無人島での俺の生活について説明しよう。まず朝は大体日の出よりも少し前に起床する。目覚ましがあるわけではないので完全なる体内時計によるものだ。日の出前に起きるのは人によっては太陽光と同時に起床し散歩する人がいないとも限らないからだ。
起きたら他に寝てる人たちを起こさないようにテントから出て軽くストレッチ。それが終われば地図を片手に他のクラスの連中が起きてこないうちにまずは人の目につきやすいスポットから回収していき徐々に人目のつきにくいようなところのスポット回収に向かう。
これをなるべく多く行わなくてはならないのだが、点呼があるためそれに間に合うように考えながら行動しなくてはならない。
点呼が終われば朝ごはんだ。魚やきのみなどが中心の食生活。本当にサバイバルというような食事だ。現代人である俺らからするとどうにも物足りないものだ。味付けだったり量だったり。
そして朝食を食べ終わったら次は各自自由に行動する。きのみなどを採取しに行ったりゆっくりと過ごすものだったりと色々だ。
俺は朝から動いてまた夜暗くなったらスポットを取りに行くため体力を温存するべく、人気のないところで釣り糸を垂らしながら魚がかかるのをひたすらに待っている、それが日中の俺の行動だ。
人気のないところを選んだのは自分の好きな時に寝れて好きな時に釣りができるからだ。
俺だって人間である以上、慣れない環境で睡眠時間も十分に確保できないまま島を巡っている。流石に日中は眠くなるのだ。仮にクラスの連中と釣りをしていたとしよう。寝ていたら起こされるし、いい気はされない。俺が朝と夜スポットを取りに行っていると言えば納得はされるだろうが、それを言ってしまうとそこまでポイントを稼いだならちょっとくらい使ってもいいのではないか、という雰囲気になり必要だからと理由をつけせっかく貯めたポイントを使われたら俺の努力が水の泡になる。
しかしながら、人気のないところを選んだつもりだしここにいることは誰にも言っていないはずなのに、清隆をはじめ桔梗、愛里がちょいちょいと言ってもまるで入れ替わっているかのように誰かいなくなったと思ったらすぐに別のやつがやってくるので常に2人で釣りをしてるようなものだ。ちなみにたまに被るときもある。
「というわけだよ桔梗さん」
「え?どういうわけ?」
俺の心の中で語っていることを語っても仕方ないのは分かってはいるのだがそれとこれとでは別だ。
「いや、俺は誰にも見つかることなくひっそりと釣りをしたいんだよ」
「えー私だけ仲間外れなの?私知ってるよ。綾小路君や佐倉さんも来てるよね。あと、違うクラスの人もちょっとだけ来てたよね?」
なんでそこまで知っているのだろうか。ちなみに違うクラスの人とは一度だけ有栖の友達?のAクラスの人がやってきた。葛城を失脚させるために好きに使っていいと言われたのと同時になんでこんなわかりにくい場所にいるのかと怒られた。繰り返すがなんで桔梗は知っているのだろうか。
「なんで知ってるの?ってそんなの常に陽人のこと見てたからに決まってるでしょ」
平然と言うものだから聞き間違えたかと思ったのだが、今確かに常に見ていたといった。要は、ストーカー。怖すぎる。というかナチュラルに心を読むな。
「あははっ、冗談だよ。クラスのみんなが一生懸命頑張ってるのにそんなことするわけないじゃん。どんなリアクションするのか気になってからかっちゃった。知ってたのはたまたまタイミングが良かっただけだよ」
「そっかー。それならよかった」
タイミングが良かっただけ、それにしてはいろいろ知りすぎなような気もするが実際にどうなのかを聞くとやみを見そうで怖い。
「それで桔梗はいつまでここにいるんだ?あんまり姿が見えないとクラスメイトが心配するんじゃないか?」
「あーそれなら大丈夫だよ。みんなには陽人君のところに行ってくるって言ったらみんな快く承諾してくれたよ。ちゃんと魚は釣ってるしさぼってるみたいには思われてないよ」
「左様ですか」
俺の心配など無意味だった。流石といったところか。自分の好感度を下げないために先手は撃っているというわけか。
「それにしても楽しいのか?」
「楽しいよ。なんでそんなこと聞くの?」
「惰性に釣りしているだけで特に実りのある会話をしてるわけじゃないし、会話内容と言ってもお前の愚痴を聞くだけだから正直短時間ならともかく毎日長時間こうしてたら流石に飽きてこないのかと」
「私としてはの猫被ってるより、本心でいるほうが何十倍も楽だから」
「なるほど」
「それに好きな人といて楽しくないわけないじゃん」
「お、竿が引いてる!今日初ヒットか!ごめん、さっきなんか言ってた?よく聞き取れなかったんだけど」
「うっさい!そのまま川に落ちればいいのに!私もう行くから!」
「えぇーいくら何でもいきなりすぎだろ。しかも魚には餌食い逃げされたし、ついてないな」
♢♢♢♢
「陽人、今日の成果はどんな感じだ?」
「よう、相棒。見ての通りボウズだ」
「珍しいな。お前がボウズなんて」
「なんかなー今日はなかなか釣れないんだよな。さっきヒットしたんだけど餌食い逃げされたし」
「確かについてないな。俺もボチボチやるか」
そう言うと清隆は俺の隣に腰掛け同じく釣り糸を垂らし、餌に食いつくのを待つ。
数分後
「お、おかしい。納得いかない」
俺、0匹 清隆、8匹。
おかしいだろ、俺は朝からやってるのにいまだにボウズ。片やさっき来たばかりなのに既に8匹なんだこの差は。
3匹あたりまではマウントを取っていた清隆も4匹目くらいからちょっと哀れみが入ってきた。あまりに悔しかったので場所と道具のせいにして入れ替えてやったが全く持って効果がなかった。
「清隆よ、なぜこんなにも世の中は不平等なんだと思う。持つ者と持たざる者、やはり持つ者が持たざる者に施しを与えるべきなんじゃないかと俺は思う」
「なるほどな。その理論で行くとお前の女運を分けて欲しいものだ。お前が付き合ってるのは『全員』美少女だ。親友ならば俺に彼女ができるようにサポートしてくれてもいいだろ」
「な、なるほどー。にしても珍しいな。お前がそんなこと言うなんて」
「最近、恋愛ものの作品を読んでいたんだが、読んでいるうちに俺もあんな青春を送りたくなってきた」
「確かにいいよな」
ラブコメ作品見てると俺も、あんな青春送りたいなーって思うもんな。分かるぞ、清隆よ
「もしかして喧嘩を売っているのなら買うぞ」
「なんでそうなる」
「さっきのお前の発言からは余裕しか感じなかったからな。すでに持ってるやつはいいものだな」
「悪かったよ」
「それでなんかアドバイスくれないか?」
「アドバイスねぇ。1番手っ取り早い話、お前が本気出せばお前のこと好きになる女の子、1人2人は出てくるだろうな」
「本当か!」
「食いつき凄いな。でも、自称事なかれ主義さんとしてはどうなんだ?お前が本気出せばいよいよ目立つぞ」
「確かにそうだな。冷静に考えれば、俺とお前の目的は自由を手に入れること。陽人が表で俺が裏、それが破綻してしまうのは避けたいからな。高校3年間は残念だがおとなしくしていよう」
明らかに落ち込んでいる親友を見て平気な顔なんてできないよな。やっぱり。
「そう気を落すな。清隆。あくまで一番手っ取り早い方法だ。それに俺の勘だがそろそろお前に彼女ができる気がしている。遅くとも今年中に」
俺の勘(原作知識)。一応シナリオ通りに行けば軽井沢とは付き合えるのではないだろうかと思っている。シナリオから外れたとしても全力でサポートしてやるつもりではある。
「本当か?」
「ああ、お前もよく知ってるだろ?俺の勘の良さ」
「確かに陽人は昔から勘はよかったもんな」
「人生で一度しか訪れない高校生活だ。俺がお前の高校生活を良くしていってやるよ」
「やっぱり、持つべきものは相棒だな。俺もそのお礼に陽人が魚を釣れるようにしてみよう」
「どうするんだ?」
「俺の今日の釣りの運を分けてやる」
そういうと、清隆は俺の後ろに回り込み、俺を抱きしめるような形で一緒に釣竿を握りしめてきた。事故なのだろうがお互いの手が触れてしまった。それに驚き、お互いが見つめ合う状況になってしまった。
「あっ、ごめんなさい。そこからしばらく見つめあう二人。えっ、待って、なんで私こんなにドキドキしてるの。もしかしてこれが恋!」
「そしてこれが将来末永く幸せに暮らす二人の出会いであった」
「少女漫画展開に乗ってくれるのはありがたいんだが、せめてその棒読みどうにかしてくれよ」
棒読みのためどうにも盛り上がりに欠けてしまう。
「善処する。それにしてもよかったな。こんなところ誰かに見られたら陽人×清隆とかはやるところだった」
「おい!今そんなフラグ立てたら・・・・ほらな」
なんとなく恐ろしい予感がして振り返るとそこには愛里が立っていた。
「あ、あのごめんなさい。お、おじゃまするつもりはなくて。そ、その陽人君にそっちの趣味があってもわ、私は大丈夫なので、お気になさらないで。で、では失礼しました!」
「ちょっと待って!」
顔を赤らめてこの場から離れようとする愛里を止めるため立ち上がったのだが、立ち上がる直前に魚が食いついたようで立ち上がると同時に吊り上げる形となった。
「な、納得いかねー」
♢♢♢♢
「な、なるほど。さ、さっきの状況について理解できました。あ、あの陽人君は何でそんなに機嫌が悪そうなのでしょうか?」
「なあ佐倉、魚釣れてるか?」
「え?は、はい。まだ、2匹ですが」
「陽人のバケツには何匹入っている?」
「1匹、です」
愛里は俺のバケツを軽く覗き込みながらそう言った。
「佐倉、陽人は朝から釣りをしてさっき釣り上げた1匹だけだ。それにその釣りあげた1匹は俺と一緒に釣り上げた奴だ。自分だけの力で釣り上げられてないのに納得がいかないんだろうな」
「は、陽人君!そ、そんなの偶然だと、思うので、あんまり気にしすぎないほうが・・・・」
「愛里、さっき清隆がやっていたみたいにやってもらえる?」
「え!?い、いいですよ」
愛里は恥ずかしがりながらも先ほどの清隆と同じく後ろから抱きしめる形で一緒に釣竿を握っている。
「清隆、カウントを」
「まかせろ」
そこから数えること数十秒。見事にヒットして1匹ゲットした。
「そ、その、なんかごめんなさい」
そこからしばらく何とも言えないような空気が流れてしまった。
「気分紛らわせるために違う話するか」
「俺もそれがいいと思う」
どうにもこのなんとも言えないような空気感から脱出するために無理やりにでも話を変えていく。
「なんやかんやで後すこしでこの無人島生活も終わりを迎える。そろそろあいつもいろいろ仕掛けてくるだろ」
「そうだな。何をしてくるかは予測はできないがあいつができることなんて言うのはたかが知れてるし、目的も割れている。対処するのは容易だな」
「え、えっと、何の、お話なんですか?」
「ああ、Cクラスの伊吹だよ。初日だっかかにうちにやってきたスパイ」
「え、や、やっぱりスパイ、だったんですか。最初は怪しかったですけど、とてもそんな風には」
「今までは様子見で、ここから何か仕掛けてくると思うよ。ちょうど無人島生活にも慣れてきたころ合いだしみんな心の余裕が生まれてきたからね。ここらが一番のねらい目だよ」
無人島生活もあとわずか、のんびり釣りをするのは今日までかもしれない。ここからは本格的に動いて行こうか。
めざすは、やはりPERFECT・GAME。