ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ 作:ヘル・レーベンシュタイン
まず、感じた想いは“諦観”だった。
だから私が
だって、定められた道だけを走るのは嫌だった。けど、周りはそれを求めている空気がある。その空気が嫌いでも、触れて耐えて、そして走り抜かないといけない。いや……そんな小難しいことじゃない。
【個性がどうだのなんて、小難しいことじゃないだろう。お前が本当に悩んでいたのは、結局のところ自分そのものが弱いことを忘れたかっただけだろう。】
クー・フーリン・オルタ……正確には私が勝手にイメージしたそれがそう語る。そう、そうだ、本当は私が弱いことが嫌だったんだ。それは腕力だとか、財力とかそんなんじゃない。人として弱いこと。
私が弱いから、ざ・はむきたすと方向性が違うなんて理由で辞めた。私が弱いから、両親の望むルートを歩く勇気なんてなかった。私が弱いから、勉強なんてほとんどできなくて、私が弱いから、私が弱いから………なんて、考えれば考えるほど理由は際限なく湧いてくる。だから……
【俺の様に弱さを凌駕できる強さがあれば、なんて考えた。たとえどんな犠牲を払おうともな。】
そうだ、もしも私が強ければ定められた
だって、人は結果を出せば強引にでも解らせて黙らせることができる。予定調和、分かり切った結果でも圧倒的なものだと反論させない。それは、クー・フーリンを見てれば言葉にできなくてもわかることだ。
【……だが】
それでも、例えそうだとしても、それで全てを解決できるほど人の心は簡単じゃない。違う、私は納得出来なかったんだ。
だって、人の心を置き去りにするのは暴力だと思ったから。それは私の心が認めなかったんだ、だってそれで本当に納得するならみんな我儘になれば夢を叶えられる、そんな暴力に右倣えな在り方が真理なわけ無いと思った。いや……それはここにきて……
【カルデア、後藤ひとりを見てか】
そうだ、カルデアのみんなが…そしてぼっちが示してくれた。戦うことに怯えてたマシュ、嫁さんを失って瀕死だったラーマ、そして、結局マスターになっても相変わらずなぼっちがボロボロになりながらも示してくれた。
傷だらけ、失うことも多くても、貧弱でも、それでもみんなと一緒に、自分の出来ることを全力でやってきた。そうだ、エゴ全開な暴力を突き抜けることも確かに正しい力の示し方かもしれない。けど、それは私の目指す
【……そうかよ、なら、その強さを示してみるんだな。】
うん、私はぼっちみたいな弱いけど強いあり方が好きだ。だから勝とう、未来を取り戻そうよ。
そしてまた一緒に結束バンドで頑張ろう。もしも叶うならさ、モーツァルトから教わったこともあるでしょ?それで情報教材とか作ってさ、一儲けしようよ…….なんてね。けど、またそんな風に一緒に楽しみたいからさ、負けないでねぼっち。私は……山田リョウは、どんだけ世界が変わっても、絶対ぼっちの味方であり続けるから。
こんなこと、恥ずかしいから面と向かって言えないけどね。
クー・フーリン・オルタの退去直後、アメリカ兵たちの前にいた死なずのケルト兵たちの姿が淡い光となって消えていった。
「敵兵が消えていく……これは、まさか……」
「ああ、勝利ってことでしょうよ。アメリカの……いや、人間の__」
『聞こえてるね!ぼっちちゃん達が勝った!!時代の修復が始まったよ!!』
「オォォォッ!!!」
ダヴィンチのその声が全員に行き渡り、歓喜の声が大陸へと響き渡った。
「つかれたー!!フランス、ローマ、アンコールも楽じゃないわ!」
流石のエリザベートも喜びを噛み締めるも、同時に疲労感に満ちた声が漏れた。しかし……
「やったわよ、セイバー」
そう誰にも聞こえないように、そう小声で呟いた。直後だった。
『お疲れ様でした、ドラ娘。』
「げっ、清姫。何よ、ぼっちの様子見に行かなくていいの?」
『大丈夫です結婚したので』
「何言ってんの?」
通信先の清姫の目はまさに、この世の美しいものを堪能したかのように輝いていた。その理由を聞く気力がエリザベートには残っておらず、ただ困惑の声を出すしかなかった。
『私、愛に生きる女ですがそれはそれとして』
「?」
『友達のことも心配するのです、無事でよかった』
「___」
そう語る清姫はさっきの歓喜の輝きとは打って変わって、偽りが皆無の純粋な瞳の輝きをしていた。
「べ、べ、べ、べ別に嬉しくなんかないんだからね!!」
『なんですか、その古臭い
「なによー!!」
エリザベートの怒気に満ちた声とは裏腹に、尻尾は激しく上下に揺れていた。
その横で、エジソンとテスラ、そしてエレナは真っ平に広がる大地を見つめる。
「とてつもないな、神代の兵器というのは……」
「ええ、でもあの怪物を封じ込められたのはあなたが間に合ったからよ」
「うむ……多くの民を犠牲にした贖いには足りんが、それでも……」
「ハッ、これだから実践派の凡骨は。深く猛省し、これを機に頭を使うことを覚えることだ。」
「ちょっとテスラ!」
「………今の私は殊勝なのだ、そういうことにひてやろう。
もっとも、誰かさんの様に“机上の空論”にならぬようだがね。」
「あん?」
「なんだ?」
瞬間、拳が空を裂き。
「おっと手が滑った」
電気ショックが空を切り
「おっと電気が滑った」
エジソンとテスラの拳と拳によるぶつかり合いが始まった。
「やめなさーい!!」
「ほっときましょうや、戦争は終わったんだ」
そんな子供みたいな喧嘩にエレナはそう叫び、同時に隣で見てたヘクトールがそう嗜める。
「あの二人ったら、正しい方向で同じ道を歩んでるのに、道が狭いもんなからどうしても争っちゃうのよね。」
「……いいんじゃないですか?
みんなの幸福を望む者は、かつて剣を取らねばならなかった。暴力なしで幸せを得るのは、まぁ難しかった。」
「……あの二人はそうじゃなかった、剣を握らず知恵を練った。それはつまり、人が少しずつ歩んできた歴史の成果物そのもの。」
「いい話じゃないですか、“夜を恐れないでいい”なんて幸福を、
「……そうして人類は前に進む、華やかな英雄譚を置き去りにして残ったのは地味で面白くもない“名も知らぬ誰かを幸福にしよう”という、情熱だけひた走る賢人、変人達なんだから。」
同時刻
「と、いうわけで合流してからの兵士の損失は無し。」
『了解、ありがとうロビンフッド』
ロビンフッドのその報告を、ダヴィンチはそう受け取った。
『君やジェロニモが第三極としていたことが、この結末を手繰り寄せた。改めてお礼を言うよ。』
「……よしてくださいって、いつもなら言うところなんですがね。」
そう言いながら、彼は失った
「ジェロニモが、ビリーが、ネロが、名も無き無数の奴らが繋いだ結末だ。
褒めてやってくれ、なんならアンタが絵にしてくれたっていい」
『それはいいね、さようならロビンフッド。最後まで人々のために戦った棋士。』
「………」
ダヴィンチからの返事を受け取り、ロビンフッドの姿が光となって消えていった。
こうして、クー・フーリンさんと激戦を終えた私たちは……
「いたたたた!」
一番負傷してるだろう婦長さんから、問答無用の手当を受けていた。
「キツく巻きすぎだ!!というか余のことより、まずは自分の傷をだなぁ!!」
「ご心配なく、既に処置は済ませてます。」
確かに、婦長さん自身の傷は包帯で塞がれてるけど……
「血ぃぃいいい!!」
結局出血が漏れてる始末だった。そんなこんなで、ラーマくんがミイラのように包帯でグルグル巻きなった直後。
「……うむ、退去が始まったようだな。」
ラーマくんの体が、次第に光になり始まった。
「余のために多くの人がその身を尽くしてくれた。レジスタンスの皆、ジェロニモ、マスター、マシュ、ナイチンゲール……何よりも、シータが。
その思いに少しでも、応えられていたらよいが……」
「あ、はい!当たり前です!」
ラーマくんが力を取り戻さなかったら、間違いなくクー・フーリンさんと最後まで戦えなかった。
だから私は、声を張り上げて答えた。
「ふふ……ありがとうマスター……
出会えてよかった、この縁はシータや弟ラクシュマナと同じくらい尊いモノ再び君のサーヴァントになれたらそれは、きっと最上の喜びだ。また会おう、後藤ひとり!」
そう言ってラーマくんが手を握り、光となって消えた。
「どうやら私の役目も終わったようです、この国を大地を、治療すると言う役目が。」
すると今度は、婦長さんが私の前に来た。
「あ……部長さんのおかげで、ここまで来れました。」
「感謝など無用です、その代わりに……」
婦長さんも私の手を握った。
「連れ添った患者が退院するとき、こうやって手を握り合うのが密かな楽しみだったのです。」
「………」
胸がとくんと鳴る、それは触れ合いの慣れてないというのもあるけどそれだけじゃない。暖かさを確かに感じる。
「貴女を信頼してます、かつての同志シドニー・ハーバートと同じくらい。そして、その想いと同じくらいに……」
瞬間、頬に柔らかく心地よい感触に包まれた。
「貴女の健康を祈ってます、わたしのマスター」
『はいはいはいはい!こっちの画面を見ないで!!』
同時に通信機からロマンさんのそんな声が聞こえ、何処となく熱さを感じる。色々なことが一瞬で起きて、粉微塵になりそうながらも……
「あ、ああああありがとうございます婦長さんもお元気でっ!!」
と、どうにか声を絞り出した。すると今度は私からマシュへと婦長さんは向いた。
「ミス・マシュ。貴女にも」
「っ!」
そう言ってマシュの手を掴んだ。
「……以前に私が言った言葉を覚えていますか?」
「……私が不自由でいていい理由なんてない」
「その通りです、私は私の願いを叶えるために生きてました。それがたとえ
「婦長…」
「…」
婦長さんはマシュを全身で抱きしめた。
「ふ、婦長さん?」
「マスター、どうかミス・マシュへの助力を惜しみなく。そしてマシュ、貴方は貴方の願いのために、これからの時間を生き続けて」
そして
「起きたかいマスター?」
その声が耳に入り、目を開けるとカルデアの景色とともにヘクトールさんが手を差し出しだしていた。
「ランサー、無事帰還しましたよ。」
「…はい」
私は頷き、その手を握った。我ながら似合わない、正直ドキドキと胸が緊張している…と思ってたら
「ひ と り ざ まぁぁぁぁ!!!」
清姫ちゃんが涙目で叫びながら、私の体に巻き付き始めた。もうそこに気を割く余裕がないため、グッと堪えつつ…
「あの、マシュが見られないような?」
「一足先に目覚めて、バイタルチェックに連れてかれましたよ」
「あ、なるほど…」
私より先に目覚めてたんだ、ならしょうがないかと考えた。
(まぁ、やっぱこうなるよね…)
コフィンを抜けた直後に出血が起きた。そして手当てを受けて、ベッドで安静となった。
幸い骨折など重傷はなかったけど…と思ったらノックオンが聞こえる。
「あ、はいどうぞ」
「失礼し…大丈夫ですか先輩!?」
入ってきたのはマシュで、私の姿を見た直後に驚いた顔になる。
「あ、あの大丈夫ですので!ロマンさんが必要以上にペタペタ貼っただけなので…」
「は、はぁ…」
「それで、その、何かお話しします?」
するとマシュは頷き、ベッドの隣の椅子に座った。
「…先輩は、今回の旅はいかがでしたか?」
そう聞かれたとき、私はアメリカでの出来事が頭の中で駆け抜ける。兵士のおじさんにかばわれたこと、ラーマ君をシータさんに合わせること、そして戦争が始まっていろいろな人が散っていったことを…
「出会いは多く、その分別れも多い旅でした。辛くは、ありませんでしたか?」
「……確かに、辛いことは多かったです」
確かに涙を流したこともあれば、問い詰められて胸が張り裂けそうになったこともあった。
「…けど、同じくらい楽しかったです。」
「!」
「私が生まれる前の時代のアメリカでしたけど、あんなに広いおらと大地は初めてで、旅やキャンプは楽しくて、いろいろな人とお話しできてよかったと思えました。」
「はい…はい…!」
私の答えを噛みしめるように、マシュはそう呟く
「私も楽しかったんです、確かにクー・フーリンさんとの戦いも、ネロさんたちとの別れも悲しくて、でも…その思い出も含めて、大切にしていきたいって!」
「はい…私も、同じ気持ちです」
そう、私は微笑んでそう返したのだった。
歴史に残らぬ戦いの中で、誰にも知られぬ戦いが華のように咲いて散る。
それは、英雄の時代の終わりを偲ぶ献花のように。
それは、人々が自らの血と汗で時代を拓きだした事を言祝ぐ贈花のように。
少女たちは瞳を閉じ願う、自ら歩み出した人々に祝福があるようにと、そして去り行く英雄たちに祈りが届くようにと
私も見ていた、気に入ったギターの子。私とよく似た口下手陰キャな子。殺し合いなんて1ミリもやったことないだろうに、困ってる子のために慣れないことやって、やっぱ自分にはギターしかないと思い込んで、土壇場で勇気を振り絞って、ああこの子はこんな状況になっても変わらないんだなって、微笑ましく、そして誇らしくも思ってしまう。
だけど同じくらいの、こんな気持ちも湧いてしまうんだ。ぼっちちゃんさ、苦しいならやめて良い、こんなの誰かのせいにして良いのにって。だって、こんな状況ぼっちちゃんのせいじゃないでしょ?インキャの女子高生に世界の命運背負わせてる方がどうかしてるって、それしかないにしてもさ。
そして、そんな私の想いに同意する“ダレカ”が私を誘う。まさにブラックホールの様に深く怖く、だけど魅力的に。
うん、貴方の気持ちもわかるよ。なんでも出来る癖に誰一人救わず幸せにする気が無い人が目の前にいたら、そりゃ怒りたくもなるって。そんなクソみたいな世界、いっそ滅ぼしてやり直す……なんでご大層な事まではいかないけど、うん、気持ちだけなら分かるから。だって……
【うわァァァッ!あアァァァッ!】
あの日あの時まで、大好きだったクリスマス。私の流した嘆きの涙は、粉雪になって消えていった。
【お○さん!!お○さん!!起きてよォォォッ!】
欲しくて仕方なかった“泣いた赤鬼”の絵本、それは血塗れでもう読めない。サンタさんは私にプレゼントをくれなかった、だって私はその瞬間、幽霊になったから。
サンタさんがプレゼントをくれるのは、今年良い子にしてくれただけ。幽霊になんてプレゼントをくれない。
そうだ、ワタシダケユウレイになった
そうだ、
だけど、なんでも出来る王様はそれを見ても涙を流さない、魔法を使わない。
だって私のこの悲劇は、きっと世界の目から見たら当たり前すぎるから。悲劇なんて当たり前だから。
だから私は絶望して思ってしまうんだ、こんなクソみたいな世界は無くならないかなって。だからアナタの気持ちだけは分かるんだ、けどまだこの先がどうなるかは見て行きたいから保留にするね。
負けるなよ
第五特異点 北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム
定礎復元
これにて北米編、完了となります。
ここまで熱を込めてやる予定はなかったのですが、思った以上に力を込めて…なんていつもの事なきがしますが、それでも楽しめました。
次回からはいよいよアニメ化されたバビロニア編、スタートです。次回もお付き合いしていただければ幸いです。
どうぞ、こうご期待ください。