バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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護衛任務!⑤

 

 護衛開始より7日目の夕方。

 私は自宅の布団の上に大の字に横になって「あ゛ーーーー」と濁音を上げる生物と化していた。

 

 つい先ほど、空旅に出るマッケンジー司法長官を見送って仕事を終えたところだ。

 もう帰りの機内で暗殺されても知らん!と半分以上やけくそだった。

 帰りの便の前にはサブマシンガンを持った男たち数人が突貫かけてくるし。

 空港に爆弾も仕掛けられたからな。

 

 機内については何度もこちらで確認したが、正直無事に帰れるかは五分五分だろう。

 

 ちなみに、こちらの体力が回復し次第あのふざけた武器密輸組織は公安の総力を上げて潰すということで話の決着はついている。

 ウルフドッグたる私を相手にしているとわかっていないだろうからこんな真似ができるのだろうが……面白くない限りだ。

 

 まったくもって、激動の一週間であった。

 

 武器密輸組織についてまとめた資料を深層心理の書庫内で広げながら、降谷さんがチラリとこちらに視線を向けた。

 

───これで公安に対し、一定程度俺たちの有用性は示すことができたな

───そうですね。米国が強くアピールしてくれたことも功を奏しました。僕たちの立場も少しはこれで安定してくるでしょう

───だといいが

 

 実際、私たちの公安内での立場は非常に危うい。

 常に「あの殺人鬼を公安から排除すべきでは」という意見が満ち溢れ、情報は規制され、腫れ物を扱うように距離が置かれている。

 排斥派と飼い殺し派の間で綱引きも絶え間なく行われており、そこに好意的な意見は存在しない。

 

 なんともはや、心の重い話だ。

 それだけのことをしてきたのだから、仕方のないことではあるのだけれど。

 

 まぁ、とはいえ今回積極的にマッケンジー司法長官が私にモーションをかけてくれたから、表向き私の待遇は改善されることだろう。

 公安内に殺人鬼がいられるのは困るが、それ以上に他国に取られるのは問題外だからな。

 

 また黒田管理官の悩みを一つ増やしてしまうのは心苦しいが、仕方ないと割り切ろう。

 降谷さんがパタンと本を閉じ、立ち上がって伸びをした。

 

───なんにせよ、ひとまず今日は休むとしよう。お前も一週間ご苦労だったな

───疲れましたよ本当に!!寝れないし!食事中なのにパン咥えて現場に急行しなきゃならなくなったし!………あの弱小組織風情がふざけるなよ…絶対潰す……

───気持ちはわかるが口が悪いぞ

───うう、とりあえず寝ます。すぐ寝ます、今寝ます、おやすみなさい…

───ああ、おやすみ安室

 

 それだけ言って意識を手放す。

 肉体を布団に運んだ段階ですでに限界。もはや深層心理で布団に入る余裕もない。

 柔らかい降谷さんの笑顔を最後の景色にして。

 泥のようにバッタリと倒れ伏し、私は眠りに落ちたのだった。

 

 

 

 

 

 眠りにつく安室の姿に未だ拭えぬ恐怖心を刺激されながら、降谷は彼のぐたんとした体に手を回した。

 

 己と同一の体に、己と同一の顔立ち。

 しかしその実自分よりずっと優秀で、しかし抜けているところがあって。

 彼を見るたび、降谷は己が勇気付けられる心地がするのだ。

 

 でろりとした体は完全に気を失っていて、彼がよほど限界だっただろうことを示している。

 

 降谷は胸に手を置いて、己の袂のつながりに心を集中させた。

 魂を分つ関係となった降谷と安室は、直接的に心で守ってつながっている。

 こうして集中するだけで、彼が眠りの中で考えていることがわかるほどだ。

 「眠い」「疲れた」「もうむり」などとうとうととした微睡む思考が降谷にも流れ込んでくる。

 

 降谷は一つ頷いて、彼の体を抱き寄せた。

 

 深層心理の中とはいえ、流石にこんな石畳の上で寝かせるのは忍びない。

 体勢を整え、布団まで運ぼうとして体を持ち上げる。

 そうしてよっこらしょ、と彼を持ち上げた。

 

 その瞬間のことである。

 

 ぬるんっ、とドス黒い色をした幾重もの触手が、彼の体からまろび出てきた。

 

───!?!?!?!?!?

 

 降谷は声にならない悲鳴をあげて、驚愕して飛び退いた。

 ビチビチと跳ねた触手たちは数瞬ののち、それそのものが幻だったかのようにするりと透明に消えていった。

 

────お、おい……いやいやいや……!

 

 全身の肌がぞっと粟立ち、思わず自分の背を含めてぐるりとあたりを確認してしまう。

 気のせいかもしれないが…。

 それは今、己の腰からも幾重にも出現していなかったか……?

 

 己と相棒の周りを確認するも、変わった様子はなく。

 意図してそう作らない限り羽虫の一つすら出現しない深層心理の内側で、あんなもの出現するはずがないのだ。

 

 降谷はごくりと生唾を飲み込んで、そろりと一歩後退した。

 ここは己の心の袂だというのに、なぜかとても寒い。

 心胆寒からしめるとはいうものの、実際に寒く感じるとは思わなかった。

 

───幻覚か?

 

 そうひとりごちて、相棒を持ち上げたまま降谷はしばらく神経を尖らせた。

 

 相棒と魂を分ち合ってから、降谷は様々な感覚が鋭敏になっている。

 相棒には言っていないものの、感覚が鋭敏すぎて苦しいことも幾度もあった。

 

 平日の雑踏の中に混じる大小様々な悪意があまりに苦痛で、偏頭痛のような感覚を覚えたこともある。

 安室が平然と聞き分けていた電磁波の感覚が、常に大音量の金属音に晒されているようで夜中に幾度も目が覚めた。

 

 こうして内側に籠っていても感じるそれらに、すっかり降谷は疲弊していたと言ってもいい。

 

 だから先ほどの触手のようなものも、そうした感覚の疲れが今の幻覚を生み出したのだろう。

 

 降谷は大きくため息をついて頭を振った。

 己の至らなさが情けなくて相棒にも秘密にしていたが。

 そろそろ感覚制御の仕方を相棒から学ばなければ実生活にも支障が出てしまいそうだ。

 

 降谷は彼を俵抱きにして、そのまま彼の寝室へと連れてゆく。

 

 彼の寝室はすぐそばだ。

 やや散らかったその部屋の布団の中に優しく寝かせて、一息つく。

 

 ブームが過ぎて転がったままのレゴの欠片をどかし、安室の枕元へと腰を下ろした。

 時刻はすでに夜。降谷もそろそろ寝ねば明日に支障をきたすだろう。

 

 それでも、少しだけ感傷を覚えて。

 

 

 ぼんやりと。

 混ざり合った魂を感じながら、降谷は眠りに落ちた相棒の横で瞳を伏せたのだった。

 




これで「一旦バーボンなオリ主と降谷さん」の連載を休止します。
なんか…スランプでな……。
多分今後は時期を見てクトゥルフ神話×天才オリ主×勘違い×コナンな「ハスターなオリ主と米花町(仮題)」を投稿しながらリハビリしていく所存。
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