SPYAIRのオレンジって良いですよね
なんかAfterglowっぽさを感じたので深夜テンションで何も考えずに書いたものを
適当に載せておきます
よろしくおねがいします


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オレンジ

 

僕は目を合わせずに、5人の幼なじみの前で頭を掻きながら重い口を開く。

「…えっと、家族の都合で、今日、ここを離れる事になっちゃいました…」

視線だけ彼女らに向けてみると皆ぽかんと口を開けていた。

「その…ごめん」

申し訳程度に謝罪を口にすると背を向けて公園を後にする。

走るつもりはなかった。でも、その場から離れようと僕はいつの間にか走り出していた。

次に気が付いた時には自宅の前にいた。息は絶え絶えで、玄関口に立っていたお母さんに心配されていた。

「ちょっと大丈夫?顔真っ青だけど」

「…うん。大丈夫」

深呼吸し、家に戻ろうと扉に手をかけた時、「そう言えば、蘭ちゃんたちとのお別れはすんだの?」と声をかけられる。

背中越しに頷くと、お母さんは溜息を吐き、「出発までにはちゃんと済ましておきなさいよ」と言う。

「…なんで」

見透かされた驚きのあまり扉から手を離し、お母さんの方を向く。

「そりゃあ、親だもの」

僕の頭に手を置くと、横を通って家に戻って行った。

「…」

僕はしばらく何も言わずに扉の前で立ち尽くす。

今すぐにでも駆け出して行くべきか、心の準備をしていくべきか。

この狭間で迷っていると、お母さんが手のひらサイズのオレンジを持って戻ってきた。

「アンタこれ好きだったでしょ。これでも食べて元気だしな」

「…うん」

それを受け取るとお母さんは笑顔を浮かべて家に戻って行った。

皮ごと齧ると爽やかな香りが甘さと共に口いっぱいに広がり、その後に苦みがやってくる。

僕は少しづつオレンジを齧り、食べ終わる頃にはもうどうすべきかは決まった。

一目散に駆け出し、さっきの公園に戻る。きっとまだ、彼女達はそこに。

公園に到着し、周囲を急いで見回す。

そこには白髪の少女が一人。コバルトグリーンの目でこちらをじっと見つめている。

「青葉…」

「何~?」

息を整え、彼女の前に立つ。

「急にお別れを言ってごめん。逃げてごめん。…ちゃんとお別れを言うべきだった」

頭を下げる。青葉がどんな顔をしているのか見えない。数秒置いて青葉が口を開く。

「モカちゃんぱーんち」

僕の頭にコツンと拳を当てる。

「…え?」

思わず先程の彼女達と同じような顔で青葉を見上げる。

「ふっふー。仕返し」

青葉はニヤニヤと笑みを浮かべていた。

僕は思わず吹き出し、「やられたな」と言って近くのベンチに腰を下ろす。

青葉は何とはなしに隣に座り、俺は空を仰ぐ。

こうしていると、心が浄化されていくような感覚になる。

と同時に、これまでの思い出もフラッシュバックする。

商店街の祭りで宇田川と和太鼓を叩いて汗だくになったこととか

その時のアイツの声はいつも以上に響いていたこととか

その帰りに羽沢の店でココアを奢ってもらったこととか

彼女たちと夏祭りに行って屋台とか回って楽しかった事とか

その時の花火はとても綺麗だったこととか

上原は何故か俺にダイエット方法を聞いてきたり

…時には喧嘩して美竹を泣かせてしまった事もあったかな。

その時には宇田川にこっぴどく怒られて…。

ああ、懐かしいな。

彼女らともう会えないと思うと涙が自然とあふれ出した。

視界が滲み、呼吸が苦しくなる。

あと一秒だけ、もう一秒だけ。

なんて思わせてくるような、甘酸っぱく、眩しい思い出が頭に浮かんでは去っていく。

「ああ、嫌だなぁ。もっと一緒に居たかったなぁ…」

「えぇ~?これでお別れなの?モカちゃんショック~…」

「…え?」

頭の中が?マークで埋めつくされる。

「だいじょーぶ。あたしたちはまた会えるよ」

そういって青葉は微笑みを浮かべる。

その笑みを見ていると何だかこちらまでそんな気になってしまう。

「…そうだね」

息を吐き、小さく「よし」と呟くと、涙を拭い、ベンチから腰を上げる。

「僕たちはまた会える。…だから、『さよなら』は言わないし、約束も要らない」

ずっと一緒にいる、なんて大きな夢を小さな背中に乗せてここまで来た。

これまでは全部が全部思い通りではなかったし、今、その夢を僕は手放そうとしている。

でも、その全てが楽しかった。

だから、今、この公園のどこかにいるであろう幼馴染たちに言葉を残す。

息を大きく吸い、腹から声を絞り出す。

「…皆といる時間がとても楽しかった!!!!ありがとう!!!!」

青葉はニヤリと笑いながら「あたしも楽しかった」と少し震えた声で言った。

少し間を置いて「…じゃあ、またね」と、震えた声で彼女らに別れを告げ、背を向けて歩を進めると

商店街の祭りの時以上に大きな声で皆が「楽しかった!!!!」とどこからか言う。

全く、宇田川はともかく、上原、美竹、羽沢はそんなの、柄じゃないでしょ。

僕は振り返らずにこぶしを突き上げる。

「僕も、楽しかった」

上手く呼吸が出来なくて声は小さかったけど、聞こえただろうか。

僕は歩を進める。

僕との時間がいつか、不意に恋しくなる時もあるだろう。でも、立ち止まらないで進んでほしい。

君たちは進んでいけばいい。きっと、それが確かな事だっていつか分かるから。

間違っても良い、怖がらないで。

ただ、君たちは君たちで良いんだ。

少し苦いオレンジの様に、後に残った切なさが僕を襲う。

でも、あと一秒だけ、もう一秒だけ。なんて惜しみながら行くよ。


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