AC6はいいぞ
「レイヴン、一つ質問があるのです。聞いてはもらえませんか?」
『どうしたの エア』
レイヴンは脳内の声に脳内で返事をした。相手は人ではなくコーラルの波形、エア。ひょんなことからレイヴンと出会い、紆余曲折を経て今ではこんなふうに話しかけられることも珍しいことではなかった。
「レイヴン、あなたは戦闘中、自分の表情がどうなっているか気づいていますか?」
『わからない 何か問題が?』
レイヴンはハンドラー・ウォルターの元、独立傭兵として日々ルビコンを駆けている。コーラルをめぐる争いは熾烈で、その戦況の中では任務も厳しいものが多い。故に、レイヴンは自分が戦闘中どのような状態なのか気にかける余裕もなく、気にしたこともなかった。
「問題というほどではないのですが……任務中、特に敵ACとの戦闘で顕著なのですが。レイヴン、たまに笑ってるんですよ?」
『……』
「その様子だと本当に自覚がないようですね。いやもうその笑顔が怖いの何のって』
『笑顔?』
「ええもう。接敵するやいなや目をグワっと開いて口元吊り上げて歯を剥き出しにしてニヤァって笑うんです。いつ見てもそれを目の当たりにするとゾワっとしますね。こういうの人は「蛇に睨まれた蛙」って言うらしいですよ」
『……すまない エアに迷惑を』
レイヴンは旧世代型と呼ばれる第4世代型強化人間であり、ACを動かす以外の人間的な機能は死んでいる状態である。ウォルターはレイヴンを1人の人間として尊重し、扱ってくれているが、レイヴンからしたらそんな上等なものではないと思っているし、そんな自分が表情を変えていたとなればそれは身体機能のバグであると思ってしまう。
ウォルターに調整を頼むか?しかし任務に支障はないし、この程度でウォルターの手を煩わせるわけにも…… しかしもしこれが後々重大な問題になってしまったら……と思考していると、エアが慌てて話し始めた。
「い、いいえ!別に迷惑では!むしろ私だけが見れる特権のようなもので優越感を感じるというか何というか……」
『……? コクピット内部はウォルターもモニタリングできるはず』
「ウォルターは別です」
『? エアがいいならいいけど』
エアがいいならいいのだろう。とりあえずレイヴンはそういうことにして納得した。
「しかしやはり無意識でしたか……」
『どうしたらいい エア』
「いえ 私としてはそれについて問題があるわけではなく、もしレイヴンが自分の意思で笑っているのだとしたら、それはレイヴンが人間としての機能を取り戻しつつあるのではないかと思いまして」
エアからしたら、むしろ見せつけてやればいくらか相手は怯えて動きも鈍り、レイヴンも少し楽に任務もこなせるはず。とか考えていた。
『じゃあ このままでいいかな』
もしそうであれば、ウォルターも喜ぶだろう。自分が、ではなくウォルターのことを考え、それがポジティブなものであると判断したレイヴンは少し嬉しくなった。
「ええ。ただし、私とウォルター以外にはその笑顔を見せてはいけませんからね!」
『生身でACと戦うことはないから大丈夫』
「そう言うことでもないのですが……」
『クライアントとの交渉はウォルターがやってくれている』
「ええそうなんですが……」
『? じゃあウォルターとエア以外に私の顔は見れないのでは?』
「そうですけど……とにかく!忘れないでくださいね!!」
『? ……わかった』
様子のおかしくなったエアに戸惑うレイヴン。実際のところエアはことあるごとにレイヴンに接触してくるどこぞのV.IVとか、ガラの悪くいつもレイヴンに突っかかってくるG5とかその他諸々を想像していたのだが。
「(そうですよ、こんな顔もできることが知られたら……ますますレイヴンの魅力が伝わってしまう……!ただでさえその実力から名をルビコン中に轟かせ、様々な陣営からコンタクトが来ているのに……!)」
レイヴンに企業のキャンペーンガールの依頼が来ていたとかそうでないとか。持ち前のハッキング能力を持ってすればウォルターの端末を覗き見るなどエアからすれば朝飯前である。
もちろんウォルターは断っていたが。
レイヴンの笑顔が無意識であることがわかった以上、私が気を配らなければ。
そんな決意を固めながら、さっき隠し撮りした「きょとんとしている顔のレイヴン」を密かに機密フォルダにしまい込むエアだった。
レイヴン:主人公。ヒラコー作品みたいな笑い方してる。基本無表情。「素材は悪くない。めっちゃ磨けば光る」(カーラ談)とのこと。
エア:レイヴンのパートナー(自称)。レイヴンの笑顔については、ちょっと怖いけどなにか惹かれるものがあるらしい。ちょっとヤンデレ味がある。本編からしてそんな感じでは(拡大解釈)
ウォルター:名前だけ出てきた。レイヴンの表情のことは知っているが、バイタルサインなどから意識的なものではないと判断。特に支障もないし威嚇みたいなものだからヨシ!してる。最初見た時はちょっとビビった。