FAIRY EMBLEM   作:jyosui

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しばらく空いて申し訳無いです。
新年度で忙しかったり、ポケモンチャンピオンズをやりこんでたりでお待たせしてました。

ともあれ本作も3年目突入ですね。続いたものですが付き合っていただいた皆様のおかげでもあります、ここに感謝を述べさせていただきます。

それではどうぞ


108章 逸話持つ者

自分の天敵である滅竜魔導士、スティングとローグの2人と、自分の手の内をある程度知っている紋章士使いのリネン。圧倒的不利を覆し相手を完封したリュークはナツとガジルにバトンタッチした。

 

「(さて………あとは高みの見物でもしていようかな。)」

 

ナツとガジルが負けるとは思っていない。それどころか、変に助太刀しようものならこっちの身が危ない。そう確信していたリュークは闘技場の端で観戦でもしていようかと思っていた。

 

「ちょっと待って。」

「ん?」

 

するとリネンが声をかけてきた。

 

「暇なら、私と一騎討ちしてくれない?」

「………どういう風の吹き回しだい?さっきまでやる気あまり無いように見えてたけど。」

「やる気は無いよ。勝敗とか、ギルドのプライドとかどうでもいい。」

 

でも、とリネンは続けた。

 

「あんなやられっぱなしで終われば、私に力を貸してくれる紋章士達の名がすたる。」

「………なるほど。」

 

するとリュークは紋章士の指輪を手元で掲げた。

 

「それならば、正面から応じよう………吹寄え(よりそえ)、緑風の紋章士(エムブレム)。」

『ここで俺を選ぶんだな。』

「他の紋章士より相性がいいですから。」

『………あんたがそう言うのなら、従うさ。』

「それじゃあ、始めようか。」

「ありがとうございます。………では、ティバーン。」

『任せな。俺はこの時を待っていたんだ………逃げるなよ?』

 

ナツとガジル、スティングとローグの滅竜魔導士同士の戦いが始まったのと時を同じくして、リュークとリネンの紋章士使い同士の戦いが始まった。

 

「「"エムブレム・エンゲージ"!!」」

 

リュークは紋章士サザと"エンゲージ"、リネンは紋章士ティバーンと"化身化"。

 

『飛ばすぜ!!』

 

先に仕掛けたのはリネン。一度空へ飛んでから急降下し、その勢いと速度を保ったまま低空飛行で突撃。

 

『………。』

 

一方のリュークは半身で構えたまま静止。そしてリネンがリュークに衝突する寸前。

 

『『………チッ!!』』

 

リネンはリュークの目の前でバレルロールをしながらすれ違い様にリュークの左肩を掠った。だがリュークも半身………正確には居合の構えで獣特効のエンゲージ武器の短剣"ビーストキラー"を振り抜き、こちらもリネンの左肩を掠った。

 

『(あそこから更に加速した………!!)』

『(避けたつもりが、当てて来た………!!)』

 

再度上昇し、降下して来たリネン。

 

『次は当てる………!!』

 

対してリュークは再度"ビーストキラー"を構え、待ち構えた。

 

『………そこ!!』

 

そして絶好のタイミングで短剣を振り抜いた。しかし、それは空振りに終わった。

 

『!!』

『ええいっ!!』

 

リュークが空振った理由。それは目の前の鷹が白鷺に変わっていたからである。紋章士ティバーンから紋章士リアーネに切り替える事で生じた"緩急"にまんまと引っかかり、飛び蹴りを食らう羽目になった。

 

『やってくれる………!!』

 

紋章士リアーネの非力さに助けられ大したダメージを負っていないが、出し抜かれたのは癪だった。

 

『(やっぱり、さっきは正面から当たらなくて正解だったな!!だが、今回はそうはいかない………!!)』

 

リュークは対策を考え始めた。

 

『(獣牙の紋章士、最大の強み………それは、人間の紋章士とは比べ物にならない身体能力の向上。)』

 

能力があまりにも特殊な紋章士リアーネ以外の獣牙の紋章士は、リュークの有する紋章士と比べて能力の上昇幅が約2倍。

 

『(その差を埋めれば、武器も間接攻撃も豊富なこちらに分がある。ならば………紋章士はこのまま!!)』

 

方針が決まってからは早かった。

 

『"クラスチェンジ"、密偵(エスピオン)。』

『慣れさせはしない………今度は、ネサラ!!』

 

再度上昇していたリネン、次は紋章士ネサラと"化身化"し急降下。一方リュークは"ビーストキラー"をしまい徒手で構えた。

 

『素手なら、捉えられるとでも!?』

『………』

 

速度を上げ、突撃するリネンをリュークは、正面からまともに受けた。

 

『ッ………!!』

『もう一回………あれ?』

 

リュークの反撃を受ける前に離脱し、再上昇しようとしたリネン。しかし急に違和感を覚え、彼女は減速した。

 

『"クラスチェンジ"、バトラー。食らえ、"ペシュカド"!!』

『く………くうっ!!』

 

リュークは別のエンゲージ武器の短剣、"ペシュカド"を投擲。それをリネンは避けようとしたが、短剣は吸い込まれるようにリネンへ向かい、クリーンヒットした。

 

『ぐ………急に感覚が。』

『(ったく、どの口が真正面だとほざく………!!リネン、持ち物確認しろ!!)』

『持ち物………って、何これ!?』

 

紋章士ネサラのアドバイス通り持ち物確認すると、いつの間にかリネンは一冊の魔道書を持っていた。

 

『"フェンリル"?………いつの間に?』

『(あの野郎………"盗む"ノリで重い魔道書押し付けやがった!!)』

 

リュークがリネンの突進を真正面から受けた理由。それは"盗む"の応用で魔道書の中でも特に重い、闇の遠距離魔法"フェンリル"の書を押し付けるためであった。更に紋章士ネサラも気付いていないが魔道書を押し付けた事でリュークはバトラーのスキル"魔殺し"を発動し"ペシュカド"の命中精度を上げ確実に当てたのだった。

 

『もう一撃………!!』

『そう何度も当たら………』

 

"フェンリル"の書を捨て身軽になったリネンはリュークの次なる投擲をかわそうと飛び上がった。しかし自分のイメージに反して上昇が遅く、次の"ペシュカド"の投擲も当たってしまった。

 

『うそ………!!』

『"神器錬成、英雄の杖"………"フリズスキャルヴ"!!』

『(身体が、鈍い………避けられない!!)』

 

エンゲージ武器の"ペシュカド"、そして"神器錬成"で出した杖"フリズスキャルヴ"………この2つの武器の共通点は、命中させる事で自らの能力上昇と相手の能力低下を同時に起こすものであること。これにより獣牙の紋章士のメリットである大幅な能力上昇を相殺したのだった。

 

『(鳥翼で避けるのは、もう無理………なら!!)』

『終わらせる!!』

 

身体が鈍り、飛行戦の続行は不可能と判断したリネンは"化身化"を解除し、地面へと落下。それを目掛けて、今度はリュークは"ペシュカド"を構え直した。

 

『ここまでだ………"瞬殺"!!』

 

そして踏み込み、一気に加速して瀕死に追い込む奥義を繰り出した。

 

『………待ってたよ!!』

『………!!』

 

だが"ペシュカド"の刃が届く直前、リュークの身体が固まった。

 

『"邪眼"………!!』

『御名答!!』

 

リュークが突撃する瞬間を狙い、紋章士ニケの"邪眼"を発動してリュークの動きを止めると"化身化"を紋章士フランネルに切り替え。

 

『逃さない!!』

『っ!!』

『ガルルルッ!!』

 

人狼(ガルー)の太く力強い腕。まずは横払いでリュークの武器を弾き飛ばすと反対の腕で奥義"四牙"を乗せた全力ストレートで闘技場の壁まで殴り飛ばした。

 

『って………ッ!!』

 

即座に復活し土を払ったリューク。

 

『(お前のやり方、読まれてるな。)』

『ですね………本当、頭使う戦いは苦手って言ってたのは何なんだって話ですよ。』

『(師匠の孫なんだろ?なら多少なりともあいつらを受け取った時に指南受けてれば分かるんだろ。それに、獣人(ラグズ)人間(ベオク)と違って"戦術"は使わないが"狩りの術"は持ってる。特にネサラみたいなのがいるから、搦手はこっちだけの専売特許じゃない。)』

『ですね………ならば、攻め方を変える他無いですか。ありがとうございました、サザ。』

 

紋章士サザとの"エンゲージ"を解除して態勢を立て直している間、リネンは闘技場内にできていた紋章氣に触れ力を溜め直していた。

 

『………。』

『(よっし、今のは綺麗に入ったな!!この"チャンス"に………)』

『(………いや、逆だ。今は"ピンチ"と考えた方がいい。)』

『………ネサラ。』

 

元来、獣牙の紋章士は戦術だの搦手だのは得意では無い。ティバーンやフランネルのような、

 

『細かい事考えるより先に叩き潰せば問題無いだろ?』

 

と言った具合だったり、アシュやニシキのように素直が故に騙し合いに向いていなかったりするからだ。そんな中で例外的に搦手や騙し討ちが比較的得意なのがネサラなので、リネンにとっての参謀と言えるのは彼である。そんな彼が忠告した理由はリュークの"本性"である。

 

『(あいつの"自認"は人間(ベオク)だ………もし、人か竜かを選べ、と問われたら迷わず人を取る。)』

『………。』

『(だが午前中のアレを見て分かっただろ?あいつの"本性"は竜………俺達に言わせりゃ竜鱗族(ラグズ)だ。ここで問題なのは………午前中のアレじゃなくて、理性あるまま火がついた時だ。)』

 

リネン達はリュークを見た。不敵な笑みを張り付けた彼は"竜石"を握りながら指輪を掲げた。

 

勇闘え(たたかえ)、蒼炎の紋章士(エムブレム)。」

『俺の出番か。』

「ええ、"知恵"は十分ぶつけましたので………次は"力"です。」

『了解した………あいつらと久しぶりに剣を交えたかったところだ、ちょうどいい。』

「決まりですね………"エムブレム・エンゲージ"、そして"竜神化"。」

 

紋章士アイクと"エンゲージ"し、更に"竜石"の力も開放したリューク。蒼炎を己とエンゲージ武器の斧"ウルヴァン"に纏わせ、構えた姿と相対したリネンは息を呑んだ。

 

『(相手は人間(ベオク)の"知恵"と、獣人(ラグズ)の"力"を併せ持つ存在だ。それでもやるか?)』

『………そんなこと、最初から分かってる。それでも………今は退かない、退きたくない。それでもいい?』

 

反対意見は無かった。

 

『もう一暴れしようか!!』

『………勇闘(たたか)わせろ!!』

 

動いたのはリネン。真っすぐ突撃した彼女は、人狼(ガルー)の太い腕をリュークに振り下ろした。

 

『ふんっ!!』

『グルアッ!!』

『ぬぅん!!』

 

紋章士サザは速さや身軽さに重きを置き、相手の攻撃をかわしながらトリッキーな動きで翻弄するスタイルであるならば。紋章士アイクはその真逆、"不動"の構えであらゆる攻撃を真正面から受け止め、叩き伏せるスタイルである。

 

『"神竜王の鉤爪"!!』

『うぐ………!!』

 

リネンの振り下ろした両手を"ウルヴァン"で防ぎ切ったリュークは前蹴りで彼女を突き飛ばした。

 

『"天空"!!』

 

隙を作ったリュークは"ウルヴァン"を上空へ投げ、追従するように飛び上がると宙返りをしてから、落下の勢いを上乗せした振り下ろし攻撃を繰り出した。

 

『アシュ!!』

『ぜやあっ!!』

『っぐ、う………!!』

 

防御力に長けた紋章士アシュに切り替え、"天空"の初撃を受け止めたリネン。だがリュークの攻撃力はリネンの防御力を上回っており、叩き伏せられるのを堪えるのが精一杯だった。

 

『その程度で俺は………立ち止まらん!!』

 

宙返りをして一度距離を取ると、今度は防御を貫く一閃で斬り抜けた。

 

『く………やられてばっかりで、たまるものか!!』

 

紋章士アシュは獣牙の紋章士の中では数少ない、遠距離攻撃の手段を持つ。その手段である尻尾からレーザーを放った反撃を繰り出したリネン。だがリュークは真っ向から受けた上で武器を"ウルヴァン"から神剣"ラグネル"に持ち替えた。

 

『すぅ〜………ぞおおいやああっ!!』

 

手にした"ラグネル"に蒼炎を集めると、リュークはそれを地面に突き刺した。するとリネンの周囲から蒼炎が火山の噴火のように噴き出し、それが炎の渦となってリネンを包んだ。

 

『うっ………くうううっ!!』

 

蒼炎に包まれながらも再度レーザーを放ったリネン。しかしリュークの体力が減っていた事で、体力が減ると防御力が上がるスキル"勇将"が発動したためリュークはそのレーザーを受け止め、弾き飛ばしてしまった。

 

『………!!』

『………。』

 

防戦一方のリネン。対してリュークは避ける事をやめているので先程よりダメージは受けているがまだケロッとしている。むしろ"勇将"の分を考えればよりピンチであった。

 

『………やっぱり、強いなんて話じゃない。』

 

理性を飛ばせばギルド総出でも止められない相手。理性を保ったままでも自分と滅竜魔導士(てんてき)を合わせた3人がかりで実質の完封負け。

 

『(ひっくり返せるとしたら………これしか無い。)』

 

するとリネンは一度"化身化"を解除。

 

『………?』

「(今この人を倒せる可能性は………これしか無い!!)」

 

そして再び指輪を掲げた。

 

「カイネギス。」

『儂の出番………そして、"あれ"を使うか。』

「うん………それで、ようやく届くかどうかってくらい。」

『ほう………。』

 

紋章士カイネギスはリュークを一瞥して顎髭を撫でた。

 

『相手は当代の神竜王、更に"エンゲージ"しているのは人間(ベオク)最強の紋章士、人呼んで"蒼炎の勇者"アイク………相手にとって不足無し。』

 

すると紋章士カイネギスは牙を見せ獰猛に笑った。

 

『滾って来るではないか!!』

「………そうね!!」

 

つられてリネンも、歯を見せて笑った。

 

「"獅子王"の力を宿した私が、"蒼炎の勇者"の力を宿した"神竜王"にどこまで届くか、見定めさせて貰う!!」

 

するとリネンの指輪が一際目映く輝いた。

 

「"化身化"………"最大解放"!!」

 

"最大解放"。それはリネンが独自で編み出した"奥の手"。本来は数分間保つ"化身化"の力を一撃に集約するもので、使えばしばらく"化身化"ができなくなる一度限りの大技。

 

『………!!』

 

だがそれ故にこの状態で"化身化"した時に彼女が纏う魔力は桁違い。紋章士カイネギス本人や、あるいは本人を凌駕する程の圧に、リュークは身震いした。

 

『………"金剛の呼吸"。』

 

そしてリュークは守備を上げる呼吸を取り、"ラグネル"に蒼炎を集めて構えた。

 

『………今度は避けないでよ?』

『安心しろ、正面から受け切ってみせる。』

『………じゃあ、行くよ。』

 

深呼吸をしたリネン。

 

『オオオオオオオオオッッッ!!!!』

 

観客ですら思わず耳を塞ぐような咆哮の後、リネンはリュークに飛びかかった。

 

『我らが牙を、受けるがいい!!』

 

紋章士カイネギスの奥義"咆哮"を乗せた爪と牙による乱撃。

 

『ッ……………!!』

『倒れろッッッ!!!!』

 

四方八方からの乱撃に、リュークはひたすら蒼炎を纏った"ラグネル"を構えたまま"不動"で受け続けた。

 

『終わり、だァァァッッッ!!!!』

 

最後に牙と前脚で斬り抜け、リュークを吹き飛ばしたたリネン。すると彼女の"化身化"が解けた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ………っ!!」

 

荒い息を整えようとしながら、目の前で舞う土煙をじっと見つめたリネン。

 

「はぁ、わた、し、の………」

 

そして力を使い果たしたリネンはその場でへたり込んだ。

 

「………負け、ね。」

 

次の瞬間、蒼炎が土煙を吹き飛ばした。

 

『………無様な真似はとれなくてね。』

 

土煙から出て来たリュークは身体も衣服もボロボロになっていた。しかし、まるで傷ついてなどいないとばかりにしっかりと立ち塞がっていたリュークは頭上で"ラグネル"を振り回し、構え直した。

 

『悪いが、あんたはここまでだ。』

「だね、完敗だ………さぁ、一思いに。」

『安心しろ、命までは取らない。』

 

そう言うとリュークは"ラグネル"を天高く投げ上げた。そして追従してリューク本人も飛び上がると"ラグネル"をキャッチして宙返り。

 

『"覇克・天空"!!』

 

返しのエンゲージ技の一撃は地面に炸裂すると同時にリネンの周囲の地面が隆起し、爆発。その爆発によって打ち上げられたリネンはそのまま落下して地面に激突し、大の字で倒れた。

 

『………ふん。』

 

"ラグネル"を振り払い、纏っていた蒼炎を消したリューク。すると"エンゲージ"を解いてから彼は大の字に倒れるリネンに手を差し伸べた。

 

「立てるか?」

「まだ………でも、ありがとう。」

「感謝される事をした覚えは無いけど。こっちはほぼ鬱憤晴らしだが。」

「それはこっちも同じ………馬鹿な味方のおかげで余計な面倒押し付けられたのが、今のでスッキリしたから、私が述べる言葉は感謝になったんだ。」

「そっか。なら、素直に受け取っておくよ。」

「ルーシィちゃんは無事?」

「ああ、もう大丈夫。」

「そっか………ごめん。」

「リネンは関係無かったじゃん。むしろ巻き込んでごめんね。」

「そこは気にしないで。」

 

視線を闘技場に移した2人。すると闘技場はぽっかりと大穴が空いており、その下の状況は撮影用の魔水晶と、その映像を元にした実況解説で中継されていた。

 

《リューク選手がリネン選手を撃破!!そして穴の下ではナツ選手がスティング選手、ローグ選手を撃破!!これにより、勝者は、妖精の尻尾!!ついに首位へと躍り出ました!!》

「あっちも決着がついたみ………あれ?ナツしかいない。ガジルどこ行った?」

 

魔水晶の映像をいくら目をこらして見ても、ナツしか映っていない。リュークが戦っている間、大穴の中にあったトロッコに乗せられガジルはいずこへと輸送されたのだがこの時のリュークは知る由もない。

 

「………まぁ、後で聞こうかな。それよりも早く出ないと、今度はナツに勝負を挑まれかねない………滅竜魔導士との戦いはもう勘弁して欲しいんだけど。」

「呼び出した身で言うのも違うけど………大変ね。」

「向こうの気持ちは理解するが、ねぇ………」

 

4日目の全行程が終わり、実況からは1日休みを入れてから最終日を迎えると通達された。その間に、リュークはナツに絡まれる前に闘技場を後にした。

 

==========

 

「おかえり、父さん!!」

「っ!!………ただいま。」

 

医務室に戻り、扉を開けるや否やリュークを待ち構えていたのはポラリスの突撃。リュークは予想以上の力での突撃を、ギリギリで踏ん張って受け止めた。

 

「あれで良かったかい?」

「うん!!凄くカッコよかった!!」

「………本当か?」

 

リュークはルーシィの方に視線を移した。

 

「あたしも聞いたわよ、アレで良いのかって。最後のリネンとの一騎討ちはともかく、最初の1対3はどうなのよ?」

「だよねー。本当はもっと派手な大立ち回りを繰り広げたかったけどいざ戦ったら「あ、これやっぱりダメなヤツだ。」ってなって………」

「そんな反応に困る事をペラペラ言われても………でも、アレで良かったのよね?」

 

ルーシィの問いに、ポラリスは力強く頷いた。

 

「うん!!だって………」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

『ハッ、この程度の策で総崩れとは、口程にも無い!!』

 

『骸になるか、親玉の所に逃げ帰るか、どちらか選ばせてやる。』

 

『その身で伝えろ………俺が、そして妖精の尻尾の旗が立っている限り………俺達は、決して負けはしない!!』

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「………ううん。何でもない。」

 

ポラリスは首を横に振ると、リュークに満面の笑みを見せた。

 

「父さんや母さんが信じなくても、あたしは自信を持って言うよ………さっきの父さんはあたしの知る、誰よりも優しくて強い、自慢の父さんそのものだって。」

「………そっか。未来の俺に恥じない戦いができたなら、良かった。」

 

リュークはポラリスの頭を撫でると、彼女は嬉しそうに目を細めた。

 

「わーっ!!」

「それとルーシィは、はいこれ。」

 

リュークが反対の手でルーシィに渡したのは"ウラノ・メトリア"の魔道書。

 

「………本当に、あたしの"ウラノ・メトリア"ね………」

「マルスの世界に伝わる星々の魔法、神器"スターライト"を参考にしてアイズが書き上げたものだ。威力はさっきの通り、"本家"には遠く及ばないが咄嗟に放つなら十分。いわゆる"充電式"だから、定期的に暇な時に魔力注いでおけば数発撃てる形になるよ。」

「ありがとう!!アイズにも後でお礼を言わなきゃ!!」

「そうすると喜ぶよ。あとは………」

 

リュークは再び視線をポラリスに移した。

 

「ポラリスをどこに泊めるか。」

「………すっかり抜けてたわ。もうすぐ闘技場が閉まるし、ここにい続ける訳にもいかないし………アンナの所に、というのもねぇ………」

「うん。アンナさんとさっき連絡したんだけど、「戻って来るな」、と………」

「でも、俺達が今泊まってる宿舎もなぁ………教育に悪いのが1、2………」

「………やっぱりあんた、順応早いわよね?」

「順応が遅くて人里で、そして妖精の尻尾で暮らせるか、って話だよ。………と、噂をしたらそのアンナから連絡だ。」

 

リュークが通信用魔水晶を取った。

 

《ようやくその子の正体に気づけたようね。》

「………ええ、おかげさまで。ここまでお世話になったと、お祖母様にもよろしく伝えて欲しい。」

《分かったわ。それで1つ朗報よ。》

「朗報?」

《あなたの探してた宿、見つかったわよ。》

「本当か!?」

《ええ。》

 

==========

 

《………という訳で、親子水入らずでごゆっくり〜。》

「………はぁ。」

「………そう来たか。」

「わぁ………!!」

 

アンナに案内されたのは元々の宿と、妖精の尻尾が集会に利用していた酒場の中間地点にある宿。広さは申し分無し、ただ唯一の誤算は、

 

「「ベッド1つかぁ………」」

 

用意されたベッドがキングサイズ以上の特大ベッド1つのみであること。

 

「あれ?父さんと母さん、一緒に寝たこと無いの?」

「………あるかないか、と聞かれたらあるけど………」

「他の皆と雑魚寝だったり、酔った勢いだったりだから………」

「………ふーん。ふーん!!」

「どうしたのよ、その笑みは?」

「なんでもー。ただ、あたしが生まれる前の父さんと母さんってそんな感じだったんだーって。」

 

ニヤーと笑ったポラリス。

 

「リューク、思った事言っていい?」

「どうぞ。」

「今のポラリス、悪い事考えてる時のあんたそっくりよ。」

「そうかい?俺はイタズラ企んでる時の君にそっくりだと思ったけど。」

 

そんな言い合いをしている両親をよそに、履物を脱いでいたポラリスはベッドの真ん中に飛び乗り、仰向けに寝そべるとその両側をポンポンを叩いた。

 

「早く早く!!」

「「………。」」

 

ポラリスに促され、彼女の両側に寝そべり川の字になったリュークとルーシィ。

 

「えへへ………久しぶりだな、こうして3人で寝るのも。」

「「………。」」

 

しかしここでポラリスは少し悲しそうな表情になった。

 

「………ごめんなさい。」

「何が?」

「ちゃんと説明しないで、いきなり父さん母さんって呼んで、好き勝手甘えて………」

「いいのよ。そりゃ驚いたけど、疑いようが無いくらいあんたはあたし達の娘だし………それに、申し訳ないけど、何があったかは何となく察しているから………」

「………そう、だよね。2人とも頭良いもんね、気づいちゃうよね。」

「でも安心して。あたし達はポラリスを突き放したりはしない………あんたの抱える寂しさは、あたしもリュークも痛い程分かるから。」

「母さん………」

「何度も言うけど、俺達はポラリスの味方だ。事情は落ち着いてから、自分のタイミングで構わない。大人になりきれてない俺達でいいのなら、存分に甘えていいよ。」

「………!!」

 

するとポラリスは僅かに涙目で、リュークとルーシィを自分に引き寄せた。

 

「ありがとう!!父さん、母さん、大好き!!」

 

そして再度の満面の笑み。自分達に向けられた、あまりにも無邪気なそれは、自分達に親の自覚をさせるのに十分なものだった。

 

「それじゃあ父さん、母さん、早速だけど色々聞かせて!!まずは2人の馴れ初めとか、互いのどこが好きになったとか、プロポーズの話とか、どんな結婚をしたいとか、あとはええと………」

「お、おう………飛ばすねぇ………」

「うん!!聞きたい事なんて数え切れないくらいあるもの!!今日は寝かせないから、覚悟してね!!」

「これは、大変だ………ふわぁ。」

「あ、ダメだよ父さん!!まだ寝ちゃダメ、何も聞けてないから!!」

 

先程まで圧倒的な力を見せつけた"神竜王"。だが今は、甘えてくる(未来からの)娘に付き合う、"未完成な"父親だった。

 

 

続く




・"最大解放"
エンゲージカウントを全て消費する代わりに1ターンだけ能力が数倍上昇する"化身化"。リネン並びに獣牙の紋章士の奥の手。ノリとしては"半化身"の逆。
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