み出したのが、もう1人の俺だった。

 

 

 アイツの嫌なことを全部してやった。

 継母に喜ばせるように何でもしてやった。

 でもソイツが勝手に死んだ。

 

 その時のオレは悔しかった。自分の手で殺したかった。

 

 だから、人間界に馴染んでのうのうと暮らしている女の子の鬼に手を出した。継母の復讐を果たすように。

 

「来ないで!きゃぁああっ!!」

 1人目は女子高生の鬼。

 

「なっ、何するの…!?」

 2人目は令嬢の鬼。

 

「いやぁああっ!!父さん母さんっ!兄さんっ!姉さんっ!累…っ!助け…っ!!」

 3人目は家族想いな鬼。

 

「何でこんなことするじゃ…っ!?」

 4人目は鞠で使う鬼。

 

「何でもしますから、何でも…っ!!」

 5人目は従順な鬼。

 

「アタシに触らないでよ!この不細工っ!!」

 6人目は兄想いな鬼。

 

「善逸さんやめて!!」

 7人目はパン屋で働く鬼。

 

 8人目は今の鬼だ。

 

『僕、鬼なんだ…どんなに怪我してもたちまち治ってしまう…そんな僕に気味悪がれてばかりだった…でも傷跡が残っている方が人間らしいと思う!人間は鬼でも化け物でもない…人間だから!そんな人間が……羨ましいんだ』

 

 鬼なんか傷付けても、傷付けられる気持ちなんて分からないと思っていた。でも違った。その間違いを教えてくれたのが凛音ちゃんだった。

 

 傷付かない鬼がいれば、傷付く鬼がいるってことを…。

 

 

《でもさぁ…騙されてるかもよ?》

 

 違う、凛音ちゃんは違うんだ

 

《絶対騙されてるって》

 

 違う…違うっ!

 

《アンタさぁ…何度も期待してたよね?数え切れないほど期待しててさ…この先どうなったのさ?結局裏切られてたよねぇ》

 

 凛音ちゃんは裏切らない!!

 

《もう大丈夫だよ、オレが殺してあげるよ》

 

 やめろ…やめろ!!

 

《凛音ちゃんはやめてくれ──!!》

 

 

⫘⋈*。゚⫘*.+゚⫘⋈*。゚⫘*.+゚

 

 

「〜〜♪〜〜〜〜〜♪〜♪」

 

 鼻歌で歌いながら料理している凛音。

 凛音は今、幸せの絶頂にいた。

 鬼である自分を受け入れてくれる善逸が愛してくれるのが何よりも幸せだった。

 ずっとこんな幸せが続ければいいと思っていたのだ。

 

「あ、そうそう花も飾らなきゃね〜」

 

 この間、善逸がくれたオキナグサ。その花が入った花瓶を卓の上に置いた。その花瓶の周りには凛音が作ったオムライスと野菜があった。

 

「早く帰ってこないかな〜?」

 

 善逸が帰ってきて、「おかえり」「ただいま」と言い合って、一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒に寝て、「おやすみ」と言って、一緒に起きて、「おはよう」と言って、一緒に何処かへ出掛けて、そんな幸せな家庭になりたい…と昔の凛音には出来なかったことを色々とやりたい、幸せになりたいと凛音は夢を抱くように思っていた。

 

 

 ──ガチャッ

 

 

 善逸が帰ってきた。

 

「善逸おかえり〜!!」

 

 そうすれば、「ただいま」と善逸は笑顔で帰ってくるのだ。

 

 でも、今日は違った。

 

 ヒヤリと冷たいものが凛音の首に当たる。

 

「ぜん、いつ…?」

 

 善逸が剣を凛音の首にあてがっていた。

 

 善逸の様子がおかしい。

 

 ──ガチャンッ

 

「善逸?どっ、どうしたの〜?」

 

「……凛音ちゃんの首を斬ったらさ…」

 

 そんな時、凛音に悪寒が走った。凛音の前にいる善逸は不気味な笑みを浮かべた。

 

「どんな可愛い鳴き声がするかなぁ?聞きたいなぁ」

 

「あ、ははは…冗談だよね?」

 

 善逸が土足で一歩、玄関に上がれば、凛音は思わず一歩後退りした。

 

「えぇ〜逃げないでよぉ、凛音ちゃぁん?」

「ま、まず、その剣をしまってくれないかな〜?」

「怖いんだぁ?鬼のくせに?」

「こっ、怖いものは怖いんだよ〜!?」

「可愛いなぁ凛音ちゃんは」

「善逸……、っ」

 

 凛音は走り出し、部屋の中に入った。

「何処にも逃げ場はないよぉ?」

 背中を壁に付け、距離を取る凛音。すると、善逸が突然凛音に近付き、剣を振り下ろそうとする。やっと反応して動いた凛音は縛っている髪だけ斬られてしまった。

「あ〜あ、動かないでよぉ、壁に傷が付くじゃないか」

 躊躇いのない剣さばき。凛音を殺す気満々だ。

「い、一旦話し合おう!?ね!?」

「あ〜結婚のこと?いいよ、結婚してあげる」

「そうじゃなくて…ぅおあっ!?」

 また片方の縛っている髪を斬られた凛音。剣で斬られたため、不揃いな髪型になってしまった。

「善逸…」

 善逸は凛音を睨むように納刀し、構えた。そして、柄を掴んだ瞬間、凛音は叫んだ。

 

「動くなっ!!」

 

 すると、ピタリと善逸の動きが止まった。

 "コトダマ"。それが凛音の血鬼術である。鬼には効きにくいが、人間には効きやすい。

 

「はぁはぁ…」

 

 善逸が動く前に、凛音はその場から去り、鍵を開け、数十日ぶりの外に出た。

 

 善逸…善逸…何で…?ねぇ…善逸っ!!

 

 未だに善逸の言動が信じられない凛音は涙を流しながら闇の中で全力で走っていく。

 

 凛音が逃げた先には親友である莉々愛の家。

 

 自分の家だと善逸に知られている可能性がある。だから友達の家に匿って貰えば、見つけられないだろうと思ったのだ。

 

「莉々愛!開けて!莉々愛っ!!」

 

 ドンドンッとドアを叩けば、ドアの向こうに誰かが急ぐように向かってくる足音が聞こえた。そして、ガチャッとドアが開けば、そこには久しぶりに見る親友の姿だった。

 

「凛音!?」

 

 その姿を見た凛音は安堵するように泣き出した。

 

「莉々愛…莉々愛ぁっ!!」

 

 泣き喚く凛音に抱き締められた莉々愛は戸惑いながらも、凛音を家の中に入らせた。

 

 

⫘。゚⫘*

 

 凛音は話した。善逸に誘拐されてから今までの事を。

 

「そんなことがあったんだね…」

「こんなのって酷すぎます…」

 

 莉々愛と莉々愛の家に来ていた星羅は凛音の話を聞いて、大事な凛音を傷付けたことを怒りが湧いていた。

 

「通報した方がいいですね…」

「ま、待って、星羅…!」

 

 警察に通報しようとする星羅に何故か止めた凛音。

「どうしてです…?あの人は凛音に酷いことをしたんですよ?殺そうとしたんですよ?あの人は罰するべきですよ」

「分かってる!分かってるけど…っ、あの人は…善逸は……っ」

 

 自分に優しくしてくれた善逸は本物なのだろうか、それとも嘘で作られたモノだろうか、信じたくても疑ってしまう自分がいたのだ。

 そう悩み、涙を流す凛音。

 そんな凛音を見た星羅と莉々愛はお互い顔を見た。

 

「……分かりました、通報はしないでおきます…ただ、あの人が何かしたら迷わず通報しますからね」

「…………」

「……でも、本当にだったら…凛音にそこまで愛してくれたあの人ですからね、許さないけど…少しは許してあげますよ」

「う、うぅ…ありがとぉ…っ!」

 自分の意思を汲んでくれた星羅に感謝を込めて抱き締めた凛音。

 

 

 

 その頃の善逸は……。

 

「何で邪魔するのさ?あと少しで復讐出来たでしょうが」

 

《駄目だって言ってるじゃないか》

 

 凛音が斬られそうになる度にである"善逸"が守っていたのだ。

 

「でもさぁ…何度も殺してるよねぇ?」

 

《……分かってるよ…でも凛音ちゃんの人生を壊したくない、だからもう復讐やめようよ》

 

「嫌だねぇ、まだ気が済まないんだよぉ」

 

《それでもやめるんだ、復讐したって何も得にならない》

 

「…出たら自首するつもり?」

 

《そうだよ、死刑になるかもだけど…それでもいいんだ、俺がいるだけで誰かに不幸してしまうから》

 

「でもさぁ、凛音はオレたちのことが好きなんだよ?オレたちには凛音しかないからさ」

 

《……凛音ちゃんには幸せになって欲しいんだ》

 

「…………あっそぉ…」

 

 

⫘。゚⫘*

 

 

「よぉっ!」

 

 暫く莉々愛の家で匿うことになった凛音の元にやってきた雫。

「雫!」

「その前に入らせてドア閉めるからな?匿ってる場所がバレちまうからな」

 雫は玄関に入れば、凛音が雫に抱き締めた。

「雫〜!会いたかったよぉ〜!!」

「俺もだぞ!」

 雫は善逸と同じく、鬼殺隊に所属している。非公式の組織なため、一般人の凛音に言わないように就職していたのだ。

 最初は鬼狩りとして働いていたが、事情により隠として働いている。

 そんな雫との連絡を取ることができたのは、星羅の彼氏である無一郎も鬼殺隊に所属しているため、その雫が凛音との知り合いだということを分かったのだ。

 そして、雫の任務は凛音の護衛として任されたのだ。

 

「その善逸も鬼殺隊の身だ、流石に鬼狩りの時や凛音に対する時にしか刀を振らないだろうな」

「…………」

「大丈夫だ、もう俺を忘れちまったのか?喧嘩は自信あるから安心しとけよなっ!」

「…うん!」

「で、今日はデパートで必要な物を買いに行くんだったよな?」

「そうだよ〜!」

 

 今日、凛音は雫と一緒にデパートに出掛けるのだ。

 

 

⫘。゚⫘*

 

 

「なんか雫と出かけるの久しぶりだね〜」

「そうだな、高校以来だっけな?凛音、迷子になってたんだよな」

「そっ、それは雫がはぐれたんでしょ〜?」

「キョロキョロして、あっちこっち行ってたお前が言うか?」

 雫が凛音を見た時、凛音は明後日方向に向いていた。

「なあ…」

「あっ、可愛いものがある〜!莉々愛たちにあげようかな〜!?」

「…話はぐらかしたな」

 元気ないと思っていたが、元気そうな凛音を見て、雫は思わず安堵するように微笑んだ。

 

「どれにしよっかな〜……あ…っ」

 

 凛音が見つけたのは、キーホルダーの蒲公英を包むように抱く鰻があった。

 

 蒲公英…鰻…

 

 そのキーホルダーを見て、善逸のことを思い浮かんだ。

 

 今…どうしてるかな〜…?

 

 あんなに酷いことされたのに、気になってしまう自分がいた。

「善逸…」

「……買うか?」

「えっ?あ〜…」

 

 

「ありがとうございました〜」

 結局、そのキーホルダーは買った。

 理由は分からないけど、そのキーホルダーを見ていると何処か落ち着く自分がいたから。

 

「次何買おうか?」

「…そうだね〜」

 

 ふと、何か気付く。視界に違和感を覚えた何かが見覚えがあるような人影に目を凝らして見れば、瑠奈だった。

 瑠奈は何か楽しげに誰かに腕を絡めるように組んでいた。

 

 その"誰か"をはっきり見えた時──

 

「え…っ?」

 

 瑠奈の隣には"善逸"がいた。

 

 あぁ…まただ…2度と感じたくなかった感情が暴走するように湧いてくる。そして、その感情から吐き出した言葉が……

 

 

 ナンデ僕ジャナイノ???

 

 

「凛音?」

「ごめん、トイレ行ってくる」

「お、おう」

 

 

「はぁっはぁっはぁっ」

 トイレで水を顔に2、3度くらいかければ、ポタポタと水玉が落ちていく。先程暴走しそうになった感情はまだ落ち着かない。

 そして、目の前にある鏡に映る自分を見た。

 すると、その自分が勝手に喋り出した。

 

 善逸ハ僕ノモノナノニ

 

「ち、違う…僕はそんなこと思ってない!」

 

 ナンデ、イツモ、アノ子ヲ選ブノ?

 

「何か…誤解があるはずだよ…」

 

 モシ、本当ダッタラ?

 

「違う…違う!本当にちが…っ!」

 

 善逸ハ僕ノコト愛シテナカッタンダ

 

 ダカラ、僕ガ善逸ヲ愛セバイインダ

 

「…………はは…あははっ、善逸…僕が逃げたから寂しかったんだよね、もう大丈夫だよ〜今度は僕が愛シテあげるから安心してネ……アハッ、アハハハハハッ!」

 

 

⫘⋈*。゚⫘*.+゚

 

 

「善逸〜」

 

 女子高生が猫撫で声を出しながら自分自身の身体と密着するように善逸の腕を絡んだ。

 

「どうしたのぉ?瑠奈ちゃん」

「善逸と一緒にいるの安心するな〜ってね」

「そうかなぁ、瑠奈ちゃんが安心だと俺も嬉しいよぉ」

 

 その女子高生は依頼人である。最近、ストーカーが遭っているらしく、そのストーカーが鬼かもしれないと訴えてきたのである。だから、その依頼が善逸に来たのだ。

 そのため、そのストーカー鬼に諦めさせるために善逸を恋人のフリとして依頼人とデートすることになったのである。

 

「ねぇ〜もし良かったら予行練習としてでも付き合ってもい〜い?」

「うん、いいよぉ」

「じゃあさじゃあさ、そこにある噴水のところ行こ〜!」

 デパート内にある噴水に向かう善逸と瑠奈。

「で、何するのぉ?」

「ふふ…キスしてみたいな〜って」

「そうなんだぁ…え、キ、キス!?」

「そうだよ〜」

「そっ、そういうのは…」

「ダメ…?」

「だっ、ダメじゃないです…」

「良かった!やってみたかったの〜」

「そうなんだぁ」

 噴水のところに着けば、善逸と瑠奈は互いに向き合った。そして、善逸は瑠奈の腰に手を回し、抱き寄せた。

 瑠奈は嬉しそうにしながら踵を上げ、善逸からの口付けを待つように目を閉じた。

 それに応えるように善逸はゆっくりと、瑠奈の顔を近付いていく。

 

「止まれ」

 

 その言葉によって、2人ともはピタリと止まった。

 

「えっ、何…?」

 

「瑠奈〜久しぶりだね〜?」

 

 そこに現れたのは、凛音だった。凛音は何処か狂気な笑みを浮かべていた。

 

「…………」

「り、凛音ちゃん…?」

 

「善逸は僕のだよ〜?」

「……善逸は私のこと好き〜?」

「えっ、あぁ…うん、好きだよぉ」

「じゃあ、その人のこと殺して」

「……はい?」

「その人ね〜いつも私の恋人ができる度に奪うんだよ、酷い人だよね?ね?」

「……凛音ちゃんはそんな子じゃない」

「…はぁ?」

「君、本当の目的は凛音ちゃんを殺すつもりだったでしょ?凛音ちゃん鬼だからね」

「そ、そうだよ!善逸は鬼殺隊だよね?だから殺してよ!」

「…ごめん、それは無理」

「は…?ねぇ、善逸もその人のこと殺したかったんでしょ?そうだよね?」

「俺が?……あ〜…でも今はそうじゃないよ」

「何でよ!?」

「ねぇ〜僕を無視して話さないでよ〜」

 2人の間を割り込むようにべりっと瑠奈を善逸から引き剥がした凛音。そして、凛音は善逸を見て、ニヤリと笑った。

「逃げてごめんね〜、僕もう逃げないよ、ずっと善逸の傍にいるからね〜」

「……俺は凛音ちゃんの傍にいる資格なんてないよ」

「は…?」

「逃げて、俺から逃げて」

「何で…?僕が善逸を愛さなかったから?でもこれからは愛するよ!善逸のことを愛するよ!」

「凛音!行こう!」

 見失った凛音を探していた雫が凛音の手を掴み、何処かへ行こうとする。

 だが、凛音は雫を振り払った。

 

「ねぇ!あの頃みたいに僕を愛して!!」

 

「…ごめんね、凛音ちゃん」

 

 ぐ…っと気合いを入れれば、凛音がかけた血鬼術の効果を早めるようにやっと消した。そして、まだ術が解けていない瑠奈をお姫様抱っこし、早足でその場から去って行った。

 

「善逸!待って!!善逸っ!!」

「凛音!!」

 叫ぶ凛音に引き止める雫。

 その2人の周りには良くない言葉が飛んでいた。

「喧嘩?」

「ややこしい関係ね〜…」

「こわ〜」

 

 

⫘⋈*。゚⫘*.+゚⫘⋈*

 

 陽が落ちる前に瑠奈を家まで送った善逸。

「ねぇ…」

「うん?」

「何で殺さなかったの?」

「…凛音ちゃんはいい子だから」

「…………」

 善逸は聞いたことがある。凛音の過去のことを。

「…瑠奈ちゃんは凛音ちゃんに傷付けられたことはある?」

「そ、それは…………ない、です…」

「凛音ちゃんは瑠奈ちゃんのことを家族だと思っていたんだよ、良かったねぇ、いいお姉ちゃんがいて」

「…………」

 

 もしも、自分の母親が凛音のように優しい鬼だったら、今の自分とは違っていたのだろうか。でもこうなってしまったことは変えられない。もうとっくに自分は汚れてしまっているから。

 

 でもそうだなぁ…もしも育った環境が違っていたら…もしも出会いが違っていたら…俺は凛音ちゃんのことを傷付けずに愛せていたかもしれない。

 

「いつか…凛音ちゃんのことを感謝したい日がくるさ…じゃあね、凛音ちゃんのことよろしくね、瑠奈ちゃん」

 

 善逸は瑠奈に優しい微笑みを見せた。しかし、何処か寂しげな表情が含んでいた。そして、ゆっくりと沈みゆく夕陽に向かって、その場から去って行った。

 

 

 一方、凛音と雫は買い物が終わり、帰りの途中だった。

「…………」

「…………」

 凛音は胸に穴が空いたように落ち込んでおり、雫は凛音の様子を見て、心配そうにしていた。

「……り、凛音?」

「…………」

「…………」

「…………」

「……なあ…、っ!?」

 

 雫は気付いた。何かが迫ってくる気配。

 

 ──鬼だ

 

「凛音逃げるぞ!!」

 雫は凛音の手首を掴み、走り出した。

 すると、路地裏から現れた、"鬼"。

 

「グォォオオオオオッ!!!!!」

 

 鬼は四足歩行で雫たちに追いかけた。

 

「く…っ」

 雫はもう隠の身なため、剣を持っていない。つまり、ヤバい状態である。

「おいっ!いるか!?」

 そんな時、身を潜めていた烏が雫たちの頭上に現れる。

「カァッ!カァッ!」

「誰でもいい!近くにいる隊士を呼んでくれ!!」

「カァーーーッ!!」

 その烏は雫の鎹鴉だった。その烏は近くにいる隊士を呼びに行った。

 そして、雫は少しずつ呼吸を整え、久しぶりに使う呼吸を働きかけた。

 すると、身体中の筋肉が膨張すれば、今の速度よりも速く、走り出した。そうすると、鬼との距離が少しずつ離れることが出来た。

「がはっ!はぁはぁ…」

 雫の口から血が吐いた。

 この雫、実は肺に後遺症があったのだ。隊士として活動していた時に毒に浴びられ、呼吸を使えなくなってしまったのである。

 先程の呼吸を使ったのが、精一杯だったのだ。

「雫…?」

 雫の血反吐の声によって我に返った凛音は雫の様子に気付いた。

「血…血が出てるよ!」

「大丈夫!ちょっと咳しただけだ!」

「咳しただけでこんなに血が出ないよ!」

「俺は大丈夫だから心配するな!」

 だが、雫の走る速度は次第に遅くなっていった。それに比例するように、鬼との距離が縮まっていく。そして、雫たちを襲うように飛び上がった。

 

 そんな時……

 

「恋の呼吸 壱ノ型 初恋のわななき!」

 

 空中で身体を回転するように捻らせながら、鬼の身体中に一瞬細かく斬った女性が現れた。

 

「……!」

 

 凛音たちの盾になるように前に現れた、可愛らしい女性。その女性は善逸の先輩であり、同期である甘露寺蜜璃だった。

「遅くなってごめんね!大丈夫だよ!私が来たから!!」

 細かくバラバラとなった鬼はすぐに再生してしまう。

 それでも、蜜璃は警戒を解かずに雫たちに指示する。

「ここまでよく頑張ったね!ここは私に任せて逃げて!」

「う、うん!」

 凛音は雫を支えるようにしながら再び、逃げ始めた。

 蜜璃が持つ剣は硬いようで柔らかいようなしなりのある独特な形をしていた。構えるためにその剣を軽く振り始める。

「この子達には近付けさせないからね!」

 そして、鬼に向かって走り始めた。すると、鬼は口から毒を数度、吐いた。

「恋の呼吸 参ノ型 恋猫しぐれ!」

 

 恋をして喜ぶ猫のように飛び跳ねながら飛んでくる毒自体を斬り、足を止めずに突き進んでいく。

 すると、鬼が急に蜜璃に近付いた。

「きゃっ!?」

 頬を膨らませ、間近で毒を吐くつもりだ。その瞬間を見逃さなかった蜜璃は身体の柔軟さを利用し、空中で身体を捻らせながら避けた。

 だが、鬼はもう一度を吐いた。

「しま…っ!」

 鬼が毒を放った先には凛音だった。

 迫り来る毒に気付いた凛音は硬直してしまい、すぐに動くことが出来なかった。

 

 ──ベチャッ!!

 

 だが、凛音の身に刺激が来なかった。

 恐る恐ると目を開ければ、驚くように見開いた凛音。

 凛音の目の前には善逸が背中を見せるように立っていた。

「ぜん、いつ…?」

 善逸は凛音の方に振り向かなかった。だが、毒に浴びた善逸は酷く痛々しそうに小刻みに震えているのが分かる。

 

「凛音ちゃんさぁ…勝手に死なないでよねぇ…」

 

 善逸が持っている剣を腰の横に差した。善逸の言葉は続く。

 

「凛音ちゃんを殺すのはその鬼じゃなくて…俺だからねぇ?凛音ちゃんは俺の獲物なんだからさ…」

 

「善逸、手当てしないと!」

 

 凛音は善逸の元へ駆け寄ろうとした途端、善逸に呼ばれて足を止めた。

 

「ねぇ凛音ちゃん…俺に殺されるまで生きててよねぇ?だからさ…勝手に死んだら許さないからねぇ?」

 

 すると、善逸は脚を大きく開き、前屈みになった。そして独特な呼吸をし始めた。

 そして、この後凛音に対する言葉がはっきりと凛音の耳に届いた。

 

 

    「幸せになってねぇ、凛音ちゃん」

 

 

 その時、善逸の表情はどうなってるか、凛音は知らなかった。その表情を見るために凛音は手を伸ばしながら足を一歩踏み出そうとした。しかし、その手は届かずに善逸は行ってしまった。

 

 命の危機を感じた鬼は素早く逃げるようにビルの上に登り、隣のビルへと飛び移った。しかし、後ろから迫り来る雷の音。

 

「雷の呼吸 壱ノ型」

 

 ガッと柄を掴んだ善逸。

 

 

「霹靂一閃!!」

 

 

 ドォオオオンッ!!と雷のような鈍い音が響き渡る。

 空中に塵となって消えていく鬼の首。

 斬られて飛び散る血。

 揺れる金色の髪。

 毒に侵食されて手から離してしまった日輪刀。

 下へと下へと落ちていく男性の身体。

 

 

 あの日言われた"鬼の子"は

 言葉から俺の心の中で生まれて

 沢山殺してきた

 この手で沢山汚してきた

 もう後戻り出来ないんだ

 "鬼の子"となった俺は

 君を愛す権利は無い

 君を幸せにする権利は無い

 

 だから

 

 可愛らしい妹に愛し愛されて

 親しい友達に囲まれて

 素敵な男性を見つけて

 その男性に愛されて

 寿命が尽きるまで

 

 

 幸せになってねぇ

 

 

 凛音ちゃん

 

 

。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚

 

 

数年後

 

「莉々愛〜星羅〜もう疲れたよ〜」

「明日行って休みの日だからもう少し頑張りましょうね〜」

「えぇ〜明日有給として休んでもい〜い〜?」

「駄目だよ〜」

「えぇ〜」

「だって凛音がいないと寂しいから」

「私も寂しいです」

「……じゃあ頑張ろっかな〜!」

「凛音ちゃん!莉々愛ちゃん!星羅ちゃん!」

「あ!蜜璃〜!!」

「こんなところに会えるなんて嬉しいわ〜!」

「僕もだよ〜!!」

「おっ、こんな所で会えるの偶然だな!」

「あ、雫〜!!昼間は弁当を届けてくれてありがとね〜!」

「礼を言うなら瑠奈だろ?急いで作ってくれたんだからな!」

「そうなんだ〜!後で礼を言わなくちゃね〜あっ、僕そろそろ帰らないと!」

「じゃあまた明日ね〜」

「遅刻しないでくださいね」

「また会おうね!」

「またな!」

「うん!またねぇ〜!!」

 楽しげな足取りで帰路を辿っていく凛音。

 凛音が帰る先にはマンション。マンションに入れば、エレベーターで上へと上がっていく。自分が住む階に到着すれば、自分の部屋に向かっていく。その部屋に着けば、蒲公英を抱く鰻のキーホルダーが付いた鍵を取り出し、開けた。

「ただいまぁ〜」

 靴を脱ぎ、部屋の奥へと歩いていく。その奥にある部屋に入れば、鞄を机に置いた。そして、ベッドの上にある水槽を覗けば、癒されるように微笑んだ。

 

 

 「愛してるよ、ねぇ?……善逸」

 

 

 その水槽の中にはホルマリン漬けされている腕と脚が無い、善逸の姿があった。

 

 

 

          【完】




【解説】

・鬼の子…最初は言葉として呼ばれていたが、鬼である継母がいた環境によって次第に生み出された"鬼"の部分。つまり、二重人格のこと。
・凛音の心理的描写のまとめ:逃げる→善逸の過去を知って親近感が湧く→鬼である自分に受け入れてくれる善逸のことが好きになる→鬼の善逸に殺されそうになって恐怖心が湧くが、信じたいという気持ちが残っていた→瑠奈によって嫉妬心と共に"好き"が暴走→善逸が死亡してしまい、病んでいる
・二重人格が生まれる同時に一旦死んだ善逸は暫く、鬼の善逸にずっと任せていた。だが、凛音によって生き返るように目を覚ました。
・死ぬ前の善逸は最初は鬼とせめぎ合っていたが、最終的に人間として凛音に伝えたいことを伝えていた
・善逸に凛音に贈った『オキナグサ』の花言葉…「清純な心」:人間の善逸としての気持ち/「裏切りの恋」:鬼の善逸としての言動
・最後に切断されていた善逸…足:足が速い善逸が何処かへ行ってしまわないようにするため/腕:瑠奈に奪われそうになったのがトラウマで、瑠奈にも他の女にも抱けないようにするため


【オマケ:本編の撮影後の善逸に殺害された鬼たちの復讐】

善逸「ほんっとに酷いことをしてごめんなさい!!罰でも何でも受けますから!!!」
堕姫「あったりまえじゃない、帯で内臓を潰すまで縛ってあげるわよ」
朱紗丸「鞠での攻撃じゃ!」
令嬢「全財産出しな?」
蜘蛛妹鬼「皮膚が溶けるまで閉じ込めてやる」
女子高生「全裸で逆立ちしながらグラウンド1万周ね〜」
零余子「私の代わりにパワハラ会議を受けてください」
禰豆子「じゃ、じゃあデコピンで!」
炭治郎「俺も頭突きで!!」
伊之助「猪突猛進っ!!」


 善逸の叫び声が地球中に数日間響いたとか…

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