『平凡だらけな要素の集合で作られた一日! なのに、どうして……どうしてこんなことが起きているんだよ!?』
キラキラした大衆受けに向けて作られた現代映画を選ばずに敢えて、イルブリード2を選んだ者達は何故か広告を見せられる羽目になっていた。
『皆! この学園を守るんだ!』
『HUNDRED LINE -最終防衛学園—』とタイトルが表示されて〆られていた。実に面白そうなゲームのCMであった。
「(なんで、この映画だけCM挟まってんだ?)」
先日に見たイルブリードには一切挟まれていなかったというのに。CMに出ていたキャラクター達の雰囲気は何処となく自分達に似ている気がした。
「CMを見る限り、極限状態の中で皆が協力して学園を守るって話かな? なんだか、僕達と似ている所を感じるね」
狛枝がポツリと呟いた。言われてみれば、第2の島で入手した映像とシチュエーションは似ている気がしないまでもない。だが、あくまでCMに過ぎなかった為、それ以上の情報は無かった。
照明が消えて本編に入った。不思議なことだが、前作で散々な目に遭わされたにも関わらず、いざ映画が始まろうとするとちょっとだけワクワクしてしまうのだ。まぁ、前回は完膚なきまで叩きのめされたが。
『星間時代。人々を支配するのは国や政府ではなく、企業に取って代わられていた』
サイバーパンクめいた始まり方だった。SFとホラーの相性の良さはクトゥルフを始めとして、今更語る程でもないが映像内では企業のロゴが入った船体がデカデカと映し出されていた。
「お……」
左右田がポロリと声を漏らしたのは、綺麗なねーちゃんが映し出されたからではない。船内の整備用のハンガーには男子の心をくすぐる大量のメカが配備されていたからだ。
左右田が浮き立つ中、逆に女子達は首を傾げていた。なんでホラー物にロボットが必要なんだ? と。すると、スリットの入った際どい服を着た色素薄めのアルビノ系女子がパイロットと思しき男性達に手を振っていた。
『ヒューッ! エーリカちゃん!』
先日のイルブリードでは騎乗で凛とした女性『エリコ』を演じていた江ノ島であったが、今回はミステリアスで神秘的な女性を演じていた。
彼女が着ている服にも企業のロゴが入っていることから、慰問の為に呼ばれたキャンペーンガールであることは予想できた。
「(でも、何かあの物騒なロボットを使う場所になんでキャンペーンガールが?)」
最初に映したロボットがスゥーッと効いたのか、左右田は意識を放り投げることも無く映像に集中できていた。船長室にて淡々と今後のスケジュールを詰めていくエーリカに対して、船長はフゥっと溜息を吐いた。
『エーリカ君、再度確認する。我々が新惑星『イルブリード』に来たのは新資源を採掘する為だ。これは国や政府公認ではない。言ってみれば、違法採掘だ。ここで何が起きようとも、君の人権は保障されない』
『構いません。私の経歴は知っているでしょう?』
『恐怖を感じない。だったか?』
壁面のモニタには彼女の履歴書と共に数枚の写真が表示された。いずれも父親と思しき男性と共に戦地を駆け巡っていた。
『幼少期の頃から父と共に戦火の中を巡って来ました。そのせいで私には恐怖や共感と言った物が欠けています。今回の作戦に従事したのは、私の中で凍り付いた感情を目覚めさせるためです』
『……永遠の眠りに就くことになるかもしれんがな』
企業に取って新資源と言うのは今後の権益や存亡にすら関わって来る。人死にや外道的な行為は幾らでも巻き起こる世界だ。彼女が恐怖を思い出した頃には、死ぬよりも辛い目に遭遇しているかもしれない。
だが、明日は自分がそうなっているかもしれないのだ。船長はそれ以上、何も言わなかった。……そして、舞台は惑星へと移った。
「冒頭10分ダラダラは勘弁してほしいですね」
澪田が真顔で言っていた。アレでもイルブリードは冒頭から本題に入って楽しませようとする気概には満ちていた。だが、今回の作品はどうにも世界観の紹介に時間を割き過ぎている気がした。
だが、左右田は目を輝かせていた。惑星へと着陸した艦船から次々と機体が出撃していた。気のせいでなければCGとは思えない位に凝っていた。
エーリカもまた最後列で、戦場の様子を撮影するカメラクルーの機体に乗って、同行していた。……しかし、不思議なことに交戦音は疎か作業用のメカすら見当たらなかった。
『何が起きているの?』
恐怖は感じないが、危機感が無い訳ではない。エーリカが疑問に思ったのも束の間、先頭を行く隊長機の足元から突如として巨大なワームが現れて、機体の中心部を食い千切っていた。そのまま機能を停止させ倒れた隊長機を見て、随伴機達は右往左往していた。
『隊長! 何が!!』
だが、この場における戸惑いは死を意味していた。棒立ちになっていた機体が立っている地面が割れて、中から現れたワームが同じ様にしてパイロットごと機体を食い千切っていた。
『うわぁあああああ!!』
残された者が搭乗している機体に装備されているマシンガンを撃ちまくった所、弾丸は巨大なワームに命中したが分厚い皮膚を突き破ることは適わなかった。
そして、逆襲と言わんばかりに。ワームの先端から赤いレーザーが放たれ、機体の中心部が撃ち抜かれて、機能を停止させていた。
「うぉ。うぉおおお……!」
B級ホラーを期待していたソニア達の顔は渋い物になり、この中で唯一興奮していたのは左右田位だった。
ワーム達を刺激しない様に、エーリカ達はコッソリと戻ろうとしていたが、背後では巨大な爆発が起きていた。まさかと思い、後方の様子を映していたドローンの映像を傍受すると。
『嘘だろ』
自分達が乗って来た船は大量のワームに食い荒らされていた。生存者は絶望的と言った所だろう。そして、目の前には件のワーム……。
恐慌状態に陥ったパイロットを退かして、代わりにエーリカが機体を動かしていた。レーザーを避け、無事な武器を拾い上げた彼女はワームから距離を取りつつ攻撃……をする所か、クロスレンジへと踏み込んだ後。彼らの口と思しき部分に銃口を突っ込んで引き金を引いていた。
内部の器官に誘爆したのか、怪物ワームは紅い粒子を伴った爆発を引き起こして沈黙した。その際に誘引フェロモンの様な物を発していたのか、ドローンにはこちらに向かって来るワームの様子が映し出されていた。
『基地だ! 基地に逃げるんだ!』
カメラクルーの1人が叫び、エーリカもまたそれに従った。機体の操作パネルに記されている基地へと向かうと、ライバル企業も身を寄せているのか。様々な機体が集まっていた。
『ほぅ、腰抜けのベイツ共の中にもマシな者はいるようですね』
『アークィバスは随分と愉快なブレインをお持ちの様で』
ライバル企業のブレインと思しき男は厭味ったらしく言っていたが、何故か彼は企業のマスコットと思しき着ぐるみを装着していた。どうやら襲撃された際に慌てて着込んだことが原因で脱げなくなっていたらしい。
自分達は甘い誘惑に釣られてやって来たコバエであり、どうにかして惑星から脱出しなければならない。だが、帰りの船は破壊されているとすれば方法は一つしかなかった。
『作るのよ。私達で!』
エーリカの発言にしょぼくれていた連中は騒めき合っていた。幸い、この中にはメカニックなども居たらしく、材料さえあればと言うことだったが、ブレイン役の男が笑い飛ばしていた。
『私も考えましたよ。この惑星に残された船は無いかとね。遣いも出しましたが、見なさい』
偵察ドローンが撮影した映像では、各所の施設に化け物や原住民と思しき者達が武装して哨戒している様子が映し出されていた。
『助けてくれぇええええええ!』
企業の制服を着た男は現地民達に凄惨なリンチを受けていた。彼らが助かることは無いだろう。惑星の平穏を荒らす企業の者達は侵略者であり、慈悲を掛ける必要ないと判断されていた。
しかし、ここに閉じこもって少ない食料をやりくりしていても進退が窮まるだけだ。だが、外に飛び出そうにもあまりに危険と恐怖に満ちている中、エーリカは宣言するのだった。
『なら、私が材料を集めに行く。生きて帰る為にも』
彼女の発言を皮切りに、惑星イルブリードの恐怖と惨劇が繰り広げられていく。
まず、最初に訪れたのは原住民達が住まう村であったが、そこに住まう住民達の大半は生き延びたエーリカ達を快く迎え入れていたが、実際は自分達のボスであるワームに食わせる為に肥やしていたに過ぎなかった。
『私達はこの惑星と共に在るんだ』
まだ十代の年若い乙女が目を血走らせ、隣には六文銭が描かれた旗を背負ったトンチキな侍っぽいのも居た。同行した隊員達が食い荒らされている中、エーリカは1人抜け出して機体に乗り込んでいた。
そして、自分をハメようとした連中を跳ね飛ばし、轢き潰していく。破砕した瓦礫に押し潰されて、乙女が雑に殺された辺りで侍男が激昂した。
『ゆるさん!』
彼は自らワームの口に飛び込んで行くと、まるで意思を宿したかのようにワームが暴れ出した。ホラーにあるまじき怪獣バトルの様相になっていた。
「(行け―ッ!!!)」
もう、左右田は大興奮していた。メカVS怪獣は男子にとってのから揚げと同意義である。一方、女子陣営は顔をしかめていた。もっとくだらなくてクソい物が見たかったのに、これではホラーですらないからだ。
激戦の末、巨大ワームが倒された。村の奥地には謎の鍵があった位で、犠牲になった隊員達の命に見合う物だとは思えなかった。
帰投した彼女達は休憩もほどほどに次の拠点へと向かう。今度は原住民によって不法占拠された、資材の運搬施設へと訪れたが、恐るべきことに住民達は皆正気では無かった。
『脳がパチパチ弾けて幸せ』
彼らは、住民や隊員達を食らって来たワームを自ら頬張り噛み砕き咀嚼していた。目から正気は失われており、鼻水や目汁など体液も垂れ流し放題だった。口から赤い煙を吐き出していた。
更に恐ろしいことに、これらを食らっているのは大の男やおっさんばかりではなく、何処から誘拐して来たかこさえたか。小学生位の少女もワームの尻に火を付けて、煙草の様に喫煙していた。映像倫理協会に中指を立てるが如き描写だった。
『あぷぷー』
『なんてことを……』
まるで阿片窟の如き様相にエーリカの怒りは爆発した。責任者は何処か!
『ホホーッ! ホァーッ! ホホゥ!』
人の声を上げるのも叶わなくなっているのか、ワームを摂取していた男達は涎を垂らしながらエーリカに飛び掛かっていた。さながら、猿の如き様相であったが彼女はまるで遠慮なく拳銃をぶち込んでいた。
ただ、痛覚やら何やらも麻痺しているのか頭部に拳銃をぶち込んでも止まる様相が無い。故に、彼女は先の村で侍から奪い取った刀を振り回していた。
小気味よく麻薬中毒者(ドーザー)の如き様相を呈する者達を切り飛ばし、彼らの頭に唐竹割をすると恐るべき事実が判明した。
『これは……』
彼らの脳みその大半は虫に支配されていたのだ。いや、もはや置き換わっていたと言ってもいい。割れた頭部の断面がウネウネと動いている様子に、左右田はこの映画がホラー作品だと言うことを思い出し、頬杖を突いていた女子達は一斉に盛り上がった。
次々と死体が積み重なって行く様子を見ていた少女がケタケタと笑いながら、ワームの尻に火を付けて吸引しようとしていたので、エーリカは彼女からワーム取り上げていた。
『止めなさい』
『はーい』
エーリカは恐怖を知らなかった。故に、この明らかに感染済みである少女を保護するという選択にも迷いはなかった。彼女の手を引きながら向かった先には、巨大なコンピューターが鎮座していた。
『お前達が何者であるかは興味が無い。ただ、ボスからはこう言われている。手荒く歓迎してやれと』
四方の壁面が開くと、画面を覆い尽くす程にワーム。だけではなく、芋虫形態の者だけではなく雲やムカデの様なグロテスクな巨大昆虫まで現れたので、左右田は堪らず悲鳴を上げていた。
「やれーっ!!!」
一方、ソニアは大興奮していた。美女と少女を虫の大群が埋め尽くすというあまりにニッチなシーンであり、西園寺や七海も悲鳴を上げ、一部の馬鹿が興奮している中。狛枝と日向だけはずっと真顔で素面だった。
「日向君。やっぱり、関係ないのかな?」
「俺としては冒頭のCMの方が怪しいと思うな。この映像作品は何と言うか突き抜けた感じが無くて、普通だよな」
「これが普通って、お前。どんな日常送ってんの?」
2人の会話内容が内容だけに左右田は思わず口を挟んでしまった。
映像内ではエーリカ達が虫の大群に埋もれて、あわや食い千切られてバラバラにされると思っていたが、一向に彼女らには危害が加えられなかった。
『(何が起きて……?)』
全身を昆虫に這われてもなお、彼女は冷静だった。視線の先、先程連れて来た少女の周りには不自然なほどに虫が寄って来ず、やがて自分達から離れて崇めるようにして周囲で伏せていた。
『アレ?』
少女も事態を分かっていないようで、首を傾げていた。何かがあるとにらんだエーリカは、彼女の手を引いて中央のメインコンピューターへと近付いた。
『ここまで辿り着いた褒美だ、ビジター。1つだけ質問に答えてやる』
この惑星で一体何が起きているのか? このワーム達は何者なのか? 新資源とは? 自分が巻き込まれたトラブルについて大量の疑問が浮かび上がったが、彼女が尋ねた質問は。
『この子は一体何者ですか?』
『この惑星を統べる者だ』
どういう意味かと更に深堀しようとした時、コンピューターにノイズが走った後……電子音声は聞こえなくなった。
『死んじゃった』
少女がポツリと呟いた。やがて、施設の各所で爆発が起き始めた為、エーリカ達は急いで入り口へと戻って、乗って来た機体に搭乗して去ったと同時に背後では大爆発が起きていた。
『(あのコンピューターが言っていたボスとは一体?)』
もしかすると、例のワームや惑星に皆を招いていた首謀者なのかもしれないと思いながら戻った基地の様子はいつもと違っていた。
エーリカはこの感覚に覚えがあった。慌てて、こちらに駆け寄って来たのは未だに着ぐるみの脱げないブレインだ。
『エーリカ! 機体はそのままにして、タラップを下ろしなさい! この基地はもう駄目だ!』
『やっぱり』
カメラワークにより基地の全容が映し出される。今まで見えていなかった所には、いくつもの陥没跡が生まれておりワームが胴体を捩じらせていた。
着ぐるみ姿でありながらも超人的な運動神経を見せたブレインは、エーリカが垂らしたタラップに掴まり必死こいて生き延びていた。
帰るべき場所を無くした3人が当てもなく彷徨っていると、エーリカは機体に見慣れないデータが保存されていることに気付いた。ファイルを開いてみれば、座標データが載せられていた。
どうせ、指針も無いので向かってみれば、そこは海洋に浮かぶ都市だった。自動メンテナンスが行われているのか、林立している建物に経年劣化は見られなかった。
『もしかして、稼働状態に?』
他に生存者が誰もいなくなったとすれば、自分達だけで脱出出来れば良いので小型船さえ調達できればいいと思い、機体を降りたエーリカが探索に出ようとした所で、異変に気付いた。
『ブゥン』
最初は人間かと思ったが、人型のシルエットにしては歪だった。注視してみれば、人間とハエが混ざり合ったような醜悪な存在と言うことに気が付いた。
哀れな存在に対する慈悲と言わんばかりにエーリカが刀で真っ二つにした所、今度は地面から上半身だけが人の形を取っている、ミミズの様な存在が現れた。彼はエーリカを地面に引きずり込むと、何処かへと消えた。これにはブレインも叫んでいた。
『えぇい! ガキ! 一緒に探しますよ!!』
『分かったー』
彼らの周囲には人間と動物を掛け合わせた大量のキメラが居たが、着ぐるみ内に内蔵された人工筋肉によるアシストもあって、ブレインの男は容易に逃げ果せていた。
一方、何処とも分からぬ場所に連れていかれたエーリカは手術代に拘束されていた。傍らには顎髭を蓄えた老人と、全身にフサフサの獣毛を生やした青年が居た。老人は彼女の全身を嘗め回すように見つめた後に行った。
『素晴らしい。彼女には気まぐれな猫。いや、ここまで来た獰猛さを考えるに熊が良く似合うことだろう。早く施術の準備を』
『分かりました、帥父』
『待ちなさい。何をするつもりですか?』
『黙れ。資本主義に塗れた肉魂よ。貴様は全身に透き通る様に美しい白毛を生やした後、人間のことを無条件に愛でるヒトナーにならなくてはならない』
スッと理解した。表にいる化け物共は、この人間が改造した物だと。だとしたら、この男が殺人ワームを開発したマッドサイエンティストなのか。
『貴方が、この惑星で起きている事件の首謀者なのですか?』
『どうとでも思うがいい』
助手と思しき男性がスイッチを入れる。すると、寝かされている診療台に電流が走り、エーリカの表情が苦悶に歪んでいた。
一方で、ブレインと少女はキメラ人間達に襲われながらも無人都市を駆けずり回っていた。当てもなく走り回った所で目的地に辿り着ける訳もないのだが。
『あっちー』
少女が指差した先に向かうたびに護衛と思しきキメラ人間達は数を増していく。まるで、辿り着かれては困る場所を防衛するかのように。やがて、ブレインは一つの可能性に思い当った。
『貴様、まさか分かっているのか?』
『聞こえるの』
着ぐるみ内に内蔵された収音マイクでも聞き取れぬ何かが、聞こえているというのだろうか。だが、あての無いブレインからすれば与太話に過ぎない彼女の話位しか縋る物が無かった。
そして、到着した先には正に電流を浴びせられているエーリカの姿があったので、ブレインは躊躇うこと無く発砲していた。
『帥父!』
機械を操縦していた男性が庇ったが、彼の挺身も空しく。狂気に染まった老人も直ぐに撃たれていた。しかし、傷口から這い出て来たワームが吐き出した体液により、直ぐに出血は止まった。
『無駄だ。人風情が! 私を殺せると思うな!』
老人の全身から大量のワームが這い出て、ブレインとの戦闘が始まった。
最初は楽しんでいた左右田だったが、不思議な感覚に襲われていた。今回の作品はイルブリードの名を冠しているが、前作と比べて角や外連味と言うのは非常に少なくなっているように思われていた。
「(映像技術とかそう言うのに囚われすぎている感じがあるんだよなぁ……)」
お前はそうじゃないだろう! もっと弾けて、悪ふざけしているのがお前だろう!! と声を上げたくなっている自分と……そんな思い入れを抱いている自分に気付いて、はっとした。
「(嘘だろ? 俺はまさか)」
あの映像作品を面白いと思っていたのだろうか? 最終的にイルブリ2は老人を倒した後、黒幕をも撃破して惑星から去って行く。と言う物だが、観客席は概ね溜息で覆われていた。
「何もかもが中途半端な映画でしたね。イルブリ3が残っている様ですが……」
「期待は出来ませんね」
ソニアと澪田が悪態を吐きながらスクリーンから出た所で、推しの子を見ていた者達が頻りに感想を話し合っていた。
「本来、あのキャラって原作に居ないらしいんだけれど。あまりにフィットしていたから普通にいるもんだと思っていた!」
「待て。彼女が居ないと言うことは、舞園さやかが演じていたアイの枠はどうなるんだ? 雰囲気が暗くなり過ぎるのでは……」
菜摘と田中と言う接点の少ない者達も語り合う程に、与えられた感動と熱量から幾らでも話題が出てきているらしく、その光景を見ていた左右田は目を細めていた。そして、当たり前だが思うのだった。
「俺もあっちを見に行けばよかったって」
「うわぁ!?」
気が付けば、傍にはモノウサが立っていた。そして、彼の気持ちを見事に代弁していた。
「何の役にも立たない情報ばっかりだったでしょ。1作目と比べて、2作目は助監督の私物化が激しかったからね」
「まぁ、見るだけ時間の無駄感は凄かったけれど」
アクションシーンは凝っていたので、態々イルブリを冠さなくても良かったのでは? と言うのが、左右田の感想だった。上映時間も短かった為、このまま3作目も見て良さそうだった。
「モノウサ。3作目の内容は?」
「実はこれに関しては僕も分かりません」
映画の内容は兎も角として、気を取り直した狛枝が尋ねた所。モノウサも首を横に振っていた。どうやら、彼も内容を知らないらしい。今までは見るな。とか言ったり、やめようと進めていた所から内容を把握していた節はあったが。
「何? どういうことだ」
「イルブリは2までしか存在していないハズだから、この3つ目は知らないんだよね。だから、多分だけれど。高確率でこれに情報は乗っていると思うよ」
九頭龍からの質問に丁重に答えていた。これに関しては、彼も見る気ではいるらしく制動を掛ける様相が無かった。パンフレットも存在しておらず、正にこれは自分達に見せる為の話なのだろう。
「2連続視聴はきついけれど、見るしかねーよな……」
出来たら翌日。と考えていたが、こういった物は先延ばしにしても良いことは無い。左右田は周囲を見まわしたが、反対する者もいなかったので幻の3作目の上映会に進む決意をしていた。