勇者パーティーの仲間に魔王が混ざってるらしい。 作:かませ犬S
世界の脅威であった魔王を、勇者パーティーが討伐したという一報は瞬く間に世界全土へと広がった。
終わりの見えない魔族との戦いがようやく終わったのだと、世界中の人々が喜んだ。
『愉快な話よね。種族を束ねる頭を潰しただけだって言うのに戦いに勝利したと浮かれている。魔族はまた、潜伏する事を選んだだけだと言うのに』
私の視界の先で勇者パーティーの功績を称える祝勝パーティーが開かれている。参加している王族や貴族、そして私の仲間たちも笑顔で楽しんでいる。
そんな様子に水を差すように魔王ロンダルギアが私にだけ聞こえる声で喋る。正直にいっていい気はしない。
けど、今の私にはどうする事も出来ない。体の主導権は全てロンダルギアに握られている。私にできるのは魔法を使わせないように妨害する事だけ。
何とかならないか、主導権を奪い返せる方法がないか⋯⋯あの日からずっと考えているけど良い案は思いつかない。
どうしたらいいの?どうしたら私の体をロンダルギアが乗っ取ったって仲間に共有できる?
私だけだ。私だけが世界の脅威がまだここにいることを知っている。私だけが、抑止力として魔王を抑え込める。
『あれから64日、正直に言って舐めていたわ。並の精神力じゃここまで抗えない』
眠れない夜が続いている。私が眠れば、体を動かすロンダルギアが仲間を殺すから。だから常に起きて見張ってないといけない。
条件はロンダルギアも同じ筈。なのに、なんでロンダルギアの方が余裕があるの?虚勢じゃないのが分かる分、余計に心にくる。
『そのまま心を折ってしまいなさい。その方が楽になるわ』
絶対いや!私はまだ諦めない!
仲間の為にも!大好きなタケシの為にも、私は諦める訳にはいかない!
『そう⋯⋯ならそのまま頑張りなさい』
呆れたような口調。
視点が動く。主導権を握るロンダルギアが移動を開始して、仲間の元に歩み寄ってるみたい。視界には私の愛した人が映っている。
『惚気けるのは結構だけど、ちゃんと避妊はしなさいよ』
っ!!!!
唐突な言葉に顔が赤くなる感覚に陥る。
『私も予想外だったわ。まさか魔王であるあたしを倒すっていう大切な使命を持つ勇者パーティーの一員が、妊娠しながら戦いに臨むなんて』
宿敵であるロンダルギアにまさかそんな指摘をされるなんて思わなかった。反論しようにも、正論すぎて言い返せない。
───私は妊娠していた。
誰の子供かは直ぐに分かる。私はタケシ以外と性行為をしていない⋯⋯必然的に子供の親は私の大好きな人になる。
私自身、妊娠している事に気付かなかった。
知ったのは体の主導権を奪ったロンダルギアから指摘があったから。ロンダルギア曰く、私の体は全て把握しているからお腹に他の生命が宿っている事に気付いたらしい。
『それにしてもあたしも甘く考えていたわ。思っていた以上に悪阻が酷いんだもの』
なら、主導権を私に返してよ。
『嫌よ』
ロンダルギアが笑いながら私のお腹を擦る。まだお腹は大きくなっていない。けど、そこには確かに私とタケシの子供がいる。
『最初はね、この不快感が嫌で仕方なった。元凶を殺したいくらいにね』
そんな事、私が許すと思う?
『安心しなさい。今は殺そうなんて思ってないわ。⋯⋯この子供の活用方法を思いついたから』
っ!
早く主導権を取り返さないといけない。そうしないと私だけじゃない。私とタケシの子供までロンダルギアにいいように使われる。それだけは阻止しないと⋯⋯。
『そうそう⋯⋯貴女一ついい事を教えてあげるわ』
嫌な予感しかしない。
『あたしの部下でありながらあたしを裏切った、シルヴィについては前に話したでしょ?』
ロンダルギアとの戦いにも協力してくれたシルフィが魔族であり、四天王の一人である事をロンダルギアから告げられた。
正直に言ってびっくりした。けど、納得する自分もいた。どれだけ傷付いてまるで痛みがないように振る舞うシルフィが不思議で仕方なかったから。
けど、その正体が『
『魔王として裏切り者は許せない。だから粛清する事にしたわ。その為の算段も思いついた』
っ!シルヴィは四天王であり、魔族だった。けど、彼女も私と同じようにタケシに好意を寄せる乙女。恋敵ではあるけど、彼女もまた大切な仲間だ。
ロンダルギアがシルヴィにしようとしている事は見過ごせない!
『何ができるの貴女に?』
甘くみないで!私は貴女がシルヴィを殺せないように魔法を妨害をする!どんな事があっても魔法は使わない!
『ズレてるのよね、考えが⋯⋯。そもそも、あたしはシルヴィを殺そうなんて思ってないわ。魔王であるあたしから見ても彼女は化け物なのよ?』
不死の女王。その名前に偽りはない。
シルヴィは死なないから不死の女王と呼ばれるようになった。それを思い出した。
『それに貴女が妨害してくるのは織り込み済みよ。あたしはね、魔力を使わずにシルヴィを粛清する方法を思いついたの』
そんな事⋯⋯できる筈が⋯⋯。
『そう思うなら指でも咥えて見ていなさい。どうせ貴女には何も出来ないのだから』
嘲笑うようなロンダルギアの言葉に言い返すことができなかった。
───それから数週間が経過した。
主導権は奪われているけど、彼女の全てを私は監視できる。だから、ロンダルギアが仲間たちにバレないように密かに準備しているものが何か理解した。
ロンダルギアはシルヴィを封印するつもりだ!
レグ遺跡と呼ばれる古い遺跡を対象に大きな魔法陣を描いている。この魔法陣の中に入ったものを封印するという単純なもの。
けど、この魔法陣を発動するには魔力が必要!魔法のような詠唱は必要ないけど、魔力がなければ封印は機能しない!
なら、私にも妨害できる!
『ふふ、流石に楽観的すぎるわ。言ったでしょ?貴女の妨害は織り込み済みだって』
楽しそうにロンダルギアが笑う。嫌な予感がする。
『あたしの魔力が使えないなら他所から持ってきたらいいだけ』
魔族に───部下に連絡を取る気?
『いえ、別の方法よ。魔力の塊とも言える剣に心当たりがあるのよね』
剣? 魔力の塊?
言われて頭の中に浮かんだのはタケシが持つ魔剣。魔力を剣に蓄える事が出来るという、魔法使いなら喉から手が出るほど欲しい代物。
『貴女の意中の相手はあの剣がなければ非力な人間にすぎない⋯⋯それに、影響力を考えると邪魔なのよねあの剣』
どういうこと?
『貴女は知る必要はないわ。
それ以上話す気はないと、言外にそう言ってる。
『それと、ここまで言えば貴女でも分かったでしょ?あたしが何をしようとしているか?』
ロンダルギアはシルヴィを封印する為の魔法陣を、タケシの剣を使って発動するつもりだ。
そうする事で私に妨害される事もなく裏切り者であるシルヴィを封印する事が出来る上に、タケシから魔剣を奪う事で弱体化を測れる。
『そういうことよ。まずは裏切り者から⋯⋯。順々に貴女の仲間を決してあげる。心が折れた方がずっと楽だったと思うわよ』
一人目の仲間が、私の手で封印された。
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