ノーゲーム・アーカイブ 〜ゲーマー兄妹が透き通る世界に迷い込んだようです〜   作:旅する野良猫

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お久しぶりです。
ノゲアカ(久々々なの含めて新年)初投稿です。


3.新米教師(ニュービー)

 

春夏秋冬。

季節ごとに鮮やかな姿を魅せる世界だが、きっと変わることのない色を知っている。

 

どこまでも澄み渡り限りなく続くそれは、誰が、どこで、何をしていてもきっと変わることのない唯一の美しさがある。

 

それはきっとある種のこの世界で成すことの出来ない証明ともいえるのだろう。

それをきっとただの天才(子供)は分かっていなかった。

机の仄かな灯りでいつか始まる明日(未来)に耽って、早く大きくなりたいとばかり願う。

世界は単純でもっと周りは簡単に考えればいいのに、わざわざ難解にして理解が及ばないようにしてから口々に言う。『それは違う』『変だ』と。

丁寧に分かりやすく顔をしながら、人ではないナニカと接するように対応しようとする。

 

利己的で稚拙を隠し矛盾と理不尽で凝り固まった凡夫となりその他に交じって必死を演技して過ごすべきとその子供がようやく悟ったのは少女として世界の約款(ルール)を把握してからの事だった。

 

確かなのは周囲は不条理で無慈悲に破壊を尽くし、なんてことのない日常はその余波で簡単に戦場となりルールのない破壊が広がり続ける世界。

――あぁ、確かに子供の頃に認識していた世界の通りとても単純だ。

どこまで行こうときっと争いはなくならず、戦場しか残らないのだから。

 

唯一無二でただ一人の英雄など現実には表れない。

どこまでも無秩序で、異質で矛盾した硝煙の香りが世界から消えることはないのだからと。

 

そうして少女はフィルターを掛ける。

二度と外すことのないよう念入りに自身の奥底に天の色をしまい込みながら。

 

 

 

 

――――かつて無名の神々が遺物として残し、あらゆる常識が書き換わった世界に。

 

いつしか起こり得る群青の奇跡を待ち望む。

 


 

 

 

 

 

 

「しっかし、あのケモっ子は何だったんだ……?」

一瞬感じた殺気は紛れも無く本物のソレだった。

昨日まで空達の居た世界に住む女子高生の発するモノでは凡そ無い。なお、この場合の凡そは実は今朝登校中にぶつかった女子がソイツの通う学校の転校生で歴戦の傭兵として大活躍をして人型機動兵器を扱うスペシャリストだったみたいな展開でも無い限りと言う含みを込めたモノだ。

 

 

分かりやすく言おう。

その含みを全部含んだ存在と遭遇した。

 

一手誤れば頭が身体から離れていただろう。

実際、愛銃と思われる銃に付けられた銃剣には研いだ際に出る研ぎ傷が視えた。狐の面といい、和風改造制服といいどう見ても日本刀だ。それがキヴォトス(ロス◯ントス)人の膂力で振り抜けば郊外から現れたと言われた二人(兄妹)は仲良く真っ二つだ。

 

一歩間違えれば妹を殺していた。

 

──お前が脚を引っ張ってどうする。

守ることすらできず大切な物を砕くのが自分のしたかったことか?

 

──滑稽でしか無い。

妹を支えると語って何一つ出来ない愚か者。

 

「にぃ」

 

意識が気化したかのように溶け込んだ空を現実に引き戻す白の声。

 

気が付けば強く握られた右手が白の感情を物語っていた。

「ワリィ、ちょっとバッド入ってた」

 

生き残っている現実を噛み締めるように妹の手を握る。

 

 

「ここがリンちゃんの言ってたシャーレの施設で良いンだよな……?」

 

2000年代のスーパーコンピュータを思わせるような機器から伸びた配線が繋がれた巨大なモノリス状の物体。

 

かつてそれを好んでいた人物が言うその名称は──。

『そちらは、クラフトチェンバーと言います。連邦生徒会長曰く大型の3Dプリンターとのことですが、彼女を除いて使えた者を知りません。……その為、実質連邦生徒会長のおもちゃになってました』

 

シャーレ内の映像通信機器が作動し、空間へと立体映像が出力される。そこに映し出されたのは、現連邦生徒会長代行、七神リンの姿。

 

「現場に直接映像は届けれても物理的干渉が出来ねぇから俺達をここまで連れてきたってとこか?」

 

後は直接的に連邦生徒会という組織が動くとトラブルの過激化が予想されたって感じだろう。

大雑把な見立てではあるものの、これまでの言動や生徒達の言葉で、空は的確な認識をしていた。

 

「それで? わざわざこんな所まで、不審者でしか無いポッと出の兄妹を運んで何をしたんだ?」

こちとら命の危機をずっと続けてるんだが?

『そろそろマトモな説明プリーズ?』と力の差でここに至るまで振り回されていた空(童貞19歳)は、片眉を歪めて会話を促す。

 

 

 

「こんだけデケェなら家くらいなら作れそうだな……」

 

 

 

 

『クラフトチェンバーのメインコンソール付近にタブレット端末の様なモノが有るかと思います。それを起動させて下さい』

 

「タブレットねぇ……」

「ん、にぃ……これ……」

 

白が目星に成功したらしく、馴染みのあるタブレット端末を拾って掲げる。

 

「いやiP◯dじゃねぇか!!?」

 

タブレット端末の様なでは無い。タブレットである。

シルバーのリンゴマークが輝かしく自己主張してるのがなんとも言えない。

 

「いやまぁ、i◯adなら勝手知ってるから楽だけどさぁ……!?」

肩透かしというか、なんとも言えないガッカリ感がある。

 

そんなタブレット端末ことiPa◯君のホームボタンを試しに長押ししてみる。

 

「Hey,尻!!」

「にぃ、電源長押し……」

「一応の確認。一時期パチモンで溢れてたし」

第一、リンちゃん曰くこの場所自体が殆ど放置に等しい状態だったなら、バッテリーなんて底を尽きてる。

 

そもそも電源を入っていないのだから、当然つく訳が──。

 

『──ピッ』

ビープ音にも似た短い電子音が一瞬鳴った。

 

 

「……は?」

 

白と顔を見合わせ、急いでタブレットの画面を確認する。

画面にはiPadとまるで違うブート画面。

Now connecting.(現在接続中……)

 

 

 

Access account :「 」(接続アカウント『  』)

 

welcome to 「 」(ようこそ『  』)

 

 

your Playing games Continue? (ゲームを続けますか?)

 

 

あからさまな挑発。

確かにカメラ経由で確認は出来る。だからといってこんなジャンプスケアを使う意味が無ぇ。

 

であるなら、これは────。

 

「セーブデータ引継ぎで2周目押し付けかよ……!」

「プレイ強要……ダメ絶対……!!」

 

答えはもちろん、

「「『やる(遊ぶけど!!)』」」

YESである。

 

PassPhrase1

PassPhrase2

 

 

 

「パスフレーズのロック……?」

「し、かも……二重式……」

 

「ヒントも何も無しで秘密鍵当てろってバカじゃねぇの!!?」

しかもバッテリーがみるみる減っていっている。

この減少速度であれば恐らく30分後には尽きてるだろう。

 

 

考えろ、考えろ空。

このタブレットに入れる鍵はなんだ?

 

「……いや、いっそ入れてみるか」

 

『we the「 」 have no defeat』(空白に敗北は無い)

もし一回限りの勝負ならパスフレーズを知らなきゃ負けのゲーム。つまり、勝負に持ち込まれた時点で敗北な訳で。

 

1のパスを入れ、入力切り替えをした瞬間エラー音が響く。

 

Pass error

53616c7465645f5f98a6a523bea0f39fc5d843667cd72958aea5e52d6ecb78d8b5093727d61f7390e823e91ea1f5cd9f.

 

「に、にぃ……これ……」

「あぁ……」

 

妹の目に僅かながら光が戻る。

そう、俺達が何より求めていたモノ。

「ヒントだ」

 

 

それもご丁寧に16進数。

一致しない部分が明らかにズレて表示させる答え合わせ付き。

「聞く限り学園都市って規模の世界を運営するっつーウワサの生徒会長サマが俺達宛に出してるなら、むしろ一発勝負で当たる様に作ってねぇ」

 

単語の変換具合からバイナリ経由で直接16進数に変換している。

それなら────。

「「『進数変換』」」

全く同時に呟いたその単語がお互いのイメージが正しいことの証明であった。

人類はあらゆる基準に十進法を採用しているが、それがコンピュータでは0と1であらゆる数列を表現出来る二進法を用いている。しかし膨大な数列を使えようと人類が読み解けなければ意味が無い。

故に二進法数列(バイナリ)を人類が読み解きやすく翻訳(変換)したもの。それが、16進数。

 

復号鍵の内容次第で変換されたコードが変わる為、出来ても精々が復号鍵の把握のみ。

もしエラーログに答え合わせが付いてなければ正攻法なら総当たり方式になりかねなかっただろう。

 

だが、エラーコードに当たりハズレを分かるようにわざわざしている。エラーを吐いた瞬間にバッテリーが1/3減った。

 

「生徒会長サマにゃ悪ぃが……」

つまり、制限時間と解答権がそのまま直結するロジックパズルゲー。

 

 

「進数変換程度、白からしたらクロスワードみたいなモンだ」

「朝め、し……まえ」

 

白が見せてくるスマホに書き込まれたメモを見て少しばかり悔しくなる。

『53616c7465645f5f81caf5add9af349b3325d43051b23091bdd988fbed5d8e761e0c49ad4907f97f99d9a93bff0ef554』

上へスライドさせれば復号鍵の予想計算から始まり、徐々に数列が正解へと寄っていくのが確認出来た。

「いや、俺も復号鍵までは行ったけど白さん早すぎません……?」

「にぃ、が苦手な……分野は、白……」

「そうなんですけどね!?やっぱハッキリ負けると来るモンがあるっつーか……!!」

 

PassPhrase1:We Thirst For TheSeven Wailings

 

タブレットの減っていくバッテリーが止まる。

passPhrase2と書かれた入力欄に自動で切り替わり、入力待ちになる。

 

一度エラーコードを吐かせ、白の計算から脳裏に浮かべた大まかな変換表を元にそれっぽいフレーズを作り出し入力する。

 

PassPhrase2:We Bear The Seven Koan Of I assent

 

 

「『……我々は望む、七つの嘆きを。……我々は覚えている、七つの同意を。』」

 

 

空が入力したフレーズを訳して確認していれば。

カチャンッ──と。

 

鍵が、外れる音がした。

恐らくこの場にいる俺と白の二人だけが聞こえた確かな音。

 

そして今、空白の意識は何処までも澄み渡る青い空の元。小さな箱庭の教室で眠る少女へ────。

 

「ギャァァァァァァーーーー!!?日光!?お外!?お外ナンデ!?」

「にぃ、今世ではこんなだったけど……来世では……幸せになろう…………ね……っ?」

 

絶叫と言う名の爆音目覚まし騒ぎを起こしていた。

 

「『ピィ──!? はい先生、アロナは寝てませんよ起きてますよ!!』」

眠たげに両目を擦り、元気いっぱい……いや、普通に焦りを浮かべる水色の髪を三つ編みにした幼い少女。

シッテムの箱に常在するメインシステム“アロナ”との遭遇であった。

 

 

 

「『え、あっ……もう先生が来る時間でしたか……!?え、えぇっと、ちょっと待って下さいね!?』」

 

アワアワとしながらシッテムの機能を『どれだっけ……』と必死に探し回って、指をパチンと弾く。

 

何処までも澄み渡る青空が薄暗く星の浮かぶ夜空の様になっていく。

「に、日光の霊圧が……消えた……!?」

「なん、だと……?」

 

「『し、シッテムの箱の基本部分をデフォルトからダークモードに切り替えました!! コレで先生方は蒸発することなくここにいれる筈です!!』」

 

ゼェゼェ……と肩で息をしながら小柄な少女は顔を空へ向け、笑顔で挨拶をする。

 

「『改めまして……先生、はじめまして!! シッテムの箱のメインOS兼、スーパーサポートAIのA.R.O.N.A.です!!』」

 

「お、おう……?」

屈託のない笑顔を真正面から受ける空にとって何処までも純粋な感情を向けてくるアロナに戸惑いを隠せていなかった。

 

「『やっと会えました!! ずーっと先生のことをお待ちしてました!!』」

 

「『念の為ですが生体認証をお願いしますね! 私の指にあわせ……』」

 

直後空の隣にいた白がアロナの指先に自身の人差し指を合わせる。

 

「し、白さん? 結構な速さだったけど突き……」

「大、丈夫」

「え、いや突き指してない?」

「して、ない。だい……じょうぶ……!!」

「そ、そうすか……」

 

その気迫は稀に見ない程で、あまりの強い意志に空はなんか砕かれた気がした。

 

 

「『うぅ~ん……あんまりよく分かんないですね……』」

「……ポンコツ、OS?」

「『な、なんてこと言うんですか!? ふ、ふ~んだ!!そんなこと言うなら白先生じゃなくて空先生に認証してもらいますからね!!』」

「ダメ。アロナ、認証……はやく」

 

「はは、いつか分かってましたよ、えぇ……こんな童貞の言動がキモイ兄なんて捨ててそのうち百合ップルを新たに作り出して学園生活を謳歌するくらいは……」

水辺の塵を指先でクルクルと弄りながら膝を抱きかかえる様に座り込み、ジーパンのケツを濡らしベソをかき始める空童貞19歳。

ジワジワ湿り気がケツから広がりスゲー気持ち悪いが気にしない。

「『そ、空先生が捨てられたなら、あ、アロナが連れて帰ります!!』」

「ダメ……にぃは、白の。捨ててない」

 

 

 

「しろ、が……出来ないこと、にぃにやっ、て……もらわないと困る……」

 

「あったりまえだ白が出来ないことをやるのが俺の役目!! さぁ妹よ、この兄に何をして欲しいんでせうか!?」

「リン、ちゃんと……お話、やって」

「オウオウリンちゃんよォ!? そーいやどこ行きやがったんだリンちゃんよォ!!?」

つい先程までジメジメとした空気をまとって膝を抱えていた筈の空は、元気よく虚空に向かってチンピラのダル絡みのように威嚇しだすのであった……。

 

 

 




感想、一言評価いつもありがとうございます!!

ちまちま書いてはいましたが、なんだかんだ空いてる二次創作の続きの投稿をするガソリンになってます!!
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