東條希が感謝を伝えに行く話

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このSSはこちらのSS
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https://syosetu.org/novel/264358/#last_volume_link

「星達のオーケストラ」の3次創作となっています

以前にこちらのSSの3次創作合同で寄稿させてもらった話
↓↓↓↓
https://syosetu.org/novel/336127/12.html

と同じ世界線で(まさか本筋に取り入れてもらえるとは思わなかったです)ございまして、さらにこの話の後日談
↓↓↓↓
https://syosetu.org/novel/337207/1.html

の、さらに後日談というお話です

よく分からない時系列になっていますがよろしくお願いします


【挿絵表示】





あの日の光が、背中を押す。

 

 

 

 

春の温もりを感じる平日の昼。

東條希はある人物を待っていた。

彼女とは数年ぶりに会うので、表出はしていないが心が踊っている。

とある調査を依頼していて、その結果報告……というわけだ。

何かやましいことがあるという訳では無いが、有識者である彼女の力を借りたいと思い、相談をしてみたら調べてみるねと言われたわけだ。

 

平日ではあるが、学生は春休みに入っているであろうこの時期。

待ち合わせ場所付近にはキャリーケースを引く人、電話をしながら走るスーツ姿の人、友人と談笑しながら通り過ぎていく人……様々な人々がいる。

それを横目に希はぼーっと空をながめている。

 

希は待ち合わせ時間ぴったりよりも、ある程度時間に余裕を持って来た。

自分が待つぶんには構わないが、相手を待たせてしまうというのに抵抗感があるからだ。

今のところ、遅れるという連絡もないので、このまま待ち続ける。

流れていく雲を見つめていること数分、彼女がやってきた。

 

「希ちゃ〜ん!!」

「おっ!花陽ちゃ……ぁっ!?」

 

希の姿を見かけるなり、小泉花陽が抱きついてきた。

 

「えへへ……久しぶり……♥」

「も、もぉ……びっくりしたやんっ……」

「ごめんねっ……でも、なんか抑えられなくって……!」

「相変わらず、甘えんぼさんやねぇ〜♪」

 

胸に埋まっている頭を撫でつつ、花陽を宥める。

正直なところ、ここまでスキンシップが激しい子だとは思っていなかったが、時折こうして甘えさせてあげたこともあったので、少し懐かしい気分になった。

花陽が顔を上げ、目と目が合うと微笑んでしまう。

この笑顔を見れただけでも、希は嬉しかった。

 

「ほんと、元気そうでよかった……」

「えへへ、おかげさまで……希ちゃんは?」

「うーん……ぼちぼちやねぇ、なんとか今日もこうして生きてるよ」

「……なにかあったの?」

「そんな生き死にに関わることじゃないよ〜?ただ、大人になって生きていくって、色々大変だなぁって」

「あぁ、そういう……そう言われたら私も色々あるかなぁ……」

「そう?んじゃっ、とりあえずどこかいってお話しよか?……あとそろそろ離れてもらうと……」

 

ありがたいんだけど、と続けようとする前に花陽は胸から離れた。

 

「はっ……ごめんねっ!つい……」

「ううん、平気平気……でも、流石に人目が……ねぇ?」

 

そう言い終わるとみるみるうちに花陽の顔が紅く染る。

 

「ごごごご……ごめんなさいっ……周りが見えてなくって……!」

「あはは……そんだけうちに会えて嬉しいってことやね?そう思ってくれてるんだったら、うちも嬉しいかなっ?」

 

そう言われながら再び頭を撫でられ、花陽は再び恥ずかしくなってしまう。

だけどこうして、受け入れてくれるのが、希の好きなところでもあり、姉がいたらこんな感じなのかなとも思える要因ともいえる。

……昔はたまにセクハラもされたけど。

 

「うぅ……気をつけます……」

「それじゃっ、適当に移動しよか?」

 

うん!と返事をし、花陽は希と並んで歩き始めた。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

徒歩で移動すること十数分。

適当なカフェでお茶をすることにした。

日差しが差し込む席に案内され、注文を終え、本題に入る。

 

「それで、頼んでたことなんだけど……」

「ばっちりだよ〜!正直、なんで?って思ったけど……」

「あぁ、ごめんね……ちゃんと話しとくべきだったかな?」

「ううん、何か事情があるなら……」

「そこまで隠したいってわけじゃないんだけど……それじゃあ聞いてくれる?」

「うんっ!気になってたし」

 

これから話を切り出そうとした時に、注文していたものが配膳される。

ある意味ナイスタイミングではある。

 

「ちょっと前にねぇ、神社の手伝いをしたんよ〜」

「今でも続けてるんだ?」

「恒常的にってわけじゃなくて、時たまね?それでお賽銭箱の前にお財布が落ちてて、紆余曲折あって多分高校生くらいかな?その男の子に返すことが出来てねっ」

 

この話をするのはこれで二人目だ。

 

「それでその子……なんか悩んでるみたいだったからお話聞こか?って言って聞くことにしたんよ」

「さすがだねぇ……こう……洞察力とか、コミュ力というか……」

「えりちにも同じようなこと言われたよ」

「今でも会ったりしてるんだねぇ」

「まぁね〜……このことは電話で話したんだけどっ、それでその子が今回調査してもらった子ってわけ!」

「なるほど……そんな出会いがあったんだ……」

 

花陽は希よりもアイドルのことについての知識は上回っているといえる。

だからこそ、なぜその男の子について知りたいと言ってきたのかということが疑問だった。

彼はスクールアイドルのサポーターなのだから。

 

「調べた結果を話す前に、その子とどんな話したのかも気になる〜……」

「そやねぇ、彼はスクールアイドルのサポーターさんで、東京大会でいいとこまでいったんだけど優勝出来なくて、皆はすごいパフォーマンス出来たけど、自分にもまだやれることがあったんじゃないかみたいなこといって……」

「うーん……責任感がある子なんだねぇ……」

「多分ね?真面目そうな子やったし」

 

紅茶を啜り、一呼吸置いて希が続ける。

 

「不安な気持ちも多かったみたいなことも言っててねぇ、神社に来たのはかつて存在していたレジェンドスクールアイドル縁の地だから行ってみたらって仲間に言われたらしいんよ」

「れ、レジェンド?????」

「あはは……またえりちと似たようなリアクション……」

 

苦笑いを浮かべる希と、驚く表情の花陽が対照的になっている。

 

「だからね、変わろうって頑張りすぎないのもよくないよってアドバイスしたり、多分そのレジェンドさんたちも何もかもトントン拍子で物事が進んだわけじゃないだろうし、君は君のままで無理しない方がいいんじゃない?って言ったんよ」

「やっぱ……そういうこと?なんかこう……そういうような称号?付けられてるのは分かるんだけど、なんか……むず痒いねぇ……」

「やっぱり?まぁあそこ使ってたのはうちらだけじゃないだろうけどもしかしたら……って思ってね」

 

うんうん、と花陽が相槌を打つ。

 

「うちもかつてスクールアイドルに関わってたことがあって、君と同じようにサポートしたりして、結果的にうちも……って話もしたんよ」

「えっ?じゃあ素性を……?」

「まぁね〜……その子が神社に来るように勧めたお仲間さんが多分花陽ちゃんみたいにスクールアイドルのことも詳しい人みたいだから、彼が持ってたノートにサインを描いたんよ」

「何気にすごいことしてない!?」

「彼がうちのこと知らなくても、お仲間さんに響いてくれたらいいなって思ったんだけど、どうやら名前くらいは知ってくれてたみたいでね……正直、おこがましいかなとも思ったけど、うちらはそれなりの知名度はあったから……」

「なるほど……すごい出会いだぁ〜……」

 

気持ちを落ち着かせるために花陽も紅茶を啜る。

 

「それでその子はどうなったの?」

「憑き物が落ちた……みたいな感じ?まぁただの巫女さんが言うことなんて響かないかもしれないけど」

「希ちゃんはただの巫女さんじゃないんじゃないかなぁ……ありがとね、話してくれて」

「ううん、うちの方こそ聞いてくれてありがとねぇ」

 

どういたしましてと返し、今度こそ本題に入る。

 

「なんか……色々と衝撃だったけど、私が調べたの、話しても大丈夫?」

「うんっ!自分でも調べたんだけど……よくわかんなくて……」

「アイドルそのものだったらプロフィールとかも出てくるけど、サポーターさんだとね……」

 

そう言いながら花陽はタブレットを取り出し操作する。

 

「多分ね、その子がサポートしてるスクールアイドルはこの『Liella!』ってグループなの!」

 

机の上にタブレットを置き、解説を始める。

 

「結ヶ丘って学校のスクールアイドルでね、どうやら一時期は廃校の危機にあったみたいで……」

「どこかで聞いた話やね……」

「やっぱそう思うよねぇ……それでまだ結成して1年経ってないグループなんだけど、彗星のように現れて優秀な成績残したんだよっ」

「ほぇ〜……みんな魅力的な子ばっかりやねぇ……」

 

タブレットに表示される5人のアイドルの画像を見ながら希が呟く。

 

「すごいんだよー?みんなそれぞれ違った魅力があるし、なにより可愛いし楽曲もパフォーマンスもいいし!……でもね、今回の東京大会では優勝出来なかったんだよね」

「壁は厚かったんやねぇ……」

「だから来年はもっともっとパワーアップしてくるんじゃないかなぁって私は思ってるよっ!メンバーがふえたりするかも!」

「なるほど……そういう可能性もあるんやねぇ」

「それでねっ、希ちゃんがあった子は〜……この子じゃないかな?」

 

花陽は話しているうちにタブレットを胸元で操作し、目的の画像を表示してから再び希に見せる。

そこには先程まで表示されていたLiella!の5人と談笑している茶髪の中性的な風貌をした子が映っていた。

しかもタキシードを着て。

 

「そうそうそう!この子この子〜!」

「よかったぁ……合ってて……さっきも言ったとおり、この子はあくまでサポーターだからそこまで写真に写ってないんだよね……」

「じゃあこれは偶然撮れた写真なん?」

「うんっ、ラブライブ!の中でラップを取り入れた曲という課題が出たことがあってね、多分その時の写真だと思う」

「なるほど……」

 

彼には悪いが、少し……着させられてる雰囲気が感じられてしまう。

 

「それでね、名前は『東音羽』くんっていうみたいなの」

「あー……『あずま』呼びだったんやねぇ……」

「うんうんっ、ご両親も有名な音楽家さんらしくて、私も名前くらいは聞いた事あって」

「東……ってことは」

「多分今希ちゃんが思い浮かべてる人だと思うよっ」

 

希もそこまで音楽への有識者というわけではないが、東という苗字の音楽家には心当たりがある。

 

「へぇー……不思議なこともあるもんやねぇ」

「私も調べててびっくりしたよ〜……こういう点と点が繋がる感覚を味わったのも久しぶりだし」

「なんだか……とってもおこがましいアドバイスしちゃったかも……?」

「あはは……気持ちはわかるよ……でも、知らなかったからこそ出来たアドバイスなんじゃない?」

「ん〜……」

「希ちゃんなら、そういう肩書きとかじゃなくってその人自身を見てくれるから、仮に有名な人のお子さんだって知ってたとしてもちゃんとアドバイスしてくれそうだけど……!」

「そう?過大評価じゃない?」

「そんなことないよ!優しく受け止めて誰かのために頑張れるような希ちゃんが、私は好きだよー?」

 

花陽の屈託のない青空のような笑顔を見て、希もついつい微笑んでしまう。

 

「もー……そんなこと言われたら照れるやんっ……」

「えへへ……」

「うちも、花陽ちゃんのことだーいすきだよ?」

 

お返しとばかりに、優しい手つきで頭を撫でる。

 

「えへへ……相思相愛だね……!」

「ありがとね……本当に……」

「どういたしまして……!」

 

気が済むまで、撫でて撫でられた。

 

「それにしても、さすが花陽ちゃんやねぇ、こうしてちゃんと情報もわかったし」

「えへへ……アイドルが好きなのは昔も今でも変わらないからねっ」

「このLiella!以外に注目してる子達とかおるん?」

 

そうだねぇ〜……と相槌を打ちながら花陽は顎に手を当て目線を上に逸らす。

 

「私が注目してた子達沢山いるんだけどっ、ピックアップするとしたら〜……」

 

机の上に置いているタブレットを操作しとある画像を見せる。

その画像には11人のスクールアイドルがいた。

 

「まずはこのグループかなっ」

「へぇ〜……結構多いんやね」

「この時は2つのグループが一緒にパフォーマンスした時のもので、えーっと……この2人がSaint snowってグループなの」

 

人差し指で囲まれた2人を見て、希は親族なのかという印象を受けた。

そうじゃなかったら偶然にしても似すぎている。

 

「それで他の子達はAqoursってグループで活動してた時期はちょっと前なんだけど、切磋琢磨しあったり影響与えあったりしてたみたい」

「そっか〜……なんだかうちらみたいやね」

「そうなんだよ!詳しいことはよく分からないけど、浦の星?って学校が廃校になっちゃうのを止めるために頑張ろうって活動してたのがこのAqoursってグループみたいなの」

「そんなところまで!?」

「びっくりだよねぇ……残念ながら、浦の星は統廃合されちゃったらしいんだけど……」

「そっかぁ……」

「でもね、最後にラブライブで優勝して浦の星って学校があったって名を刻んだっていう〜……生き様?はすごかったんだよ!」

「ほんと、それぞれのドラマがあるんやねぇ……」

 

浦の星だけじゃなく、スクールアイドルの中には自分たちのように廃校を止めようとしてなった後輩たちもまだまだいるかもしれない。

でも、みんながみんな音ノ木坂のようになれたわけじゃないだろう。

希は少し胸がキュッと締め付けられる。

 

顔に出てしまったのか、そんな様子を見て花陽は敢えて変える。

 

「うんうんっ、あと私が注目してるのはこの、Sunny Passionってグループもかなっ!」

 

再び操作されたタブレットが机の上に置かれる。

 

「さっき少し話題に出た東京大会で優勝したグループなんだけど、Liella!もほんっとすごくって、正直どっちが優勝してもおかしくないってくらいだったんだけど、やっぱり壁は厚かったというか……」

「ほー……花陽ちゃんみたいな有識者から見てもそんなハイレベルだったんやねぇ」

「年々レベルは上がってってるよー?あとねっ、こう言っちゃ失礼かもしれないけど変わり種の学校もあって……」

 

スライドされた画面に映るのは13人のアイドルだろうか。

 

「ほう……これはまた……」

「虹ヶ咲学園ってとこの子達なんだけど、皆がソロアイドルで基本的にはグループとして活動してないんだよねっ」

「そういうのもありなんやね」

「それにラブライブには出ないでそれぞれの好きを表現してる子達なの!」

「それはたしかに変わり種やねぇ……」

「もちろん、ラブライブに出て競い合って高め合うというのもいいけど、こうして競い合うことが全てじゃないって子達も話題に上がってきて、スクールアイドルというものの可能性?も広がってきてると思うんだよねっ」

「花陽ちゃん、スクールアイドル評論家としてもやっていけるんじゃない?」

「う、うーん……そこまでいくと気が重い……かなぁ……」

 

苦笑いを浮かべて花陽は否定するが、希は本心で言っている。

 

「色々と話を聞いて、今不思議な気持ちになってる……」

「不思議?」

「実際はどうか分からないけど、その……東くんにμ'sはその後のスクールアイドルにも影響与え続けてると思いますーって言われたんよ、だから花陽ちゃんの話聞いてて、その子たちの中にうちらの影響受けてくれた人もいるのかなぁ……って」

「なるほど……」

「なぁんか、彼にお礼を言いたくなってきちゃったなぁ」

「お礼?」

「色々と思い出させてくれたり、気づかせてくれたきっかけだからね……まぁ直接学校に出向くわけにはいかないけど……」

「そりゃあ……ねぇ…………それじゃあ、こういうのはどう?」

 

ピン、と左手の人差し指を立てて花陽が提案する。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

希はワイヤレスイヤホンを付けながら電車内でとある動画を見ている。

そんな様子を隣に座っている花陽は微笑みながら見つめている。

 

動画が終わり、イヤホンを外すと先に花陽が話しかけてきた。

 

「どう?すごかったでしょ?」

「うんっ……5人の歌声やパフォーマンスはもちろん、ステージ演出もすごかった……それに、デジャヴというか……」

「やっぱり?私もこれは……あの時と同じ……!!って思ったよ!」

 

花陽が希に見せていたのは東京大会最終ステージのLiella!の映像だ。

今向かっている目的地に着くまでにこれだけは見ておいてと言われて見ていたわけだ。

 

「にしても、これだけのパフォーマンスで優勝出来なかったなんて……言ってたとおりレベル上がってるんやねぇ」

「見てる人の目も肥えてきてるだろうしねぇ……私達もあの頃は手を抜いていたというわけじゃないけどっ、あの頃の私達が今のスクールアイドルの環境で大会出たとしてもいい成績残せるかどうか……」

「そうやねぇ……」

 

そんなことを話しながら電車に揺られていると目的地の駅に着いた。

 

花陽が提案したのは『聖地巡礼』だ。

元々は俗世から離れて宗教の聖地に行くという意味だが、転じてドラマのロケ地、アニメのモチーフになった場所に行くという意味も込められている。

スクールアイドルの世界でも、練習に使っていたところやライブに使ったところに行って想いを馳せるという聖地巡礼も浸透してきていると希は聞いた。

初めは理屈がよく分からなかったが、東音羽くんが神田明神に来たのもそれに含まれるねと言われ、ニュアンスが分かったようだ。

 

これから巡礼するのがその最終ステージとなった場所というわけで動画を見て予習したというわけである。

直接学校に押しかけるわけではないが、近くまでは寄れるわけだ。

駅から少し歩くと、ステージとなっていた場所周辺まで来た。

 

「さっき見たばっかりだからというのもあるけど、こう……ここにあの子達がいたんだって言うのが分かるような……」

「そういうのが聖地巡礼の楽しみでもあるんだよっ、私達の活動が終わったあとも神田明神だけじゃなくて音ノ木坂に巡礼しに来る人も結構いたらしいし」

「高校球児をスカウトしにくるプロ野球の人みたいやね」

「それはちょっとわからないけど……」

 

周辺を歩いていると、希の中には様々な思いが駆け巡っている。

自分が出会った彼とその仲間たちはこの街で、この場所で日々を紡いでいるのかと。

学生が日々を紡ぐのは校舎内だけじゃなく、街の中全体……はてまたは海外にまで広がることもある。

 

「希ちゃん?」

「……あ、ごめん、ちょっとね……うちらも色んなことあったなぁって」

「まぁね……ことりちゃんのメイドカフェで修行したり穂乃果ちゃんと海未ちゃんがすれ違っちゃったり山で合宿したり……」

「どれも大切な青春の1ページやね……でも、うちらのファンだった人達はそういうことを知らない……」

「流石にそこまではね」

「だから当たり前なんだけど、東くん達にもそういう彼らだけの世界で紡がれている世界もあって、うちが少しだけ入っちゃったって思うと、不思議な気持ちが増してくるというか……」

「東くんも同じ気持ちなんじゃない?まさかレジェンドと関われるなんてね」

「その呼ばれ方はやっぱりむず痒いねぇ……」

 

そう話しながら2人は聖地巡礼を続ける。

画面の中に映されていたステージはもちろん今現在はないが、ここでLiella!の5人がパフォーマンスをしていた……という雰囲気は感じられる。

 

それと同時に、この場所で悔しい想いを味わったのだろう。

 

 

 

 

気がつくと2人は結ヶ丘の近くに来ていた。

直接校舎に入るということはしないというのは決めているが、本当に来てもよかったのか……という気持ちも無くはない。

一目見て立ち去ろうとした時。

 

「あの……学校に何か用ですか……?」

 

ポニーテールを揺らした黒髪の女子生徒に話しかけられた。

 

「……あ!ごめんなさい、すぐ立ち去りますので」

「そうですか……ならいいのですが……」

 

応対する花陽は女子生徒をじぃ、と見つめてる。

 

「花陽ちゃん?どうかしたん?」

 

一拍置いて。

 

「あぁぁ〜っ!!!!」

 

突然の叫び声に希も女子生徒も驚いてしまった。

叫び終わったあと、花陽は女子生徒に食い気味に駆け寄り話し始める。

 

「やっぱり!!Liella!の葉月恋ちゃんですよねっ!?まさかお会いすることができるなんて!!恋ちゃんが入る前もLiella!は魅力的なグループだったけど加入したあとにパフォーマンスも曲の質も歌唱力も幅が拡がって感動しましたっ!!wish songもノンフィクション!!もStarlight Prologueもだいっすきですっ!!それに〜……」

 

早口でヒートアップしている花陽を希が宥める。

 

「ちょっ花陽ちゃん!落ち着いて落ち着いて……!!」

「あっ……!!……ご、ごめんなさいっ……つい……」

「もう……」

 

我に返り、気を落ち着かせることが出来たようだ。

花陽が言ったのを聞いて、希も今目の前に立っていて少し引いている女子生徒がLiella!の葉月恋ということに気づいた。

 

「ごめんねぇ、この子、アイドルがとても好きで……好きって気持ちを抑えられなくなっちゃったみたいで……」

「い、いえ……お気になさらず……正直なところ、圧倒されてしまいましたが、こうして真剣に好意的に思ってくださる方の意見を聞けたというのは貴重な経験です」

「ま、真面目……!!」

 

気迫に圧倒されたが、気持ちはきちんと伝わったようだ。

 

希は、こうしてここで恋と出会えたのも何かの巡り合わせだと思い、失礼かもしれないが彼女に頼みをすることにした。

 

「あの〜……少しだけ、聞いてもいい?」

「は、はい!」

「そんなに畏まらなくても大丈夫よ?……あのね、葉月さんが所属してるところに、男の子のサポーターの東くんって子がいるのは、あってるかな?」

「音羽くんのことですね、合っていますよ?」

「よかった……彼にね、伝言を頼みたいんだけど……いいかなぁ?」

「伝言……ですか?大丈夫ですよ?」

 

先程ではないが、恋はそう答える。

 

「ありがとう……!君と話したことがきっかけで、うちは大切な事を思い出せたから、ありがとうって、伝えておいてもらえたら嬉しいな」

「わかりました、伝えておきますね……失礼ですが、音羽くんとはどういう……?」

 

恋が疑問に思うのも無理はない。

恋達とは違って音羽はステージ上に立つわけではないので今のようにファンと話すという機会も少ないだろうから。

 

「ちょっと前にね、東くんと会って色々とお話したんよ。彼には多分……あの時の巫女さんって言ったらわかると思う」

 

希の答えに恋が固まる。

巫女……花陽……と呟きながら頭の情報を整理しているように見える。

それが終わり、点と点が繋がったかのように目を丸くし……

 

「も、も、も……もしかして……あなた方は……あのμ'sの……!?」

「あっ、知ってくれてるん?ありがとねぇ♪」

「これは……失礼しました、初めは気づかなくって」

「ま、まぁ……私がいきなり早口でまくし立てちゃったから……」

「いえいえ……それにしても本当に驚きました……どうしてここに?」

 

恋の質問に二人で答える。

 

「うちが花陽ちゃんにあの時会ったサポーターの子はどういう子だったのかなって調べて貰えない?って依頼を出してて、その結果報告をしてもらってて……」

「その中で直接お礼を言いたいけど流石に迷惑になっちゃうから、せめてライブをやった場所に行こうって話になってここに来たの」

「そうだったんですか……お二人が所属していたμ'sの伝説は私も耳にしています、廃校の危機を回避したとか、国内だけに収まらず海外にまでスクールアイドルというものを広めたとか……」

「やっぱ……伝説って言われてるんやねぇ……」

 

何度言われてもそのフレーズには慣れないものだ。

 

「メンバー内でもそのような話題が出ていて、特に一人スクールアイドルへの造詣が深い仲間がいて……」

「それって、唐可可ちゃんのこと?」

「はい!知ってくださってるんですね」

「もちろんだよー!かのんちゃんも、千砂都ちゃんも、すみれちゃんも!」

「ありがとうございます……!」

 

偉大だと思っている存在に認知されていて、畏れ多いのだろうか。

恋は時折目線を逸らす。

 

「可可さんも、スクールアイドルというものに憧れて日本に来てμ'sの映像等も見ていたそうです」

「ほー!そうなんや〜……」

「私が今こうして及ばずながら、スクールアイドルをやらせてもらっているのも可可さんがスクールアイドルの先輩方……つまりお二人や他の皆さんがいてくださったおかげなんです……!」

「そっか……なんだか、嬉しいなぁ」

「うちも……!こんな嬉しい気持ちになれたから、彼女にもお礼を言っといてもらえる?」

「あの、私からもちょっといいかなっ?」

「は、はいっ!」

 

焦りながらの返事に、ある仲間を重ね合わせてしまう。

 

「さっきは……そのっ、完全にファン目線で色々と言っちゃったけど、かつてスクールアイドルだった人からの言葉として受け取ってもらえるかなぁ?」

「はい、わかりました」

「東京大会……悔しい結果になっちゃったと思うけど、Liella!はきっとまだまだ成長出来ると思うし、次はきっと最高の結果を残せると思う!だから私も応援するね!」

 

恋の両手を花陽の両手が優しく包み込む。

かつての星空凛を諭す時の絢瀬絵里のように。

 

「うちも、応援してるよ!カードないから確実とは言えないけど、夢は叶うと思う!」

「……ありがとう、ございます……!なんだか、勇気が湧いてきました……希さんや花陽さんたちは、こうして誰かに夢や希望を振りまいてきたのですね」

「そんな大した存在じゃないけど……あ!そうだっ」

 

手を離しカバンを漁り、花陽はペンとルーズリーフを取り出した。

 

「希ちゃんの真似になっちゃうけど、こうして出会った記念に……ね!はいっ、どうぞ!」

 

恋に手渡されたものには花陽のサインが描いてある。

 

「……いいんですか!?こんなものを」

「うんっ!むしろ今の私たちにできることって、これくらいしかないから……」

「あ!待って!うちも描く!一緒にいたって証拠にねっ」

 

ルーズリーフの隅に小さい希のサインが追加される。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ありがとう……ございます……!まさか、こんなことになるとは……」

「ううん、気にしないで!」

「今を生きてるスクールアイドルの子たちをうちらは純粋に応援したいだけだから!ごめんね!ちょっとって言ったのに長話しちゃって!」

「いえいえ!貴重な時間をありがとうございました……!」

「スクールアイドルのこれからは、恋ちゃんたちのような今のスクールアイドルにかかってるからね!」

「じゃあね♪」

 

二人で恋の肩を軽く叩き、その場から立ち去った。

恋は二人が角を曲がって見えなくなるまでその姿を目に焼き付けた。

 

 

 

 

 

 

「いやー……びっくりしたねぇ」

「ほんとに……間接的だけど、東くんにもお礼を言えたし……」

「希ちゃんがあれほどのことをしたくなった気持ち、わかった気がするよ」

「でしょ〜?」

 

そう答えている希の顔には。

 

「希ちゃんっ……泣いて……」

「なんだか、ねっ、とっても心が暖かくなって……嬉しくて……」

「私も……えへへ、もらい泣きしちゃうよっ……!」

「ほんと……うち、スクールアイドルやっててよかった……!」

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

所変わってここは結々丘のスクールアイドル部室。

今は春休みだが新歓への準備期間として学校内にもそれなりに人がいる。

 

そして部室内には東音羽と唐可可がおり、数十分程前に見回りに行った葉月恋が戻ってくるのを待っている。

ほかの三人は用事があり先に帰宅した。

 

扉が開き、恋が入ってくる。

 

「あっ!おかえ……」

 

り、と音羽が紡ごうとしたが様子が明らかにおかしい。

 

「レンレン?どうしたんデスか?」

 

可可の問いに一拍遅れて恋が答える。

 

「あ、ごめんなさい……ただいま戻りました…………びっくりすることが起きてしまいまして……」

「えっ?大丈夫?」

「この紙……見てもらえますか?可可さんならすぐわかるかと……」

 

手に持っていたルーズリーフを机の上に置くと、可可は予想通りのリアクションをとった。

 

「えっ!?え??え、えぇ……ええええぇっ!?」

「恋ちゃんこれって……」

「はい……先程まで、μ'sの東條希さんと小泉花陽さんと偶然お会いしました……」

 

少し日本語が変になるくらい恋も動揺したということか。

 

「それは……そんなふうになるのもわかるよ……」

「ずるいデス〜!!!!またどうして可可は会えないのデスカ〜!!」

 

そう言いながら可可は恋の肩を連続して叩いている。

 

「ちょっ……痛いですよっ……!」

 

それを見かねてか音羽が一旦可可を後ろから抱き抱えるように止めた。

 

「一旦落ち着こう??ねっ??」

「ぬぐっ……ふぅ……ふぅ……気持ちを落ち着かせて……ふぅ……」

「どう?落ち着いた?」

「はい……なんとか……」

「それならよかった……」

 

とりあえず、3人とも椅子に座ることにした。

 

 

 

 

「でもほんとにびっくりだね……あの巫女さんとそれにもう一人に会うなんて」

「はい……正直まだ頭がふわふわとしているような……」

「おふたりはどうしてこの辺に来ていたのでショウ?」

「どうやら、私たちのライブを見てくださっていたようで、その時の痕跡を辿るような形で来ていそうです」

「聖地巡礼みたいなモノでショウか?」

「僕が神田明神行ってμ'sさんの雰囲気を感じるみたいなもの?」

「そう!まさにそれデス!」

 

音羽の返しに恋もそれがどう言ったものか理解出来たようだ。

 

「というか、のんたんもかよちんもLiella!のライブ見ていたんデスか!?」

「そのように仰っていましたよ?それに、音羽くんと可可さんに感謝の気持ちを伝えて欲しいと、伝言を頼まれていまして」

「えっ?可可に!?」

「僕にも!?なんで!?」

「まずは可可さんへの言葉を伝えますね」

 

はいっ、といつもより上擦った声を出して、可可は言葉に備える。

 

「私がμ'sさんの事を色々と聞いたのが可可さんの影響が大きいと話して、可可さんがスクールアイドルにハマっていなかったら、私はここにいないというお話をしたら、おふたりも喜んでいて……感謝していると仰っていました……!」

「お、おぉ……?」

「推測ですが、おふたりが活動していたことがこうして未来にまで影響を与えているというのが嬉しかったのではないでしょうか?」

「なるほど……でも、変な気持ちデス……可可はただ純粋にμ'sやA‐RISEといったレジェンドスクールアイドルの活躍を見て、憧れて、活動しているだけなのに……感謝されることなんて……」

「それでも、東條さんと小泉さんの表情はとても眩しかったですよ?」

「うぅ……それを見れたレンレンが羨ましい……」

 

二人の会話を聞いて音羽は苦笑いを浮かべている。

 

「そして、音羽くんへの伝言なのですが……前に東條さん……もとい、巫女さんに出会ったというのは私も聞きましたが……」

「うーん……僕も別に感謝されるようなことしてないんだよね……むしろ僕が相談乗ってもらったし」

「そのお話の中で、東條さんは大切な事を思い出せたようで、その事について感謝したいと仰っていました」

「そっかぁ……なんだか、実感がないなぁ……でも、役に立てたのならよかったよ!」

 

はい!と返事をする恋を見つめた後、可可はルーズリーフを手に取る。

 

「それにしても……またすごいものをいただいてしまいマシタね……」

「ものだけではなく、東條さんも小泉さんも、Liella!の事を応援していると」

「……そっか、だったら尚更がんばらないとね……気負いすぎない程度に」

「ハイ!新入生も……まだ入ってくるかは分かるマセンが、入ってきたらもっと更なる高みに飛び立てるようにしないといけマセンね!」

「そうですね……それと、私からも可可さんに改めて感謝の気持ちを」

「へっ?」

「可可さんがスクールアイドルをやりたいと思わなかったら、私は今こうしてスクールアイドルをやれていないですし、音羽くんともずっとすれ違ったままだったと思います。だから……本当にありがとうございます、可可さん!」

「うんっ、くぅちゃんがいてくれたら、僕もこうして大好きなみんなと一緒にいることが出来て、僕自身もやりたいことが見つかって、未来に進もうって思えてる!……ありがとね、くぅちゃん!」

 

二人の心からの笑顔と感謝の気持ちを受け取り、可可は目線を逸らし身体をくねくねと動かしている。

 

「ズルいデス……そんな、こと、言われたらっ……恥ずかしくなっちゃうじゃないデスか……!」

「そ、そんなに?」

「ふふっ……でも、可可も音羽やレンレン達にも感謝してマスよ?こうして大好きな人達に囲まれて……今が最高だと思えてマス!」

「私もです!」

「僕も!……なんだか、不思議だね……くぅちゃんは東條希さん達がいたμ's等のレジェンドスクールアイドルさんたちの輝きを見て、スクールアイドルを志して……輝きが繋がっていくっていうか……上手く言えないけど」

「伝えたいことはわかりますよ?」

「のぞみんやかよちんが放っていた輝きが今でも受け継がれて光っている……という感じデスか?」

「そう!そういう感じ!」

「ふふふっ、前に話したベテルギウスの話のようですね」

 

なんデスかそれは?という話になり、恋と音羽が説明をする。

知らないうちに受け継がれたスクールアイドルの輝きは、こうして知らない誰かの元に届き、また新たな輝きへと繋がっていくのだ。

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

「ふぅ〜……おなかいっぱい……♪」

「気持ちのいい食べっぷりやったねぇ」

 

結ヶ丘を離れ、二人は早めの夕食をとった。

二人が向かったのはもちろん焼肉屋。

焼肉が好きな希とごはんが好きな花陽の二人の要望を叶えられる絶好の場所だ。

 

「まぁね……久しぶりだったし」

「うちも一緒に誰かと焼肉行くのは久しぶりかなぁ」

「一人焼肉とか行くの?」

「たまーにね」

「なんか……大人……!」

「そう?」

 

お店から離れ、二人の足は駅へと進んでいる。

……のだが。

 

「なぁんか……まだ、帰りたくない〜……」

「わっ……!どしたん?酔ってるん?」

「あはは……かもねぇ……私普段あんまり飲まないから……」

「そうだったっけ?」

「うん〜……お酒といえば、何年か前の真姫ちゃんとことりちゃんの送別会……」

「あったねぇ、にこっちが今生のお別れかのように酔って大泣きしたの……」

「あの時は全部希ちゃんと絵里ちゃんに任せてごめんね……」

「大丈夫大丈夫!慣れてるから」

「そういう所も憧れちゃうんだよねぇ……」

 

そう言いながら花陽は希の左腕に巻き付く。

 

「なぁに?妙に積極的じゃない?」

「えへへへへ〜……まだ一緒にいたい〜……」

「もうっ……かわいいんだから……!」

 

腕に巻きついてる身体から伝わる鼓動から、生きているということを感じられる。

生きている上の縁は、様々な偶然が積み重なって形成されるものだ。

東音羽や葉月恋とも、様々な偶然が積み重なり出会えた。

そんな偶然に、希は感謝している。

 

「それじゃ、うちに泊まりに来る?」

「えっ、いいのぉ!?」

「おぉ……冗談のつもりなんだけど……明日も仕事あるんやない?」

「ないよ!」

「そっかぁ……うちもないから、ほんとに泊まる?」

「やったぁ〜!お泊まり会〜!!」

 

いつも以上にテンションが上がっている花陽を見て、家にあるお酒は飲ませない方がいいなと希は思った。

 

「それじゃあ教えてくれたスクールアイドルの子たちについて色々と教えてもらうお泊まり会……やね!」

「まっかせて〜!!えへへ〜……今夜は寝かせないよ〜??」

「もうっ……それだと変なムードになっちゃうよ〜?」

 

足は駅から希の自宅へと向かい始めた。

 

 

 

 

不思議な縁が繋いだ出会いは、かつての自分の輝きを再認識させてくれて、背中を押してくれた。

どんなに時が流れていっても、変わらないものはずっとそこにある。

輝きも縁も全てまとめて、彼女たちはこの世界で生きていく。

 

 

 

 

 

おわり

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました

ひとまず自分が星トラの中に間借りさせてもらったお話はこれでひと段落となります


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