フィンの息子(闇派閥所属、怪人)

1 / 1
勇者の子

 コーマック。

 フィアナ騎士団が使えていた主であり、フィアナ騎士団不在中に死んだ王の名を騙る闇派閥(イヴィルス)と組んでいる謎の人物。

 

 種族は小人族(パルゥム)。その存在は人工迷宮(クノソッス)で初めて確認された。その戦闘能力(ステイタス)は第一級に匹敵する、怪人(クリーチャー)

 

 闇派閥の小人族を極彩色のモンスターと融合させ、【ロキ・ファミリア】を襲撃した。

 

「人をやめたとは言え、元同族にここまで出来てしまうとはね…………」

「俺だって悲しいさ。仮面の下に布含ませておかなきゃ涙が溢れていたねえ!」

 

 赤髪の調教師(テイマー)にやられた傷で満身創痍ながらも睨みつける勇者に、コーマックはモンスターと小人族の融合体の死体を蹴りつける。

 

「仕方ねえよぉ。強くなりたいんだ、冒険者を見返せるぐらい………こんな馬鹿な実験に付き合ってまで、殺したくて仕方なかったんだ!」

 

 グリっと死体の頭の一つを踏みつける。向きを変えられた顔は、小人族であることを考慮しても幼く映る。

 

「全く、こんな子供に憎しみを抱かせるなんて冒険者は最低だなあ?」

 

 小人族の扱いは、オラリオ………いや、世界においてかなり酷い。力で従わされ、搾取され、嘲笑われる。

 世界の縮図たるオラリオ、冒険者の街では更に酷いが。

 

「小人族を救ってくれる勇者様は、自分の地位を上げる事ばかり………自分もと続いて恩恵もらってはサポーターとしてこき使われて、最後にはモンスターの餌だ。だから拾って使ってやるから望みを言えて言うとさぁ、オラリオを滅ぼしたいんだとよ!」

 

 小人族の光となって再び一族の栄光を取り戻したいと願うフィンの夢を知っているのだろう。そのための行為による結果を、嘲笑う。

 

「お前がやってきたことは、ぜぇんぶ無駄だったんだなあ! 卑屈なチビが増えるだけで、誰もお前の後に続こうなんて考えねえし、考えても死ぬだけだ!!」

 

 その侮辱にアキのラウルが駆け抜ける。Lv.4の彼等彼女の動きをコーマックは簡単に受け止め、アキの腹に短剣を突き刺しラウルの首を狙うも槍が飛んで来て距離を取る。

 

「レヴィスめ。俺が殺すって言っておいたのに勝手なことを」

「逃げるのかい…………」

「ああ、逃げるねえ」

 

 傷の深いフィンに、しかしコーマックは追撃する事なく背を向ける。

 

「俺が勝てるわけねえだろ、満身創痍の勇者様によお!」

「っ! 逃さないっす!」

「【炎の息(アイレン)】………【ビルガ】」

 

 超短文詠唱から放たれるは、リヴェリアの業火の如き炎。ギリギリで反応できるも余波だけでラウルの体を焼く。

 

「せいぜい死ぬなよ、ブレイバー」

 

 扉が閉まる瞬間、ばいばい、と手を振るコーマック。フィンは必ず同族を弄ぶ元同族の怪人を、自分が殺すとその時誓ったのだ。

 

 

 

 

 

 二度目はヴァレッタのアマゾネス襲撃事件。

 魔法を使いヴァレッタを追い詰めたベートだったが、その首を落としたのはコーマック。

 

「フィンの猟犬に首を噛ませるよ、嫌だったんだよ。俺、元々そいつ嫌いだしな」

「【目覚めよ(テンペスト)】!!」

 

 ベートが動くより先に、アイズが飛びました。今のベートなら彼を殺してしまうかもしれないからだ。最善は、捕え、鍵を奪い、人工迷宮の情報を聞き出す事。

 

「精霊の加護………いや、血か。俺とは違って、親の血に恵まれたなあ『アリア』の子」

 

 回避しながら炎を放つ。だが、風の鎧に阻まれ届かない。相性はアイズの方が有利だ………。

 

「装備もいいし、神様に、勇者に、エルフの女王に愛されてんだなあ」

 

 しかし魔法の相性で勝っても、コーマックは尚もアイズに勝る怪人だった。

 

「グルアアアアア!!」

「おいおい、待ても出来ねえ犬がよぉ……あの人に泥塗る気か? 寝てろ!!」

 

 ベートが吠え、炎を纏い迫るがコーマックの拳が腹にめり込み吹き飛ばされる。焼け焦げたコーマックの右腕は直ぐに治る。

 

「【黒の歯(フェルグス)】。【ガラドボルグ】!!」

 

 と、その詠唱と魔法名が唱え終わると彼の腕を突き破り、ねじれた牙のような漆黒の棘が複数生えてきた。狙いは………!!

 

「正義の味方は大変だなあ」

 

 街へと放たれる漆黒の牙。ベートとアイズが慌てて駆け出し、防ぎきるもその間にコーマックは姿を消していた。

 

 

 

 

 

 

「え〜、ヴァレッタちゃん死んじゃったの〜?」

「残念だったなあタナトス様」

 

 残念そうにため息を吐くタナトスと、ヘラヘラと笑うコーマック。タナトスはまあ、仕方ないかとため息を吐く。

 

「なータナトス様はさあ、今まで自分の為に死んだ奴等覚えてるかあ?」

「? 急に何、そんなの()()()()()()()

「そいつ等に殺された遺族の気持ちは考えたことあるかあ?」

「ないねえ。どうしたの?」

「ほら、大抗争で妹死んだガネーシャの眷属がさぁ、遺族の気持ちを考えろとかさあ………はは、考えまくってんだよなあ。彼奴が、苦しんでくれるかなぁって!!」

 

 タナトスは目を細め肩を竦めた。怪人の中で、唯一自分の眷属。この狂った男を、タナトスはタナトスなりに愛していた。

 

 

 

 

 そして三度目。

 【ロキ・ファミリア】による人工迷宮への侵攻時。【ロキ・ファミリア】はタナトスを殺す為にロキを引き連れ、まさしくタナトスを追い詰めた。

 

 精霊の分身を起動させようというタナトスに対して、エニュオの使者は断った。お前もまた贄だと。

 

「行クゾ、コーマック」

 

 エニュオの使者、エインは断られるとは思ってない。神の恩恵と怪人としての力、この2つなくしてコーマックの規格外の力は発揮出来ないからだ。

 

「え、やだよ? そもそも、あれを調教してたのは俺だぞ?」

「……………ナニ?」

「道化はお前等だエイン。オリヴァスを隠せれた、信用のない人形。そんなお前に、あれの制御権を渡すわけねぇだろ?」

「貴様、ナニヲ………!!」

「起きろ。地上を焼き尽くせ」

 

 ズン、と人工迷宮全体が震える。そしてタナトス達がいる広間の床を砕き『竜』が現れた。

 

「正気カ貴様!? 精霊の分身ヲ、地上ニ出スナド!!」

闇派閥(イヴィルス)もエニュオも、俺にはどうでもいい!! 都市の破壊は俺がする、お前は邪魔だ。()()()()()()()()()()()

 

 と、エインの首を掴むコーマック。再び人工迷宮が揺れた。階層をぶち抜き、空へと届く光の柱が登ったのだ。

 それは神の帰還を意味する。

 

「あ、あああ…………あああああああああああ!?」

 

 神の恩恵を失いただの怪人となったエインが叫ぶ。自分が愛する神がこの世から消えたのを感じ取ったのだ。

 

「ニーズホッグ、取り込め」

『解ッタワ』

 

 非力な力で暴れるエルフを、コーマックは『竜』に食わせた。『竜』はそのまま階層を破壊する光を放つ。

 

 

 

 

 

「あっはははは! 見ろよ、まるで7年前の再現だ!」

 

 精霊の分身の広域魔法が神をも巻き添えにして、光の柱が上がる。多くの冒険者が非力な一般人に成り下がり炎に焼かれていく様をコーマックは笑っていた。

 

 人工迷宮を作り続ける一族の今の長、バルカ………弟、ディックスが作った人工迷宮の1階層を崩壊させる機能を改造した、一部を崩壊させる仕組み。

 それによって開けられた穴から飛び出した精霊達の魔法は夜闇を色とりどりに染め上げた。

 

「お、いたいた! いたぞほら、【ロキ・ファミリア】だ!!」

 

 楽しそうに笑うコーマックはそのままニーズホッグを操り脱出してきた【ロキ・ファミリア】へと襲いかかる。

 

「どうだブレイバー!? 失敗した感想は! あっはははは! また民衆がお前等に失望して石を投げるぞ? 生き残ればなあ!」

 

 と、アマゾネスの少女が飛び出してきた。

 

「しつけえんだよストーカー男! 団長に近づくんじゃねえ!」

「うるせえなあ間女。お前こそ、小人族になってから出直せ。変な名前で呼びやがって、俺にはさあ…………父さんがくれた、フィオナって、素敵な名前があるんだよ」

 

 仮面を取る。何らかのマジックアイテムだったのか、神の色が黒から金に染まっていく。

 紅い瞳でティオネを嘲笑うその顔は、【ロキ・ファミリア】の誰もが知る顔。

 

「……………嘘だ」

「本当さ。悪夢依頼だなあ、お父さん」

「は? おと、団長が………ふ、ふざけた嘘を………」

「【炎の息(アイレン)】」

 

 ゴウッと炎がティオネを焼く。

 

「ティオネ!!」

 

 コーマックは足元の石でも蹴るかのようにティオネを蹴り落とすとフィンに向き直る。

 

「だって、君は………冒険者なんて、戦えるはず」

「ああ、魔石を埋め込まれたなぁ。おかげでようやく戦えるようになったんだ」

 

 グチリと指を食い込ませ、開いた胸の肉の奥に存在したのは極彩色の魔石。

 

「どうしたらお前の人生を踏みにじれるか、あの日からずううううううっと考えた!! 恩恵も与えられず、勇者の息子なのにって世間の目が厳しくなっても名声のために利用された子供の気持ちなんて知らねえだろ!?」

 

 コーマック……フィオナ・ディムナは生まれながら道化の眷属になることが決まっていた。勇者の後に続く一族の光になって欲しいと父に期待され、しかしある程度育った後心臓が体を支えられなくなりまともな日常生活を送るのも至難となった。

 

「最初はお前が新しく産んだ子供を殺そうと思ってた! でも中々子供を作らねえし、どうしたもんかと思ったらお前が勇者を捨てようとしてるじゃねえか! だから、エニュオの計画を潰して乗っ取ることを決めた。お前が全霊をかけた戦いを、滅茶苦茶にしてやろうと思ったんだ!」

 

 それでも父が最初に向けてくれた期待に答えたくて、もう一度父に見てほしくて、父が目を離した好きにダンジョンに潜り、24階層で命を落とした…………筈だった。

 

「清濁も飲み込んで、愚かな行為も受けれる兎の姿が眩しかったか? 自分もそうなれると思ったか!? 世界の称賛を、素直に浴びれる日が来ると思ったか!? 知らねえようだから教えてやる!!」

 

 だが彼は生きていた。汚れた精霊に魔石を埋め込まれ、触手として第二の人生を得ていた。

 

「過去は消えない」

 

 見ろ見ろ、見てと願い続けた子供は、結局最後の最後まで親に見てもらえることはなかった。フィンは名声のために、傷ついているからとファミリア内でフィオナの話を禁忌として、存在を無かったことにした。

 

「自業自得だぜお父さん! さぁ、一緒に地獄に堕ちよう! 小人族の光も、一族の再興も、全部踏みにじった俺を殺して、最悪の小人族として名前を残せよ、フィン・ディムナ!!」

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

フィオナ・ディムナ

フィンが見初めた優秀な小人族の女との間に生まれた。心臓に欠落を抱えており、ある程度成長するとまともに動けなくなってしまった。

それでもフィンに憧れるもフィンは罪悪感と使命感により目を合わせず、24階層に闇派閥(イヴィルス)を討伐しに向かう冒険者に紛れ成果を残そうとして死んだ。

しかしその時汚れた精霊により怪人として復活。

なお、フィンの妻はフィンがフィオナを無かった事にした日自殺してる。

名前の由来は女神フィアナの男性としての名。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。