A.できるわけないだろ
開幕ベアトリーチェアンチ
「さっさと起きなさい!!!」
そんな怒号が聞こえ、目を覚ます。
が、その瞬間に脇腹への強い衝撃が私の身体を襲った。
「ッッ!!!」
脇腹を抑えようとして身体を動かそうとする。
しかし、拘束されているようでまったく動かった。
私が痛みに悶絶しているとある声が聞こえくる。
「ようやくっ...!ようやく成功しましたか!!!」
声が聞こえた方向に目を向ける。
そこには、特徴的な赤い肌と目をいくつも持っている化け物が、口元を歪めながら立っていたのだ。
「ふふ...、貴女を完成させる為にどれだけの時間と労力が掛かったか分かりません」
「が、その分はしっかりと働いて貰いますよ?」
と、言ったように意味の分からないことをペラペラ話している。
完成?、働く?
単語の意味は分かるが、内容を理解するにはまだ情報が足りないようだ。
考え込んでいる間に、赤い化け物が近づいてきた。
また、殴る蹴るといった暴力をするのか、と考えたその時、
「クックック、マダム、まだ契約は続いていますよ」
そういった男性の声がこの空間に響いた。
「チッ...、いいでしょう...」
マダムと呼ばれた赤い化け物はそう言って、この空間から立ち去った。
助かった?らしい。感謝の言葉を伝えようとして男性の方を向いた。
...どうやらまだ助かってはないらしい。
目の前の男性には、顔面に亀裂?があり、そこから煙みたいな物が出ている。
また化け物か...と内心呆れていると、顔面亀裂男が口を開いた。
「まずは自己紹介と参りたいところなのですが...」
「生憎、私に名などありませんのでお好きにお呼びください」
「顔面亀裂男か黒服、どっちが良いと思う?」
「!?...クックック」
どうやら私のネーミングセンスが相当良かったらしい。
目の前の男は苦笑いしている。どうした?もっと笑えよ。
「では、『黒服』と名乗らせてもらいましょう」
黒服と名乗った化け物から様々な説明をしてもらった。
今私がいるところは学園都市キヴォトスと言うことや、黒服やマダムは『悪い大人』であり、『ゲマトリア』という組織に所属していること。
そして私がここにいる経緯を。
「...」
「説明は以上です。何かご質問等はございますか?」
「お前ら狂ってんな」
「ククッ!お褒めに預かり光栄です」
説明を聞き終わって最初に出てきた言葉はそれだった。
こいつらは"狂っている"。
いわば、マッドサイエンティスト。
いわば、自分の利益しか考えていないヤバい奴。
そういうイメージが頭に浮かんできた。
何で私がこんなめんどくさいことに選ばれたのやら...腹が立つ。
「おや、どうかなさいましたか?」
私が黒服をに睨むと、声をかけてきた。
「いや、どうやってこっから逃げ出そうかと考えているだけだ」
「油断も隙もありませんね」
そんなこと思ってないだろ、と考えていると、ガシャ!っと強い音と共に私の拘束が解かれた。
「私を自由にしてもいいのか?暴れるぞ?」
「先ほどの話でも言いましたが脳内チップが埋め込まれていると言いましたよね?」
「...お前らに逆らえないんだったな」
「その通りです」
はぁ、本当にめんどくさい事になったな...。
こんな奴と絡んでいたらこっちまで狂いそうだ。
あの後、色々検査を受けた。そりゃ、あいつらからすれば唯一実験に成功した存在からな。
しっかり調べるよな。
ああそれと、調べるついでに初自分の姿確認した。
白髪で身長170cm前後の女だった。頭には神様の後光?のような形をしている物が浮かんでいる。何がとまでは言わないが色々とデカい。
検査を受けた後は場所を今いる広い空間に移動した。
どうやら実験をするらしい。
実験か...。痛いのは嫌だな。
みたいなことを考えていると聞き覚えのある声が響き渡った。
「お待たせしました」
「では、実験を開始いたしましょう」
黒服とマダムと呼ばれていた奴、そして
「いや、お前ら誰だよ」
「ああ、紹介がまだでしたね」
「彼女は『ベアトリーチェ』、我々ゲマトリアの一員です」
...そうか、こいつが...。
そう思った瞬間、私の身体は無意識に動いていた。
「ええ、私がベアトリーチェです」
「早速ですがチップが作動しているか確かめる為にも...そうですね、ひれ伏してもらいましょうか」
奴が言い終わると空間が歪み、私が
「!?!?」
奴は突然の出来事に驚いて声も出ていないようだ。
「てめぇが....!!!」
右手の拳を握り、殴る準備をする。
「今ここでひれ伏せぇぇぇ!!!」
そう言って、奴に殴りかかる。
がしかし、
「『止まりなさい』」
「!??!?!」
黒服がそういった瞬間、身体が動かなくなった。いや、正確には身体が動くのを拒んでいる、と言うべきか。
「これはどういうことですか!?」
奴が黒服に向かってそう言う。元々真っ赤な顔がさらに赤くなっている気がした。
「クックッ、あの内乱のことを伝えただけなのですがね、その方はどうやら相当お怒りのようですよ?」
「...自我がある...ということですか」
「ええ...当初の予定と違うとお知らせしたのはこのことです」
これが脳内チップの効果か...。チッ...、今なら
「よくもやってくれましたね」
「ぐぅッ!?」
顔を踏みつけられる。普通に痛いからやめてほしい。
「丁度いい、貴方達、今からこいつにあるだけ撃ちなさい」
「「「了解」」」」
そういうとガスマスクをしている奴らが銃を構える。ベアトリーチェはそれを見ると私の頭から足を離した。
しかし、私の身体は動かない。おそらく、黒服の命令はまだ続いているのだろう。
「耐久力のテスト、開始です」
そのような声が響く。
必死に動こうとしたがその抵抗も虚しく、撃ち抜かれてしまった。
「ふむ...」
私は撃たれ続けている彼女について考える。
本来、彼女に意思はない。ただ我々の命令を忠実に聴くだけの人形を作るつもりだったのです。
しかし、今目の前にいる彼女はどうでしょうか。マダムに明確な殺意を向け、私にも"狂っている"という個人的見解を出しました。
つまり、彼女には何かしらのイレギュラーが発生したと考えるのが自然でしょう。
「あの4人の生徒にナニカ原因があるのでしょうか...」
私が発した言葉はグレネードの爆発音でかき消される。
彼女を創り出した時に犠牲にした4人のアリウス生徒達は既に亡くなっていました。
人が蘇ることはこの世がひっくり返っても有り得ない事象であり、彼女もまた例外ではありません。
...そういえば『中身のない身体には他の者の魂が宿る』という言い伝えが何処かの文献でありましたね。現状はそれが一番有力な説でしょうか。
そんなことを考えていると銃声が鳴りやむ。撃ち切ったようですね。
「さて、彼女を傷つけることはできているのでしょうか...!?」
漂っていた硝煙が晴れてきた。
しかし、先ほどまで銃弾を撃ち込まれていた場所には、彼女の姿はありませんでした。
「なっ!?何処に消えたのですか!?」
マダムも予想していなかったのでしょう。私もですが。
「早く探しなさい!今すぐに!」
「「「りょ、了解」」」
アリウスの生徒達が散らばる。
この場の全員が動揺しているのだろう。それは私も例外ではありませんでした。
そう、マダムの後ろに空間の歪が出来ていたのを気付かない程に。
「ベアトリーチェェェェェ!!!」
その怒号が聞こえた瞬間、
「ッッッ!!?!?!!」
マダムの声にならない声が響き、身体がおよそ10m程離れた場所に飛んでいた。
「貴様ら...」
「私をあまり舐めるなよ!?」
彼女は拳を振り上げ、勝ち誇ったように笑っていた。
「クックック...」
私は気付いていなかった。
自身の口角が自然と上がっているのを。
※補足
やべぇ奴の説明
アリウスでの内乱が起きた時に亡くなった4人をゲマトリアが大改造。
本来なら、命令に従う人形にするつもりが、何故かバリバリ意思持っちゃった。
つまりやべぇ奴。
質問や感想大歓迎。
描写が分かりずらくてすまない。