もう万策尽きたので取りえずバレない事を祈りつつ更新してみる。
あっ、今回で書き溜めストック終了です。
「ふひっ、ふひひっ…!」
美鈴の言葉を聞いたフランはそんな不気味な声を漏らす。
よく見ると、身体全体がブルブルと震えているのが分かった。
それは使用人風情が自分に楯突いてきた事に対する怒り故か?
「あっはっはっは! すごいよ美鈴、ほとんど正解だっ!」
―――否、歓喜のあまり笑いが収まりきらなかった為だ。
「いや~、まさか美鈴がここまで汲み取れるとは思わなかったよ~。お昼寝ばかりしてる怠け者ののんびり屋さんじゃなかったんだね♪」
「はははっ、伊達に数千年単位で生きていませんよ。………というか妹様からの私の評価ってそんな感じなんですね…」
軽口を叩きながらも内心自分の予想が当たっていた事にほっとする美鈴。啖呵は切ったものの自分の見当違いの可能性もあった為少し…いや、かなりビビッていたのだがとりあえずは生きながらえた様で一安心だ。
……その代わりフランが普段自分の事をどう思っているかを目の当たりにして若干に傷つきはしたが、自業自得である。
「うんうん、美鈴が予想よりもお利巧さんで私は嬉しいよ―――――――これなら、私の計画を話しても問題ないね♪」
「計画、ですか…?」
フランの言葉に、美鈴は思わず疑問の声を漏らす。
自分がこうして生かされたからには何かをやらされるのだという事は予想していたのだが、フランの中では既に計画と呼べる段階までに何かを企て、そこに自分を取り込む算段まで立てていたという事までは流石に想像がついてなかったのだ。
「うん、計画。…それを話す前に、美鈴がさっき言ってた事の
フランの言葉に美鈴は黙って頷いた。
そう、フランは先程
「まぁ、訂正って言っても一か所ぐらいなんだけどね。美鈴は私がこの状況を望んで作ったって考えてたみたいだけど……正確には
「………と、言うと?」
「えっと、美鈴はさっき濁してたけど…美鈴もキスした時に浮かんできたんだよね、彼との記憶。あと、それは多分一つだけじゃなく複数あるよね?それも全部が本物だと思ってる。
フランの問いに美鈴は静かに頷いた。
「あっ、やっぱり美鈴も一つじゃないよね~。実は私もい~~っぱいあるんだ、彼との記憶」
そう言ったフランの顔がほんのり赤色を帯びたのに美鈴は気が付いた。
視線は美鈴を見ている様で何処か宙を見ており、まるで別の何かを見ているかのようであった。
その表情は、“恍惚”。美鈴にはそうとしか表現できなかった。
「あぁ、思い出すだけでも最高の日々だったわ…。私達の実のお兄様だった彼。許嫁の吸血鬼一族で私の幼馴染だった彼。ヴァンパイアハンターとして対峙したけど最後は色々あって愛の逃避行を繰り返した彼。私専属の従者で禁断の愛を一緒に育んだ彼。時にはお姉様から寝と………三角関係の末に勝ち取った事もあったわね」
「今、寝取ったって言いかけませんでした?結構えげつない事してません???」
「仕方ないじゃない。愛が止まらなかったんだもの」
詩人の様な表現であるが割とクズの発言をするフラン。
………実は自分も同じ立場なら似たようなことをしているだろうと美鈴は心の中で激しく頷いているのは内緒の話である。
『人の心とかないんか』と? ははっ、御冗談を。彼女達は妖怪だよ。
「話を続けるわね。そんな感じで私も多くの彼との記憶を見たわ。…でも、同時にこうも思ったの。
複数の記憶。そのどれもが本物であると確信しており、全て幸せな
ならば、複数ある結末の中には、自分以外と男が結ばれる
実際にフランは男とのいくつもの記憶の中で、レミリアと一人の男を取り合う光景を見ていた。自分の記憶では道のりは困難であったが無事男と結ばれる結末であったが、もしかしたら恋に破れ、男がレミリアと結ばれる結末もあったのではなかろうか?
レミリアだけではない。咲夜やパチュリー、美鈴、小悪魔と結ばれてしまった結末もあったのかもしれない。
「考えただけで馬鹿馬鹿しい、こんな考えが浮かんだ私自身に殺意を覚えるくらいに屈辱的よ。―――でも、ありえない話じゃないでしょう?」
複数の記憶が突然浮かび上がるというだけでも無茶苦茶な話なのだ。他の者にもその現象が起こらないとは言い切れなかった。
心に垂らされる一滴の不安。たかが一滴だけだが、それが鉛のように重くのしかかってくるように思えてくる。
「不安はね、残しておいては駄目なの。だって、疲れるもの。ずっとその事が気になって、精神が参っちゃうわ―――だから、確かめる必要があった」
そう、不安ならば確かめればいい。確認すればいい。検証すればいい。
そうすれば不安が本当に脅威となるか知る事が出来る。対策が出来る。
何、難しい話ではない。だって―――
「本当、美鈴が居てくれて助かったよ♪」
―――目の前に都合のいい実験体が居たのだから。
「つまり、『どっちでも良かった』というのは……」
「そ、メインの目的はあくまで『本当に他者にも複数の記憶が浮かび上がって来るか確かめる事』。だから美鈴が言ってたこの状況を望んでいたって言うのはちょっと違くて、『なったらなったで別にいいや』って感じかな?別に美鈴に記憶が浮かんで来ようが来まいがそれによって少し計画を変えればいいだけだし、正直そこまで重要視してなかったよ。……あっ!でも美鈴が思ったより考えられる子って分かったのは収穫だったよ~!これからは手数も頭数も必要だからね~」
「………それで、その肝心の計画というのは?」
自分が泳がされた理由に思う所はある。しかし、そんな事よりも美鈴はフランの言っている計画の方が気がかりであった。
何故なら、その計画は十中八九
「まぁまぁ、そんなに気張らないでよ~ちゃんと説明してあげるから♪……じゃあ美鈴――――」
――――彼を、共有しよっ
「………それは、私とフラン様で彼を囲う、という意味でしょうか?」
嫌だ。美鈴の脳からすぐに拒絶の意が出た。
脳だけではない。全身に妙な力が入り、自分の膝で眠っている男を守れ、他の雌に髪の毛一本すら渡すものかと言っているのを感じる。
今すぐに彼を抱えて誰も知らない場所に逃げてしまいたい。そんな欲求に支配されそうだ。
しかし、美鈴はわずかに残った理性で何とか耐えていた。もしここで欲望のままに行動しても、目の前のフランから…絶対的強者から逃げられないという事を理解していたからだ。
『逃げられると思ってる?』
フランは何も言っていない。しかし、全身から放たれているプレッシャーが美鈴には確かに伝わっていた。
『大魔王からは逃げられないんですよっ!』と緑の巫女が酒の席で悪酔いした際に叫んでいたのを思い出す。あの時は意味が分からずに気にならなかったが、なるほど。確かにこれは逃げられない。“逃げる”という選択肢が出てこない。
美鈴にはフランの話を聞く以外の選択肢はないのだ。
「う~ん…それはどうなるか分からないな~。最低私達2人、最高で5、6人で共有って形になるって感じ?」
最高で5、6。美鈴はこの数字に心当たりがあった。
「それは、
その数は、紅魔館に住む主要メンバーの数と一致していたのだ。
「そういう事!…もぅ、そんなに嫌そうな顔しないでよ~。この話は美鈴にとっても利があるんだから」
彼との生活を天秤にかけるほどの利?
そんなものあるわけがないと美鈴は思わず鼻で笑う。
そんな美鈴の反応を無視し、フランは話を続けた。
「まずこの場で彼との記憶を持っているのは私と美鈴だけ。それならそれでいいのだけど…でも、あの現象って多分私達だけに起こる事じゃないよね?いや、言い方を変えようかな―――――
美鈴は咄嗟に幻想郷に住まう者達が頭に思い浮かんだ。
紅魔館はもちろん、人里、冥界、地獄…駄目だ。数が多すぎる。
こんな何の変哲もない森の中だって様々な妖怪が潜んでいるのだ。数を考えるのだって馬鹿馬鹿しくなってしまう程の様々な者達がこの幻想郷内にはいる。
はたして、そんな馬鹿みたいな数の内、何人が、誰が彼との記憶が浮かぶ?―――――
「もちろん私達だけって言う都合のいい可能性もある。でも、逆に幻想郷の全員が彼を狙うって事もあり得なくはないよね?その場合はどこに行く気なの?私達が彼との記憶が浮かんで来たきっかけって状況的には多分キスがトリガーになってると思うけど、それって全員共通なの?触れただけで、視界に収めただけで記憶が浮かんで来るタイプも居るかもしれないって考えたら結構場所は限られてくるけど、そこでちゃんと生活できるの?」
幻想郷は外の世界から隔離された土地。とはいえ多くの人間と妖怪が共存できている為狭い土地ではない。
しかし、幻想郷は結界に守られており外の世界には一部の妖怪しか干渉はできないようになっている、閉じられた世界でもあるのだ。
もしかしたら探せばまだ誰も見つけていない地は幻想郷にもあるのかもしれない。だが、この閉じられた地で虱潰しに探されればいつかは見つかってしまうだろう。
「というか場合によって他の雌と彼の取り合いになると思うけど、美鈴は彼を守り切れるの?…あぁ、別に美鈴が弱いとか言う意味ではないよ。ただ、
四季のフラワーマスター、幽冥楼閣の亡霊少女、神隠しの主犯、そして普通の魔法使いに博麗の巫女。
パッと思いつくだけでも紅魔館の門番風情を赤子の手を捻るようにいとも簡単に鎮圧できる存在がこんなにも居るのだ。
もちろん彼との甘い生活をする為ならばその困難に立ち向かう覚悟はある。しかし、覚悟だけでは何も成し遂げられないのが現実であると美鈴は痛感していた。
「……確かに、フラン様の言う通り、私一人で彼を守りながら幻想郷中を逃げ続けるのは難しいですね。だから誰かと共有し、一緒に守れということですか?」
「大正解ッ!私だったら並みの人間や妖怪なら対応できるけど、お姉様レベルの大物が来られたら面倒だからね~。だったら紅魔館内で囲っちゃった方が安全な場所も得られて一石二鳥というわけ!」
「…先程共有するのは5,6人とおっしゃってましたが、それは何故です?屋敷には妖精メイドも多数おります。それらはいかがなさるおつもりで?」
「う~ん、共有を提案しておいてなんだけど、やっぱり私も彼との時間は多い方が良いんだよね。なら共有するのは最少人数が良いんだよね。妖精メイド達は弱っちいから排除する方法は山ほどあるんだけど、お姉様やパチュリー達は簡単にはいかないからね~。能力的にも実力的にも本当に厄介。なら逆に味方に付ければこれ程頼もしい守りもないかなって」
「記憶が浮かんで来なかったら、それはそれで協力だけして貰うからそっちの方がいいんだけどね~」と続けるフラン。
確かに、理にかなっているかもしれない。ここまでフランの計画を聞いた美鈴はそう考えていた。
男との2人きりの生活も捨てがたいが、紅魔館という整った環境とそこの住民という最強のセ〇ムによって彼を囲い、安全に愛を育める。それも悪くはない、いや、今の状況ではベストアンサーと言っても過言ではないかもしれない。
しかし、美鈴はフランの提案に
「…妹様、質問よろしいですか?」
「ん~、なぁに~?」
「先程フラン様が言った通り、私では彼を守りながら幻想郷を生き抜くのは不可能に近いです。――――でも、フラン様なら可能なのでは?」
それは、フランが何故この提案をするに至ったかの真意が見えてこなかったからである。
幻想郷の全てを敵に回して彼との生活を叶える。先程美鈴は想像しただけでその難易度の高さから諦めてしまっていたが、フランならば可能性があると考えていた。
フランは幻想郷でもトップクラスの戦闘力を誇る実力者だ。恐らく美鈴が先ほど恐怖した強者たちと対峙しても後れを取ることはないだろう。
おまけに彼女には幻想郷の誰もが警戒する秘密兵器を持っている。その名は“ありとあらゆるものを破壊する程度の能力”。その名の通り万物をあらゆる法則を無視して破壊できるというとんでも能力だ。
彼女の実力と能力を最大限に生かせば、そんな強者たちと対峙しても何とでもなるのではなかろうか?というか対峙する前に不安になる人物を能力で暗殺してしまえばいいのではないか?なんなら紅魔館の住民だけでも何とかしてしまえば、館という安全地帯も楽に手に入るのではなかろうか?
もちろん先程の話でフランは意外と慎重派である事は理解している。しかし、『彼との甘々2人きりの思い通りの生活』という馬に人参レベルのご馳走が目の前にぶら下がっているのだ。多少のリスクはあれど、何故そちらの道を選ばずに他の雌と同じ男を共有するという屈辱的な道に妥協したのか理解できなかったからだ。
「あ~…確かにそれも考えなかったわけではないよ?やっぱり彼を独り占めできるってそれだけのリスクを侵すだけの価値はあるからね。……でもね、それを実現した場合すっごい厄介な問題に直面する事に気が付いたの」
「………その、問題とは?」
緊張感から美鈴の顔に一筋の汗が流れた。
フラン程強大な力を持っている吸血鬼でも男を独占するという事を諦めなければならない問題。それは一体何なのか?美鈴には想像もつかなかった。
しばしの静寂がこの場に流れる。そして、フランは意を決したように語り始めた。
「それはね――――」
「――――私って、家事が全く出来ないのよ!!」
「………はぁ?」
美鈴はフランの言葉の意味が理解できず、思わずそんな言葉が出た。
かじ……って、あの家事だよな?あれがこの話と何の関係があるというのだ?それとも自分が知らないだけで、家事には他の意味合いがあるのだろうか?
「家事って…メイド達がやってるアレですか?」
「うん、それ」
自分が思ってる家事と同じだったわ…何言ってんだこいつ?
美鈴は心の中でそう思った。不敬ではないかって?口に出さなかっただけまだマシである。
「掃除、洗濯、食事の用意……もう今思いついたものは全部出来ないわね。だって今まで咲夜とか居てくれたからやる必要なかったんだもの、はっきり言って生活能力0よ私」
マジで自信満々に何言ってんだこいつ?
美鈴は心の中でそう思った。不敬ではないかって?口に出さ以下略
「そんな私が彼と2人きりの生活なんてしてみな?天国なのは最初の1週間で後々絶対に生活上不便な問題がどんどん出て来るから。私は別にいいけど、彼に不便な思いさせるのは論外じゃない」
あっ、それは解かる。
美鈴は心の中でそう思った。ようやく理解が得られた様で良かった良かった。
「それにさぁ…せっかくの彼とのイチャラブタイムを家事で消費されるのって嫌じゃん?それならある程度の協力者募って全員に仕事振って、自分は24時間365日彼とベッタリチュッチュな生活送れた方が私的に得なんだよね」
それは激しく同意。
美鈴は強く頷いた。ここまで4ターン、初期評から変わり過ぎでね?
「しかし、協力者と彼を共有するわけですから、どちらにしろ一緒の時間が減ってしまうのでは?しかも他の女と一緒なんて…」
「……はぁ~、美鈴は解かってないなぁ~」
それでも大きいデメリットがあると主張する美鈴に、フランは深くため息をつく。
そして出来は悪いが可愛い生徒に勉強を教える教師の様な顔で語り始めた。
「いい?男って言うのは、本能的に女を求めてしまうものなの。それは一人の愛する女性が居ても変わらない、他に自分が魅力的だと思ったら目で追ってしまう生き物なのよ。でも、それはしょうがない事よ。だって本能なんだもの、そこは責められないわ。……でも、愛は違う。愛は本能ではなく、彼自身の意思で向ける大切な感情だからね。だから他の女の元に行くのは許してあげるの。だって、それは愛じゃなくて性欲だから。愛情さえ私に向けてくれれば、それでいいのよ」
「どう、私って良妻に相応しい器でしょう?」と(ない)胸を張るフラン。
しかし、美鈴はその言葉に自分への挑発が含まれている事に気が付いた。
『お前にも情けをくれてやる。でもそれは
「……それは、逆に
見え見えの挑発。しかし、美鈴はあえて乗った。
『全てお前の好きに進むとは思うなよ』と
だが、その言葉には、もう一つの意味が込められている事をフランは知っていた。
「へぇ…それは『私の計画に乗る』って捉えても良いのね?」
美鈴の言葉は、自分への謀反とも捉えられる。しかし、フランにあるのは怒りではなく、嘲笑。
『やれるものなら、やってみなよ。……まぁ、出来るわけないけどw』という相手をどこまでも下に見た感情であった。
美鈴はそれに気が付いていた。しかし、もう彼女は選択を変える気はさらさらない。
「これから、いい関係になれそうですね。私達」
だって、その先に待つ
「ふふっ、これまで以上に。ね」
そう言いながらフランは右手を差し出し、何の迷いもなく美鈴はその手を取った。
目標は同じ。しかしお互いに譲る気はない。
そんな奇妙な共犯関係が、今ここに成立した瞬間であった。
「……えっ、何そのお腹は……認知…!?」
なお、話題の中心である件の男は自分の真上でとんでもない協定が結ばれているのにも関わらずまだ意識を取り戻していないのであった。
次回 紅魔館編、開幕ッ!!
………まぁ、多分やらないんですけどね、初見さん(syamu)
はい、最初に触れた通り書き溜めはこれで終了となります。
じゃあ俺、ギャラ貰って今度こそ失踪するから…
また気が向いたら書くだろうと思ってるだろうが今度こそ失踪するからなッ!(フラグ)
こちとらswitch2ようやく手に入れたにも関わらず積みゲー多すぎて忙しいんじゃぁ!
まさかこんなに早く手に入るとは思わんくてサマーセールでロックマンエクゼとユニコーンオーバーロード買っちまったのが運の尽きよ……早く消化してバナンザとおみせっちプレイせな(使命感)
私は好きにした。君らも好きにするといい(続き任せた♡)
ここまでご拝読ありがとうございました