わたしの百合ハーレムは神様に望まれているらしい   作:緑茶わいん

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おまけ:里帰りとお土産

『異世界転移』

 

 きっかけは、些細な疑問だった。

 神聖魔法で出てくるアイテムはいったいどこから来ているのか。

 単純に神様が知っている物ならなんでも作り出せる、的なことかもしれない。けれど、だとすると本はどういう基準で選ばれているのか?

 

 シルヴィアがこの世界に転生してこられたということは、この世界と地球とはなんらかの繋がりがあるんじゃないのか。

 神聖魔法がなんでもありなら、もしかすると行けてしまうかもしれない。

 地球に。前世を過ごした世界に。

 

 初めて試してみた時はおっかなびっくり。

 仕事をあらかた片付けて、シルヴィアがいなくてもなにも問題ないよう整えて。

 大切な人たちの中から希望者を数名、同行させるつもりでいろいろアイテムも揃えて。

 試した結果は、

 

『うん、だめだね。……魔力が足りないって感じ』

『なんだ。どきどきして損したよ』

『待ちなさいな。それは魔力さえ足りれば成功する、ということではなくて?』

『むしろ朗報ですよね? 魔力は溜めればいいんですから』

 

 というわけで、再び準備を整えた。

 物に聖なる力を蓄積する方法は昔から使っている。時間をかけて蓄え、たまに騒動が起こって蓄えを減らしたりしながら、十年単位で時間が経って。

 

『よし。これだけあれば行って帰って来られると思う』

『そうですか。では、行ってらっしゃいな、シルヴィア』

『あれ? みんな行かないの?』

『別に行きっぱなしってわけじゃないんでしょ? だったら待ってるよ』

『クレールさんは言葉が通じないのが怖いんですよ』

『ばっ、それ言っちゃう!?』

 

 付き合いの長い者たちはそう言ってシルヴィアを送り出してくれた。

 まあ、クレールの言うことにも一理あるのだ。

 もし本当に行けたとして、向こうで用いられているのは日本語──すなわち、神聖語だ。日常会話レベルでそれが使えるのはシルヴィアと、後は天使の里の一部くらい。

 話をするだけで難儀するのでは大変なので、危険がないなら無理する必要もない。

 それに、危険を回避するための工夫もした。

 

「じゃ、行くよ。『異世界転移門(・)』」

 

 異世界転移する神聖魔法ではなく、転移する門を開く魔法。

 幸い、願いは了承され──莫大な魔力と引き換えに、シルヴィアたちの眼前に『次元の裂け目』とでも表現するしかないものが現れた。

 

「本当に、あなたといると不可思議なものに出くわしますけれど……これは格別ですわね」

「うん。これは怖いって。さすがのあたしでも躊躇するよ」

「クレールさんは化け物の相手以外だとむしろ奥手だと思うんですけど」

 

 と、そこでクレールが(イザベルの頬を腹いせに弄びながら)首を傾げて、

 

「それにしても、本当にその格好で行くの? ずいぶん地味な気がするけど」

「ん? うん。むしろこれでも派手なくらいかな」

 

 仕立てはいいが飾り気のない、純白のワンピース。

 神聖魔法で向こうの服を出しても良かったのだけれど、どうせ髪と目の時点で目立つので少し浮世離れしているくらいに敢えて留めた。

 この方が観光に来た外国人かコスプレにでも見えるだろう。

 肩には平民向けのラフな鞄をかけ、中には金に替えられそうな物があれこれ入っている。

 シルヴィアは「というわけで」と門をくぐって。

 

「!?」

「うん、平気そうだから行ってくるね」

 

 戻ってきた。

 

「し、シルヴィアさん! 心臓に悪いですから止めてください!」

「ごめんごめん。でも、このために門にしたんじゃない」

「それはそうですけれど、よく躊躇なくそこに入れますわね?」

「まあ、わたしが出したんだし。こういうの見慣れてると言えば見慣れてるし」

 

 もちろんアニメやゲームの話だけれど。

 そんなこんなで、シルヴィアは門を再びくぐり──。

 

「……うん、日本だ」

 

 懐かしい、前世の自分の故郷にたどり着いたのだった。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 出た先はどこかの学校の校庭らしき場所だった。

 幸い休日なのか校舎内に人の気配はほとんどない。こっそり出て行けばぎりぎりバレないかも。

 ちなみに、背中の翼はもちろん消している。

 

「でも、門は消していかないとだめかな」

 

 誰かが利用して向こうへ行ってしまうと大変だ。

 ……ちなみに、今の発言は日本語だ。

 無意識にそっちが出たのが驚きだけれど、これが習慣というやつか。ぶっちゃけ向こうでも日本語忘れる暇なかったし。

 

「消せるかどうかも問題なんだけど」

 

 手をかざして念じると、聖なる力はこちらでも問題なく使えた。

 ということは門を出すこともできるということだ。

 もう一度力を使えるだけの神聖力は首にさげたペンダントに蓄えてあるので消しても問題ない。みんなにもそのことは伝達済だ。

 

「……さ、なんとかバレないように移動を」

 

 シルヴィアは息を吐いた後、さっそく動き出そうとして、

 

「待ちなさい、そこの不審者」

「時期はズレているはずなんですけど……あの、失礼ですがど(・)ち(・)ら(・)の(・)異(・)世(・)界(・)か(・)ら(・)来られたのか教えていただけますか?」

「待ってください。異世界から来た人がわたし以外にもいるんですか?」

 

 なんかいきなり訳知りっぽい人たちに捕まった挙げ句、事情を説明させられた。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「まさか、素直に話したお礼に換金まで手伝ってもらえるなんて」

 

 日本もしばらく離れている間に様変わりしたということか。それとも、前世の頃から不思議に溢れていたのか。

 不思議ついでに、こっちはまだシルヴィアの前世が生きていた頃から十数年程度しか経っていなかった。

 時間の流れ方がこっちと向こうで違うのか。

 だとすると、こっちの一日が向こうの二週間とかになる可能性がある。あまり長居はできないか。それとも転移ついでに時間も移動できる可能性が?

 

「まあ、そもそも目的があるわけでもないんだけど」

 

 それでも、懐かしい風景の中を歩くのは妙に楽しかった。

 住み慣れた街とは異なる場所。時間の経過もあるけれど、ああ、日本だと実感できる。

 帰ってきた。

 というのも違うか。凡ミスとしか言いようがない形で脱落したシルヴィアだし。

 

「うん、でも、来て良かった」

 

 せっかくなのでゲームを買って帰ろうか。

 そんなことを思い、ショップを覗いてみたりする。目についた喫茶店でコーヒーとケーキを楽しんだり。定食屋でカツ丼を注文してみたり。

 ……どうしよう、キリがない。

 

 シルヴィアが持ってきた換金用の品は主に向こうのドレスだ。貴金属は証明書がないと売れなかったりするし、食品系も衛生面で警戒されやすい。古着屋ならその点まだ緩いかと思った。

 売りやすいようにある程度ランクは落として来たものの、換金を手伝ってくれた女性たちからは「こんなの古着屋に売るのは勿体ないです!」と言われた。

 おかげでそれなりのお金にはなったのだけれど。

 

「やっぱり買って帰るならお土産かなあ」

 

 新しいゲーム機はネット接続して認証・登録がデフォになっておりややこしかったため、中古ショップで古い携帯ゲーム機とソフトをいくつか。

 ホームセンターで植物の種や調理器具をいくつか。

 後は酒。今の自分なら未成年扱いはされないか? ……と、しばらく悩んでから適当なコンビニに入ると「年齢確認にタッチお願いしますー」とあっさりスルーされた。

 

「……わたし、けっこう老けてる?」

 

 それはそれでショックのような。

 後はおつまみっぽいのとか、ケーキとかも買って。

 本屋では役に立ちそうな実用書とかハウツー本を──荷物に入る範囲に必死に絞って選んで。

 

「それにしても、お土産って」

 

 みんなが喜びそうなもの、向こうの世界にないものを選んで買う自分に笑ってしまう。

 なんだかんだ言って、シルヴィアももう日本ではなく向こうの世界の住人なのだと。

 

「じゃあ、帰らないとね」

 

 また、そのうち来るのもいいかもしれない。

 本当に、向こうの世界での役目が終わったら。もしくは、天使の寿命をもってしても生きられないほど未来を見る必要ができたら。

 今度は、みんなで。

 

 新たに作り出した門をくぐって向こうに戻ると、みんなが「遅い!」と怒りながらも笑顔で出迎えてくれた。

 

「ごめんごめん。ただいま!」

 

 長い長い第二の人生は、まだ終わらない。

 

 

 

 

---------

※200話の時になにもやらなかったのでその代わりと、グランドエピローグを兼ねまして。

その後や子供世代の話は詳しく書くと時系列とか出産の順番とか起こった事件とややこしくなるので、

ひとまずこのあたりで打ち止めとさせていただきます。

 

あらためまして、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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