なんてことだ、大嫌いなキャラに転生してしまった。つまりこの状況は………最高だな。   作:一味違う一味

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第2話

 水雲菫(みずもすみれ)を端的に表すなら、一粒で二度美味しい(?)キャラである。

 

 普段は基本清純な隠れお転婆キャラという男の夢を体現したような性格であり、まさに正統派ヒロインといった個性だが、特定条件下において豹変する。

 

 そうなったが最後、慈愛の化身は鬼畜の権化へ変貌し、その残忍かつ冷酷な性格はドSの名を欲しいままにしていた。

 

 敵対者への悪逆非道、人質への無慈悲、足を引っ張る味方の切り捨てetc……。とても主人公パーティーとは思えない行為をはたらく。

 

 いや、コレを豹変と言うのは正しくないかもしれない。

 

 なにせ彼女は()()()()で、完全に別の人格となっているだから。

 

 そして、その人格には名前もある 

 

 名は、(トリカブト)

 

 可憐な見た目で清純や謙虚といった花言葉で善性の存在である(すみれ)と、猛毒の塊で敵意や人嫌いといった花言葉で悪性の存在する(トリカブト)

 

 同じ『菫』という漢字で全く別の存在を表すこの文字こそ彼女達の名前に最も相応(ふさわ)しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

綺堂 薊(きどう あざみ) side

 

 

 

 

 

 

 

 失敗した。

 

 遅刻ギリギリまで来紅を(なだ)めて学園へ向かってから強く思う。

 

 何せ、先程の彼女(水雲菫)はこの国の王女様なのだ。

 

 菩薩(ぼさつ)の如き優しさの表人格だったからこそ何もなかったが、(トリカブト)の方であれば裏路地に引き込まれて殺されるか指名手配された挙げ句、来紅はポーション製造機にされ、吸血鬼の俺は思い付く限りの実験を行われるだろう。

 

 後は記憶を共有出来ない彼女等の必需品である『共有メモ』に書かれない事を祈るだけだ。

 

 

 

「どうしたの? 遅刻しちゃうよ」

 

 

「……ああ、そうだな。行こうか」

 

 

 

 どうやら、また考え込んでしまったらしい。やっと機嫌が直った来紅(らいく)に、言われて気づく。

 

 俺には考え込む癖がある。前世はボッチだったので問題なかったが、今世は友人がいるので、話てる間など考え込まないように気を付けなければ。

 

 ……それに彼女のストレスが溜まればハッピーエンド(理想)も遠のくしな。

 

 

 

「ねぇ、薊くん」

 

 

「ん?」

 

 

 

 何やら神妙な顔をしているが、どうしたのだろうか。

 

 俺としては命の一つや二つ(固有スキルの復活分を含めて)余裕で賭けられるから、そんなに遠慮せずとも良いというのに。

 

 

 

「私達、同じクラスになれるよね?」

 

 

「……あ〜、それか」

 

 

 

 来紅には言えないが、ほぼ確実になれる。

 

 原作では俺と来紅、ついでに水雲菫は同じクラスになっていた。

 

 とはいえ、今のところ原作知識は字面ほど便利ではないチート(笑)であるため確実とは言い切れなかったのだが。

 

 

 

「まぁ、大丈夫じゃないか?」

 

 

「も〜、何それ」

 

 

 

 いや、確かじゃないこと断言できないし。

 

 来紅がプリプリと可愛らしく怒りながらブンブンと禍々しい奪骨(だっこつ)の杖を振り回すのを見ながら思う。

 

 平和だし何でもいいか。

 

 

 

「まぁ、でも少し不安だな」

 

 

「そうでしょ」

 

 

 

 主に原作知識と、どこまで乖離するかが。

 

 果たして、これから始まる学園生活でも今までのように順調にいくだろうか。

 

 病みラビのメイン舞台たるダンジョン学園にはハッピーエンド(理想)の障害が山のようにある。

 

 生徒の中には勿論、教師や警備員、設備の中に至るまで、あらゆるところに。

 

 いや、やるしかない。

 

 俺はそのために生きてると言っても過言ではないのだから。

 

 差し当たって必要なのは

 

 

 

「あいつだけは殺さないとな……」

 

 

 

 ゲーム時代のソイツは悪役(俺達)以上に忌々しい障害である。

 

 直接、間接を問わなければ作中ほぼ全てのバッドエンド(悲劇)に関わる、怨敵とさえ言えるソイツの名は───

 

 

 

「薊くん、何か言った?」

 

 

「いや、何でもない」

 

 

 

 口には出てたか。気を付けなければ。

 

 前世から消えない怨嗟を飲み込み、取り繕った笑顔を向けた。

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