まだふんわりしていた時代に、ドラえもんと絶望鬼ごっこがクロスオーバーしたらどうなるか、試作品として書きました。

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ドラえもん のび太の絶望鬼ごっこ

「うっ……うっ……」

 小学4年生の少年、野比のび太は、ある本を読み終わって泣いていた。

「どうしたんだい、のび太君?」

 泣いているのび太に声をかけたのはドラえもん。

 頭は耳をかじられて丸いが、れっきとした猫型ロボットである。

「これは……『絶望鬼ごっこ』?」

 それは、『絶望鬼ごっこ』というタイトルの小説だった。

「珍しいね、のび太君が漫画以外の本を読むなんて」

「たまには小説も読みたいなと思って、出木杉から借りたんだ」

「偉い! のび太君、成長したね!」

 ドラえもんは、子守用ロボットとして、のび太が成長した事に喜んだ。

 しかし、のび太は沈んだ表情をしていた。

「でも……荒木先生が……鬼に食べられちゃって……凄く可哀想だったから……」

 この本の最後で、荒木先生は鬼に食べられて死んでしまった。

 彼の悲劇的な結末に、のび太は悲しんでいた。

「よし、そんなに荒木先生を助けたいなら……」

 のび太の、人の幸せを願い、人の不幸を悲しむ気持ちに笑顔になったドラえもんは、

 四次元ポケットからひみつ道具を出した。

「絵本入りこみぐつ~!」

 そのひみつ道具は、履くとその絵本の中の舞台に入る事ができる、絵本入りこみぐつだった。

「これを使って、荒木先生を助けよう!」

「うん!」

 ドラえもんとのび太はその靴を履いて、絶望鬼ごっこの本の中に入った。

 

「ここが、桜ヶ島小学校か……。本物の鬼が出るなんて、怖いなぁ」

 この桜ヶ島小学校には、本物の鬼が出るらしい。

 しかも、その鬼に捕まれば、死んでしまう。

 のび太は震えて、ドラえもんにしがみついた。

「大丈夫だよ、のび太君。僕がひみつ道具で助けてあげるから」

「あ、ありがとう、ドラえもん……」

 

 ドラえもんとのび太が出会ったのは、のび太より少し年上の小学生六人だった。

 正義感が強く真っ直ぐな、大場大翔(おおばひろと)

(大翔には妹がいるって。ジャイアンと同じだね)

 おっとりした温厚な少年、桜井悠(さくらいゆう)

(僕は、すぐに悠と仲良くなれたよ)

 六人の中では唯一の女子、宮原葵(みやはらあおい)

(葵ちゃんは可愛いけど、僕は苦手だなぁ。なんか、ジャイアンみたいだし……)

 学年一のスポーツ少年、金谷章吾(かなやしょうご)

(うーん、この人も何となく苦手。みんなと距離を取ってるし……)

 明るく活発な、関本和也(せきもとかずや)

(あはは、明るくて元気だね)

 勤勉で穏やかな性格をした、伊藤孝司(いとうこうじ)

(孝司の成績は結構良いみたい。僕も、もうちょっと勉強したら、孝司みたいになれるのかな?)

 剛田武(ジャイアン)のようなガキ大将は(一応)いたが、スネ夫のような腰巾着はいなかった。

 

 そして……体育教師の荒木先生。

 ドラえもんとのび太は、彼の結末を知っていたが、あえてここでは何も言わなかった。

 見ず知らずの人に「あなたは今日、死にます」と言われて、信じる人なんてまずいないからだ。

 

 そして、数分後。

 絶体絶命、命がけの鬼ごっこ(デスゲーム)が始まった。

 

 ドラえもんとのび太は、襲ってくる鬼をひみつ道具で撃退していた。

 こけおどし手投げ弾、空気砲、空気ピストルなど、

 殺傷能力はないが武器は持っているため、これにより鬼を追い払う事ができる。

 タケコプターは、狭い校内では使わない。

 また、ルール違反になる可能性もあるからだ。

 

 大翔達は、ドラえもんとのび太に守られながら、鬼から只管逃げていた。

 武器を持っている人間側の人物は、招かれざる客、ドラえもんとのび太だけ。

 鬼は、二人……いや、一人と一匹を疎ましく思って、彼らを執拗に追っているが、

 それでも一人と一匹は、知恵と体力と、それからひみつ道具で鬼から逃げていた。

 

 そしてついに、ドラえもんとのび太は、荒木先生が死ぬ、運命の場に着いた。

 そこでは、荒木先生が今まさに、鬼に食べられようとしていた。

「させるものか! 名刀“電光丸”!」

 ドラえもんは、レーダー付きの刀を取り出した。

 これを使えば、相手の位置などを察知し、自動で使用者を動かして戦うひみつ道具だ。

 荒木先生を食べようとしていた鬼は、ドラえもんを見つけて彼を食べんと噛みついた。

 すると、ドラえもんが固いせいか、鬼の表情が変わった。

「ざ、残念だけど……僕は食べても美味しくないよ」

 鬼はドラえもんから牙を離し、再び彼に突っ込んでいく。

 電光丸を持ったドラえもんは、鬼の攻撃を回避し、電光丸で斬りつける。

 鬼の身体は頑丈だったが、ドラえもんは諦めず、もう一度、鬼に突っ込んでいった。

 

 そして、10分後。

 鬼は、ドラえもんの電光丸の前に倒れ、荒木先生は、鬼に食べられずに済んだ。

 荒木先生はドラえもんとのび太に大いに感謝した。

 死の運命を、二人が覆したのだから。

 

「よし、これで大丈夫だね!」

「うん!」

 二人はそう言って、『絶望鬼ごっこ』の世界を去っていった。

 

「さて、本はどうなるのかな……?」

 のび太は、絶望鬼ごっこの本をもう一度開いた。

 

「刀を持った青い狸が鬼を斬り伏せた。……荒木先生は、鬼から解放された。

うん、荒木先生は死んでいないね」

「まったく、僕は狸じゃないのに!」

「まぁまぁ、良かったじゃない。荒木先生が幸せになれたんだから」

 狸と間違われて憤慨するドラえもんを、のび太は何とか宥めている。

 

「……あれ?」

 ふと、ドラえもんはある事に気づいた。

「……僕達が荒木先生を助けたんだから、その後の話が、繋がらなくなっちゃった」

「え~~~~~っ!? 続きを読みたかったのに~~~~!!」

 そう……荒木先生が死に、荒井先生が代わりに登場するのが「正史」なのだ。

 それを覆してしまったドラえもんとのび太はショックを受けてしまった。

 

「どうしてくれるの! お話が終わっちゃったじゃないか!」

「元はといえば、のび太君が荒木先生を助けたいと言ったからだろ!!」

 絶望鬼ごっこの「絶望」を取り消した事で、大喧嘩を始めてしまう二人であった。


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