4度目の人生は悪魔学校で   作:恋音

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第26話 相性の問題

 

 パチリ。目が覚める。

 目の前には両親が居た。

 

「鈴音……貴女を売ることにしたの」

「鈴音の見た目は可愛いからなぁ。愛好家にはピッタリなんだ」

「だからね鈴音。死んでちょうだいね!」

「その愛好家は死体愛好家なんだよ」

 

 商館だったらまだ全然色んな人を手玉にとってパパママ手に入れてたのに殺すなんてあんまりじゃないですか!

 

 ……。

 

 

「というかなんで生きてるです?」

 

 

 私が人間界に戻ってからしたことと言えば、後暗い人間達に私や兄貴を売ったことを伝え、近所のおば様達に警察に通報してもらった。

 

 あなた達指名手配されたようなもんだよね?

 警察からも追われて、後暗い人間からも追われて、生きてれば豚箱、死んでれば商品みたいな末路を辿ったと思うんですよ。

 

 なぜなら私、とっても可愛いので!

 庇護欲抜群、頭もいいし見た目もいいし、全人類どころか種族を超えても欲しがる存在の多いこと。

 

「普通、私を捨てるすたお前たちが、無事なるわけなくない?」

 

 なんで死んでないの?

 なんでシャバに出てんの?

 

 

「あ、もしかして」

 

 私は、ははーんと顎に手を当てた。

 

「さては私から直接の復讐を望むすていた?」

 

 やだなぁ!それなら早く言ってよ!

 

「私ね、拷問学ぞ学ぶしてるです。まぁなんというか、徹底的に心と体を折るすて、肉体の限界まで精神を痛めつける?」

 

 べきってやってボキってやって、ぐちゃってやるんだよね。

 最近は道具とか毒物を使うよりも、口頭説明で脅し……もとい拷問するのに惹かれているんだけど、何せこの口調だから分かりやすい道具と説明書にかまけちゃうんだ。

 でも無邪気装ってえいや!ってすると割とペアの子ビビったりするから、劣等生演じるの楽しいよね。

 

 まぁ何が言いたいかと言うと。

 

「私、ずぅっと貴方達に手作りご飯を振舞ってあげたいって、思うすてたの!」

 

 なんと手持ちには私の美味しい美味しい、硬い甲羅をも溶かす手料理が!

 

「ククククッ……パパ♡ママ♡……娘の大事な料理、食べるすてくれるよね?」

 

 

 

「──それは絶対だめだよリィンちゃん!!!」

 

 グイッと腰に手を当てた私の腕を思いっきり後ろに引っ張った誰かが居た。

 

 

「…………あれ?」

 

 パチリと瞬きをすれば、スッと煙が晴れたような気持ちが私の中に浮かび上がっている。

 

「え」

「なっ……!」

 

 目の前にはあのクソ両親ではなくオロバス・ココ君。そして腕を引いているのはソイ君。

 

 あれ、何があったんだっけ?

 

「なぜ……!?」

 

 驚いているココ君が私の目の前に居たのだが、私は体勢が崩れて盛大にすっ転ぶ。

 

「……消えた!?」

 

 私がソイ君に触れたから見えなくなっているだけろうけど、今私は何を見て何があったんだろう。ココ君は私の姿をキョロキョロ探している。

 

「(その猛毒は出さない方がいい)」

 

 ソイ君から無言で首を横に振られてしまった。

 

「チッ……逃がしてしまったか……」

 

 ココ君が独り言を吐き捨てる。私とソイ君は黙ったまま気配を消して1歩ずつ下がっていく。

 

「──オロバス様、どうでしたか?」

「……逃げられた」

「おやまぁ」

 

 ココ君は誰かと組んでいたようで、小柄な男がどこかから現れた。小柄な男は一瞬驚いた顔をしたものの、表情を作り直して笑顔を浮かべる。

 

「オロバス様が手を下したということは、問題児(アブノーマル)クラスだったわけですね?」

「あぁ」

「幻覚を用い、相手のトラウマとなる姿を見せ、攻撃を誘発する。……これで問題児(アブノーマル)の優勝は見込めない。なぜなら反則になる!オロバス様、このオチョにお任せを。あなたを必ずや優勝に導きますとも」

「オチョ…………ありがとう、助かる」

「お礼を言われるのはまだ早いですとも」

 

 ……なるほど。

 

 私はココ君とオチョという悪魔のせいで、危うく反則負けをするところだったわけか。

 

 ココ君はおそらく家系魔術を持っていて、問題児(アブノーマル)クラスに狙いを定めていると。

 

 私にとってのトラウマが両親なのかどうかはさておき……。

 

「…………なぁオチョ」

「なんでしょう」

「…普通、トラウマの相手に幸せそうな笑顔を向けると思うか?」

「はい?」

「……いや先程掛けた相手が、(トラウマ)に対して『パパ、ママ』と。それは──愛おしい者を呼ぶ声と表情で」

 

 ココ君は口元を隠して、青い顔をしていた。

 

「なぜ、私の幻燈(トラウマ)に対して、怯えや怒りを見せず、なぜ当たり前の顔をして『なんで生きてるの』と言えるのだ?それを言った直後に愛しそうに両親に呼びかけることが出来る?」

「中々に…………愉快なお方に出会いましたね?」

「あぁ……」

「なるほどなるほど、となるとトラウマはその方には効きにくい可能性がありますね。んまっ、原因究明は後回しにしておいた方が良いかと」

 

 失敬な。

 そんな化け物を相手してますみたいな顔しなくても。

 

 大体、私の両親(一応)は私の人生の中で割とどうでも良くて終わったことではありましてね。トラウマと言うならまだバールさんの方が怖…………いやまだあの悪魔は怖くないな。

 怖い悪魔だとは思っているけど、トラウマになるような恐怖の記憶がある無い。それを考えるとたしかに両親(ギリ)は何も出来ない状態の私を死んでも普通の状態に何度も追いやった。

 

 やめてくれと頼んだことも抵抗したこともあったな。それでも終わらなかったので今は悪魔に売られているのだけど。

 

 嫌だなぁ、私のトラウマが両親(疑惑)なの。

 この際カルエゴ先生でもバールさんでもなんでもいいから別のトラウマで上書きして欲しい。私の感情の上書きをして欲しいな。

 

「次に行きましょう。このオチョ、オロバス様を全身全霊でサポートさせていただきます」

 

 そう言って二人は私たちの居たところから姿を消して行った。

 

 数分、いや十分以上は体感経ったと思う。

 

 完全に足音も何も感じなくなって、私とソイ君はお互いに顔を見合せて、ふっかいため息を吐いた。

 

「危なかった……!」

「本当に危なかった、相手が!!」

「ん????」

「だって君何をしようとしてたか自分で自覚してる?猛毒を、よりにもよって口目掛けてぶち込もうとしてたんだけど。僕が相手にも気付かれてなくて、それがなにか理解してるから止められたけどリィンちゃんの猛毒食らって生きてられるわけが無──」

「──成敗」

「反則負け!」

 

 鳩尾に向かって放った拳は空振りに終わってしまった。くっ、なんてことを。

 

「それよりソイ君」

「それよりで僕の危険は見逃されていいものかな?まぁ聞くけど」

「ココ君は私の知り合いではありますけど、あのオチョとかいう悪魔、見覚えあるです?」

「え、いや、無いけど」

 

 幸いなことにこの悪魔界は見た目の違いが大きい。お陰様で見分けが付きやすくて助かるのだけど、完全に見覚えがないのだ。

 

 まぁ何故かと言うと。

 

「──微かに媚びぞ売るべき存在の匂いがしたのですよねぇ?」

 

 媚びを売る対象が分かる勘。

 今のところ外れたことはない。

 

 悪魔学校(バビルス)の一年生は全て視認しており、誰に媚びを売るべきか売らなくても良いのか、私は文化祭以降しっかり調べた。学校内にもスパイが潜んでそうだったからね、あのアミィ・キリヲ先輩とか。

 

 だからあのオチョとかいう悪魔。

 会ってたら私絶対覚えていた。

 

 ……記憶違いにしてはちょっと引っかかるな。

 

 

「口ぶりからすると、問題児(アブノーマル)以外での優勝候補で問題児(アブノーマル)クラスを標的にしている生徒狩り、ポイントもたんまりと持ってそうじゃない?」

「うん?」

「しかも今こちらも手を出されたわけで?やり返す名目もある。まぁ悪魔的には必要ないんだけど」

「そう、ぞりね?」

「で、僕らあの悪魔学校(バビルス)教師陣相手に暗殺をしてのけた気配を消すことにおいてザインレベルのコンビじゃん」

 

 ソイ君は口角を吊り上げた。

 

「追ってさ、ポイントがっぽり、丸ごと取っちゃっても──心痛む?」

 

「──ソイ君!!」

 

 私はソイ君に抱きついた。

 

「この悪魔!最高ぞり!」

「悪魔1年生にまだ負けるつもりは無いからね」

 

 銃を抜いた者は撃たれる覚悟があるやつだけ。

 さぁ生徒狩りよ。獲物に狩られる覚悟はよろしいかな?

 

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