遊戯王の漫画を読んで、バクラ君のラスボス感をもっと見たくなり、どうにか出来ないと思い妄想した者です。
バクラ君じゃないけどね。
カードゲームもしません。
続くかは分かりません。
学園の前に1人の少年が立っていた。
名前はバクラ リョウ。
ミドガル王国の僻地にある砂漠の地域出身で、今日王都の地に足を踏み入れたばかりである。
「大きな建物だ。こんなにたくさんの人がいるなんて、流石王都だ。楽しみだね。もう1人のボク。」
この国は平民生まれであっても、ごく稀に能力が認められれば学園に入学できる場合がある。この少年はその1人だった。
魔法と剣の腕前があればのし上がれるこの世の中において、この王立学園を卒業する事は将来の大きなステータスとなる。
彼は故郷の家族、友人、そして領主に腕を認められ推薦される程度には優秀であった。
少年には野望があった。
今は亡き家族、故郷の村の仇を晴らさんとする野望が。
「待っててね皆んな。」
少し昔の話をしよう。少年の故郷は砂漠の地域だった。
地域柄周りの人はみな浅黒い肌をしていたが、彼は色白だった。髪の色も白く家族の誰にも似ていなかった。故に不義の子として母親共々様々なやっかみにあった。ただ先天的な遺伝子の疾患で肌が白いだけだったため母は言われのない謗りに耐えかね蒸発。少年は1人家に残された。
置いて行かれた彼は出て行く事も出来ない幼児であり、外にいてもいじめにあってしまう、家に篭るか人気のない場所を彷徨く毎日。
そんなある日街の郊外を散策していると地盤が崩れ大穴に少年は落ちてしまう。そこは隠された小さな墓の様であった。どうにかして外に出なければ、そう思い墓の中を探っているとキラリと光るものが見えた。近づいてみるとそれは黄金のリングであり、中心には瞳の様な紋様がされている。見るからな値打ちがありそうな骨董品を拾い上げたその時彼の脳内に「存在しない記憶」が弾けた。
ここにはかつて村があった。その村は邪神崇拝をしており、改宗をする様強要する王国に対し反発する者たちが集まっていた。故に王国よりこの村は邪神降臨の儀式をしているとして消し去られてしまったのだ。そしてこの黄金のリングにはそんな村人の意志が邪神の闇の力を借り受け、このリングに宿った。名をバクラと言った。
幼児のバクラは運命を感じた瞬間だった。
同じ名前の存在が虐げられそして孤独の中、自分に出逢うまで待ち続けていた。まさに己の魂の半身!!
本当の家族はここにいて、そしてその半身たる魂の親兄弟は皆死んでしまった。殺されてしまった。
(僕は皆んなの分まで生き、そして王権への復讐を成し遂げなければならない!)
そうしてバクラはリングを大事に抱えて何とか大穴から帰還した。
尚、これら全ては彼の妄想である。
そうこれは彼、バクラ・リョウの厨二心が産み出した数奇な物語である。
そんな厨二病な彼はなかなか良いキャラ付けが出来た事で人が変わった様に、設定に合わせ社交性をもち、真摯に勉学・剣術に打ち込み、周りが認める程に大成していった。
表の彼の評価は容姿端麗、癖はあるが綺麗な白髪に女性とも見て取れる様な色白い肌を持ち、性格は内向的ではあるが思いやりがあり、人を助けることに余念がない。そしてときおり独り言で誰かと話している事が目撃されており、影がありミステリアスな様子が密かに婦女子に人気があった。
そのか弱い容貌に反して魔剣士としての才能もあった。流麗な剣術を扱い、魔力の扱いは故郷に置いて比類するものはなかった。
もはや彼の生い立ちを知るものは一部のものだけとなり、利用できると思ったのか便宜上の保護者の目に留まり王都の学園に向かう様言われたのだ。
バクラはある程度成長した頃から裏の自分に促され(?)スラムを彷徨く様になった。白い肌を隠すため泥や塗料で肌を汚し、大きなボロ布を羽織り、首からは黄金のリングを下げた。裏の自分に人格を任せるとスラムの子供を集めて盗賊団を組織した。数年にして、彼が学園に向かう頃にはその地域の盗賊をまとめ上げる程の大組織となっていた。中々の胆力と演技力である。
世間で見せている表の姿とは似ても似つかない野蛮で残虐な性格、そのギャップはバクラ本人の癖に刺さった。つまり、自分に酔っていた。
それこそ盗賊の長として辣腕を振るい、混沌とするスラムをまとめ上げる闇のカリスマを発揮した。
(王都中の悪辣貴族や領主、他怪しげな権力者を悉く血祭りにして、最後に王の前に堂々と乗り込み、バクラ様の存在と王家の隠された罪を知らしめてやる。オレ様には出来る!それだけの力が闇にはある。)
バクラは闇の力(仮)と呼ぶものを、あの大穴に落ちた時から開花させていた。しかもその力は一般的な魔力の運用とは大きくかけ離れており、その力は誰も知るもののない力だった。それがさらに彼を増長させた。こう言った幾多の勘違いと奇跡(?)によって、誰も気がつく事もなく、正される事もなく、この歳になっても拗らせ続けているのだった。
(一先ずこの学園では優等生として生活して行こう。ここの裏社会がどうなっているのかを探らないとな。学園とかが襲撃された時、謎の男 闇の支配者 バクラ様の活躍が衆目の眼を浴びる…なんて展開があるといいなぁ。ククク、楽しくなってきたぜ。あ、でもバクラをそのまま名乗っちゃうとバレちゃうな。ばく、バクーラ、バクー、バラク、うーん良いのがうなばないなぁ…。まぁいいや後でまた考えよ。一先ず…。)
「父さん母さんの為にも頑張ろうね。」
少年は服の中に隠している黄金のリングを服の上からなぞるとそのまま学園へ入って行った。
▽▼▽▼
バクラくん綺麗なお肌してるのね!お肌のケアはどんな事してるの?
ねえねえ!バクラくんの好きな食べ物は?
バクラくんはこの辺の人じゃないの?!
キャッキャウフフ
「アハハ。みんなそんなにいっぺんに聞かれても答えられないよ。お肌のケアは化粧品と日焼け止めかな。ボク砂漠の地方出身なんだけど肌が弱くって必ず塗ってるよ。いい日焼け止めあるから今度持ってくるよ。あと、好きな食べ物は甘いもの。王都は色んな美味しいものがあるって聞いてるから楽しみなんだよねー。」
そうなんだー!やったね!
えーじゃあ今度一緒にいこうよー!
キャッキャウフフ
「ケッ、顔がいいからってよ。」
「ぺっ!なーにが好きなものは甘いものーだ!」
「イケメンしね!なぁシド、お前もムカつくよな!」
「え?あぁうん。」
「キャッキャうふふしやがってよぉ!俺も女の子とお喋りしたいよぉおお!」
「本音が出てるぞ。」
「ねぇ、ヒョロくん。ジャガくん。シドくん。」
「ん?ゲ!バクラ!」
「ば、バクラくん!べべべつに僕は悪口なんて!」
「シドが!言ってました!」
「え?いや違うからな。俺はいってないぞ。」
「あはは、お邪魔だったかな?お友達になりたかっただけなんだけど…。」
「え?俺らと友達?なんで?」
「ボク平民の出だから同じ平民の友達がいたら嬉しいなぁと思って。」
「べ、別に構わないけど」
「え?!本当に?!嬉しいありがとう!よろしくね!ヒョロくんジャガくん!シドくん!」
((か、かわいい。))
(こいつあざとい)
ザワザワ…バクヒョロ?ジャガバク?イヤナイワ。
クラスのトップカーストにある容姿端麗文武両道を行くバクラが、底辺の変人達に話をかけに行った上に、女と見間違う様な綺麗な顔に笑顔の花を咲かせているのだ。クラスが騒ついた。男女問わず鼻血が止まらない者が多発してしまった。
(雑魚2人はともかく、シド・カゲノーこいつはなんか匂うな。血の気配、戦いを好む者、狂人の気配?強いのかも知れない。今のうちに仲良くなって探って置かないとな。)
バクラも仮面を被る事には人一倍敏感になっていた為、シド・カゲノーという一見何でもない少年に不思議とシンパシーを感じていた。
するとバクラの目線の先にはこちらに気付かれない様こちらの様子を見ている少女がいた。
彼女の名はアレクシア・ミドガル。この国のミドガル王家の第二王女である。王族である限り、バクラの復讐対象の1人である(と言う設定)ので入学してからバクラは注意深くアレクシアの観察をしていた。
(容姿は優。人柄は良、性格に表裏があるタイプと見た。剣術は可、悪くはないら凡人の剣と揶揄されるのも分かる。家族に対し何か確執がある様に見える。おそらく優秀な姉と比較されてのコンプレックス。また人間性は善、陰謀なんかは関わる人間ではないだろう。故に特に何もする必要なし、関わる必要もないな。)
「アレクシアさんって綺麗だよね。」
思わず口に出してしまい、しまったとバクラは思った。
「なに?!バクラくんアレクシア王女狙ってんのか?やめとけって、今まで何人玉砕してると思ってんだ。平民のオレらなんて相手にされないぞ!」
「いや意外とバクラくんなら…?」
「アハハ、そうだよね。あっそういえばこの前ミツゴシ商会の——」
他愛無い会話をして学友たちと交友を深めた。
▽▼▽▼
「あれ?手紙?」
放課後帰ろう机を片付けていたら中に手紙が紛れていた。
「バクラ様へ。ボク宛だ。なになに?大事な話があります。放課後屋上に来てください。…ふーん。まぁいってみようかな。楽しめるかな?」
屋上に行って見ると男子生徒が複数人集まっていた。
「ギャハハ本当にきたわこのオカマ野郎。」
「こいついつも女子にチヤホヤされてるから浮かれて簡単にホイホイきちまうんですよどうせ!」
「おめぇバクラっていったか?学園の女に色目使ってチャラチャラしやがって、ど田舎の平民風情が調子乗りやがって。少し立場ってもんをわからせた方が良いみたいだな!」
「先輩でしたかお疲れ様です。ご用って何ですか?忙しいので手短に済ませたいのですが。」
「てめぇ人の話聞いてたのか?舐めやがって。」
「やだな、先輩何をそんなに苛立っているんですか?おっと!」
上級生が殴りかかって来たためバクラはそれを避ける。
ガチャリ
屋上の扉が施錠された音がする。
「これで逃げられねぇぜ。命乞いするなら今のうちにだぜ?」
「話がないなら失礼したいのですが?これ以上は!やめた、方が、いい!ですよ!」
バクラは複数人に殴りかかられてもそれを回避し続けた。
「こ、こいつ?!ケンカ慣れしてやがる?!」
「じれってぇ!これで片付けてやる。」
男子生徒は剣を抜いた。この学園では私闘は硬く禁じられており。教師の許可や、正当防衛以外での抜刀は罰則の対象となる。
「はぁ、これで最後の通告です。これ以上続けるなら後悔しますよ。」
「うるせぇ!」
ガキンッ!
振り下ろされた剣を避け、上から踏みつけ止めた。
「な、何だと?!ぐっは!!」
顔面を蹴り上げられた生徒は尻餅をついてしまう。
「……うん、うん、そうだね。」
バクラは虚空に向かって何か頷いている。
「さて、このまま終わらせてしまうのもつまらないので、先輩達、遊戯(ゲーム)をしましょう。簡単な遊戯です。貴方達が勝てばボクを貴方がたの好きな様にして結構です。」
「は?お前いきなり…いや、いいだろう。」
止められた男子生徒も周りの取り巻きもバクラの不気味な雰囲気に身動きが取れなかった。
「よろしいでは闇の遊戯を始めよう。」
するとバクラの胸元にいつのまにか黄金リングのアクセサリーがあり、その中心の瞳の紋様が輝いた。
キュウイイイイン!
「先ず、この剣を使おう。剣を上に放り投げ、その剣の落下地点に腕を出します。落ちてくる間腕は引っ込めてはいけない。」
実際に剣を回転をつけて放り投げ、その下に木の棒を横に持った。
斬っ!ガキン!!
剣は棒を切断し床に突き刺さった。
「剣が床に落ちた時腕を引っ込めなかった方が勝ちです。勿論第三者の妨害は禁止です。ね?簡単でしょ?」
バクラは剣を片手でお手玉の様に手元で回しながら何でもない様に話した。
「い、いかれてやがる。」
「ば、ばか言ってんじゃねえ!その剣が仮に鈍だろうと、腕に当たったらただじゃすまないぞ!魔剣士として終わっちまう!!」
「当たらなきゃいいんですよ。ルールは守って下さいね。ルールは絶対です。怖いんですか?じゃあボクのターンから。」
「……?!!」
「せーのっ!」
バクラは剣をかなりの勢いで放り投げた。
ヒュンヒュンヒュンヒュン!!
ものすごい速度で回転している。そして腕を伸ばして落下を待った。
嘘だろ?!ありえない。こいつバカだ!絶対無理だ!
男子生徒達は口々に動揺を溢す。
ヒュンヒュンヒュンヒュン!!!
自由落下で落ちてくる剣がバクラの腕に接近する。
「あ、当たる!!」
誰かが思わず叫んだ。
——スル ガキンっ!!
剣は素通りする様に床に突き刺さった。
生徒達はあまりの出来事に誰も声を出せずにいた。
「ふぅよかった。ラッキーでした。」
バクラの気の抜けた言葉が沈黙を破った。
何も気にするでも無い様子のバクラはそのまま剣を生徒に渡した。
「ほら先輩の番ですよ。はやくはやく。」
「え?お、おう。」
剣を受け取った手は震えて、冷や汗が止まらない。
(失敗したら魔剣士への道は閉ざされる。いつも通り目立つ生意気な後輩を分からせるはずだった。何だこれは、冗談じゃない!オレはこんな所で終わる人間じゃない!そうだ!こいつがたまたまうまく行ったから騙されているんだ。これには何がトリックがあるんだ。だがそんなのに付き合ってやる道理はない!オレを謀った事を後悔させてやる!)
生徒は脂汗を滲ませ引き攣った笑いを浮かべた。
「先輩を舐めやがって!終わるのはお前だー!」
剣を勢いをつけて放り投げた。バクラに向かって。
ビュンッ!
「あぁあ。やっちゃったね。」
剣は不自然にバクラの目の前で止まった。すると剣先に段々ビジョンが現れ始めた。大きな手が剣を摘んでいた。
「?!!」
バクラの後ろに何か大きな影がある。透けているが巨大な異形の姿をしている。
「ディアバウンド。奴らを無力化しろ。」
ゴオオオおぉおおおお!!
上半身は人型、下半身が蛇の化け物が雄叫びをあげる。次の瞬間、生徒達は次々と無慈悲な暴力により床に叩きつけられ手足を砕かれた。
「ご、ごふっ、ヒューヒュー」
既に死に体の生徒達
「だから言ったじゃ無いですから『ルールは絶対』だって。破った人には罰ゲームを受けて貰います。」
「っ??!」
今自分たちが受けた理解不能のこの事態は罰では無いのか?そう言いたげだが言葉を喋る余裕もなかった。
「貴方達が受けるのは『弱者が強者に一方的に虐げられる』事の恐怖を思い出して貰う為の治療だと思って下さい。それじゃ、ばいばい先輩方。罰ゲーム 傲慢(プライド)!!!」
バクラの胸のペンダントがまだ輝いた。
ドギューーーンン!!!
「「「ウワァァォァアアアア!!」」」
上級生達は次の瞬間恐怖に絶叫した。
あるものは碌に動けないまま囲まれてタコ殴りにされ、あるものには空から剣が落下し自分の四肢を少しづつ掠めていき、いつ体が八つ裂きにされるのかという恐怖を味わった。
バクラの去った屋上には、だだ何もない所でもがき苦しみ恐怖に叫んでいるだけの生徒達の姿があるだけだった。
悲鳴は何故か誰にも届かず、彼らが気を失うまだ続いた。
▽▼▽▼
「すっかり日が暮れちゃった。」
(ーーーー?)
「いいんだよ。あの人たちは弱いし悪人にもなれない大した事ない人たちだし、今から弱者としての身の振り方を身に付ければやり直せる。無くなってしまったらもう二度と戻らないからね。お灸を据えるくらいがちょうどいいよ」
(ーーーー。)
「バレなければズルじゃないよ。それにボクは剣が落ちてくる間に腕を下ろさないと言ったんだ。落ちてくる間に何もしちゃいけないなんて言ってないよ。勘違いしたのはあっちだ。」
(ーーーー。)
そこにはいないものと会話をする。そんな自分のミステリアスさに酔いしれていた。
(さてと、この街の悪人はどんな事をしてるのかな?今から楽しみだなぁ。)
そう言ってバクラは街の闇の中に消えていった。
寄り道してすみません。あっちも何とか仕上げます。