あなたが勝つって、信じていますから   作:o-fan

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チャンピオン

「……ああ。また先を越されたな、グリーン」

 レッドは落ち着いている。レッドもまた、かつてグリーンと遊ぶときに待ち合わせていた時と同じような自然体で応える。

「ほう……ちょっと変わったか。まあ、それもそうだよな! こんなところまで来るんだから、変わってなきゃおかしい。まったく、待ちくたびれたぜ……あの時、トキワシティで受けた借りを返すこの日をよ……!!」

 グリーンのにやついた笑みと裏腹に、その瞳は豪炎で燃え盛っている。猛る感情のままレッドへ言葉を放つ。

「俺はここに辿り着くまで、ポケモンバトルにおける最高のパートナー、そして最高の戦術、最高の連携を探した! 幾重もの勝利の経験が俺とポケモン達との絆を深め、気づけばリーグチャンピオンなんて肩書をもらっている。それが今の俺だ! だがな、それでも俺の頭ン中から離れないものがある!」

 グリーンが腰からモンスターボールを取って親指で弾いて上にかちあげ、上空から落ちる軌道を見ずに片手で受け止めると、そのままレッドへ突き出す。

「いつも俺の後ろをとことこと着いて来た誰かさんが、俺に土を付けた。それもまたポケモンバトルだ。この日をどれだけ待っていたか、お前に想像できるかレッド!」

 レッドは声を荒らげずに微笑んだ。

「俺も同じ想いさ。負けて得る悔しき感情に慣れを覚えず、また勝利を得る喜びを知ったその果てでグリーンが待っていたことには、俺もさほど不思議さを感じない」

「はっ! 随分と言うようになったじゃねえか! だがなレッド、まるで俺がお前のためのゴールテープのような言い様だが、お前が今立っているのは実力がものを言う世界だ。個人の感慨が深かろうが浅かろうが勝敗に左右することはない」

「わかっているさ。俺は俺のポケモン達と力を合わせた先、その光りある景色を見るためにここにきた。そのために、俺達には勝利がいる」

 スタジアムの照明がレッドとグリーンを照らした。レッドはモンスターボールを顔の前に持ってきて、俯いてボールに額をつけた。

「数えきれないほど助けられてきた旅の果て、もう自分の不甲斐なさに涙を流しはしない。この戦いで、俺は俺の持つ全ての力を出し切ってみせる」

「ははっ! だったら教えてやるよ! 例え努力し戦術を練ろうとも、決して超えられない壁があるということをな。お前にとっての越えられない壁、それがこの俺だ! 泣き虫レッド!」

 グリーンの声とともに試合開始のブザーがなり、大型ビジョンにはレッドとグリーンの横顔が相対するように並べられ、その間に6-6のスコアが表示された。すぐに場面は試合会場のグリーンに移り、グリーンは慣れた様子でカメラに映えるようにポージングして名乗りを上げる。

「マサラタウンのポケモントレーナー、グリーン!」 

 レッドは顔を引き締めてグリーンを直視した。

 そしてレッドは高らかに名乗りを上げる。

 

「俺はもう泣き虫レッドじゃない。…………俺はマサラタウンのレッド、ポケモントレーナーレッドだ!」

 

「はっ、俺にはもう一つ称号がある。リーグチャンピオン! 意味はわかるよな? この俺様が! 世界で一番! 強いってことなんだよ!!」

 

『試合開始ィ!!』

 

「行け、ピジョットォ!」

「行きな、オニドリル!」

 カントー地方を代表する2羽の巨鳥は、研鑽を積み逞しく成長した姿を誇示するようにスタジアムを旋回し、主の前で羽ばたきながら滞空した。

「借りを返させてもらうぜ」

 グリーンの顔は笑っていたが、その声には屈辱を精算せんがための憤怒にも似た激情がつまっていたことを、レッドは敏感に察した。現れた2体は進化して姿が変わっているが、レッドが初めてグリーンに勝利した戦いと同じ組み合わせだった。

 その組み合わせを二人が事前に打ち合わせたわけでは当然ないが、意図していないとは言い切れないところがある。今でも鮮明に思い出せる光景を、レッドは相棒と成長した姿として、グリーンは前述の激情がために、こうなることを期待していた。

 観客席から多くのフラッシュが光り、観客たちも最初の両者の指示を聞き逃さんと一瞬静まり返る。レッドとグリーンの声が重なり、同じ指示を相棒へ飛ばした。

「そらをとぶ!」

 既に飛んでいるじゃないかという突っ込みはこの場ではギャグにもならない。空中ポケモン同士の激突、とくに物理攻撃を得意とする2羽にとって相手よりも高所の位置取りは必須だった。高所を取れば標的の認識が容易く、また鳥足で相手を切り裂くこともできる。

 ピジョットとオニドリルは風を切るように羽ばたき、腹を合わせるような形で並んで急上昇した。オニドリルの方が頭一つ早い。

「つばさでうつ!」

 高所取りをあきらめたレッドが先制に出た。ピジョットが体の向きを変えながら翼を曲げなぎ払うように振ったが、オニドリルは感せずに上昇したために尻尾を掠めるだけ。

 オニドリルとピジョットの位置する高度が一気に広がると、オニドリルは急に体を捻って向きを入れ替え、体を引力に任せて急降下し羽を揺するように動かしてピジョットへ猛進した。

「ドリルくちばし!」

「かぜおこし!」

 ピジョットが羽ばたきながらオニドリルへ風を送り距離を取ろうとする。オニドリルは構わずに突っ込みそのくちばしでピジョットを捉えた。ピジョットの体が吹き飛ぶがすぐに体勢を立て直し、下降していったオニドリルを追いかける。

「ほう! よく耐えたじゃねえか!」

 ギリギリだった。レッドはドリルくちばしを避けられないと踏み、せめてクリーンヒットにならぬようかぜおこしで軌道をそらすよう指示した。ピジョットもレッドの意図を察し体をよじってくれたために、ダメージを最小限におさえて反撃に出ている。

 通り過ぎたオニドリルが高度をあげようと逆放物線を描くように進路を取ったため、ピジョットは高所を取りながら距離を詰めることができる。

「オウム返し!」

 ピジョットのくちばしが眼下のオニドリルへと迫る。レッドの頬には冷たい汗が流れていた。ピジョットの体力を考えれば、もう相手のドリルくちばしを食らうわけにいかない。

(これで決める!)

「読めてるぜレッド!」

 グリーンの叫びとシンクロしてオニドリルの首が上がり、同時に翼を広げたまま空中で見えない管に沿うように螺旋の軌道で横転した。オニドリルの方向と速度が変わらぬまま位置が横移動し、降下してきたピジョットのくちばしが空を切る。

 再び上下が入れ替わり、オニドリルが落下体勢に入ってクチバシの照準をピジョットへ合わせる。

 対してピジョットはそのまま着地し、オニドリルへ向き直り威嚇するように羽を広げた。

「行くぜえ、ドリルくちばし!!」

「身代わり!」

 オニドリルの急降下攻撃がピジョットが作り出した身代わりを貫く。身代わりは一瞬で蒸発したが、その瞬間グリーンとオニドリルの表情が凍りついた。クチバシがそのままの勢いで地面へ突き刺さっていて身動きがとれない。

「ゴッド……バードっ!」

「ちいっつばさでうつ!」

 ピジョットの光り輝く突進に対して、オニドリルが身を捩ってなんとか翼を合わせる。

 オニドリルの体が吹き飛び、倒れ伏して動かなくなる。しかし側頭部を強かに打たれたピジョットもまた、前のめりに崩れた。

『ピジョット、オニドリル、戦闘不能!』

 スクリーンの表示が5-5に変わる。

「いいガッツだったぜ。オニドリル」

「よくやった。ピジョット」

 両者先鋒を称え、次の腰の相棒へと手を伸ばす。

「とりあえず、追いついたぜレッド。次で差を見せつけてやる」

 まるでグリーンが挑戦者のような言葉、事実グリーンは今チャンピオンという自分の地位を忘れて、歪んだ笑みを深くして片目を閉じた。

 レッドにはその顔に見覚えがある。いつも勝負事をしてきた二人、グリーンの圧倒的な力が披露される前兆だった。

 両者KOのため2体目は同時に出現させなければならない。レッドもグリーンも相手の手持ちの情報がないため、ここからは未知の戦闘になる。

 レッドが選んだのはギャラドス。理由はある。ギャラドスは水と飛行の複合タイプ、弱点となる岩タイプと電気タイプの攻撃は、ガラガラの後だしによって回避できる。

 対してグリーンが繰り出したのは緑色の外骨格に両手を刃と化した密林の暗殺虫、ストライク。

(ここだ!)

 レッドの脳に駆け巡る閃光。絶好の奇襲チャンスだった。

「ギャラドス! 10万ボルト!」

「なに!?」

 ギャラドスから発した電光がストライクに直撃する。

 観客席で「あれはミーがプレゼントしたわざマシンネ!!」とマチスが隣のポケモンだいすきクラブ会長の首に太い腕を回して叫んでいる。

「ストライク、とっしん!」

 しかしグリーンが一瞬で冷静さを取り戻し、かろうじて生き残ったストライクへ命令する。ストライクは羽をはためかせてギャラドスへ突進するとギャラドスの顔面を蹴り飛ばし、その反動でグリーンの元へ舞い戻ってグリーンのモンスターボールから発せられたリターンレーザーを浴びる。この技はバトル後にポケモン協会によってとんぼがえりと命名された。

「サンダース!」

 ストライクと入れ替わりで現れたのはサンダース。グリーンの命令の前にサンダースの素早い電撃がギャラドスを掠めたが、なんとかレッドはギャラドスにリターンレーザーを当てた。

(サンダースが狙う交代後出始めの先制攻撃、ガラガラならば!)

 レッドの狙いはあたり、サンダースが放った電光が出始めのガラガラに直撃する。しかしガラガラは全く意に介さずホネこんぼうをサンダースへ投合した。

「ミサイルばり!」

 グリーンはガラガラの姿を見てあの時のカラカラだと一瞬で見抜き少し微笑んだが、すぐに厳しい顔へ戻す。

 サンダースの毛が逆立って波打ちと、空気を切る鋭い音を立てながらホネブーメランへと飛んで行く。ホネブーメランは空中で華道剣山のようになって勢いをなくし、サンダースに届く前に墜落した。

「じしん!」

 ガラガラが両手を地面に突き刺して大地を脈動させる。揺れた地面がサンダースを真下から叩き上げ、サンダースの体が宙に舞った。

(あさいっ)

 レッドは即座に悟り、ガラガラに追加攻撃させる。

「ホネこんぼう!」

「にどげり!」

 ガラガラが地面に落ちているホネこんぼうを拾い上げて空中のサンダースへ振り下ろす。しかしサンダースは身を捩ってかわすと後ろ足でにどげりし、ガラガラをのけぞらせた。

「ホネブーメラン!」

 のけぞったまま腕力だけで投合されたホネブーメランは着地中のサンダースに直撃し、今度こそサンダースを沈ませた。しかしガラガラもにどげりが急所にあたってしまったのか膝をつく。

「ラプラス!」

 5対4。次いでグリーンが繰り出したラプラス。水技を予想したレッドがガラガラを戻す。

 予想はあたり、ラプラスが相手の出始めを狙ったハイドロポンプはフシギバナの花弁を濡らすだけに終わった。

「へえ。いい見極めだなレッド! れいとうビーム!」

「!? はっぱカッター!」

 はっぱカッターとれいとうビームが激突すると、すぐにはっぱカッターが凍りついて粉砕されていく。しかしれいとうビームが届いた場所にフシギバナはいない。

 フシギバナはすぐにフィールドを旋回するように走ってラプラスへ距離を詰める。図体は大きくなったが決して進化前と比べて鈍重になったわけではなく、むしろ強化された筋力によってその速度は上がっている。

「しびれごな!」

 そしてエリカから学んだ草ポケモン特有の戦術。例え弱点が多くても五分以上に戦える術がレッドとフシギバナにはある。

「みがわり!」 

「れいとうっ……ちいっ!」

 ラプラスがしびれて動けず、グリーンが舌を鳴らした。

「はっぱカッター!!」

「れいとうビーム!!」

 れいとうビームがフシギバナのみがわりを破壊すると同時に、れいとうビームを避けるように曲線を描いたはっぱカッターがラプラスに直撃する。ラプラスの甲羅がない頭から首を正確に撃ちぬき、ラプラスが頭を垂れて動かなくなった。

 5対3。

「ストライクゥウ!!」

 グリーンが苛立った声を隠さずにストライクを繰り出す。観客は挑戦者の奮戦ぶりに熱気と期待を膨らませていく。

「レッドォ頑張れ!! 勝てるわよお!!」

 観客でカスミのような声援を送るような人物は多くいた。カスミの隣で戦況を見つめるタケシもまた、レッドの有利な展開に対して頬がゆるむ。

 しかしレッド、そしてグリーンの並外れた実力を知る者、観客席のフジ老人とナツメだけは反応が違った。

(彼の実力、これだけではなかろう)

(気をつけて……レッドっ)

(なんだっ。何を狙っている!?)

 レッドの心に浮かぶは焦燥と不安。グリーンの強さをよく知っているつもりのレッドからすれば、この戦いぶりにはグリーンの意図を感じてならない。

 苛立った様子を隠そうともしないグリーン。レッドは演技にしか見えない。まるでレッドに勝利への期待を抱かせた上で叩き落とす算段があり、手持ちの数体の犠牲と観客達の新たなチャンピオンの誕生を願う雰囲気諸々全てをベールに、グリーン自身が狙う勝ち筋を包み隠しているように見えて仕方がない。

 レッドが争ってきたグリーンとは、そういう人間なのだ。

「しびれごな!」

「きりさく!」

 ストライクがフシギバナへ肉迫すると同時にフシギバナはしびれごなを散布する。ストライクの鎌はフシギバナの頬を掠めるにとどまり、レッドはすぐにフシギバナをラッタに交換した。

「ひっさつまえば!」 

「きりさく!」

 ラッタの前歯とストライクの鎌が激突する。しかししびれごなを受けたストライクは手数で押され、羽を使い距離をとろうとした所でラッタのでんこうせっかに吹き飛ばされた。

 これで5対2。

「ゲンガー!」

 グリーンの苦虫を潰した表情は変わらない。ゲンガーに対して攻撃する術がないラッタはゲンガーのサイコキネシスをなんとか耐えると、レッドの元へ舞い戻りバタフリーと交代する。

「バタフリー、サイコキネシス!」

 ゲンガーとバタフリーのサイコキネシスの激突。紫色のねんりきがバチバチと音を立てて空間を歪ませるが、毒タイプを持つゲンガーは時間が立つにつれ根負けした。

 グリーンは倒れたゲンガーを戻す。レッドはバタフリーを傍らに、無言だった。

「……」

「……」

 表示だけなら5対1。しかしレッドは自身が勝利間近だとも、グリーンが弱くなっているなどとも微塵も思っていなかった。

 レッドの脳裏に強烈に焼き付いている光景、シルフカンパニーでロケット団員の数多のポケモンを薙ぎ払ったであろうグリーンの相棒。

 その一体が出てきた時、一体どうしたら勝てるのか。レッドの頭の中で最適解が一切浮かばない。その焦りがレッドの額から頬へ一筋の冷や汗として流れ、グリーンの片方の口端を吊り上げさせた。

「リザードン、ショータイムだ!」

グリーンがボールを放る。モンスターボールが開くと共に爆炎の竜巻が巻き起こり、竜巻の中心から一対(つい)の翼が爆炎を薙ぎ払うように回転し、現れた龍は大きく羽を広げると同時に顎を開き雄叫びを上げた。

 その姿が現れた瞬間、ワタル等グリーンの実力を知る一部の者達が戦慄した。

 控室で戦況を見守るワタルはグリーンが見せてきた実力を思い返す。

(グリーンの5体までを突破することは俺もできた。しかし、リザードンは違う)

 強き者はまた強き者の実力を知る。その例に漏れず、バタフリーとレッドはリザードンの並々ならぬパワーを見ただけで悟った。

 控室にはワタル他、四天王達が揃っている。

「オーキドの孫の勝ちだね」

「どうして?」

 キクコの呟きに、カンナが疑問の声を上げる。ワタルが解説した。

「グリーン君の手持ちは、言うなればリザードンの1トップ型。リザードンを活かすための戦術であり、リザードンの苦手なタイプを他の5体で弱らせ、あとはリザードンが圧倒的な力で一掃する。相手は満身創痍になった状態で、チャンピオンの最大の切り札を相手にしなければならない。グリーン君の試合が交代合戦になるのはグリーン君自身がそう仕向けているんだ。戦いの中でレッド君の全ての手持ちを把握し、そして今回はギャラドスに狙いを定めた」

 

「リザードン」

 グリーンが天へ片手を伸ばして名を呼ぶと同時に、リザードンの牙の隙間から炎が漏れる。

 レッドの思考が駆け出す。

(交代は無意味。バタフリーに相手を倒すだけの決定打はない。ならば!)

「バタフリー、どくどく!!」

「かえんほうしゃ」

 グリーンが伸ばした腕を目標物へ向けると同時に、リザードンが起こした大炎がバタフリーを飲み込んだ。

「……よくやったぞ、バタフリー」

 レッドが倒れ伏したバタフリーへリターンレーザーを当てる。 

 バタフリーは恐怖しながらも、レッドの命令に忠実に従っていた。捨て駒にせざるを得なかった相棒に対してレッドは涙をこらえて、グリーンへ戦意を向ける。

「行け。ギャラドス!!」

 ギャラドスがリザードンに対峙するのと同時に、今大会最大の歓声が鳴り響いた。リザードンとギャラドスの一戦が最後の分岐点であることを、この戦いを見つめる全ての人間がわかっている。

「足掻けよ最後まで」

 グリーンの言葉はそれだけだ。

 ギャラドスはサンダースの一撃を耐えたのが奇跡だった。そしてギャラドスの目に宿る闘志は、まだ水技を繰り出す余力があることを示している。

「行くぞギャラドス! ハイドロポンプ!」

「大文字!!」

 ハイドロポンプと大文字の激突。ここでもまたリザードンは規格外の強さを示した。

「ハイドロポンプが……蒸発している!?」

 ギャラドスが放った水流は大文字によって相殺され、リザードンとギャラドスの間に大量の水蒸気を発生させた。その霧を切り裂くように、リザードンがギャラドスへ突撃する。

「切り裂く!」

「かみつく!」

 ギャラドスのかみつきを食らいながらもリザードンが構わずその爪でギャラドスを襲う。ギャラドスが倒れ伏すと同時にレッドの最後の望みが絶たれた。

(……まだだ!)

 レッドの闘志は尽きていない。しかし、ため息に変わった会場の雰囲気をレッドは察していた。

「……行け、ガラガラ!」

(最後まで、足掻いてみせる。恥かしくない戦いをしてみせる! 例え勝利できなくても……!!)

「ガラガラ、じしん!」

 ガラガラは滞空するリザードンに目もくれずホネこんぼうを大地に突き刺して大地を脈動させる。

(レッドとガラガラの目、血迷ったわけではなさそうだ。なにをする気だ?)

 グリーンはすぐに答えを得た。ガラガラが起こした地震によってバトルフィールドが所々ひび割れ、大きく柱上に隆起し即席の岩場と化す。

 ガラガラはすぐに身を岩場に隠した。隙を伺い奇襲するつもりだろう。

「なるほど、確かに北風ならまどうところだ。だがリザードンは太陽にもなれる! ほのおのうず!」

 リザードンが放った炎は岩場の間をぬうように進み、地上そのものの温度を急上昇させる。たまらずガラガラが灼熱の地上を避けようと岩を駆け上がった。

「大文字!」

 ガラガラは岩場の上で勇敢にホネこんぼうを構えたが、グリーンは付き合わずに大文字で薙ぎ払った。

 スクリーンに表示される2-1のスコア。

「戻れ……ガラガラ。行け、ラッタ!」

 会場の空気、グリーンの確信、レッドの尽きかけている心の炎。全てを理解していながらラッタはリザードンへ駆け出していく。

「ラッタ、ひっさつまえば!」

 レッドが声を飛ばす。ラッタは岩場を高速移動で飛び跳ねながらリザードンへと距離を詰める。その鬼気迫る猛進が生む一つの奇跡。リザードンがラッタを捉えきれず姿を見失った。

「後ろだリザードン!! かえんほうしゃ!」

 初めてグリーンの怒号が飛ぶ。ラッタは岩場を影にしながらリザードンへと飛び上がり、ひっさつまえばを食らわさんとリザードンへと肉迫する。

 しかしリザードンの口から吐出される炎の方が早かった。ラッタの体を炎が包む。しかし、ラッタの勢いは止まらない。リザードンの炎がラッタの根性に火を付け、ひっさつまえばがリザードンの首に炸裂する。

「グォ……!」

 リザードンが一瞬呻く。が、リザードンはそのまま着地して戦闘続行可能であることを会場に見せつける。対してラッタは技を放ったまま空中で気を失い、地面に激突する前にレッドがリターンレーザーを当てた。

 レッドの頬に、一筋の涙が伝う。

(なんて根性だラッタ……。俺の命令以上のことをお前は……。ありがとう)

 レッドはフシギバナが入っている最後のモンスターボールを掴む。

 グリーンの圧倒的な力、ポケモンとの呼吸、トレーナーとしての強さ、やっぱりグリーンの方がつよい。

 諦めたくない。だが、レッドは力の差を確信してしまっていた。

「行け、フシギバナ」

 スコアに刻まれる1対1。

 レッドはもう、勝ちを望んでいない。フシギバナを呼んで一度振り返らせて、目を合わせた。

(いい戦意だフシギバナ。わかった。最後まで付き合う)

「さあフシギバナ……フシギバナ?」

 フシギバナはリザードンへ向き直ると、雄叫びを上げた。まるで勝利を諦めたレッドを奮い立たせるように。

 いや、間違いなくそのための雄叫びだった。レッドはそう確信しながらも、体の中の炎が燃え上がらない。

(フシギバナ……。いいんだ。お前たちはよくやってくれた。かつて泣き虫だった俺にとって、身に不相応のたくさんの栄光と絆をもたらしてくれた。俺はもうこれ以上、なにもいらな)

 本当に?

「…………え」

 フシギバナがリザードンへ駆け出していく。その背中が、音のない言葉をレッドへ向ける。世界がレッドとフシギバナだけになったように、時がとまる。

『本当に、もうなにもいらないのか』

(俺は……、俺がここまで来れたのは、皆がいたからだ。皆がいなければ、俺はなにも為すことができなかった! 俺自身の力なんて一体どれだけ役に立ったか……!)

『馬鹿言うなよ。相棒!』

(……!!)

レッドの心に扉が開く。後は、進むだけ。

 

「レッドさん!!」

 

「……!」

 歓声の中確かに聞こえた、聞き間違うはずのない声。レッドの背中を押す、最後のピース。

 全身にほとばしる激情、相棒とともに今一度前へ。

(ああそうだな、フシギバナ)

 レッドの表情の変化。それに気づいた多くのレッドを応援する人々。

「レッド、降参するなら待ってやるぜ!」

 リザードンをフシギバナへ向かわせながらグリーンが叫ぶ。だがレッドは帽子のつばを指で弾いて跳ね上げ、言葉に闘志を込めて放った。

「俺は決して諦めない。俺の一つ一つのバッジに込められたポケモントレーナーの魂が、あきらめようとする俺の心の背中を押してくれている。俺と仲間達の心と体を炊きつけて大炎となり、唸りを上げている!」

 そうだ。何故業火に包まれながらもバタフリーはどくどくを正確にリザードンに当てた。

 何故ギャラドスは傷ついた体を奮い立たせてハイドロポンプを放った。

 何故ガラガラは相手を傷つけるでもないレッドの指示を疑わなかった。

 何故ラッタはレッドが言葉にしなかった岩陰の奇襲戦法を行った。

 ピジョット。グリーンに初勝利するに至った最大の功労者。此度ピジョットが見せた最後のガッツでオニドリルと相打ったのをもう忘れたか!

「そうだよな、フシギバナ。この心意気と記憶、体中についた傷とその再生が導いてくれた一筋の栄光への道。俺達は決して歩みを止めたりはしない!」

 レッドの脳裏に点在する勝利への戦術点が雷光の如く線でつながっていく。

(バタフリーがもたらした猛毒、ギャラドス、ガラガラ、ラッタが削ってくれた体力。フシギバナの一撃ならば、きっと。いや、必ず!!)

「フシギバナ、みがわり!」

「リザードン、かえんほうしゃ!」

 フシギバナの身代わりが一瞬で蒸発する。しかし何とかフシギバナは自身を覆う大きさがある岩まで走り身を隠した。

 限界まで時間を稼ぎ一撃を狙う。フシギバナの最後まで勝利を狙う動きに、会場のボルテージが限界を突破する。

 岩場でフシギバナが再び身代わりを作り出す。体力的に最後の身代わりだった。

「レッド、来いよ。全部ひっくるめて叩き潰してやる」

 グリーンの声がレッドに届いた。レッドはフシギバナと視線を交わして頷く。そして、フシギバナが岩場から姿を表した。

(レッドのフシギバナの身代わり。あれはソーラービームを貯めるための身代わりだ。観客たちもお前も奇跡を望んでる。だがなレッド、どう計算したって削り切れないぜ。口惜しいが、ノーチャンスだ)

 グリーンの思考と同じ答えを出したトレーナーは多くいた。ワタルやキクコはもうグリーンの勝利を確信しているし、観客席で見つめるカツラもまた、炎ポケモンのスペシャリストである自身の知識からリザードンが耐えることを確信していた。だがカツラはその確信を覆す奇跡をレッドに願っている。

 リザードンの牙から炎が漏れだし、フシギバナが背中を揺らした。お互いにもう、命令を待つだけ。

 グリーンとレッドが叫ぶ。

「かえんほうしゃ!」

「はっぱカッター!」

『!?』

 レッドは血迷ったのか。グリーン含め多くの人間がそう思った。身代わりがあるこの局面、なぜはっぱカッターを?

 しかしレッドとフシギバナの瞳に一点の曇りなし。かえんほうしゃがフシギバナの身代わりを燃やし尽くすと同時に、炎を避ける曲線を描いたはっぱカッターがリザードンに直撃した。

 リザードンは倒れない。フシギバナを守る壁はもうなにもない。

「終わりだ、レッド!」

 レッド、フシギバナ、それ以外のすべての人々がグリーンの勝利する未来を見た。

 いや、レッドとフシギバナともう一人だけ例外がいる。

 彼女はレッド達を誰よりも理解している。だからこそわかる。

 あの日マサラタウンでレッドに教授した、ポケモンと絆を育むための言葉が、今体現されようとしている。

 マサラタウン、レッドが旅立つ前に行った最後のトレーニング。レッドのフシギダネとエリカのナゾノクサの戦い。

 ナゾノクサの攻撃にフシギダネが弾き飛ばされる。不安の色を浮かべたレッドに、エリカが精一杯伝えた言葉。

「レッドさん。ポケモン達の頑張りを信じて。どんな苦境に立たされてもポケモン達の勝利を信じて信じ抜いて。そうすればいつだってあなたのポケモン達は」

 ピジョットも、バタフリーも、ギャラドスも、ガラガラも、ラッタも、フシギバナも、いつだって。

 

「あなたが勝つって、信じていますから」

 

 グリーンが大文字を叫ぶ。レッドは笑った。

(フシギバナ、ありがとう)

 フシギバナの花の中心に光が収束する。今更ソーラービームなど遅い。ますますグリーンが勝利を確信する。

 相性差を跳ね返すための一撃、レッドはいつだって学び、それを活かしてきた。

「………はかいこうせん!!」

 レッドの言葉とともに、フシギバナが放った光は大文字をかき消し、リザードンを飲み込む。

 その光景を観戦しに来た7人のジムリーダー、ポケモンだいすきクラブ会長、フジ老人、海を超えた時差の中チェレンや寝ぼけ眼をこするベル等と共にテレビにかじりつくブラックとホワイト。そして草原の中ヒノアラシと共にラジオを聞いていた少年が、手に持っていた黄色と黒の帽子を落とす――。

 

「ポケモン、人によって捕獲され、支配され、戦わされ、命じる主人は友情を謳う。言語を発せず感情も曖昧、絆など所詮人の思い込みでしかない。モンスターボールから開放されたポケモンがどれだけ主人の元に残ると思う?」

「従う相手との友愛を錯覚して、一つの生物の生き死にを握った自分の罪から目を背ける。そんな奴らが心底嫌いだった。悪として、一度手に入れたならば道具として接することに何故徹しない」

「種族を超えた友情を謳うならば何故モンスターボールなんてものがある? なあレッド、人とポケモンが心を通わすことができるのならば……今の世の中は、どこか間違っているんじゃないか?」

 今思い出す。純粋な疑問をレッドへ向けるサカキを。

「つまらん事を聞いたな。忘れてくれ」

 ふっとサカキは表情を崩し、レッドを称える。サカキの澄み切った笑顔に、レッドは声が出なかった。

「こんなボスでは人心も離れよう。ロケット団は解散する。じゃあな」

「……これから、どこに行くんだ?」

 サカキはレッドへグリーンバッジを放り、背を向けて歩き出す。

「ポケモントレーナーとしての高みを目指し続けているならば、また会うかもな」

 サカキがジム奥の暗黒に消えていく。

「レッド、お前にはポケモンとの真の絆がある。ポケモンと接してきた多くの人間達が目指したものに、お前はなれるだろう」 

 あの時、何も言えなかった。

 

(サカキ、俺が皆と一緒に見つけた答えを、今度会ったら伝えるよ)

 1-0のスコアが表示される。グリーンが震える手でモンスターボールを掴み、倒れて動かないリザードンにリターンレーザーを当てる。

『新っチャンピオン!! レッドォォォォオ!!!!』

 アナウンサーの絶叫とともに、スタジアム上部から黄金の紙吹雪が一斉に放出され、色とりどりの花火が断続的に空を彩る。

 レッドはゆっくりと歩いてフィールドのフシギバナに向かう。

 フシギバナがレッドへ顔を向ける。レッドのくしゃくしゃの顔に釣られるように、フシギバナの目に涙が浮かんだ。

 マサラタウンで出会った二人。フシギダネはフシギバナに進化し、レッドもまた外見も内面も大きく成長した。

 だが変わらないことがある。

 二人の心を繋ぐ光はいつだって切れはしない。今までも、そしてこれからも。

「勝った……勝ったぞ……! フシギバナ……お前と俺と……皆で! やった……! やってやった……! 俺たち皆で……やってやったぞ……!!! 勝ったぞ!! 勝ったぞ!! うああああ!!!!」

 レッドがフシギバナと額を合わせ、喜びに泣き叫んだ。グリーンが見ている、観客が見ている、世界中継するカメラが見ているが、関係なしに泣き叫んだ。

 そしてそれを否定するものも、冷やかすものもいやしない。

「おい、レッド!」

「あ……」

 グリーンの呼びかけにレッドが気づく。グリーンは大型スクリーン下のスペース、円形に設けられた王座を指さしている。

「さっさとステージの中央に行ってこい。あそこが殿堂入りを登録する場所だ」

 それだけ言うと、グリーンはレッドが入場してきた挑戦者用の入場口へ向かう。グリーンはレッドとすれ違いざま、「ガラガラ泣かすなよ。あと次は負けねえから」とだけ言い残した。レッドとグリーン、二人にとってそれだけで充分だった。

 レッドはフシギバナを戻す。そして「レッド」とコールし続けるスタジアムの中、玉座へと続く階段を登る。

 登り切った先のステージには、穏やかな笑みを浮かべたオーキド博士が待っていた。

「グリーンの初防衛戦があると聞いて飛んでくれば、もう勝負がついておったわい。だが来てよかったぞ。新たなチャンピオンの誕生を見ることができるとは。おめでとうレッド」

 玉座の後ろにはレッドの腰の高さの立方体の機械があり、その上部には綺羅びやかに装飾された6つのくぼみがある。

「さあチャンピオン。共に戦ったポケモン達を、ポケモンリーグの歴史に永遠に記録しようではないか!」

 レッドが頷く。そして一つずつ、仲間達が入ったモンスターボールをくぼみに当てはめていく。

「ピジョット」

 優美なる大鳥。

「ギャラドス」

 勇気ある昇り龍。

「バタフリー」

 不撓不屈の蝶。

「ガラガラ」

 冷静なる戦士。

「ラッタ」

 根性の疾風獣。

「フシギバナ」

 全てを共にした相棒。

 最高の仲間達がスクリーンに順々に姿を表わしていく。

 そして最後に映し出されるレッドの姿。気づけばステージを囲むように多くの観客が席を離れて詰めかけてきている。

 タケシが微笑みながらレッドへサムズアップする。マチスがだいすきクラブの会長と肩を組んで体を揺らしてなんか歌っている。

 キョウはレッドと目を合わせると微笑み、そしてすぐに身を翻して姿を消す。隣にいたアンズはレッドへ賛辞を叫ぶのに夢中でキョウが姿を消した事に気づいていない。

 カツラとフジ老人が拍手しながらレッドに頷く。ナツメが拍手しながらときおり目尻の涙を拭う。

 あの人は、カスミに伴われていた。いつもの優雅な和服姿、しかしカスミに急かされながらも顔をあげようとしない。

 レッドが名を呼ぶと、体をびくりと震わせた後、ハンカチで目元を拭いながらゆっくりと顔を上げた。

「……おめでとう、レッドさん」

 涙で濡れている頬、震えている唇。だがレッドが今まで見た中で、一番のエリカの美しい笑顔。

「ありがとう」

 殿堂入り装置の機械が光った。殿堂入り登録とともにポケモンの回復が終わった合図だったようだ。

 そして全てのモンスターボールにポケモンの出現信号が送られ、レッドの回りを囲むように仲間達が現れる。

 そのタイミングでオーキド博士からポケモンリーグトロフィーが授与される。

 鳴り響く歓声。優勝者を称える荘厳な音楽。笑顔で各々叫ぶポケモン達。

 レッドは仲間達を見渡し快心の笑みを浮かべたあと、トロフィーを両手で持ち、頭の上へ掲げた。

 

 レッドの密着取材を終えたエニシダは、ポケモンジャーナルへ寄稿するとカントー地方から姿を消したという。彼に近いものはどこか遠くでデカイ事をやりたくなったと聞いているようで、彼の身を案じているものはいないようだった。

 ジムリーダー達は相変わらず多忙な日々を送っている。ポケモンリーグ後、セキチクシティジムリーダーが正式にアンズになり、またトキワジムリーダーは空位となり後任が決まるまでキクコが代行することになった。

 レッドはリーグチャンピオン戴冠後、すぐにチャンピオンの座を返上した。これ自体は大したニュースにはならなかった。リーグチャンピオンは代々、グリーンのように防衛戦を行うためセキエイ高原に残るものと、即返上するものと半々の割合らしい。また新シーズンでは現四天王を含めた多くのトレーナー達がしのぎを削ることになるだろう。

『以上、新チャンピオン、レッド選手の素顔でした。次のニュースです……』

 マサラタウンの自室。レッドは何の気なしにテレビをBGMにし、カーペットの上に座りながらリュック内の荷物を確認していた。モンスターボール6つも腰に付けており、今から準備することは特になくなっている。

「レッドさん」

 そう甘い声を出しながらエリカがレッドへ後ろから抱きつき、レッドの首へ腕を回しながら頬をつけ合う。レッドも微笑みながらエリカの腕に手を添え、顔を気持ちエリカへかたむける。

 エリカの表情はうっとりとしていながらどこか切ない。薄く目を開きながらレッドの頬に唇をつける。

 エリカとレッドは二人きりになるとよく互いの体温を感じ合っていたが、今日は格別エリカが甘える度合いが強い。

「すぐ戻ってくるよ」

「嘘。レッドさんのすぐはどれくらいですか?」

 エリカのすねた声にレッドが困ったように笑う。レッドの旅支度、彼はこれからチャンピオンだけが探検を許されるハナダの洞窟と、セキエイ高原より西にあるシロガネ山を踏破するための準備をしていた。

 またレッドはその踏破が終わったあと、さらに広い世界をめぐることをエリカに告げている。

(わかっていたけれど)

 レッドがそういう選択をすることを、エリカは予測していた。しかし期待はしていなかった。これからはカントー地方で二人で一緒に。期待していたのはそんな夢想。

「離れたくないです」

 エリカがレッドの耳元でささやく。しかし言葉と裏腹に、エリカの心の中で踏ん切りはついていた。レッドを待つ、いつまでも。エリカの囁きはちょっとした意地悪に近い。

 好いた女にそんなことを言われたら当然レッドの心が波立つ。レッドはふと思いつく。

「ハナダの洞窟とシロガネ山の踏破が終わったら、一緒に世界をめぐりたい。エリカさんと一緒に」

 エリカの瞳を正面から見つめ、穏やかに言う。エリカは反射的に「はい」と答えて少し狼狽したが、すぐに視界一面がレッドで埋め尽くされて甘い味を感じ、目を瞑って堪能した。

 レッドは草原の中回想を終え目を開ける。天気は快晴、少し風が強い。

 シロガネ山の山頂が遥か先に見えるこの場所で、レッドは隣のフシギバナに手をついて一つ息をつく。

「さて、準備はいいか皆?」

 レッドの後ろにはピジョットとラッタの姿。今レッドはポケモン界に徐々に浸透しつつあるトリプルバトルの練習も兼ねてシロガネ山に挑もうとしている。

 エリカからの手紙にはいくつもの時代の変遷がレッドへ伝えられている。カスミとの協力の下発表されたポケモンの性格による得意分野の発見や、オス・メスの判別、別地方からのダブル・トリプルバトルの普及、ポケモンのたまごの発見など。既にレッドの最年少優勝記録の偉業なんて風化しつつある。

 しかしレッドは自身の優勝記録なんて少しも気にしてなかったし、むしろ変わりゆく世界が魅力的に見えて仕方がない。

 エリカからの最新の手紙に同封されていた写真。レッドが発見した未知の鉱石によって進化したクサイハナ――キレイハナというらしい――の姿が写っている。

 頂点など過去の話。レッドとポケモン達は際限のない未知の世界へ進むのが楽しみで仕方がない。

「行くぞ! 皆!」

 次代に向かい雄叫びを上げ駆け出す3匹、ラッタ、ピジョット、フシギバナ。

 レッドは誰よりもいち早く、新たな光へ疾風のように駈け出している。




最終話いかがだったでしょうか。
ご意見、ご感想ありましたらご自由に書いていただきたいと思います。

10万字を超える長編を最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。
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