猟犬と飼い主   作:嘆きの大平原

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 裏タイトル:怪獣大決戦~その後~な30話です。かなり短めですがどうぞ。


 蛇を慕う者達

「何がどーしてこーなったん? いやま、俺に言いづらい事なら言わんでもいいけれど」

 

 5人で住むには少々手狭だし、そろそろ引っ越しも検討しないとなーと思ってたら、引っ越しせざるを得ない事件が勃発した翌日の事。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()の様子はそりゃもう酷いモンだけれど、得物を持ち出さなかった事だけは褒めてもいいかな? ……やっぱ酷ぇわ。

 右端のロージィは右目を彩る見事な青タンを見せない様に、俯いて膝の上で拳を握っていた。

 シェンは常の小綺麗な姿とは真逆に、髪はボサボサであちこちに擦り傷やら引っ掻き傷やらをこさえていて、話す事など何もないと言わん態度で目を瞑っている。

 グレイは灰色じみた銀髪の()()がクッシャクシャで、袖が半ばで千切れてるし剥き出しの腕には痛々しい青あざがくっきりと残っていた。

 そしてヘイズ。ある意味満身創痍と言った感じで、服も髪も乱れてるし右目は腫れてるし鼻血止めのティッシュを突っ込んでるけれど、何故か晴れ晴れとした笑顔で俺を見詰めている。

 

「……ご主人様の手を煩わせる程の事じゃないわ」

「プライドの問題ね」

「これは譲れない戦いだし、避けられない衝突だったのよ? お兄様」

「僕頑張った!!」

 

 ふむ……。つまり俺の手を煩わせる事ではなくプライドの問題であり、譲れない戦いであり避けられない衝突だから皆頑張ったと……。

 

「な る ほ ど 分 か ら ん」

 

 とは言ってみたものの、一つだけハッキリしてる事はあるのでそれは口に出しておく事にした。

 四人とも、なんだかんだで俺に気遣ってくれる程度のメンタルの持ち主である。少なくとも俺はそう感じてるし、そんな彼女らがやり合ったんなら……つまりそー言う事なんだろーな、と。

 

「お互い地雷踏んで引っ込みつかなくなったのだけは、間違い無さそーね?」

 

 言いながら一人一人に視線を合わせようとするも、ロージィは沈鬱な面持ちで、シェンは憤懣やるかたなしと言った風情で、グレイは悪戯がバレた子供の様に目を逸らした。唯一ヘイズだけは目を輝かせて何度も頷いている。温度差が酷くて風邪をひきそうだ。

 まぁ俺は風邪どころか、産まれた時以外は病院の世話になった事はないんだけれどね。

 

 ……それはさておき。

 戦場と化した居間は、クマとゴリラがテンション任せにタップダンスでも踊ったのかってぐらい荒れていた。

 テーブルも椅子と言った家具だけでなく、調理器具の類も散乱していらっしゃる。壁も抉れたり削れたり罅割れていたりと、散々だった。

 

「……下手にアパート借りるよか、一軒家なり建物丸ごと俺ん家にした方が良いのかねー?」

 

 そんな事を何気なく言ってみれば、四人とも「その手があった!」みたいな顔して俺の方みてるけれども。

 

「その原因が誰にあるのかよーっく考えてみよっか? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 続けて言うと、誰もがオジギソウの如く首を垂れた。自覚あんならまーいっかな……いやま、良い事なんぞ一っつもねーんだけれどさ。

 

「ま、引っ越すのは年越してからかな……その前に済ませときたい事もあるし」

 

 言って俺は両手を叩く。

 

「さ、とりあえず俺は部屋でゴロゴロしてっからみんなで後始末ね? それが終わったら旅行の支度しとくよーに。後はそうだなー……礼服? そんな感じの服も用意しといてね」

 

 そう締めくくって、居間から去ろうとする俺に声を掛けたのはロージィだった。

 

「ご主人様?」

「なんね?」

 

 小首を傾げながら彼女に視線を合わせれば、何処か神妙な顔付きでロージィが言葉を続ける。

 

「……里帰り、と言う事でいいのかしら」

「墓参り、かな。ほら、俺は故郷とか捨てた身だしね?」

 

 

 苦笑交じりにそう返し、肩を竦めてみせた。いやま、捨てたと言えど故郷は故郷だし、なんだかんだで五年も経ってる。こんなんでも生きてますぐらいは墓前に報告するのも、悪くなかろーし。

 他にはアレだ。JーPOPの変化を直に知りたい。南米で火遊びに没頭していた頃に改名したイチオシのバンドの曲とか、今はどんな曲流行ってんのかとか……。やっぱり耳に馴染んだ言葉で紡がれる歌ってのは、一番落ち着く。……イチオシバンドの曲は英語入ってるし、落ち着くってよりヘドバンしたくなるのばっかだけれど、それはそれである。

 

 そんな事を思いながら、俺は自室と言う名の()()()()()に足を向ける。

 四人がどんな表情をしてるかも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり気付いてるね、ご主人サマ」

 

 床に散乱した食器を片付けながら、シェンが口を開いた。

 彼女の零した言葉に、ロージィは眉間に皺を寄せて応える。

 

「そうね……。何処から知ったのか気になるところだけど、関係があるのは間違いないわ」

 

 そんな二人のやり取りを聞きながら、ヘイズとグレイは嗤いながら言葉を交わす。

 

「お兄様がそんな気にかけてるなら、少し悪戯しちゃおうかグレイ」

「そうねヘイズ。お兄様を煩わせるなんて、酷い叔母さん」

「止めておきなさい、二人とも」

 

 物騒な会話に口を挟むロージィに、シェンが同調した。

 

「それよりも、明日は4人で買い物よ。礼服なんて持ってないね」

 

 年上の二人にそう宥められ、双子は可愛らしく頬を膨らませる。

 

「こちらで事を済ませるのが良いのも分からないでもないわ。けど、彼が私達を日本に連れて行ってくれる事の方が重要じゃないかしら……そうでしょ?」

 

 ロージィの言葉にヘイズとグレイは顔を見合わせて、溜め息を吐いて同意するしかなかった。

 

 

 




 と言うわけで繋ぎ回でした。次回よりゴリラの里帰り編に入りますが、10/06に投稿予定となります。
 それでは次回、またお会いしましょう。
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