その血が歩む道すじ   作:亞忌羅

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 カットするとは言え変わった部分は書かないとね、とは言え流石にカットしすぎた、駆け足も駆け足すぎるね。


百十六話

「烏鷺亨子(うろたかこ)だね、見ていたよ。とても素晴らしい術式だ。だから貰いに来た」

「オマエは……乙骨が」

「そんな事はどうでもいいだろう?」

「そうだな、お前を殺せばいいだけだ」

「それは無理だ。死ぬ事に……イヤ、違うな。死に目に合う(・・・・・・)のは君だ。

 何、死にはしない(・・・・・・)。情報(データ)ーーー」

「な、にを……あ、ガ……繧ャ縺ゅ=縺ゅ=縺ゅ=縺ゅ≠縺√≠!!!」

 

 赤く光る手を伸ばし、何者かの頭を掴み何か(・・)をすると女性は膝と腰を地面に付け白目をむき、口から泡を吹いている。

 ━

「次は高専の二人か」

 

 烏鷺亨子(うろたかこ)に何かをした白い外套を着た人物はそのままどこかへと歩き去った。

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「あ、なんだ? 上野から脱走したか?」

 

 鹿紫雲(かしも)を見てすぐさま四足歩行へと切り替え、内心「(その通りです)」と思い見せかけようとしたが、コガネを呼び出し「アレも泳者(プレイヤー)か?」の問い掛けに「泳者(プレイヤー)、デス!」と元気よく答えを聞くや否や視認できない速度で接近しパンダの腹を一撃で突き破る。

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「(とんでもなく速く、重い!! しかもそれだけじゃない! 恵の『鵺(ぬえ)』と同じ……呪力が電気のような性質を持ち、奴自身に帯電している。つまり防御不可能、だがそれは俺も同じだぜ!)激(ドラミ)震(ング)掌(ビート)!!」

「(内部破壊か)悪くない」

 

 腕を極め圧し折ろうとした時、上から体格が良い偉丈夫が乱入する。その手には反りのある刃渡り約80cmの呪具『ゞ子斬安綱(どうじぎりやすつな)』が握り締められていた。

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「よぉパンダ、生きてっか?」

「うお! ゴリラが降ってきた!?」

「あ? 特訓受けるか?」

「甚爾先生! ありがとうございます! 助かりました!」

「チッ、まあ良い。鹿紫雲(かしも)? つったか?」

「誰だお前、それに」

「呪力が感じられねぇだろ? 俺にゃ呪力が一滴も無くてね」

「へぇ、そいつぁ面白そうだな」

「俺が相手すんのは少しだけだがな」

「こっちはさっきので暖まってんだ、冷たい事言うなよ」

「こっちにも都合っつーのがあってな、だがまぁ、その少しを愉しもうんじゃねぇか」

「なら長引かせてやるだけだな」

 

 鹿紫雲(かしも)の体全身の力を淀み無く乗せた一撃を頑強な腹で受け、「良い一撃だな、だがそれだけだ」の言葉と共にゞ子斬安綱(どうじぎりやすつな)を振り下ろし若干空間が歪む。

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「バカみてぇな頑丈さだな」

「呪力がねぇ分その他の強度がバカみてぇに上がってな、こんな風にな!」

 

 空を切る、ただそれだけ。それだけで空気が震え縦一文字に斬られるのを周囲にばら蒔いている呪力特性の電気が斬られた事に気付き、コンテナに蓄えたプラスの電荷に自身の体に溜まるマイナスの電荷でコンテナに引っ張らせ避けると、自分が居た場所のコンテナが縦一文字に斬れる。

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「(ただ避けたって訳じゃねえな、引っ張られたって感じだな。これが晴(ハル)の言ってた電気って奴か)随分と器用な事すんじゃねぇか」

「取り柄なもんでな、アンタも良いモン持ってんじゃねぇか。童子切安綱(どうじぎりやすつな)の陰打ちか」

「大正解、加茂家当主曰く『大抵のモノは斬れる』だそうだ。俺には呪力が無いんでね、こう言った(ゞ子斬安綱)代物が無いとマトモに戦えねぇのさ。

 アンタこそ術式が使え無いんだったか?」

 

 

 ━━━━

 ゞ子斬安綱(どうじぎりやすつな)は鬼を斬る呪具(刀)。『鬼』の語源の一つに、『鬼』とは姿が見えない『隠(おぬ)』が変化したものと言う謂れがある。『鬼』とは目に見えない不気味な存在や霊魂を表す言葉だとされており、『ゞ子斬安綱(どうじぎりやすつな)』は何も無い場所を、なんでも無いモノを、何かである事を斬り捨てる。

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「……よく知ってるな、誰に聞いた」

「現代の加茂家当主だよ」

「御三家か」

「なんでも蔵にお前さんの事が載った文献があったらしくてな、色々と聞いてんだよ。

 術式を使えねぇ奴と戦い合うのはつまらねぇが……せいぜい愉しませてくれよ、なぁ!」

 

 瞬間移動に劣らない速度で近づきゞ子斬安綱(どうじぎりやすつな)を振り抜き何かである事を斬った。

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「(俺の電荷の繋がりを斬ったか。ゞ子斬安綱(どうじぎりやすつな)、聞きしに勝る武器だな)」

「その電気(電荷)は逃げるだけか?」

「どうだろうな」

 

 ヒリつき流れる沈黙を裂いて先に動いたのは甚爾だった。

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「少しの間は愉しもうじゃねえか!」

「いいや違うね! 死ぬまでだ!!」

 

 如意(にょい)とゞ子斬安綱(どうじぎりやすつな)の斬り結び、本来鉄製の武器(呪具)であれば鹿紫雲(かしも)の呪力特性である電気(電荷)が溜まり奪われるが、ゞ子斬安綱(どうじぎりやすつな)は何かである事(電荷)を斬り十全の攻撃(パフォーマンス)で戦える。

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「ハハハ! いいねぇ! ここまで戦(や)り合えるのは晴(ハル)以来久しぶりだ!」

「お前もな! 生前に会ってたら気があったかもな(殺してたかもな)!」

 

 如意(にょい)とゞ子斬(どうじぎり)の斬り結び合いが一合二合と続き、お互いが満面の笑みで殺し合い「もっとやろうじゃねえか術師!」と鹿紫雲(かしも)が叫びながら稲妻を喰らわせるが「わりぃが俺は術師じゃないんでね!」と叫び返し稲妻ごとゞ子斬(どうじぎり)で斬る。

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「(周りのは斬れても自分に溜まった電荷は斬れねぇだろ!)俺は『稲妻の桑原(くわばら)』、稲妻ってモンを身をもって知れ」

 

 自身が持つ如意(にょい)とコンテナに打ち込んでおいた釘に溜めていた帰還雷撃を甚爾の腹部を通るが掠り傷一つついておらず、何食わぬ顔で刀を振り下ろされ自身の背後に打ち込んでおいた鋲目掛け電荷集束を使い雷速に近い速度でこの場を離れる。

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「今のを喰らって抉れないか、人間か? お前」

「安心しろよ、ちゃんと怪我してんぜ? 怪我がねぇ理由はコイツだよ」

 

 そう言い腰に帯びていた太刀を半分程抜いて、鹿紫雲(かしも)に見せる。

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「お前さんなら分かるんじゃねぇか」

「三日月宗近(みかづきむねちか)の陰打ちだな」

「ご名答その通りだ、家の当主様は心配性なもんでね。

 ぶっちゃけ並大抵の攻撃(術式)なら効かねぇんだが、念のためにって訳でコイツを渡されててな。その心配性のお陰で俺に怪我が無かったって訳だ」

 

 

 ━━━━

 三ヶ月宗近(みかづきむねちか)は人(呪霊)を斬る物では無く、身を護る(怪我や病気から遠ざける)ための最高峰の守り刀。この刀を帯びている者は『戦場でも決して不覚の怪我を負わず、災いから身が守られる』呪具。

 それ故か、真打ちでさえ戦場で敵を斬るために使われた記録が殆ど無かった。

 ━━━━

 

 

「お前は加茂の人間か」

「イヤ養子だよ、元は禪院だ」

「あの嫌味な奴らか」

「それが嫌いでね、色々訳あって加茂の養子に成ったてこった」

「ゞ子斬安綱(どうじぎりやすつな)に三ヶ月宗近(みかづきむねちか)か、随分とお前を気にしている当主だな」

「ああ、優しい当主だ。だから俺はアイツの為なら死ねる」

「そうか、ならここで死んでいけ」

「死なせてみせろよ雷撃使い」

 

 一触即発の気配を漂わせ、鹿紫雲(かしも)、甚爾が共に動き如意(にょい)とゞ子斬(どうじぎり)との斬り合いが数分続き、何度も帰還雷撃を喰らわせるが意味がないと判断し呪力を励起させ体内の電気信号を加速させる。

 ━

「お? 少し速くなったな」

「お前には外からの雷撃は意味が無さそうだからな、なら肉弾戦にするのは当然だろ」

 

 その言葉に「そりゃ違いねぇ」と返し速度の増した鹿紫雲(かしも)に容易く追いつき「速いっちゃ速いが晴(ハル)程でもねぇな」と言いながら如意(にょい)を弾き、いつの間にかゞ子斬(どうじぎり)を左手に持っており、右手で三ヶ月宗近(みかづきむねちか)を器用に抜き放ち斬りつけるが、鹿紫雲(かしも)は気づいていたかのように後方へ飛び退いた。

 ━

「よく避けたな」

「ゞ子斬安綱(どうじぎりやすつな)じゃねぇなら軌道がわかるんでね」

「そうかい、だが俺は二刀剣術も教わっててな」

「噂に聞く二天一流か?」

「イヤ、別もんだな。晴(ハル)曰くシン・巌流だとよ」

「巌流? 佐々木某のか」

「どうだろうな、その辺は当主に聞いてくれ。

 さて、第二ラウンドといこうか」

 

 斬り合い殺し合いは加速し苛烈を極める。だが、ゞ子斬(どうじぎり)であれば何かである事(雷撃)を斬れるが、三ヶ月宗近(みかづきむねちか)はそうではない。

 電荷を溜められ奪うのではなく三ヶ月宗近(みかづきむねちか)を避雷針のように使い強力な雷撃を腕に喰らわせるが、宗近(むねちか)は雷撃を散らし甚爾には当たらなかった。

 ━

「おうおうやるじゃねぇか、意味なかったようだがな」

「いいんじゃない?」

「じゃねぇと右腕は勤まらねぇからな」

 

 ゞ子斬安綱(どうじぎりやすつな)を武器庫呪霊にしまい、三ヶ月宗近(みかづきむねちか)は納刀し別の呪具(・・・・)を取り出す。

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「コイツはつい最近渡されたモンでな、何ができんのかは書いてあったが使うのは初めてだ。存分に喰らってけ」

 

 武器庫呪霊から洗練された細身の大太刀と重厚感のある無骨な直刀を取り出す。

 一振は『陽炎』のように細かく揺らめいており、静止していてもブレて見え、もう一振は濃密な『影』そのものを硬化させて削り出したような質感で、刃先からは常に黒い影が煙のように立ち上っている。

 

「第三ラウンドだ」

「最終ラウンドの間違いだろ」

 

 人間離れした速度で詰め寄りながら「ならさせてみせろや!」の言葉と共に右手に持つ新たな刀身揺らめく呪具・『虚空ノ幻《コクウノマボロシ》』を振り下ろし、影が立ち上る虚空ノ影《コクウノカゲ》を振り上げる。二つの呪具の危険性を本能で察した鹿紫雲(かしも)は近くに打ち込んである鋲に対して電荷集束を行い躱す。

 ━

「高速戦闘は晴(ハル)で慣れててなっ!」

「そのハルって奴と戦(や)り合いてぇな!」

「なら俺を殺してからだ! いきなり大将と戦(や)り合えると思ってねぇよなぁ!」

「違いねぇ!」

 

 刀身が揺らめく虚空ノ幻《コクウノマボロシ》を果たし合いで培った勘で避け、影が立ち上る虚空ノ影《コクウノカゲ》を如意(にょい)で防ぎ接近し体重を乗せた一撃を叩き込む。

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「ちょっとピリッとするな」

「ならでけぇモンを喰らって潰れてみろよ」

 

 帰還雷撃が通用しないとみるや否や、甚爾の体に溜まった電荷に幾つものコンテナを引き寄せ物量、物理的に押し潰そうとするが、二刀をもって「シン・巌流〈閻魔大車輪(エンマダイシャリン)〉」の言葉と共にコンテナを斬り刻む。

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「今のは肝が冷えたぜ」

「デタラメな剣術を使うな、それがシン・巌流か」

「お前も教わったらどうだ、棍術もあるらしいぜ」

「気が向いたらな」

 

 電気(電荷)を走らせ動こうとした時、人影がコンテナを潰しながら「げぇ!! ゴリラ! 聞いてねぇぞ!」と叫ぶ。

 ━

「ゴリラじゃねぇテメェから殺すぞ」

「すんっません」

「ったくドイツもコイツもゴリラゴリラ言いやがって、言った回数分〆るか」

「(最初は俺でありませーー)」

「最初はお前からだ金次(きんじ)」

 

 目を泳がせていると「金次(きんじ)ぃ! 返事は」と怒鳴ると「う、ウス! ありがとうございます」と

 人影ーー秤金次(はかりきんじ)がなんとも体育会系の返事をし、腰を直角に曲げる。

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「まあいい。それより、だ。雷撃使い、残念だが俺のお役目は御免だ、こっからはギャンブラーとやれ。お前さんが言った通り最終ラウンドだったな、俺の勝ちの最終ラウンドだがな」

「逃がすと思うか?」

「チゲぇな『逃がさざるを得ない』だ。オイ金次(きんじ)、無力化(・・・)させろ」

「無力化……了解(りょぉかい)!」

 

 二人のやり取りを見て「イヤ駄目だ、お前からだ加茂の術師」とヤル気を漲らせながら声を張って言う。

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「俺もヤりてぇが当主さまの指示なもんでな、コイツで我慢しろ。だが、コイツを倒せたらヤってやるよ」

「そうか、ならさっさと終わらせねぇとなぁ!!」

 

 呪力(稲妻)を漲らせ秤に向き合い速攻を掛けるが、行動を読んでいた秤のカウンターを如意(にょい)で防ぐ。

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「ソイツは教え子の中でも上位だ、愉しめるだろうよ」

「それは良いこと聞けたな」

 

 

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「どうだ、雷撃使い。愉しめたか?」

「ああ、存分にな」

「それは重畳、俺が出る必要は無くなったな」

「その代わり宿儺と戦わせる事になりました」

「それくらい問題ねぇだろ、晴(ハル)もやらせるさ」

「でも加茂先生の弟子なんですよね?」

「アレはそう簡単にやられる程ヤワじゃねぇ」

「……加茂先生の弟子ならその可能性は高いのか」

「んじゃまあ次は………何すんだ?」

「先生からの指示は?」

「一つだ」

「一つ?」

「『パンダを死なせるな』」

「パンダは死なないじゃないんすか?」

「イヤ俺も死にはするぞ、厳密に言えば違うが」

「核が壊されれば死と同じだろ」

「でもなんでっすかね」

「それも書いてあった『幽閉されているとは言えパンダが死んだら学長に合わせる顔がない』てな」

「あの人そんな事まで知ってんのか」

「未来(世界)でも視たんだろ」

「なら封印は?」

「それは間違いなくされてる………筈だ」

「断言できない、と」

「考えてみろよ、アイツがそう簡単に封印されるタマかよ」

「加茂先生だもんなぁ、絶対何かしてる」

「だろ?」

 

 黙っていた鹿紫雲(かしも)が「その加茂ってのは強いのか?」と聞き「誰よりもな」と、甚爾が返し「宿儺とどっちが強い」と更に質問を投げ掛け「トントンじゃね」の言葉で締める。

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「へぇ、そいつはいい事聞けたな宿儺の後はその加茂って奴だ。宿儺に術式を使わずに倒せたらの話だがな」

「アイツの事だ、その内ひょっこり顔を出すだろ」

 

 秤とパンダが「あー、うん確かに」と異口同音を口にする。

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 脹相(ちょうそう)の『超新星』が炸裂した、したがソレは地面に叩き落とされた。だから一瞬、何が起きたのかが分からなかった、だがすぐに気がつき「使ったな! 俺達が知らない三つ目の何かを!!」と叫んでいたらあり得ない声が聞こえた。それはーー

 ━

「俺ってさ、本当は一人っ子なんだ。

 でも、可愛い双子の妹(義妹)ができてお兄(義兄)ちゃんになった。そして同時に兄(義兄)さんもできて俺は弟になった、俺はお兄ちゃんで弟なんだ、そんな俺だから言わせてもらうよ。

 最高にカッコいいぜお兄ちゃん、こっからは選手交代だ」

 

 そこに現れたのは居ない筈の、封印されている筈のーーー

 

加茂晴蓮だった

 

「加茂……晴蓮」

「ナイスファイトお兄ちゃん、後は俺に任せてゆっくり休んでいてよ」

「何故……何故君がここにいる!! 封印は成功した、監視も続けた。

 獄門疆(ごくもんきょう)に近寄ったのは生徒だけ、天逆鉾を持つ禪院甚爾は来ていない! 封印は解けていない筈だ!」

「だから言ったろ、お前の敗因は過大評価だと。

 それと禪院甚爾じゃねぇ俺の兄さんの加茂甚爾だ二度と間違えるな下郎」

「(過大評価? どう言う意味だ、確かに封印は成功した、解かれていない。氷の木ができただけ……逃れる時間は無かったなのに何故)どうしてここにいる」

「常識で考えろよ羂索、獄門(ごくもん)疆(きょう)に封印された奴が呪術使える訳ないでしょ」

「だが実際に氷の木が生成された」

「ハッ、大方『俺が先に術式を使って何かしらの方法で封印された後にできた』とでも思ってんだろ? 俺も下調べくらいはしててね、獄門(ごくもん)疆(きょう)に封印された瞬間に如何(いか)なる呪術もその時点で解除される。

 先に作っておいても意味はない、ならどうやって大樹を作ったのか……理由は、方法は一つ別の場所で氷の大樹を作った(・・・・・・・・・・・・・)んだよ。お前は俺を過大評価しすぎた、お前は『加茂晴蓮ならこれくらいやってのける』と思った、思い込んでいた。流石の俺でもそんな芸当は無理だよ羂索」

「アレは、あの時の君は本物じゃないとでも言うのか」

「いいや本物だよ、ただ正確に言うなら俺ではない俺だけどな」

「どう言う意味だ」

「俺の生得術式は血漿操術、血漿を操る術式だ」

「(術式の開示? 何故今更)」

「お歴々が言うには赤血操術の原型らしいが、俺は違うと考えている。赤血操術は血液そのもの操る術式、その反面俺の術式は違う。

 俺の生得術式の根幹にあるのは『分離』だ、血液を『分離』させ血漿を作り出し細胞内を浸潤させ皮膚から体外に排出する。ここで肝になってくるのは『分離』させる事、血液を『分離』させなければ血漿になり得ない」

「何が言いたい」

「『分離』だよ、俺はあらゆるモノ(・・・・・・)を『分離』させられる。そして生転術式(せいてんじゅつしき)は不可能を可能とする術式、お前が封印したのは『並行世界に存在する俺を『分離』させた分体(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)』だ」

「分身だとでも言うのか」

「分身じゃない、確固たる俺自身だよ。俺は並行世界の俺という存在の概念を『分離』させて連れてきた。だから全てが本物の俺なんだよ」

「あり得ない、いくら君であろうと人間を『分離』させるなんてあり得ない」

「普通ならね、でも俺はソレを可能とする術式(・・)を手に入れた。複数の術式(・・・・・)を使えるのがお前だけだと思い上がるな、お前にできる事くらい俺にもできるんだよ」

「いったい……どうやって……」

「言うと、思うかい?」

「だろうね、君は秘密主義者だ。(複数の術式……幾つだ? 脳のメモリを考えれば最大で四つ(・・・・・)、なら私とイーブン! 手札を全て曝け出させるまで)」

 

 僅か一分の思考、だがそれがいけなかった。不意に背後から術式を使われ全身が割れる(・・・・・・)。

 ━

「!? (いつの間に後ろに)」

 

 すぐに後ろを見る、そこには加茂晴蓮が居た。故に虎杖倭助の術式を使おうとするが後ろから攻撃(術式)される。

 ━

「!!? いったい、何が!」

 

 混乱、動揺それは晴蓮の策に嵌まった事を意味していた。

 ━

「どうした、俺が言った事をもう忘れたのか?」

「(どう言う……)!! 別世界の晴蓮か!」

「大正解。でも遅いぜ? 周りをよく見ろ」

 

 驚愕するはその数、合計六人の晴蓮が羂索に襲い掛かかる。一人は後ろから蹴りで、一人は前から掌底で、一人は右から肩で、一人は左から握り拳で。そして一人は上から踵落としで術式・宇守羅彈(・・・・)を行使しすると四方と上の空間が『バキッ』っと割れ強力な衝撃波が羂索を襲い、そこに遠方に立つ晴蓮が拳銃の形にした手を向けて立っていた。

 ━

「(これは、烏鷺亨子(うろたかこ)の宇守羅彈(うすらび)! いつの間に手に入れた! どうやって手に入れた!)」

 

 四方と上からの宇守羅彈(うすらび)の衝撃波を受け、血を吐きながらすぐさま体勢を立て直そうと前を向くと呪力砲(・・・)が迫っており、呪力強化した腕で防ぐ。

 だが、防ぎきれずに左肘から先が無くなっていた。

 ━

「はぁはぁ……はぁ、はぁ。ッ、ふぅ。

 君は私以上のバケモノだね」

 生やせるのか、そこまでの反転術式を使えるのは予想外だ。

 

「酷い事を言うね、俺程呪術師をしている奴はいないよ」

 

 失った腕を生やしながら「周りの犠牲を省みず、目的を達成する為なら人的被害も許容する。確かに呪術師らしい呪術師だ、だからこそ私以上のバケモノなんだよ。

 ところで晴蓮。その術式はどこで、どうやって手に入れたんだい」と、まるで世間話かのように声をかける。

 ━

「言う訳ないでしょ」

「そうだね、じゃあ他に何があるのか気になるね」

「他、か。じゃあこんなのはどうだい」

 

 手刀を構え羂索に向けて「比翼扇(ひよくせん)・一重(ひとえ)」と振り下ろしながら呟く。すると『風』が流れ羂索の腕が切り落とされる。

 ━

「!! (これは!)」

「お前は知っている筈だ、何せお前が用意した結界術師の術式だからね」

 

 静かに腕を広い切断面にくっ付け治しながら「これで三つ目だ」と余裕を持って返した。

 ━

「? 何が三つ目なんだ?」

「君が持っている術式の数だよ、初めの『分体』なる術式に烏鷺亨子(うろたかこ)の『宇守羅彈(うすらび)』、そして今使った『衵扇(あこめおうぎ)』。これ以上は脳のキャパシティーの限界だ。それ以上は脳のメモリがはち切れる」

「あぁ成る程、取り敢えず切れとけ。比翼扇(ひよくせん)・二重(ふたえ)」

 

 手刀を二度振ると風が流れ、風は結界の刃となり羂索を斬ろうとするが羂索はいつの間にか違う場所に居た。

 ━

「…………本当は、使うつもりは無かったけど……これは使わざるを得ないね。還魂(かんごん)操術:荒御霊・武速(あらみたま・たけはや)」

 

 術式を使用すると凄まじい瞬発力で晴蓮に近づき、恐るべき破壊力で拳を振り抜く。対する晴蓮は界無為(カムイ)ですり抜けようとしたが、拳をまともに喰らい空性結界の『循環定義(じゅんかんていぎ)』に綻びが生じるまでに殴り飛ばされる。

 ━

 今のは倭助さんの還魂(かんごん)操術? だが俺が知るモノとは違う。

 

「虎杖倭助は自身の術式を勘違いしていた、還魂(かんごん)操術は魂の共存ではない。

 虎杖倭助の術式の真価は魂の隷属(・・・・)だ、この術式は魂に干渉する。君のすり抜けは私には通用しない」

「魂の隷属……魂への干渉」

「君も一度は思った筈だよ。共存共栄ではなく従属させ隷属させるものではないか、と。そしてその通りだ晴蓮、還魂(かんごん)操術はあらゆる魂を隷属させる。人も無機物も、そして呪霊もだ」

「呪霊操術の亜種、或いは原型」

「分かっているじゃないか、還魂(かんごん)操術は呪霊操術の原型だよ。呪霊も突き詰めれば負の魂だ、だから私は呪霊を操れる」

「その割りには呪霊を出さないじゃないか」

「この術式は出す必要が無いんだよ。荒御魂、和御魂を隷属させ、自身の肉体に降ろす。そうする事で身体能力を爆発的に増加させる、さっきみたいにね。

 さあ晴蓮、友人の術式で死ね」

「違うな、死ぬのはお前だ、羂索」

 

 両者沈黙し先に破ったのはーー羂索の「ならば聞こう。晴蓮、何故領域を使わない」と言う問い掛けだった。

 ━

「使う必要が無いからだよ」

「君の領域に必殺が無い事は知っている」

「だろうね」

「必殺が無ければ領域に必要な呪力量は減り、展開速度が上がる。だが君はそのリソースを領域の押し合いと外殻の強度を上げる為に使用している、なのに何故使わない」

「言ったろう? 使う必要が無いと」

「なら使わせようか」

 

「領域展開・胎蔵遍野(たいぞうへんや)」

 

 羂索が見せた領域は渋谷で宿儺が見せた絶技、結界を閉じない領域だった。

 ━

「使ったな! 領域を!」

 できるだろうと思っていたがやはり『閉じない領域』を使えるか、やりきれよ天元。

 

 それを見た晴蓮はすぐさま印を結び、同じように(・・・・)領域を展開する。

 ━

領域展開

皆尽皆生伽藍堂(みなづきみぶづきがらんどう)

 

 絶技たる閉じない領域同士がぶつかり合い必中を中和し合う。

 ━

「驚かないんだな」

「君ならそれくらいの事はできるだろうと思っていたからね」

 付与した術式は倭助さんの術式か。それよりなんだこれは……押し合いに負けているんじゃない、俺の術式が無効化されている? どう言う事だ。

 

「還魂(かんごん)操術の領域は神話の再現だ」

「神話の再現……! 天岩戸か!」

「流石は晴蓮、その通りだよ。

 還魂(かんごん)操術の領域は術式の『対象指定を一時的に無効化・封印(岩戸隠れ)』させるモノ、君の領域が解体されるのは時間の問題だ」

「領域の押し合いさえさせない領域とは恐ろしい領域だ。だが、忘れたのか? 俺は一人じゃない(・・・・・・・・)」

「何? 何を言っ………まさか!」

「【九階顕現(くかいけんげん)】」

「【九階顕現(くかいけんげん)】」

「他人の領域に外殻を作るだと! デタラメな事を!」

 

 この世界の晴蓮が領域を展開し羂索の『術式の無効化』を押し留め、別の世界の晴蓮が羂索を囲むように結界を妨害する術式を反転させ、結界を強固にする結界を張り羂索の領域の外殻として成立させる(・・・・・・・・・・・・・・・・)。

 ━




 晴蓮くんって何ができないんですかね。
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