・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :2-2
得点者 :凪、冴、愛空、烏
試合進行:前半37分経過、烏ゴール。
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)
下馬評を覆し、
その異様な空気に呑まれた観客を救った冴の得点。盛り上がりのまま、まさかのDFである愛空によるシュート。
そして、前半37分で負けじと1点を取り返した烏の奮起。
スコア、2‐2タイ。どちらも一歩も引かない攻防だ。
興奮冷めやらぬ怒号や、日本を讃える声。その圧に逆らわず、イレブンが宵越と烏に駆け寄ってくる。
「ナイスアシスト、宵越!」
「お前もナイスラン、千切」
「いいゴールじゃん、烏」
「うっさいわ、凪ボケェ」
高校生の少年たち。その喜びも全身を使ったものになる。この瞬間だけを見れば、年相応そのものだ。
後ろから氷織と潔が笑っている。
「アハハ、烏が照れてるわ」
「おいこらドSコラ、潰すぞ」
烏は頭をかいた。
そして、宵越に中指を立てたように、潔にも。
「ええ、俺ぇ?」
「
宵越が笑った。
「ハッ、いいわけねぇだろ」
潔も同じだ。
「次は、俺が決める」
そうだ。ここにいる全員は、自分がゴールを決めることを本当の望みとしている。
まだ2点。チームの望みを叶えるのは、11得点。ただそれのみ。
「まだ2‐2。攻め続けるぞ」
それぞれのポジションへ散っていく
そんな中、前衛で構えに行く宵越と潔は気づいていた。
ただ一人の殺気が、際限なく膨れ上がっていくことを。
一方、U-20代表の側では。
スコアはまだ同点。そしてまだ前半。負けているわけではない。それでも、勢いは確実に
「何回チャンスを逃すんだ、ヘボ共が」
冴は、FW陣に向けて罵倒した。これ以上ないストレートな暴言だった。
「ゴールを取れる時に取らねぇからこうなる。この責任はお前らが招いたんだ、ヘボストライカー共」
超健人。狐里輝。そして、閃堂秋人。絶望の淵、処刑台の前に立つ罪人のような空気感。
せめてもの抵抗は、閃堂の口から出た。
「フ、フザけんな……確かにゴールは決められなかったけど、全責任擦り付けんのは違うだろ……」
たった今、シュートの原因を作ったのは冴だ。宵越と烏のダブルプレスにハマった形でもある。
閃堂はそういった感情を込めて、冴を睨み返した。
もちろん、その前にボールを奪われた選手たちの原因でもある。
責任ではない。原因だ。
「いい啖呵じゃねぇか、
「ぐっ……」
そもそも、11人全員で行うチームスポーツ。誰の責任だなどと語ることに意味はない。当然プレーに失敗はあるが、ここにいる11人が連動して動く以上、その原因は全員が共有すべきものだ。
だからこそ、冴の主張は。
「ゴールを決めろ」
ただ一つ。これこそが、サッカーにおけるただ一つの結果だからだ。
「負けたらこのU-20代表は、
その一言は、決定的な事実だ。
屈辱そのもの。楽勝だと思っていた高校生たちに負けるなど。
既に火は着いている。冴もそれはわかっている。だからこそ煽った。
「いくぞお前ら」
主将が語る。
「前半終了までの時間が、
勝つためには、点を取らなければならない。
どちらも胸中は同じだった。
──攻めろ。攻め続けろ。ゴールを奪え。最後の1秒がゼロとなるまで。
────
プレーが再開した。U-20代表のキックからだ。
堅実、けれど先程までとはまるで違う気迫だ。
その攻撃を、守備の不慣れな
宵越は理解していた。奪うために自分が守らなければいけないことも。そして理性でそれを理解する宵越とは別に、もう1人のCFから恐ろしい間での衝動が視えるということも。
破壊的衝動が、脈動し始めている。
(U-20代表の攻め気が格段に膨れ上がった──この1プレーが
今だ。今やらなければ、
それは、恐らくこの場において宵越のみが持ちえる嗅覚だった。冷静な思考と燃える世界への情熱を両立させる不倒の視える世界。
だから、この1プレー、数十秒にも満たない時間に、全力を賭ける。
コンスタントに押し上げてくるU-20代表。冴が加わっていることもあり、その攻撃力は決して油断ならない。
左右のサイド、中央、後方──それぞれの場所で負けん気を発揮するU-20代表FW陣。宵越は、最前線の
「くっ、不倒……!」
「初めまして、エース」
宵越は笑っている。疲労はしているし、他の奴らにゴールを決められて悔しい。けれど、この燃える世界は気持ちがいい。だから、自然と笑みがこぼれる。真剣な表情と共に。
対し、閃堂はどこまでも苦しそうだ。
閃堂にとって、宵越は年下のホープでしかない。雑誌で少し見聞きしただけ。そんな奴が、このフィールドにおいて冴の次に存在感のある選手になって帰ってきた。
そんな道理が、許されるものか。
「ふざけんな……! U-20代表は、俺のチームだ!」
「ああ、そう思うよな」
誰だって矜持はあるだろう。今いる場所への誇りだって。
それでも、勝負の世界は残酷だ。常に勝ち負けを決める。必ず一方は敗者になる。
誰かの恨みを買い、悔しさを生み出す。
それでもできることは、汚れたユニフォームを頂点へ持っていくこと、ただ一つだけ。
(俺は、それを背負っていく──)
そう考えて、宵越は思い出した。
──俺はカバディの、全てを背負って行くんだ──
高校カバディにおける頂点と戦った。その選手は、「なぜカバディをやるのか?」と問われて即答したことがあった。
『使命。それだけです』
畑は違う。けれど、頂点に立つ者がそう言ったのだ。
憧れとなった先輩は、むしろカバディに対する『愛』を唱えていた。
宵越は最善を尽くすためにサッカーに戻ってきた。それは、自分に課した一つの使命かもしれない。
そして、宵越はスポーツが好きだ。
今は、愛と使命を唱えた2人の気持ちがわかるかもしれない。
(ありがとうよ、不破先輩)
だから、問う。
「なあ、U-20代表CF。アンタはどうして、サッカーやってる──!?」
「くそっ……!」
宵越竜哉 VS. 閃堂秋人。
マッチアップ──!
状況はオフ・ザ・ボール。宵越と閃堂がP・Aのやや外側で争い、さらに後方では冴を中心としたボール回しが続いている。
抜き去ろうとする閃堂を、宵越は絶対に抜かせない。
その守備。閃堂は気づいた。
(これは……愛空たちの
本職と比べれば不十分だ。だが、宵越には天性の反応速度がある。畑は違うが、カバディで《押し返し》という敵を前に行かせず押し戻すプレーをしたこともあった。
学ぶことに秀でた男、不倒宵越の本領はこの逆境において十二分に発揮される。絶対に閃堂を抜かせない。
それでも、冴の殺気が、圧力が閃堂に伝わる。
──ゴールを決めろ。
ゴールこそが、ストライカーの存在意義だ。
そうしなければ、閃堂は……
「──ぁああっ!!」
閃堂が奮える。絶対に、この不倒を超える。
閃堂の気合と同時、冴の
閃堂はこれをゴールへ繋げようと、瞳孔を開かせる。
この瞬間、閃堂の覇気は確かにストライカーのそれだった。
その讃えるべき集中力が──利用された。
「もらいました、エースさん」
「ああ……!?」
刈り取った、
宵越が後退したことで、守備の壁が増えた。
そして、残る
集中極まる閃堂への、冴の
「ナイスだ二子」
「そっちも、どーもです」
二子のインターセプト。宵越は《カット》で閃堂を置き去りにし──自分が求めるゴールへ。
「そのまま行くぞ、カウンター!」
「りょーかい──です!」
二子が左翼へボールを蹴る。宵越が左翼へ向かって駆け、無理矢理な
その宵越の行動はやや独善的。それでも、自分の領域を奪われた蜂楽は面白がった。
「嫉妬しちゃうよ、宵越♪」
蜂楽は代わりに中央へ移動する。
一時的にLSBの位置を得た宵越が、今度は左翼から駆け上がる。
二子の広い視野は理解していた。先ほど、右側から千切の超速にしてやられたばかり。だからこそ、左翼による超速の突破の意識はない。黒い光だ。
宵越に連動して駆け上がる
宵越は叫んだ。
「走れ千切!」
逆サイドの千切を囮とする。いや、結果的には自分が囮になってもいい。
両サイドで神速を体現するのだ。
「抜かせるかよ」
冴が立ちはだかった。先程、千切に対して愛空が構えたのと同じ構図だ。
「抜かせてもらうぜ。何度もやられる趣味はねぇ!」
宵越の速度は十分超速。けれど千切にはわずかに劣る。
故に、宵越は連携を重視した。冴の死角にいた凪へボールを回す。凪はトラップによってすぐさま宵越へ返す。冴がすぐには届かない場所へ。
トラップ・ドリブル。異なる手段で創造と吸収の技を為せる、チームCの超次元共演だ。
走りにおいては冴よりも宵越が勝る。さらに前線へ。
──烏の叫ぶ声。
「アディショナル1分や!」
残り1分。
凪が、潔が、蜂楽が、叫ぶ。
『決めるぞ!』
ゴールを奪う。イレブンが
千切が囮になることで、U-20代表DMF陣が右サイドへの意識を割かれた。宵越は比較的順調に前線へ進むことができた。
しかし、烏の得点時とは状況は違う。カウンターは自陣奥深くから始まった。既に4枚の鉄壁の守備は準備完了している。
(ここだ。ここをなんとしてでも突破する!!)
前半のカウンター合戦、常に動かせなかったこの鉄壁を。
攻撃枚数は3枚。凛・潔・宵越。
守備枚数は4枚。愛空・仁王・音留・蛇来。
他のMFの面々は、敵味方問わず前線の手前で争っていた。
少しもたつけばすぐに冴がやってくるだろう。短期決戦しかない。
宵越は左翼からスピードパスを潔に。潔はダイレクトに中央の凛へ。
中央突破の凛。愛空と仁王が警戒する。
凛を囮に、
潔を捕まえる蛇来。
凛が愛空にぶつかる。それでも凛は脚を振り切った。シュートが弾かれ、山なりに軌跡を描く。宵越が拾う。
宵越は思考する。
(波状攻撃。このボールは、どうだ!!)
鉄壁が抜けないのなら、抜き去ることなく撃てばいい。
宵越が《回転》した。U-20代表DF陣にとっては未知の動き。それでも仁王と音留が反応するが──
敵を抜き去ることなく放つ、Isoration技術による走る挙動をフェイントとし、タイミングを奪うカーブシュート。
シュートそのものは、見事に撃ち放った。称賛されるべき一撃だった。
それでも。撃ち込んだ──脚がボールに触れた瞬間、宵越は確かに聴いた。
──ふざけるなよ。
凛の殺気。
──俺は俺だ。糸師凛だ。宵越竜哉じゃない。
宵越の一喝を受けた凛。それでも、簡単に宵越の熱に当てられはしない。
これは糸師冴の
これは、
凛が飛び込む。愛空に止められた
ついでに潰してやるよ、《不倒》宵越。糸師冴と、潔世一と一緒に。
言っただろう。『このクソみてぇな監獄にいる間に』って。
てめぇも、俺の殺戮対象だ。
故に、球速は遅い。
宵越は最終合宿で何度かこのシュートを放っていた。
故に、凛は知っていた。
ボールの軌跡に、凛が割り込む。体を大きく仰け反らせ跳躍。
青の
交わり、重なる。
これが決して混ざることのない、糸師凛×宵越竜哉の化学反応。
「凛、てめ──」
凛が、その右脚でボールを蹴り込む。宵越のカーブシュートを強引に奪いスピードシュートに変える、
戦場の、敵味方も関係ない──誰もが予想外の凛の行動。
宵越の放った軌道に飛び込んでいた
同時、審判が吹き鳴らすホイッスル。
観客の怒号の中、大の字に転がった凛の前に宵越が立った。
「やってくれるじゃねぇか、凛……」
「言っただろうが。潰してやるって」
宵越の中に、不思議な感情があった。
当然悔しい。腸が煮えくり返る。サッカー界に見事、ゴールと共に返り咲こうとした宵越のベストプレーを、凛は奪ったのだ。
それでも。
「最高じゃねぇか、No.1」
「……フン、ぬるま湯不倒が」
「ハッ、いいぜ。その調子で、どんどん進化しろよ」
宵越は、最善を尽くすためにサッカー界へ戻ってきた。
日本サッカー界にどんな
もっと増えろ、強い奴。
そうすりゃ、俺が強くなる。強い奴は、もっと強くなる。
「どんどん、強くなれよ。それが俺の最善になる」
「させねぇよ。てめえは潰す。俺の手でな」
決して相容れない。それでも、このフィールドで共存しているのだ。
宵越と凛が立ち上がる。2人に駆け寄るイレブン。
2人の戦いは、まだ終わらない。
U-20日本代表 VS.
スコア、3‐2。
前半、終了。
・現在の状況:BL11傑 VS. U-20日本代表
スコア :3-2
得点者 :凪、冴、愛空、烏、凛
試合進行:前半45分終了、凛ゴール
残交代枠:BL11傑(3)、U-20日本代表(3)
さて、また後半の展開を考えるときが来たようだ……
※ちなみに凛はまだベロ凛ではないと思います。
Q20 新英雄大戦《ネオエゴイストリーグ》無限交代制は……(参考程度に)
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原作通り何度でも何人でも交代OK!
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制限緩めて、一度退場した奴は不可にしよう
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交代回数も交代人数も有限にしよう