【骸龍】オストガロア
無数の竜の骸が堆く積みあがった【竜ノ墓場】に潜む異形の超巨大古龍。
龍歴院の調査により数十年前からココット山の麓や古代林周辺に伝わる伝承、そして以前に下位ハンターである【戦鬼】によって撃退された謎のモンスターである【双頭の骸】の姿、生態からオストガロアの存在を確認済み。
そして今から10年前、古代林にて数々の観測船の墜落事故により龍歴院、ギルドナイト及びG級ハンターである【番狼】、及び上位ハンター【番犬】に調査依頼を出し調査を始める。
調査の結果【竜ノ墓場】にて【骸龍】オストガロアと思われる痕跡を確認、その後タンジアの港付近にてオストガロアが出現しギルド、港、村、街、環境を破壊し尽くし、そこに住むハンター、人々、モンスターを鏖殺した。その後【狩人】【冥海】【城壁】に討伐依頼を発行、古代林で調査をしていた【番狼】及びに【番犬】にはハンターズギルドより招集を出すも【番狼】がこれを却下。
そして突如【竜ノ墓場】にて出現したオストガロアは巣である【竜ノ墓場】に持ち帰った"食料"の捕食を開始する。
そして竜ノ墓場にて残っていた【番狼】リナリア及び【番犬】ダンテが【竜ノ墓場】にてオストガロアの討伐を開始、その後【番狼】リナリア=ヒガンは死亡。
【番犬】ダンテ=ヒガンがオストガロアを撃退。
オストガロアがG級個体であることと【番犬】ダンテが【番狼】リナリアの弟子であることから【番犬】ダンテをG級ハンターに昇格する案も出たが、今回の狩りがG級ハンターであるリナリアの同伴であったこと、オストガロアの討伐ではなく撃退という事でギルドはダンテの実力が不十分であると判断、G級ハンターへの昇格を白紙の状態とした。
「これがオストガロア、及びに【番犬】ダンテ様と【番狼】リナリア様の当時の報告書類となります。これにより、以前オストガロアと戦闘経験のあるダンテ様と及びにオストガロアの生息するフィールドに海が近く、逃走する恐れもあることから【冥海】様、古龍との戦闘経験が最も多い【妖艶】様と【狩人】様による4人での討伐依頼を数年前より発行しております」
「うお、うおおっ」
「そうです。【番狼】様と【番犬】ダンテ様がオストガロアを撃退して以来、オストガロアは【竜ノ墓場】から突如として姿を消しました。ほかの古龍との縄張り争いに負けたと言う可能性もありますが、オストガロアによる古龍同士の縄張り争いの報告は上がっておりません。まだオストガロアは生きており、どこかに身を潜めていると考えた方がいいでしょう」
マリアはまるで当然の事のように【冥海】アヤメの言葉を理解しながら、現状を説明する。
今ギルドはオストガロアの討伐に必要な人材が揃い、いつでも討伐に迎える準備が出来ていた。
オストガロアが現れる周期は不確定であり下位ハンターであった【戦鬼】が撃退したのは12年前、そこからダンテが撃退したのは10年前、そしてこの10年間【冥海】と龍歴院に調査を任せ、しかし手がかり所か痕跡の1つも手に入らなかった。
「2日後にハンターズギルド及び龍歴院による大規模な捜索任務を開始し、見つけ次第、既にクエストを受注済みとなっている4人のハンターには討伐に向かってもらいます」
「うお」
「その事については問題ありません。【番犬】ダンテ様にはマリーを通して報告済みです。それとダンテ様から1つ手紙を預かりました。これによれば『オストガロアの討伐任務にアザミ=スイセンを推薦する』、スイセンだけに推薦··········ふっ」
何故か笑い出すマリアにG級は「何笑ってんだこいつ」と心の内で思いながら口にすることはなかった。
そしてマリアは咳払いをすると、続きを話し始める。
「ごほん、失礼しました。無論この手紙の内容は却下しました。よって予定通り【番犬】【冥海】【妖艶】【狩人】による4人でのオストガロアの討伐依頼を受けてもらいます。もし【番犬】及び【狩人】が参加できない場合は【雷光】と【城壁】が代わりに受注してもらいます。よろしいですか?」
「「問題ない」」
「ご協力感謝致します。それでは黒龍の亜種と思われる個体の調査隊についてですが」
「報告ッ!急ぎ報告がありますッ!」
「··········何事ですか」
突然の来訪者に、マリアは眉にシワができる。
これはG級会議であり、G級ハンター及びギルドナイト団長以外が話を聞く事だけでなく、この会議場に立ち入ることさえ禁止されている。
それを破れば最悪の場合死刑も有り得るほど重大な場所なのだ。
その前に侵入者は大抵G級ハンターに殺されるか、【狩人】がノータイムで殺す。
それほど危険な場所に自ら足を踏み入れ、急ぎの報告をしに来るなど、ただ事ではないのは火を見るより明らかだ。
「お、オストガロアの痕跡が突如古代林付近で発見されましたッ!」
「··········そうですか、では急遽ですが先程言ったG級のメンバーで」
「それだけではありませんッ!こちらドンドルマにラオシャンロン亜種が向かっているとの情報ありッ!そしてその反対方向からはアトラル・ネセトが向かっているとの報告ッ!」
「───」
「報告ッ!急ぎ報告があります!」
「次から次へと···············」
「セルレギオスの群れがバルバレに向かって接近中ッ!その数100以上ッ!そして禁足地にてシャガルマガラの発見報告ッ!その近くでは狂竜化モンスターが多数発見され、その中にイビルジョー、ラージャンの極限化個体を発見ッ!」
「は?」
「報告がッ」
「こちら水没林に超巨大イビルジョーが2体同時に」
「砂漠にて鏖魔と燼滅刃の出現報告あり!」
「こちら霊峰より古龍アマツマガツチ、及び天眼、そして金雷公の出現報告!」
「え、ちょ、おま、え?」
「こちら氷海より怒り喰らうイビルジョー、銀嶺及び荒鉤爪の出現報告!」
「は?は?は?」
「こちらタンジアの港より、グランミラオス··········」
「は?伝説の龍?」
「の生首を持った【狩人】様が出現!」
「···············?」
この時ギルドナイト団長であるマリアは脳内に宇宙が広がった。
煉黒龍グラン・ミラオス、現れればその海は赤く染まり、海底火山のマグマの様な血液、不死の心臓、この世を滅ぼす大災害の1つである黒龍の一種と呼ばれ最も恐れられるモンスターの一体。
かつてタンジアの民とハンター、そしてギルドが決死の覚悟で撃退するも、その代償にタンジアの人口の4/3が戦死するという悲惨な結果をもたらしたモンスター。
それの生首··········生首?をもって現れた姉さん?
「··········君は疲れているのか?」
「いえ正気です!」
「そうか、それなら姉さんを急ぎ連れてきてくれ」
「その後水面を垂直跳びして消えました!」
「君やっぱり疲れてない?」
「半年前に2日ほど長期休暇を頂きました」
「そうか··········」
どうしよう、これ。
「とりあえず報告に来た者は1列に並べ、そしてG級ハンターの皆さん、オストガロアの話は白紙にし、今から急遽緊急クエストを発行します。オストガロアの捜索の件は··········」
「あの、その事でもう1つ報告が··········」
「なんですか?」
ものすごく嫌な予感がする。
私のこう言う時の勘が外れることはほぼない。
今でも十分最悪の状況だと言うのに、これ以上最悪な話など本当にあるのか?
「竜ノ墓場にてオストガロアが出現しました」
ブチィッ(胃に穴が開く音)
「え?団長?団長!?」
マリアは吐血して倒れた。
「誰かいにしえの秘薬をくれ··········」
───あぁ、早くギルドナイト団長辞めたい。
▱▱▱▱▱
〜溶岩島〜
それは赤く、朱く、紅く、赫かった。
紅蓮の世界に輝くは生物ならざる黄金の瞳。
それは怒りに満ちていた。
人に怒り、モンスターに怒り、自身以外の全てに怒っていた。
その者は憤怒に身を焦がし、自身以外の全てを燃やし、焦がし、灰とする破滅の龍。
「あなたは人もモンスターも嫌いなのね」
紅蓮の世界に降り立つは白き世界。
その者は無邪気に生命を弄び、嘲笑い、蹂躙する絶滅の龍。
「そう言うお前は贔屓するな」
「そう?普通じゃない?」
まるで無邪気な少女の様に笑い、紅蓮の男は怒り続ける。
「"あいつ"が死んだ」
「死んじゃったね。あの子は人にもモンスターにも平等だったから」
「故に次は俺だ」
男は少女を見る。
怒りを顕にした瞳で少女を、世界を見る。
「俺が世界に平等な破滅を与える」
少女は嘲笑う。
「それは無理よ」
───貴方にも、平等な死が訪れる。
「・・・・お前がか?」
「私が?まさか、貴方に死を与えるのは英雄よ」
少女は自慢げに答える。
「私の英雄が、貴方を殺しにくるわ」
その瞬間、紅蓮の雷が降り注ぐ。
「私を殺す、世界を救う英雄が殺しにくるわ」
「それは───」
───楽しみだ
男は笑った。
怒りに満ちた、しかし喜びに満ちた無邪気な笑みだった。
そして少女は消える。
元から世界にいなかった様に、少女など存在しなかったように。
「それまで、世界の破滅を眺めるとしよう」
この鎮まらぬ怒りにみを焦がしながら。
黒龍、紅き怒り、世界を滅ぼす。
はい、いにしえの秘薬処方するのでもっと頑張ってくださいね