もしかしたらこんな展開もあったかも知れない。

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クラッチペダルが頭を空っぽにして書いた一発ネタ。


もしものIS

……なんでこうなったんだろうか?

 

少年は口に出さず、内心そう思う。

ちらりと右を見る。

 

自分を見ている少女の群れが見える。

 

すぐさま視線を正面に戻し、今度は左を見る。

 

自分を見ている少女の群れが見える。

 

またもやすぐさま視線を正面に戻し、そして深いため息。

 

「何ゆえ……俺は女の園にほうりこまれたんでせう?」

 

少年……名を織斑一夏と言う……は誰にも聞こえないようにそう呟いた。

 

 

※ ※ ※

 

 

ことの始まりは今からざっと二~三ヶ月ほど前。

そう、忘れもしない、高校受験の日が全ての始まりだった。

 

一夏はごくごく普通の男子中学生として中学を過ごし、ごくごく普通の高校を目指し、高校受験にのぞむ……筈だったのだ。

 

「……目覚ましさえちゃんと鳴っていれば!!」

 

走りながら一夏はだれに聞かせるでもなくそう叫ぶ。

そう、現在、受験開始ざっと10分前である。

普通であればすでに受験会場で自分の席に座っていなければならない時間だと言うのに、一夏はこうして受験会場目指して走っている。

まぁ、理由はごくごく単純。

 

寝坊である。

 

前日、受験に向け筆記用具、受験票その他もろもろを何度も何度も確認し、目覚ましもきちんとセットして寝たのだ。

しかし、ここで思わぬ確認忘れが出てしまったのだ。

目覚ましの電池である。

 

睡眠から目を覚ました一夏が見たものは、4時30分で止まっている目覚まし時計だった。

急いで部屋から飛び出し、リビングの時計を見ると、起きるはずだった時間から1時間も経過した時間。

 

そこからはもうてんやわんや。

急いで身支度を整え、昨日揃えた荷物を持って家を飛び出した。

そして本来乗るはずだった電車から一本遅れた電車に飛び乗り、目的の駅で飛び出して現在と言うわけだ。

 

「間に合うか!? 間に合うのか織斑一夏! 否、慌てるな。たしか試験は10分だか20分だかは遅刻が認められているはず! 試験官の印象は悪くなるだろうが、それに賭けるしかない!!」

 

こうして、何とか試験会場にたどり着いた一夏を待ち受けていたのは……

 

「誰もいない……だと……!?」

 

既に誰もいないロビーであった。

とりあえず、真正面に『藍越学園 入試受付』と言う看板があり、その傍にテーブルがあるという事は試験会場を間違えたなどと言うポカはしていないと言うことだ。

しかし、肝心の受け付けの人がいない。

と言うか自分しかいない。

 

「間に……合わなかった……?」

 

思わず膝をつく一夏。

 

どうしよう。

寝坊して受験受けれませんでした、テヘペロ☆

なんてやったら我が鬼姉に殺される。比喩無しで。

 

「……今の時刻は……」

 

腕時計を見やる。

試験開始5分前。

時刻を見て、一夏は決意する。

 

「5分か……見つけれるか……試験会場」

 

一夏はロビーの案内図を穴よあけ! と言わんばかりに見つめながらそう呟いた。

 

 

※ ※ ※

 

 

一夏、決死の覚悟の結果は……

 

「……迷ったでござる」

 

見事失敗していた。

と言うか迷子と言う考えうる限り最悪の状態だった。

 

「おかしい、あれほど案内図はしっかり見ていたというのに……何故たどり着けないんだ……?」

 

冷静だったようでその実慌てた状態で案内図をいくら見たところで、頭に入るはずなんてないと言うことに一夏は思い至らなかった。

最早入試は絶望的である。

 

「あぁ、千冬姉に殺される……比喩無しで」

 

あぁ、少年一夏の人生はここで終了してしまうのか?

と内心人生のエピローグを流していた、まさにそのときだった。

 

「むっ! あれは……第一村人キターーーーーーーーー!!」

 

目の前を二つ重ねたダンボールを抱えてとおりすがる女性を発見した。

しかも、服装はピシッとしたスーツ。

明らかにここの関係者!!

これは救いがきたか!? と一夏はその女性に近づき、声をかける。

 

「あのー、忙しいところすいません」

「へ、あ、はい、何でしょう?」

「あのー、『藍越学園』の入試会場ってどこか分かりますか?」

 

一夏はここで思いもよらぬ不幸に出会うことになる。

彼は確かに女性に『藍越学園』の入試会場はどこかと尋ねた。

だが、忙しさに焦っていたのか、それともただ単にその女性が天然だったのか、女性はこう答えたのだった。

 

「え、あぁ、『IS学園』の入試会場ですか? そこの角を右に曲がってすぐのところですよ」

 

藍越学園。

一夏が志望しているごくごく普通の公立高校である。

特色があるとすれば……就職率が他の学校より高めであると言うことぐらいか。

 

IS学園。

これは最早この世界では有名どころの騒ぎではない。

詳しい説明はまぁ今度行うとして、IS……『インフィニット・ストラトス』と呼ばれるパワードスーツを扱う人材を育てる教育機関である。

 

藍越とIS。

似ている。確かに似ている。

だが、普通であれば間違わない。

誰だって間違わない、筆者だって間違わない。

 

だが、ここで異なる理由で焦っている二人の間で、この間違いはまかり通ってしまった。

 

「ありがとうございます!!」

 

女性の言葉を聞くや否や、一夏はすぐさま示された角をターンライト。

すぐさま女性から見えなくなってしまった。

 

「……あれ? でもあの子男の子……技術科か情報科志望なのかな?」

 

一夏がすっかりいなくなってから、ようやく女性は首をかしげることとなった。

 

 

※ ※ ※

 

 

女性の指示通りに角を右に曲がった一夏は、曲がり角を曲がってすぐにあった扉の前で急停止、荒れ狂う息を整える。

 

「ぜぇ……ぜぇ……じ、時間!!」

 

腕時計をすぐさまチェック。

時刻は試験開始時刻から10分オーバー。

 

「よ、予想ならまだぎりぎり間に合うはず……」

 

ようやく息が整い、顔を上げた一夏が目にしたものは……

 

 

『IS学園 入試会場』と札がはられた扉だった。

 

「…………」

 

右見て、左見て、再び扉を見やる。

やっぱり扉にはIS学園の文字。

 

目をこすり、眉間をもみこみ、再び見る。

どう足掻いてもIS学園の文字。

 

「~~~~~~~~~っ!!」

 

しばらく何かをこらえるようにうずくまる一夏。

そして……

 

「藍越じゃなくてISじゃないかーーーーーーーーーい!!」

 

思わず扉に突っ込みをかましてしまった。

せっかく整えた息が、再び乱れる。

しばらく扉を睨みつけた一夏は、扉に手を……伸ばすわけも無くその場でUターン。

 

「なんだか俺の中のアニマっぽい何かがこの扉を開けるべきだと囁いているが、普通に考えて、藍越受けに来てISの扉開けるのはないわー」

 

誰だってそう思う。

筆者もそう思う。

そして一夏もそう思った。

そうして、これはもう諦めて鬼姉の裁きを受けるかととぼとぼ帰ろうとしたときだった。

 

『駄目駄目、それじゃ物語始まらないでしょ? JK』

「はぇ?」

 

ふと耳に飛び込んできた声と共になぜか体は扉の方をむいていた。

と言うか、それどころか体が自らの制御を離れ、勝手に扉を開け放った。

 

「アイエエエエエエ?! カッテニウゴク!? カッテニウゴクナンデ!?」

 

なんとか体の制御を取り戻そうとするが、体はずんずん部屋の奥へと向かっていく。

そして、ある物の前で止まり、そこでようやく体の自由が戻った。

 

「な、なんだったんだ一体……ってこれ……IS?」

 

一夏は自信の目の前に鎮座する鉄の塊を見上げる。

それはまさにISそのもの。

 

ちなみに、一夏は知らないが、このIS、名を打鉄と言う。

 

「なんでこんなところに……ってIS学園の受験会場なんだからあってもおかしく無いか」

 

じっと打鉄を見つめる一夏。

そして吸い込まれるように打鉄に手を……

 

「いや、無許可で学園の備品であろうこれを部外者である俺が触るとかないわー」

 

触るわけも無く、部屋を出ようとUターン。

当たり前である。

下手したら犯罪になるのだから。

 

ちなみに、このIS、女しか使えないと言うパワードスーツとしては致命的な欠陥を持っており、当然一夏もそれを知っているため、なおのこと触ろうなどとは考えなかった。

が……

 

『駄目駄目、それじゃ物語続かないでしょ。JK』

 

再び体の自由が利かなくなり、制御を離れた体は打鉄に触れる。

 

「アイエエエエエエエエ?! デジャヴュ!? デジャヴュナンデ!?」

 

 

そして、一夏の指が打鉄に触れた瞬間。

 

「っ!?」

 

頭の中に流れ込む膨大な情報。

それは余りにも膨大な情報ゆえ、一体何の情報なのかが最初は分からなかった。

しかし、徐々に津波もかくやと言わん情報の奔流が穏やかになってくると、その情報の正体が判明した。

 

「これは……ISの動かし方?」

 

そして、光に包まれる一夏。

 

「うおっまぶしっ」

 

そして、やがて光が収まるとそこには……

 

「お、おおおおおおおおお!?」

 

何故か打鉄を纏った一夏の姿があった。

 

「こ、これは……装甲一夏(アームド・イチカ)!?」

 

一夏の脳裏に妙に歌がうまい科学者が「恐れるな一夏!今のお前なら使いこなせる」「打鉄はお前の武器だぁぁぁぁぁ!!」と叫んでいるという謎のビジョンが浮かんだが、きっとそれは幻だろう。

というか幻じゃなきゃ困る。

 

なお、一夏が打鉄をまとう際の光まぎれるように、一夏の体から何かが飛び出し、こっそりと部屋を出て行ったのだが、一夏はそれに気づいて無い。

部屋を出て行った物……よく見えなかったが、なにやら機械のようで、表面に兎のペイントがなされていた。

 

そして一夏が普通自分に動かせるはずも無いISを動かしたと言う混乱から抜け出せないうちに、部屋の扉が開く。

 

「なんだか私のアニムスっぽいなにかが、今くそ忙しい状況だと言うのにこの部屋の中に入れと囁いているわ!!」

 

先ほど一夏に間違った案内をした女性がそんな事を叫びながら部屋に入ってきた。

そして、打鉄を起動した一夏を視界にいれ固まる。

一夏も現状を見られて固まる。

 

一夏は「やっべぇ、勝手に触って、しかも動かしちゃったとか、これもう逮捕もんじゃね?」と言う理由から。

女性は「男がISを動かして……え!? 男!? 男に見える女じゃなくて、男の娘でもなくて、男が!?」と言う理由から

 

「…………」

「…………」

 

しばし、にらみ合った蛇のように硬直。

そして……

 

「「目と目が合う瞬間、非常事態と気づいた!!?」」

 

そこから先はもう皆様もお分かりだろう。

あれよあれよと言う間に彼はIS学園と言う女の園に放り込まれることになったのだから……

 

 

※ ※ ※

 

 

過去の回想をしながら、一夏はため息をつきつつ、再び思う。

 

--あぁ、どうしてこうなったんだろうなぁ……




書いてて思いました。

自分の書いたのはネタに走った極論だが、普通こんな場所でIS見たって触るという選択肢はとらないんじゃ?

一発ネタなので詳しい設定とかは一切無し。
完全に頭空っぽにした際のノリで書いてます。


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