正直、思いついただけの短編ものです。
僕は昔から夢があった。それは陰で暗躍し活躍する実力者になりたいという夢だ。
それは子供なら誰でも一度は通るであろう、ありきたりな叶わぬ夢なのだったが、僕はその夢を愚直なまでに追いかけ続けた。
叶わぬと知りながらも、それでも諦めきれない僕はひたすらに自己鍛錬に精を出し、やがて人間の限界を実感した。
つまるところ、リアルに思い知らされたのだ。どう足掻いても人は核には……兵器には敵わないのだと。
だったら、大人しく兵器に頼ればいいと思うだろう。
だが、僕が目指す陰の実力者とはそんなものではない。
個にして最強!それこそが、僕が望む真の実力者だ。
ならばどうすればいいか?リアルでダメならばファンタジーに頼ろう。
そう考えた僕はファンタジーの定番たる魔力を求めた。ただひたすらに山へと籠り、ありとあらゆる方法で魔力を手に入れるべく努力した。
そうして、山に籠り続けて修業し続けたせいで朦朧となった意識のなか、突如として視界に眩い光が襲い掛かった。
「ああ……、魔力だ……」
その言葉を最後に、僕の意思はプツリと消えた。
これが僕の第一の人生の幕引きだった。
次に僕の意識が戻ったのは、赤子の姿だった。
どうやら僕は転生というものをしたらしい。
しかも、僕が生まれ変わったのは前世と違う異世界だった。
この世界では海賊が跋扈しており、前世となによりも違うのは悪魔の実というファンタジー溢れる果実が存在することだ。
僕が産まれたのはグランドラインと呼ばれる摩訶不思議な海の上だった。
僕の父親はこの世界ではありふれた海賊で、母親の方は一度も顔を見たことがない。
でもそんなことは僕には関係なかった。
ただ陰の実力者になれるのならば、僕は孤児でも構わなかった。
僕には前世の記憶と経験がある。例え異世界だろうとたった1人で生き抜くのは可能だ。
どんな過酷な環境に追いやられようとも、僕ならば生き残れる。
そして、いずれはこの世界の裏で暗躍する陰の実力者になれたであろう。
だけど、そんな僕の夢を邪魔する存在がいる。
それは……。
「ウォロロロォォ!!何を手を抜いてやがる!タケル!!!」
「っぐ!イタイヨォー、父さん」
そう、僕の父親である。ちなみにタケルというのが今世の僕の名前だ。
父さんは見上げる程の巨体を持ち、頭には角が生えて、手にデッカイ金棒を持ってるから、人というよりも鬼という方がしっくりくる風貌をしている怪物だ。
その名はカイドウ。僕の父親にして、百獣海賊団の船長だ。
「なに甘えたことを言ってやがる!!俺の息子ならさっさと立ち上がれ!!!」
「ふぇぇぇん!!」
泣き言を漏らす僕に、その手に持った金棒を振りかぶって叩きつけてくる。
児童虐待防止法も真っ青になるほどの暴力的な躾に流石の僕もちょっぴり本気で泣きそうになる。
現在の僕の年齢はまだ6歳を迎えたばかり、まだまだ幼い子供と呼ぶに相応しい年齢だが、そんなの父には関係ないようで、今もこうして特訓と称して父と一対一の親子喧嘩ならぬ躾に明け暮れていた。
その実態は虐待と言っても差し支えない程の苛烈な指導だが、残念ながら僕の周りで父に歯向かえるような人は存在せず、こうして夜がくるまで僕は父のサンドバックとして殴られ続ける。
朝から晩まで殴られ続け、情けない姿を晒し続けて、父さんの部下からは獅子から仔猫が産まれたと揶揄されている。
普通なら、父親の期待に応えられない僕は捨てられても可笑しくはない。
でも、父さんは1日たりとも僕の特訓を欠かした事はない。
一度だけ何故かと父さんに聞いてみたことがある。
そしたら父さんはこう答えた。
「ウォロロロォォ!!俺を見くびるなよタケル。お前が俺との特訓で一度たりとも本気を出したことがないのは分かってんだよ。オメェは本気を出せば強い!何故本気を出さねえ?」
この時はちょっとばかし本気で驚いた。父は見た目も言動も脳筋バカだが、その実として結構な知的なキャラだった。
そりゃ、考えてみたら総員2万人を超える海賊団の船長だ。ただのバカにそんな人数を管理することは出来ない。
だから僕はこれ以上この父親に隠し立て出来ないと感じて、僕の夢を正直に話した。
「実はさ、僕の夢は陰の実力者になりたいんだよ。だから、父さんの期待に応えられない」
その後?勿論、父さんに馬鹿言ってんじゃねぇ!?ってボコボコにされて鎖に繋がれたよ。
本当に酷いよね。実の息子の夢を肯定するどころか、否定と同時に殴り飛ばすなんて。
この時、僕は確信した。陰の実力者になるには父さんを倒さねばならないと!!
何度か父さんの目を盗んで逃げ出そうと家出を決意したことはあった。
その度に、逃走経路を父さんに見つかって引きずり戻されたけども……。(ちゃんとボコボコにされました)
障害は父さんだけじゃない。父さんの側近にあたるキング、クイーン、ジャックの3人。
他にも飛び六胞の6人がいるけど、正直言って父さんをずっと相手している僕からしてみれば飛び六胞の6人は逃走するだけならば障害になり得ない。
それでいえば、クイーンやジャックもそうなのだが、それでも大看板を背負って立つ2人を相手にしていれば時間稼ぎされて父さんに追いつかれる。
一番厄介なキングは硬くて速い。空を飛んで追ってくるのはズルいと思う。
そりゃ、僕も月歩を覚えているから空中歩行は出来るけど、プテラノドンに変身して追っかけてくるキングを撒くことは出来ない。
そうして、今月何度目かの折檻の後、いつもの反省室ならぬ牢獄へと叩き送られる。
「あ~、陰の実力者になりたい……」
「まだそんなこと言ってるのかい、タケル?」
僕の独り言に反応したのは僕の姉のヤマト姉さん。本人は僕はおでんだ!と言って性自認が男なので姉さんと呼ぶと怒られる。
っていうか、おでんって食べ物の名前だろと言うと、どうやらこのワノ国の大名の名前らしい。
流石は異世界、感性が違うんだなと変なところで感心してしまう。
「僕の夢なんだ、別にいいだろ?」
「けどさ、普通は強かったら表に出て名を上げたいものじゃないか?」
「はぁ~、分かってないね姉さ「僕は兄だ!」……兄さん。普段はモブのキャラが裏では実は最強ってのがロマンじゃないか」
「ふ~ん、そういうものか……」
やはり、僕と姉さんの感性は違うようで、姉さんは僕の夢を理解出来ないようだ。
まあ、理解しなくてもいいけど、せめて邪魔だけはしないで欲しいね? 姉さんもやはり父さんの子供で、将来自分がおでんのようにワノ国の大名になったら赤鞘九人男のように僕をお付きの侍にすると勝手に決めているのだ。
やがて月日は流れ、僕が10歳になった。
父さんの血を引いているおかげか、子供ながらに僕の身長は既に4mを超えており、大人よりもずっと背が高くなった。
これでは市民に紛れてのモブムーブが出来ない。
いっそ、手術で骨を切って身長を縮めるかと考えているが、この世界でそんな手術が出来る程医術が発達している国があるだろうか?
そんな僕に残された唯一の望み。それが悪魔の実だ。
能力によるだろうが、超人系の悪魔の実ならばワンチャンあるかもしれない。
父さんの海賊団はこの海でもトップクラスの強さを持つ。望めば僕の野望に役立つ悪魔の実が手に入るかもしれない。
「明日は遠征に行く。タケル、お前もそろそろ海へ出てもいいだろう。明日の遠征にはお前も連れて行くからな!」
チャンス到来とばかりに、遠征へ行く機会がもらえた。
一発で僕の望む悪魔の実が手に入るとは限らないが、それでもチャンスはチャンスだ。
なにより、海ならば逃げるチャンスはいくらでもある。
「言っとくが、もし俺の目を盗んで逃げ出そうとする馬鹿は遠慮なしにこの金棒で叩きのめすからな!!」
「は~い!」
まあ、そりゃ読まれてるよね。
だけど、僕には関係ない!夢の為ならば父さんの金棒の1発や2発……で済まないのが父さんなんだよな。
今度の遠征、僕はちゃんと生きて帰ってこれるだろうか。
2話目を投稿する気は今のところありませんが、続きを書いて欲しい人や続編を自分が書きたい人は連絡待ってます!