ヒカルの碁に爸爸が居た場合   作:こしあんあんこ

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とりあえず羅漢が出ている回とかは読み直していたりしてます。ヒカルの碁の原作も読み直していますがどう混ぜようか材料を探す。緒方と桑原を出そうか、プロ試験編を書こうと思えど羅漢の出番が見出せないのもあって、さてはて……。今作は原作キャラと絡んだり絡まなかったりする設定でいこうか悩んでいたので、こうして悩むことが多いのです。原作でちょこちょこ出て来る変な人みたいな印象で。新初段シリーズでのヒカルと塔矢名人もとい佐為対塔矢名人戦では出せそうだなとは思いますが。原作通りやってもただの写本なのでとりあえず今回は飛ばします。





変人は一人ほくそ笑む

 

 

 

 

 

 竜王駒と一局交えることは出来なかったが存外暇つぶしにはなった。院内を歩く羅漢はそんなことを考える。一人目の歩兵は歩兵らしく、二人目の歩兵はどうにも。何を考えているか知らないが勝手に潰れているのだから本当に惜しい。羅漢からすれば呆れ返るのみだった。その後も脳内で思い出す今回の相手を思い浮かべる。

 

 白黒の碁石はまだまだ。最後の歩兵は、竜王駒といるだけあって以前よりも筋が良くなったと羅漢は評価する。取り分けてあの一局での一手、あれは面白いと思っていた。惜しむべきはその力量が未だに備わっていないことだろう、少しズレたモノクルを掛け直して羅漢は笑みを吊り上げた。

 

――あの一手は、当人の力量が同等になれば

 

 さて、どうなることやら。狐とも思わせるその眼はますます弧を描かせて、変人は帰路に着いた。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 進藤ヒカルはまた一歩一歩と着実に力を付けていた。ヒカルが院生の中でも順位を上げている中、塔矢アキラも二段へと昇ろうとしていた。プロ棋士に置いて大手合は昇段にも関わることだ、そこで日々連勝して彼らは昇段出来ない。初段であるならば連勝で八勝しなければ昇段は出来なかったが、アキラはこの七戦全て全勝している。この対局で八戦目、つまりこの対局でアキラは昇段する。

 

「……」

 

「……、」

 

 パチリ、パチリ。石が置かれて増えていく白黒模様。アキラの持つ石だけが一際輝いて、また一つ石を置けば対局者の顔が歪んだ。

 

「……ありません」

 

 対局者が頭を下げた瞬間、アキラは昇段する。負け知らずの二段。まるでヒカルなど到底及ばぬ域に達そうとする気迫があった。誰も寄せ付けぬ力は、誰かを待つようだ。その誰かとは誰のことだろうか、それは塔矢アキラのみが知るばかりだった。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 残暑残る夏の終わり、進藤ヒカルはプロ試験会場へと赴いていた。いつも見慣れた棋院がまるで違う風景に見えるのだから不思議だ。

 

「やっとここまで来たぜ」

 

「ここまで来た?ここからが山場でしょ?」

 

「わかってるよっ!」

 

 訂正する佐為を煩わしそうにヒカルは言葉を返す。いつもの調子で会話を繰り出す中、ヒカルはまっすぐ棋院の入り口を見た。

 

「それでもとにかく、オレはここにいるんだ」

 

 プロ試験予選初日、進藤ヒカルは初段としての歩みを始めようとしていた。プロ試験予選は今日から五日間。一日一局、三勝した者から抜けていき、その一ヶ月後の本線へと行ける。それだけで何か違う行事をしているが今のヒカルは気合十分だった。

 

「いつもの場所でいつも通り碁を打つだけだ」

 

 和谷や伊角さん達上位八人はいないけれど他の一組の院生仲間は皆来るんだし。別に緊張しなくてもいい、そう言い聞かせているが佐為は不安そうな顔でヒカルを見る。

 

「いつも通り打つ―――、なかなかに難しいことですよ」

 

 果たしてそれが出来ますか?そう問いかける佐為にヒカルは大丈夫と笑い返した。

 

「大丈夫さ、いつもと同――、え?」

 

 そう言いかけてふとヒカルよりも先を歩く人を見てヒカルは動揺する。何せヒカルよりも身長の高い男だったから。

 

――お、おっさんじゃん……?

 

 煙草を吹かした成人男性が一人、また一人と院内へと向かう中後ろからバイクの音が響く。院内の前にバイクが止まり、ヒカルはまじまじと見てしまう。それはもう剛毛な男が一人そこに居たのだから。

 

――うわっ、すげぇヒゲ男

 

 まじまじと見ていたら大きなひとりごとを呟いた男が此方を見ている。ドキッと心臓が高鳴って身体中に汗が滲んだ。

 

「なんだ、おまえもプロ試験か?」

 

「え…、うん」

 

 おまえも、ということはつまりこのヒゲ男もプロ試験を受けるようだった。

 

「オレもだ、よろしく頼むぜっ」

 

 そう言って男は棋院に入っていく。次から次へと大人が入る中、ヒカルだけがただ立ち尽くしてしまっていた。前途多難とはこのことか、ヒカルのプロ試験はまだ始まったばかりである。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 外来を予期してなかったヒカルはものの見事にヒゲ男にただ呑み込まれた。あの大きな声もあの馴れ馴れしい態度もどうにもなれない。記憶に蘇る大人といえば羅漢のおっさんが最初に浮かんでは消えていく。どうにもああした態度は苦手なようだった、ヒカルは見事に委縮していた。初戦もその次も負けていよいよ二回目も負けて思うままにその力を震えない。

 

――この場所にあの塔矢だっていたのに!

 

 悔しさからか、ヒカルはどうにか一勝もぎ取りたい思いでいっぱいだった。このまま負ければ一年が無駄になる、それでは追いつけないのだとヒカルは否が応でも自覚する。

 

――とにかくあのおっさんに会わない!

 

 羅漢のおっさんにだって!そう誓ってヒカルはギリギリの時間まで粘って三戦目に臨む。相手は院生でも仲の良い福井だった。いつも通り打てる、そう思って対局をすると見事初白星を掴んだ。とりあえず首一つ繋がった。翌日また一戦。確実に白星を決めてヒカルは最終日を迎えた。泣いても笑ってもこれで最後、緊張した面持ちで臨む中、不戦勝が決まりヒカルは危なっかしくも確実にプロとしての歩みを始めた。

 




羅漢の総評も込みで書きました。椿さんはヒカルの碁の中でも好きな部類です。



評価と感想があればやる気出ますので何卒…!!


評価ありがとうございました!
水無瀬さん、gattinさん、anyuzyuさん、廻りメグレさん。本当にありがとうございました!!
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