暴食の精霊 《グラトニー》   作:赫夜叉

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56話

「よう、待ってたぞ本条」

 

「あ、お待たせグラっち。ちょっと来るの遅くなっちゃったかな?」

 

「いんや、むしろちょうど良いと思うぜ」

 

部屋全体が恐怖に包まれる中、グラトニーが声を掛けると二亜は先程とは変わり、まるで待ち合わせに合流したようなフランクな感じで話し始める。

 

「ここに来るまで随分暴れ回ったらしいな、モニターでコイツらと見てたぜ」

 

「ホントならグラっちと一緒に直接ココに来ても良かったんだけど、我儘言ってゴメンね?けどさぁ、やっとこの日が来たんだよ。あたしから全てを奪ったクソッタレ共、どうせならあたし自身の手でぶち壊してやりたかったんだよ」

 

「そんで、満足はしたか?」

 

「けっこうね。特に自分は力があると思ってイキってた魔術師のアホ共があたしの火に焼かれて灰になってくのには、正直……興奮しちゃったよ……!!」

 

頬をほんのり赤く染め恍惚とした笑みでとんでもないことを宣う二亜。復讐を続ける内に随分と人格面も変貌したようで、復讐とはいえ大量殺人をしたというのに、その顔には罪悪感や苦しさなどといったものは欠片も見られなかった

 

「さーてと、話しはこれくらいにして……まずはアイツ以外の奴らを片付けよっか」

 

そう言うとグラトニーと話していた時とは打って変わり、冷淡な目つきでウェストコット以外の役員達の殺害宣言と取れる発言をする二亜。

 

「そうかそうか。じゃあ、コイツらはオレが好きにして良いな?」

 

「うん、構わず殺っちゃってよ。こんなクズ共長く見てると、心底反吐が出るから」

 

「そうか」

 

二亜の了承を得たグラトニーは《悪食之腕》を顕現し背中から捕食手を出現させる。そして顔を役員達の方へ向けることもなく、捕食手に付いた口で彼等を食い尽くしていく。

 

「うわあああぁぁぁ!!」

 

「嫌だあぁぁぁぁぁ!!」

 

醜い断末魔を上げながら1人、また1人と喰われていく。しかも一思いにではなく骨を噛み砕かれながら生きたまま苦しみ抜いた末に喰われていくので、後に残った者程絶望は大きくなっていった。

 

「ふふ……すっごい良い声出してくれるねぇ……!」

 

その様子を煙草で一服しながら見物している二亜。グラトニーの側に居続けたことで捕食する場面を見ても何とも思わなくなった彼女は、もはや後戻りできない所まできてしまっていた。

 

「う、嘘だ……こんなの、あってたまるか……!」

 

役員達が悉く喰い尽くされていく中、役員の1人、マードックは窓際にへたり込んでいた。今目の前で起こっている光景が信じられないと言った様子だ。

 

ここにいれば自分も殺される。しかも喰われて死ぬという尊厳の欠片もない死に方で。

 

ゴロンッ

 

「ひっ……」

 

そんな彼の前にグラトニーに喰い殺され首だけとなった役員の死体が転がってくる。

 

「ひえぇぇぇ……!」

 

それを見て彼の頭の中は何もかも吹き飛び、ただここから逃げることだけしか考えられなくなった。情けなく床を這いずりながらこの場から少しでも離れようとする。

 

「どこ行くの、クズ」

 

ザクッ

 

「あ、があ"っ……!?」

 

しかしそんなことを見逃す筈がなく、二亜が杖を彼の背中に突き刺したことで阻止される。

 

「誰1人として逃がさないよ」

 

杖を突き立て完全なる無の表情でマードックを見下ろす二亜。それを見て彼の恐怖心は更に増大する。

 

「た、助けてくれ……なんでもするから、殺さないでくれぇ……」

 

「……あ"?」

 

みっともなく命乞いをするが、その瞬間二亜の顔が憤怒の表情に様変わりした。

 

グシャ

 

「ぎゃあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」

 

そしてそのまま彼の急所を踏み砕く。その激痛にマードックは思わず汚らしい絶叫を張り上げる。それを聞き二亜の表情が狂気的な笑みに変わる。

 

「あー汚ったない声。こういうクズの悲鳴聞くと煙草の煙が美味しくなるよ」

 

そう言いながら咥えてる煙草の煙を吸い込み気持ち良さそうに吐き出す。

 

「そんじゃ……グラっちパースっ!」

 

二亜はマードックを突き刺さしたまま杖を振り上げると、そのままグラトニーのいる方へ放り投げた。

 

「ん?なんだまだいたのか」

 

グラトニーはそれに気づくと捕食手の一つを構え受け止める姿勢を取る。そしてそのまま彼はガッシリと手に掴まれた。

 

バリグチャボリバリ

 

直後に肉や骨が咀嚼される音が部屋に響き渡る。

 

「(あ"ぁ……もう……ダメ……だ……)」

 

喰われていく間、マードックはまだ意識が残っていた。そして身体の半分を喰われた所で、彼は死んだ。最大級の恐怖と絶望の中、あらゆる尊厳を破壊し尽くされて。

 

そしてマードックを最後に、ウェストコットを除く役員達は残らずグラトニーの餌食となった。

 

「これで最後か。で、あとはアイツだけか」

 

最後の役員を喰い終えたグラトニーはただ1人、椅子に座ったままのウェストコットに視線を向ける。

 

「………」

 

役員達が喰われていく中逃げもせずそれを見ていた彼は、笑みを浮かべていた。

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