そんな疑問を持ちながら少女の姿をした彼女は過去にその答えを探し求めた
わたしは何のために産まれたのだろう……そんな疑問を持ったのはいつの頃だったのだろう。自我を持って数日? それとも産まれた瞬間?
どうして私が存在しているのか,私を作ってくれた人はとっても優し気な眼でしゃがんでこう言ってくれた。
──その意味は自分で見つけなさい。君なら……きっと出来るから
そんなよくわからない言葉と共に,私のこの機械の身体は光に包まれた。
私を見送るその白衣を着た人が,どうしてそんな寂しそうな顔をしているのか分からなくて,私は自分でもよく分からないまま光に身を委ねた。
花咲川にある市ヶ谷家の家の蔵で,この街のガールズバンドであるPoppin’Partyの練習が行われている。いつもの5人で奏でる,5人だけの音楽はいつも人々を笑顔にしていく。
音楽がただ楽しくて,この5人でいる事は日常である今日この頃。
「少し休憩しようぜ」
「そうだね」
「え~もっとしようよ~」
ジャーンと自分のランダムスターというギターを鳴らしながら休憩を提案したKyである市ヶ谷有咲に不満を漏らす。しかし有咲は香澄の提案を受けるつもりはないのかさっさとソファに寝転がってしまった。
「もっとってもう二時間ぶっ続けだぞ」
「香澄,私も腕パンパンだからさ」
ドラムの沙綾が申し訳なさそうと,香澄のやる気の高まりに苦笑しながら言うと香澄もどこか申し訳なくなってしまい素直に休憩する事にする。
よく見たらBaのりみも少し負担がかかっていたようで少し安心して息を吐いていた。
「あ,差し入れあるよ」
「わぁ! チョココロネだ~」
沙綾が鞄から取り出し机に広げた彼女の実家であるパン屋のパンが並ぶ。その中でも大好物のチョココロネを見つけたりみは一瞬で頬を緩ませ沙綾から貰う。
そんな2人の間から手が伸びて机にあったメロンパンとブリオッシュを持って行く。
「私これとこれ貰うね」
「ちょおたえ二つも持ってくな!」
リードギターである花園たえがさらっと二つも持って行く事に有咲が声をあげるが既にたえは聞いていなくメロンパンを咥えてしまっていた。その様子は彼女が飼っているウサギに何だか重なってしまう。
「有咲も早くしないとなくなっちゃうよ?」
「食べながら話すな! あと沢山持っていってるのおたえだからな?!」
「えへへ……じゃあ私も~!」
「言っている傍から持ってくな香澄! あ,私のお気に入り!」
香澄がさらっと持って行く有咲のお気に入りのパン,香澄はニンマリと笑いながらそれを半分に裂く。
「はい! 半分こ!」
「……こ,今回だけだからな」
そう言って受け取りつつも,同じものを半分にするという女子高生の青春らしいやり取りに胸はときめいてしまっている。まあ香澄はいつもの仲間と一緒にいるこの瞬間既にときめいているが。
香澄はさっそくと,そのパンに噛り付く。
「ん~! さーやのお家のパンすっごく美味しい!」
「あはは,パン屋だからね~」
そう言いつつも,裏のない賛美に沙綾の口も緩む。香澄と半分こしたパンを食べ終えた所有咲も食べ終えた。それを見た香澄はランダムスターを携えたまま笑顔で話しかける。
「一昨日のライブも盛り上がったね~!」
「お前その話何度目だよ」
「えーっと……2回目?」
「5回目だ」
「え,そうだっけ?」
「忘れんな!」
そうは言っても香澄がライブの感想を唐突に話す事は今に始まった事でもない。有咲はため息をつきつつも,既にいつものガールズトークに花を咲かせようとするのを見るや否や,お菓子を取りに行こうと立ち上がった。
「一緒に行こうか?」
「いやいい。両手で持てるくらいだしな」
そう言って有咲は蔵の階段を上がって出て行ってしまった。それを見送った4人はガールズトークを再開する。
「そう言えばこの前イヴのブライズメイドどうだったの?」
話題は以前香澄と有咲,そしてバンド仲間であるつぐみと蘭がイヴのブライズメイドとして色々していた事の話。
「すっごく楽しかった! イヴちゃんのドレス姿も可愛くてすっごく憧れちゃうな」
イヴのウエディングの宣材写真を手伝う人としてのブライズメイド,それになった香澄や有咲はブーケを色々と作るのを手伝い,その結果イヴも納得する事が出来る綺麗なブーケが出来上がった。
その時の幸せそうなイヴの姿を思い出した香澄は頬を緩める。
「はぁ……私もウエディングドレス着てみたいなぁ」
憧れと羨望が混じった眼でそう呟く。しかし,イヴはモデルの仕事もしているから今回のような事をしたのであって香澄がウエディングドレスを着るにはそういうイベントに行ってみるか……誰かと結婚するほかない。
以前自分もウエディングドレスは着た事がある沙綾が口元を緩めながら言及する。
「そのためには先ず相手を見つけないとね」
「え~,じゃあさーや結婚しよ~」
「お,女同士はダメじゃないかな」
そう言いつつもまんざらでもなさそうな沙綾だが,日本の結婚は一般的には異性とするので一応言葉ではそう言っといてみる。
そんな時,蔵から出て行ったはずの有咲の絶叫が響いて来た
「うわああああああ!!」
いきなりの絶叫に4人は顔を見合わせると,脱兎のごとく有咲のもとまで駆けだした。有咲が絶叫する事は偶にあるが,大体は予測不可能なことが起きた時。
今度はどんな予測不可能が起きたのだろうとワクワクとドキドキをしながら香澄は蔵を出て──それに出会った。
「……ッ?」
透けるほどに白い肌,その肌に合うような白い服に星のアクセサリーが所々についていて……彼女の髪型は猫耳のようで──香澄にそっくりだった。
否,そっくりというか香澄と同じ肌色にすれば間違いなく見間違えてしまうほど香澄だった。
彼女は無機質な顔で有咲を見て……次に香澄へ目を向ける。
「……」
「……」
少しの間,二人は運命的なものを見つけたかのようにお互いを無言で見つめていた。そして……無限の時間を感じる程にゆっくりと時が流れ……香澄が口を開いた。
「わた……し?」
本人が思わずそう呟いてしまうくらい香澄にそっくりだ。だけど,それを否定したのは紛れもない彼女である。
どこか香澄と同じ声でありながら機械のようなノイズが混じった声で答える。
「わたしはあなたじゃない。わたしはPOPY……AIです」
「え……」
「「ええええ?!」」
5人の声が、青空の元に鳴り響いたのだった。
続かない()