タルコフ市で封鎖区域からの脱出するチャンスを伺いつつ金欲しさに税関跡地近辺の社員寮に住み着いた破落戸(ゴロツキ) 掃除の依頼を受けた元USEC(PMC)のオッサン。
SCAVの集団を狩り終え、溜め込まれた潤沢な物資の探索中、不意に聞こえた足音に警戒し社員寮にある筈のないエレベーターに咄嗟に乗り込んでしまう。

そのエレベーターはある厄介なマンションに通じていて…



というEscape from Tarkovとアライさんマンションのクロス2次創作妄想。

戦闘どころか怪異の描写も碌にない語り部系低コスト小説です。

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アライさんマンションとEFTをクロスしたオリキャラPMCさん短編小説




タルコフから逃げた男。マンションから逃げれなかった男。

 

 

【取材開始】

 

…俺は元西側PMCでな、あ?大した来歴はねえよ。特別、特殊部隊出身だとか紛争とかには関わってない。

ないが、西側兵(NATO)同士のコネと敵側のロシア語が堪能って特徴はあったんで滑り込めた下っ端枠さ。

 

 俺の居た旧共産圏の欧州小国ってのは就職先なんて碌に無い。

欧州連合内を移動して来る移民に仕事は取られる…が、幾らお優しい欧州連合所属でも自国の軍隊まで "お客様(難民)" にやったりしないから自国人に枠がある。

で、共に酒場でクダ巻いてたハイスクール(高校)の連中と共に仕事に困って入隊して、除隊後に軍人のツテで紹介された旧共産圏向けのPMCに入って、そこから様々なPMC企業を転々としてさ。

上は北極海から下は南アフリカまで仕事しに行ったぜ。

 

最後には United Security って組織で Terra Groupインターナショナルホールディングス傘下の TerraGroup Labs PLC の証拠の隠滅とか要人暗殺、逃亡者や裏切り者の始末だとかの映画に出る悪役の様な過激な警備(仕事)を請け負ってたんだが、

俺達が投入されてたロシア北西部ノルビンスク経済特区にあるタルコフ市全域が…

…何、そりゃあ聞いた事無い地方だろうよ。エレベーターの向こうの話しだ、コッチの世界とは色々違うしな。

 

 兎も角、俺達はそのタルコフ市の主要施設に投入された。

そこでは不正を暴こうとするBEARとか呼ばれるロシア政府隷下の傭兵組織が相手だった。

が、ウチの雇い主はやり過ぎた。1私企業の不正を巡ってPMC同士が代理で戦って"契約戦争"だなんて呼ばれる程には事が大きくなり過ぎた。

 

結果、業を煮やしたロシア政府の正規軍が突入。雇い主(Terra Group)のお偉いさんはどんな魔法を使ったのかロシア国内のタルコフ市に、ロシアとは不俱戴天のNATO主体の国連軍を突入させてロシア連邦軍と国連軍UNTAR作戦部隊とを軍事衝突させやがった。

衝突が落ち着いて来ると、タルコフ市全域が封鎖区域に指定され封鎖バリケードに近づく奴は問答無用で撃ち殺され、それ以来入ることも出ることも叶わなくなった所謂"現代の地獄"って奴さ。

 

…残ったのは、居残りでクソ命令を命じられた俺等元凶と機微に疎い不運な現地の奴らと態々入ってくる物好き。そんな連中に睨み合う両軍から余った武器を適当な理由を付けて横流しされれば…さっきお前さんがレジに通した水ボトル一本を巡った殺し合いが始まるって訳だ。

 

 人間慣れるもんで、俺等みたいなのが集う地獄の掃き溜め(ブラックマーケット)を仕切る気前のいいクソオヤジから仕事の依頼で俺みたいに組織から逃げた先で恨みを買った同業者(傭兵)連中や現地のごろつき掃除でタルコフから死んで出られるまでの糊口を凌ぐ毎日さ、

で、あの日は確か……税関跡地にあるTerra Groupe系列の社員寮に来て…目的の仕事を終えて目ぼしい残飯を漁ってる最中に近づく足音に気付き迎え撃つのに最適そうな窪み、エレベーター内部に忍び込んだのが拙かったらしい。

そう、あのマンションのエレベーターだ。…あそこにあった、確かにあった…だから、俺は……

 

……エレベーターが勝手に動き出した挙句帰り方が分からなくなった。エレベーターなんだから上か下に行けば帰れると思うだろ?それが何度やっても戻れない。どころか開く先がそれぞれ別の世界なんだ、少なくともそうとしか思えない景色が広がっている。

今思い返せばたった3階しかない社員寮にエレベーターがあることも、連邦の電磁パルス攻撃(EMP)で電子機器類が破損した封鎖区域内のただの社員寮に稼働しているエレベーターがある事がおかしいんだが…連続の戦闘と不意の接敵だった緊張感からバカになってたらしい。

これが仕掛け爆弾(IED)なら文字通りに吹っ飛んでただろうよ……

 

 幾つかの階では怪物とかヤバそうなのがいて開けては閉じるの繰り返しだったんだが、何回か階を移動してる内に変に冷静になって来た。

悪夢に出て来るヤバい怪物がいてもエレベーターの中までは入ってこない。ここの中は安全だって、そう思えると気が楽になってな……

実際にはエレベーターの中に押し入って来る怪異もいるって話だから単に運が良かっただけなんだが…とりあえず幾階かのマトモそうな景色の世界階を選んで探索してもロシア語どころか英語すら無い。ついでにまともな物資もなければ一見生活感がある様でも本物の人間がいた痕跡は血溜まりの中の遺品しか無い。

 

 遺体を見て一度頭を冷やした。そんで持てるだけの遺品を回収しエレベーターに戻って操作盤を調べると意味不明な記号ボタンやボリュームとかのつまみ式、明らかにオカシイ上にどーも不安になる英語の落書きがエレベーター中に書き記されていやがる。

 勿論、最初は夢か薬のやり過ぎか幻覚か拷問か何かかと疑ったが…エレベーター内で一眠りしても醒めないならそこが現実だと思うしかない。

こんな職業してれば死体の損壊具合であれらをやったのが人間技じゃ無いって事くらいは分かるしな。

 

 それに依頼中だったから臭いを抑える為に暫く人間らしい食事をしていなかった。

現実味のない怪物なんかよりスカブのクソ共や同業連中に襲われないと判れば腹も鳴るし、身体は意味不明な現実(ストレス)から蒸留系の度数の高い酒を求めるし臭いが付くからと紛争中に長らく吸ってなかったタバコのハード味を思い出して口寂しくもなる。

 

 適当な階の一室に臨時の拠点を構えてからすぐに数日過ぎた。その間に3回も人じゃない何かが吸血鬼の如くドアを開けろと知人の振りして尋ねてきやがった。(話から"あけて君"だと推測される)

最初こそ睡眠中に叩き起こされたストレスと、エレベーターの外では初めて遭遇する怪異に慌てて扉越しに無駄弾を使った事もあったが……ここまで時間が過ぎれば流石に慣れて来る。

それに元の世界に置いて来た物資も家主の居ない隠れ家は目敏いスカブ、スカベンジャー共に荒らされて何も残ってないだろうしコッチでやってくしか無いと割り切れた。

まぁ元々俺は補給が担保されなくなった時点で任務の継続より封鎖区域からの脱出と金目の物を漁っての金稼ぎが目的だったから構わなかった。紛争中の金目当てで脱出しそびれた阿呆だがな……。

 

勿論、今となっては雇い主や同業の奴等からは死んだ扱いになってるだろうし、傭兵業は任務の前に保険の加入が常識だし、俺は渡り歩いて割りの良い死亡保険に加入していたからこの際構わない。

…少なくとも当時はそう思えたしそう思った。

死体が無い戦闘中行方不明(MIA)だから死亡の確認が取れないと保険会社から保険金の支払いを渋られないか不安が残るが、悩んだ所で2度と家族には会えない。

…3年間、毎日暮らしながら潜っても一切糸口が掴めていねぇんだよ……

 

…でだ、幸い1階と思しきエントランスから外はあの意味不明な怪異とは打って変わってある程度豊かな国にある郊外の住宅街ってイメージの場所で安心出来た。

家族にも言えない秘密だったんだが俺はまぁまぁのジャパンレトロアニメオタクでな、原語版で観れる位には日本語も勉強してたから外の話し声が日本語だって直ぐに分かった。が、どーみても日本じゃねぇ…正確に言うなら日本アニメの日本人街。コッチのリアルの方ではケモミミ少女なんて見た事ねぇ。フィクションだ。

 

 今でもここはホラー小説とかに出て来る作品の中に迷い込む怪異の類いだと思ってる。もしくは考えたく無いが一昔前のSF小説みたく俺が居た世界の方がフィクションで、俺らからしたらフィクションにしか思えないコッチの世界の方が正しいのかは知らないが……

…兎も角、紛争も無ければケモミミ少女以外の化け物も居ない平和な世界で銃を隠し話が通じる人間に教えを乞いながら見た目人間の店長が運営する元の世界では聞かない店名のコンビニで、アライグマみたいなケモミミ少女先輩の指導の下で今のバイトをする運びになった。

 

 日本人の街に馴染めるかって?馬鹿言っちゃいけない、極めたジャパンレトロアニメオタクは日本人より日本の空気を読めるんだぜ?

…とまぁ、最初は波風を立てない様に闇雲に人目を避けるのでは無く敢えて堂々と人手が足りない時間に多くシフトを組み仕事をしてた。

前職に比べりゃ働くだけで命の危機なく飯が食えるし、俺の態度が店と客の双方に良かったらしく、夜勤手当とは別に手渡しのボーナスと廃棄弁当の持ち帰り許可が出たのと、

どうやらあのマンションに住む奴や怪異に挑む奴等が幾人か居る様でマンション近場のこの店をよく利用するらしく何人かと業務中や喫煙所で会話し、あのマンションについて生き延びる為の貴重な情報を聞く事が出来た。

 

 一番親身に教えてくれた青コートの奴に、どう考えても異界と通じてるマンションに対し国とか警察が動かないのかと言う質問したが"ここ"では公的機関は動かないとの事。

行方不明も出ているマンションに対して国際的な信用の高い日本の警察なら最低限マンション一帯の封鎖と立ち入り制限に動いてもおかしく無さそうなのだが……これ以上この世界について余り無知を晒すと怪しまれると思い、後は適当に話しを合わせて会話を打ち切り、感謝の印に自前のサイフの金で缶コーヒーをオマケとマンションアタック中の幸運を祈って別れた。

因みにそいつは残念ながらあの晩以降一度も見かけていない。

 

 どの道、戸籍も身元保証も無い不法滞在者の外人にはマンションの外で土地を借りる術は無いし、後から知ったが俺みたいなマンションからの漂流者に理解ある店長の居る今のコンビニ以外は勤められそうもない。

何より元の世界との唯一の手掛かりであるマンションから離れる決断には至れなかった。

 

 今も得体の知れないこの世界とそこで生きる将来に抱く猛烈な不安を押し殺し情けなくマンションの一室で煙を燻らせ酒を浴び、時折り思い立った様に冒険してはマンションの自室に逃げ帰るしかない。

 

……1カートンで話せる俺の身の上話しはこれで終わりだ。

他になんか買ってくかい?話し序でにあのマンションにアタックするなら嵩張らないし高カロリーのチョコレート系のカロリーバーと、意外どころで傘がお薦めだ。エレベーターの扉に挟めばエレベーターが閉まらない様にしてくれるし、腕や脚が折れても添木や杖の代わりに使えるからな。

 

…間違っても戦うなよ?銃やグレネードも効かない相手に棒で殴っても意味なんて無いからな。

 

【取材終了】

 

 




Escape from Tarkovの社員寮を掃除した後、寮の屋上からボーッとゲーム内夕日を眺めてた時にアライさんマンションがフラッシュバックして来たので衝動的に描きました。

怪異とPMCの戦闘が見たかった方には申し訳ない。
アライさんマンションは銃でなんとかなる怪異じゃなく各階のルールで戦う怪異だと思っているのと、マンションでは銃弾などの消耗品の補給が出来るとは思えなかったのであくまで生き延びれるだけに留めました。

本家がアライさんマンションの更新を止めたので続きはないかなぁ・・・

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