ワタシは、、多分とても珍妙な星の元に生まれた。
だって、普通に学生として生きてたら、いつの間にか天才ロリのガワを着せられた憐れな天才として今は生きている、なんて、これを珍妙と言わずして何と言うのだろか。
あの頃は高かった身長も、今は低身長。あの頃はカッコよかった低音ボイスも、今は可愛いロリボイス。あの頃はフツメンだった顔も、今は超絶美少女。
…正直、悪いことばかりではないな。
でも、まだ『ワタシ』の中に『ボク』はいるし、もし『ボク』を無くしたら最低限の漢としての矜持ってやつも無くなると思う。
…けど、まぁ、色々あるんだよなぁ。
今は慣れたけど、お風呂とか、トイレとか、まぁ、色々…
だけど、そんなワタシだけど、今はなんだかんだ同志の皆んなと仲良くやってる。
最初にここに飛ばされた時なんて目も当てられない程に酷かった。まさか飛ばされて早々に奴隷にされそうになるなんてワタシは夢にも思ってなかった訳だしね。
それに、ワタシだって学生だったんだ。好きなアニメのキャラクターで好きなアニメの世界に入り込んだら、それはもう期待と感動とワクワクで胸が一杯になってしまうってもんだ。
唯一、自分がどちらかと言えばヒロイン枠に入っているのは、些か不満ではあるが…。
でも、ワタシも警戒心が二の次になってしまったのは、素直に反省すべき事ではあったね。
まぁ、今はそんなことは気にしなくてもいいや!
ワタシは今日もここで生きている。
ゴブニュファミリアのレベル4『天能』ダ・ヴィンチとして、新しきを創り、古きを蘇らせる、一人の『天才』として、ね。
さぁーて、そんな可憐で天才なダ・ヴィンチちゃんは、実は今ちょびっとだけピンチなんだよねぇー。
いや、まぁ?万能で天才なワタシだから?本気を出せば?まぁ簡単に?終わらせちゃうことは出来るんだけど?
「じゃあ、なんでボクは呼ばれたのかな…」
そう言って口を尖らせたのはロキファミリアのレベル4【
彼はワタシの工房にある椅子に座り、足をパタパタとさせて如何にも「不満です」と言った態度だった。
「フォッフォッフォ、実はね、アストルフォ君には手伝って欲しいことがあるのだよ」
だが、そんなことはどうでも良いワタシは近くにあった白い髭を口につけて少しふざけながらそう言った。
「えー」
…あれ?
いつもの彼ならば嬉々としてこの茶番に乗って来るはずなのだが、今日は椅子に座ったまま「えー、面倒くさいよー」と口を窄め、全身から面倒くさいオーラを醸し出している。
彼と知り合ってから早くも5年が過ぎている。謂わゆる『腐れ縁』と言う間柄ではあるが、こうも面倒くさいのは久しぶりだ。まぁ、彼がこうなった原因と言っても、大方、朝食の時に大好きなフルーツを誰かに取られただとか、そう言う下らないことだとは思うけど。
でも、それならばワタシにも考えがある。
ワタシは口につけていた白い髭を外し、フカフカの椅子に座り直す。そして胸の前で腕を組み、ニヤリ、と不敵に彼に微笑みーー。
「キミ、ウチに莫大な借金があるだろう?」
ギクッ
「そろそろ半分でいいから借金の返せる見通しを立てて欲しいだよねぇ」
ギクギクッ
「……」
「……」
「手伝ってくれる?」
「ハイ、ヨロコンデ」
よし、一名陥落。アストルフォにはこっちも、ほとほと手を焼かされてきたしね。これくらいのことは許容してもらわないと。
「でも、一体、何をするんだい?」
「
「…ん?」
あれ?もしかしてアストルフォは聞いてない?おかしいなー。ギャラハッドからデュオニュソスファミリアについて聞いてるはずなんだけど。
「…もしかしてさ、キミ、荊軻の話とか聞いてなかったりする?」
「ん?デュオニュソスファミリアのこと?…あっ!『調査』ってそのことか!」
あっ、やっぱり聞いてたよね、それなら良かった。まぁ、彼女も怪しまれないように『お酒』を飲まなきゃならないし、なるべく被害は減らしているけど、あそこを変えちゃうと後々面倒なことになっちゃうからねぇ。
「でも、ボク達だけじゃ、ちょっと辛くない?」
「大丈夫!あと二人、
「アテ?」と彼は小首を傾げる。その可愛らしい仕草で何人の男を落としたのだろうか。いや、今はそんな事はどうでも良いんだ。
「うん!マシュとジークにも沢山の
「わーお…」
いやー、良い反応をしてくれるねー。その気まずさを糧に、これまでのツケの返済を早めてくれたら嬉しいなー。
ま、それは、それとして…
「さて、じゃあ行こうか!」
「もしかして今から!?」
「アストルフォはジークを連れてきてね、ワタシはマシュを連れてくるよ!」
「えぇー…」
「じゃあ、集合はお昼にワタシの工房で!」
♢♦︎♢
「よし、それじゃあレッツゴー!」
「おー!」
「「お、おー」」
あれから暫くの時間の後、ワタシ達はダイダロス通りの酒場の地下にあるワタシの工房に集合した。ジークとマシュはいまいち状況の把握をしていないようではあるが、大した問題ではないからヨシとしよう。
「それで、具体的には何処で何をするんだい?」
「今日やることは二つ、一つは食人花の確認。もう一つはヘスティアファミリアの監視、どっちも気付かれないようにね!」
「…?あの、ベル・クラネルに関しては兄が対応する筈では?」
「あぁ、それが彼、今日は【
「あ、そうなんです…え?」
「「「ええぇぇぇぇええ!!!」」」
「わっ、なんだい、いきなり」
「わ、私、聞いてないです!」
「ボクも!」
「オレも初耳だが、彼は大丈夫なのか!?」
わー、びっくりした。
マシュ、ジーク、アストルフォは、一同仰天した顔でワタシに詰め寄り、事の詳細を聞きたそうにしている。
そう言えば、マシュ達には詳しい作戦内容とか伝えて無かったね。今更ながら。
でも、ワタシ自身そんなに詳しく聞いている訳ではないし、何より皆んな、そんなに酷く驚くことでもないだろうに。なんせ…
「まぁ、大丈夫じゃない?彼、めっちゃ強いし」
「「「…確かに」」」
今更ながら、この一言で皆んなが納得してしまう彼の強さに改めて驚いてしまうねー。本当に今更ながらだけど…。
「それじゃ、作戦を伝えるよ」
この作戦は、かねてよりギャラハッドとモリアーティとワタシが入念に考え、立てたものだ。
作戦名は『ドキ!英雄の再臨ver1〜物語の始まりをキミは見ることが出来るのか?ー』だよ。
この作戦の大まかな流れとしては、ヘスティアファミリアの確実な成長と冒険に踏み出す勇気、それを成すため、アルジュナにガネーシャファミリアで予め女神フレイヤが魅力するであろう怪物を選定し、テイムしてもらった。そして、モリアーティとワタシでヘスティアファミリアが逃げるダイダロス通りの逃走経路を『造った』。
食人花の出現場所もギャラハッドが【
だから、今回は正体を隠しての行動となる。
「…と、こんな感じかな。」
「了解!」
「了解しました」
「了解した」
「さて、それじゃあ、マシュとワタシはヘスティアファミリアの方に行くからアストルフォとジークは食人花の方よろしくね!」
「オッケー!」
「了解した」
「それじゃ、二人とも頑張ってねー!」
「健闘を祈ります!」
「…で、なんでオマエらが此処にいるんだよ」
あれから暫く、ダ・ヴィンチちゃんの工房を後にしたボク達は『怪物祭』が開かれている広場の数ある出店の一つである、デメテルファミリアが運営している出店で暇つぶしをしていた。
「いやー、散策してたらオモシロそうな姿が見えたからついー」
たははー、とボクは頭を掻き、少し不機嫌そうなクー・フーリンに苦し紛れの言い訳を述べた。その姿にクー・フーリンは一度、眼を伏せ「はぁ」とため息を一つ。その後、まだ少し不機嫌さを残しながらも「注文は?」とぶっきらぼうながらにも接客を始める。
「ボクは焼き鳥四つとジャガ丸くんを三つお願いします!」
「オレもジャガ丸くんを一つ頼む」
ボク達が注文内容を伝えると、「あいよ」と言い調理を始めた。
「そういや、お前らはなんでこんなとこにいるんだ?」
調理の合間にクー・フーリンが話しかけてきた。正直に言っても良いんだけど、残念ながら人の多いこの場所で言えば誰かに聞かれるかも知れない。
それに、クー・フーリンには意図的に作戦を伝えてなかったりするかもだし、下手な情報共有は互いに不利益を生じるだけだしねー。
ボクは『彼』ほど理性がないわけではないから、少しはぐらかしながら答える。
「いやー、ボク等、今は暇な時間なんだよねー」
「アストルフォ、正確には待機時間だ」
…おいおい、ジークくんや、君は真面目がすぎるのでは?
それはわざわざ訂正するべきではないと、ボクは思うんだけど。
「いや、どっちでもいいけどよ、そんなんで対応出来んのか?」
「一応、ダ・ヴィンチから探索の魔道具も渡されている。」
「…」
…まぁ、冷静に考えれば、そりゃ作戦のことは知ってるよね。
逆に知らないってなると色々問題あるしね。
いや、全然、全然気にしてないけどね。全然、賢いムーブしようとしたことを恥ずかしいとか思ってないけどね!?
「…はぁ、本当に大丈夫かねぇ」
クー・フーリンは店の隅でしゃがんだボクを見てそう言った。
いや、本当に気にしてないけどね。
「ところで、クー・フーリン」
「ん?どした?」
「貴殿は何故、じゃが丸くんの販売をしている?」
「なんでって、『この間』の罰だよ、他にもロキファミリアの遠征に付き合えって言われてる。」
「…そうか」
「っと、出来だぞ!」
そう言ってクー・フーリンは紙で包んだ商品を丁寧に渡してくれた。
「ありがとう、じゃ、またねー!」
「おう!がんばれよ!」
いやー、相変わらずクー・フーリンが作ってくれたじゃが丸くんはおいしーなー!
ボクはさっきのことなど忘れてホクホクでサクサクなじゃが丸くんを頬張る。
にしても、なんだか今日のボクは変だ。いつもなら考えていないことを考えてるし、何より、なんかモヤモヤする。
「アストルフォ、大丈夫か?」
「へ?あ、いや、うん。大丈夫だよ、ジーク」
うん。考えるのヤーめた!あんまり難しく考えてもしようがないしね!何より、ボクは考えるよりも行動派だし。こういうのは後でダ・ヴィンチやギャラハッドにそうだんしよーっと!
「うん!行こう、ジーク!今代の英雄達の舞台だ、見逃す手はないぞー!」
「あぁ、行こう」
そうして、しばらく食べ歩きをし、僕たちは目的地についた。
「さて、食人花ってダイダロス通りに現れるんだっけ?」
「ダ・ヴィンチの話だとそのようだ」
「でも、この鎧を纏うのも久しぶりだなー」
「ちょうど、3年ぶりくらいになるな」
今ボク達は名目上はディアンケヒトファミリアが所有している倉庫の地下室で装備を整えていた。
ここにはありとあらゆる装備が揃っている。それはボク達の宝具から今回使う全身鎧まで、それはもういっぱいある。
「シャルルも元気にしてるかなー」
ボクはふと、英霊としてのボクの鎧の横にある白と青を基調にした鎧を見て言葉をこぼす。
「貴方がそう願うなら、きっと、元気にしていると思う」
「そうだね、そうだといいなぁ」
それは、在りし日の記憶。ボクが彼の騎士であると心から言えたあの日をボクは忘れない。
だからどうか、『王様』もあの日と同じ、カッコいい王様でありますよう。ボクは祈っているよ。
「…さて!シメっぽいパートはこのくらいにして、いざ、任務に征こう!」
アストルフォさんとジークさんを見送った私とダ・ヴィンチちゃんは、その後、 行動を開始しました。
「ワタシ達も行動を開始しようか、マシュ」
「はい、ダ・ヴィンチちゃん」
「でも、その前に、ちょっとこっちにきて」
「…?」
そう言って連れてこられたのはダンジョンにある隠れ家の一室でした。
「こ、これは」
「『
「これが、私の新たな…」
それは、正にあの『マシュ・キリエライト』が『レオナルド・ダ・ヴィンチ』より新たな力として身にまとった鎧。
「待機状態はネックレスを採用している。待機状態からアーマード状態にするには『
ダ・ヴィンチちゃんが説明をしてくれているのを、私はただ、呆然と聞いていました。
それは、オルタナウスが今ここにあることもそうですが、何よりその必要性や何故『今』私に情報を開示したのかと言う疑問でいっぱいだったからです。
「何故、今コレを私に?」
「簡単な話さ、それは…」
「それは…?」
ダ・ヴィンチちゃんは一度言葉を区切り、下を向いてしまった。まさか、私の知らないところでとてつもない、『何か』が起きているのでしょうか。そうなると、かなりの覚悟が必要になるかも知れません。しかし、私はマシュ・キリエライト。
例え、世界の危機だろうと立ち向かいます!
「昨日の夜、やっと出来たんだよねー」
「…え?」
えへへー。とまるでどこかのピンクの騎士と同じような仕草でダ・ヴィンチちゃんはそう言った。
「え、それ、だけ?」
「うん、それだけ」
「え、えと、私、知らなかった、です」
「あぁ、それはギャラハッドがサプライズにしようってさ」
「今回の作戦で使用する、とかは…?」
「ないよ」
「…」
「…」
今、ダ・ヴィンチちゃんと話していて、わかったことがあります。多分、彼女は、一週間以上、寝ていない!!!
その証拠に、よく見ると彼女の目がぐるぐるしています!明らかに正気とは思えません!
ここは、速やかに
「あれ?じゃあ私、なんで今マシュにお披露目したんだろうね」
「…」
「…」
ダ、ダ・ヴィンチちゃんんんんんんーーーー!!!!!!
コツ、コツ、コツ。
薄暗い洞窟の中で一柱の神が歩いていた。
彼の神の名はタナトス。
そして、神は『ソレ』を見つけた。
「いやー、久しぶりだねー、モリアーティちゃん」
ひらひら、と手を振りながらタナトスはモリアーティへと近づいていく。その言葉には再会を喜ぶ親のように、嬉しそうな声色であった。
しかし…。
「おや、誰かと思えばとんだゲス野朗じゃあないか、いやー、久しぶりだネ!」
「…」
「…」
静寂があたりを支配する。
「えー、元とは言え主神にそんな事言うー?」
モリアーティの強烈な
「はははは、随分と面白い冗談も言えるようになったものだネ!」
「あはは、変わってねー、お互いに」
「不変の貴方に比べれば、私など、とても変わったと思うがネ」
しかし、モリアーティはタナトスが頬を引き攣らることを露ほども気にするそぶりを見せず、不快感を全面に押し出し会話をする。
「まだ、集まってはいないのか」
そこに、新たに一人の影が現れる。黒いローブに身を包んだ得体の知れない影。その影が現れると同時に空気は変わった、それは先程まで軽口をたたいていた彼ら二人も例外ではなく、タナトスはその邪悪な笑みを深め、モリアーティは今日より始まる新たな物語にー人、心の中でタナトスと同じ様に邪悪な笑みを深めた。
「神の思惑も、勇者の作戦も、