pixivより転載
酔っ払いには種類がある。
笑い上戸、泣き上戸。歌を歌いだす者もいるし、聞いた話では口説き上戸なるものもあるという。酒瓶や空き缶を相手に口説くという。
イサミの場合、脱ぎ上戸だった。
「ちょっとイサミ、脱がないでよ!」
ヒビキの声がして、サタケは顔を上げる。ジョッキを片手に部下と話をしていたのだが、その声を聞きとがめた。
イサミは隅の席で酒を飲んでいた、はずだ。親しいヒビキの隣の席で大人しく飲んでいたはずだ。あまり飲まないように、とサタケはイサミに厳命していたはずだが、そう言えば命令違反常習者だったことを思い出してサタケは頭が痛くなる。
イサミは薄いTシャツの裾に手をかけていた。その顔はとろりと蕩けており、目は眠たげだ。今にも脱ぎだしそうだ。周りから冷やかしの声がかかってくる。
「……暑い」
「酒のせいでしょ! 水飲め水!」
ヒビキが裾を戻そうと必死だ。年上の弟分が、職場の更衣室以外で人前で肌を晒そうとしているのを見かねているらしい。優しい姉貴分だ、と思いながらサタケは立ち上がった。
「――アオ三尉」
サタケが呼び掛けても、イサミはTシャツを脱ごうとする。それを、サタケは万力のような力で裾を引き戻した。破けなかったのが奇跡だな、とヒビキは思った。
「アオ三尉、やめろ。リオウ三尉を困らせるな」
「たいちょぉ……」
「隊長、もうこいつ持ち帰ってやってください。これ以上飲ませたらどうなるやら」
「そうだな」
そう言ってサタケは財布から万札を数枚取り出す。
「俺はこいつを連れ帰るから、あとはこの金で好きに飲め」
「やったー!」
「隊長大好き」
それまでイサミが脱ぐのを冷かしていた隊員たちが歓声を上げた。その正直さに苦笑しつつイサミを抱えたサタケは、「さて、こいつはどうしてくれよう」と考えた。
さて、イサミとサタケは所謂交際関係にある。関係は秘匿しているが、ある程度ばれている気もサタケはしている。それはそれで構わないともサタケは思っている。
実際に、このかわいいイサミの姿はサタケが独占できればいいと考えているので。
サタケは、自宅に連れ込んだイサミをベッドに投げ出す。それから冷蔵庫から日本酒を取り出し、グラスに注ぐ。ベッドの前に椅子を引っ張ってくると、グラスを呷る。
ベッドの上では、日頃のTS操縦の腕前などなかったかのような緩慢な動きをみせているイサミがいる。
サタケは問う。
「まだ暑いか?」
「……ッス……」
「もう脱いでいいぞ」
「……ッス……」
頷いたイサミが、やはり緩慢な動きでTシャツを脱ぎはじめる。
ゆっくり、ゆっくりと露わになっていく腹筋。胸筋に乳首。投げ捨てたTシャツはベッドの下へ。
次にデニムのベルトを外そうとしたらしいが、酔っ払って細かい作業ができないらしく困っている。
「……たいちょぉ……」
「リュウジさん、だろ」
「リュウジさん……ベルトはずして……」
「駄目だ。自分でしろ」
言いながら、酒を呷る。言われるがままベルトを一所懸命外そうとする上半身裸のイサミ。
つまみもないのに酒が旨い。イサミのストリップは最高の酒の肴だった。
――2人きりで宅飲みするときもよくある。付き合う前からそうだった。その付き合う前にイサミの酒の上限がわからず飲ませすぎ、イサミのストリップがはじまった。そのとき勃起した自分に、はじめて自分がこの部下に欲情していることにサタケは気付いた。
その欲情に恋愛感情が付随していることに気付いたのはすぐで、そこからイサミを落としにかかった。多少時間はかかったものの、イサミはサタケのものになった。
結果、イサミはサタケの前で課業中とはまた別の意味でフリーダムになってしまった。具体的にどういうことがあったかはまた別に語ることにして、そのうちのひとつが「甘える」ことだった。たとえば、先程のように服を脱がせるよう催促するなど。
睦み合いならばいくらでも甘やかすが、こういったことなら話は別だ。
――やっとベルトを外し終えたイサミは、ゆっくりとデニムを脱いでいった。それに酒を呷りながら、ついでに喉を鳴らす。するり、するりと滑らかな肌の上を滑っていくデニム。
それから、ボクサーパンツに手をかけ――そこで、イサミは艶麗に笑う。その頬は紅潮していた。
「リュウジさん、これ、脱いで欲しいですか? それとも脱がしますか?」
――お前、酔っていたんじゃないか。いや、普段はこんなこと言ってこないからこれは酔っている。
近くのテーブルに酒瓶とグラスを置いたサタケは、ベッドの上に座るイサミの顎に手を添えた。お互い酒臭いのは仕方ない。
「……悪い子だ」
そう耳元で囁きながら、イサミの下着に手をかけた。
End.