【ソードアート・オンラインRTA】ラフコフ殲滅Any%『■狂者』   作:GARAKU

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 まずは本編完結。
 この後はアインクラッド編の幕末の話やらALO編やらGGO編やらを追加していく感じです。
 アンダーワールドは…はい……
 個人的にはGGO編とマザーズ・ロザリオ編をメインに書いていきたいです。


『骸区』

 ヒースクリフこそ、アインクラッド"最強"である。

 その説話を最初に唱えた者は、決して間違いではないだろう。

 まるで詰将棋のように、機械のように正確な指示を下す知能。

 一端のプレイヤーを二回りも凌駕する、圧倒的な戦闘センス。

 彼にデュエルを挑んだ者は、そのまるで「彼は全てのソードスキルを知っているかのようだった」と称した。

 ――そしてそれは、正しい。

 

 

 

 

 ――茅場晶彦は、高揚していた。

 それは、初めて目の前に現れたイレギュラー。ずっと望んでいた、人の限界を超えた者の力。

 ようやく顕現した、魔王に挑む勇者とは違う、選ばれなかった者が魅せる境地。

 

 一つ攻撃を防げば、二つ斬撃が盾をすり抜け、襲い掛かる。

 

 《神聖剣》が持つ絶対防御とも呼ぶべき、高い防御力すら、彼には通用しない。

 攻撃が防がれるならば、盾を避ければいい。

 相手が盾を押し付けてくるなら、その分距離を取ればいい。

 単純明快で、圧倒的な技術の前には、一切がねじ伏せられる稚拙な対処法。

 だが、それすらも上回る程の、超人的な反応速度と、予知にも近い回避。

 

 断言できる。

 今この時限定でなら――彼の反応速度は《二刀流》保持者より上。

 

 ヒースクリフのHPが削れ、もう一つの顔である、茅場晶彦の秘密の仮面が剥がれていく。

 彼は今も、己に不死属性を付与している為、HPが半分を切ってしまえば、システムによる表示が働き、正体が露見する。

 それは、絶対にあってはならない。

 自分が正体を現し、魔王として君臨するのは、せめて第九十層から。

 まだだ、まだ早すぎる。

 ヒースクリフという、冷静かつ最強の英雄という仮面に、亀裂が走る。

 

「ッ――」

 

 二割。

 既に、ヒースクリフの体力は二割を削られていた。

 《神聖剣》による十字盾を使った、手元を隠したフェイントやパリィ。

 茅場晶彦として培った、VR世界への凄まじい"慣れ"と、ヒースクリフとして生きてきて築き上げた戦闘経験が、まるで通じない。

 デフォルトで設定されている筈の、ペインアブソーバーが機能しない。

 ソードスキルを一度も使わないせいで、技の硬直時間を狙う事も出来ない。

 

 皮肉なものだ。

 《二刀流》と《神聖剣》、勇者と魔王というロールプレイを夢見た、子供心のままに仮想世界に身を投じた男が。

 皮肉にも、設定外の力を極めた者によって、その夢を砕かれそうになっている。

 

 ヒースクリフの表情に、とうとう目に見える形で焦りが生じる。

 三割、四割。

 ――成長を続ける彼の前では、ヒースクリフの剣撃は全て予想の範疇。

 HPが半分に近づき、とうとう彼は、魔王としての自分の力という設定で用意した、禁じ手の解禁を選ぶ。

 

「――ッ」

 

 ――オーバーアシスト。

 カーディナルによる演算能力とシステムの保護による、ポリゴンすら()()る程の超加速。

 世界が止まり、ヒースクリフとそれが持つ、十字盾と剣のみが、停止したアインクラッドの中を動く。

 刹那。

 ガラクもまた、下手をすればそれ以上の速度で、ポリゴンが()()る程の超加速を展開。

 現在、アインクラッドの中では正真正銘、たった二人だけが、同じ土俵に立っている。

 突きつける十字盾。

 身体を捻り、それを避けるガラク。

 そして、大きく振りかぶるのも、互いに同じ。

 

 剣を。

 刀を。

 

 互いの胴を狙い、振り下ろす――

 

 

 

 

 右目部位の欠損。

 狭まる視界と、一度もメンテナンスを施していない魔剣。

 そして、何十と一気に重ねた殺戮により、磨耗を重ねに重ねたガラク自身。

 彼の才能は無限大だった。

 彼の殺人センスは、たとえ右目があろうとなかろうと、全盛のまま変わりはない。

 だが、武器だけは。

 ――道具だけは、人間と違って限界を越えられない。

 

 

 

 

 ――ガキンッ!

 重く、鈍い金属音と共に、ガラクの手に握られた魔剣、《ORDER(オーダー)》が砕け散る。

 ヒースクリフが身に纏う、《血盟騎士団》の象徴である赤の鎧。

 それに刃がぶつかった瞬間に、主の望みに答えることなく、武器は呆気なく絶命し。

 無防備となった、ガラクの胴に向かって、剣が吸い込まれる。

 

 

 

 

 砕けた刀。

 胴より先に、剣と衝突し切断される右手。

 そして、抵抗を許さず真っ二つに、両断される胴――

 

 

 舌打ちを一つ。

 それを最後に、三つに身体が別れたガラクは、そのまま地面に崩れ落ちた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 悪夢は終わった。

 世界の歴史に刻まれるであろう、最悪の事件は幕を閉じ、遺恨こそあれ、人々は着実に前へ進んで生きていた。

 約二年。ずっと意識を失い、寝たきりだった己の肉体は衰弱し切っていて、もしもあの世界からの解放が、あと少しでも遅れてしまっていたら…そう思わずには居られない。

 未だに、あの世界を夢で見る。

 年という単位で自分たちを閉じ込め、縛り付けた悪夢の世界。だがあの世界が、もう一つの現実とも呼ぶべき、全く新しい世界となった時まで、間違いなくソードアート・オンラインは、幻想という名の夢だったのだ。

 沢山苦しんだ、沢山恨んだ。

 だがそれ以上に、あの世界は一つの理想郷だったのだ。

 

 少年はある日、しばみ色の瞳の少女と出会う。

 二人は恋に落ち、やがて結ばれ、森の中の小さな家で、いつまでも暮らし…

 

 そう、きっと――

 

 

 桐ヶ谷和人は生還した。

 ――あの、鉄の城の世界から。

 

 2年以上、この現実世界から離れていた内に、どうやら世間はそこまで大きく変わっていなかったらしい。

 アスファルトを焼く程の、肌を突き刺す灼熱の日差し。

 世間一般の、VRMMOに対する非難と偏見の眼差しは、最初期よりはマシにはなったものの、今でも容赦のない罵詈雑言が浴びせられることがある。

 仕方の無いことだし、それは絶対否定してはいけないと、和人はそう思う。

 たとえどれだけ優れた技術だとしても、一度でも人を殺してしまえば、死んでしまえば、それは呪われた技術に他ならない。

 

 現に、今でもあの世界から、帰って来れない者もいるのだ。

 

「……」

 

 アスナ。

 結城明日奈。崩壊するアインクラッドを前に、最後に伝えあった、互いの真名。

 彼女を含めて、現在も日本各地では、約三百人のSAOプレイヤーが、今も意識を取り戻せていない。

 ヒースクリフは…否、茅場晶彦は最後の最後に言ったのだ、「全てのプレイヤーのログアウトが完了した」と。

 この期に及んで、彼が必要のない嘘をつくとは考えにくい。そうなった場合、次に考えられるのは、僅かな可能性を引き当て、起こってしまった不具合…タイムラグ。

 最悪のケースは、――外部からの干渉。

 

 

 

 

 

 ――最終的に、私の前に立つのは君だと思っていた。ある時まではね。

 

 第七十五階層で、ヒースクリフの仮面を外した彼が、しみじみと語っていたのを思い出す。

 

『君とのデュエル。そこで私のオーバーアシストを見て、最初におかしいと感じた…と言ったが、それは嘘だね。君は間違いなく、それより前に疑惑を抱いた筈だ』

『ラフィン・コフィン…討伐戦』

『《二刀流》は、全プレイヤーの中で最も優れた反射速度を持つ者に与えられる。――だがいい意味で裏切られたよ、()こそ正に、私の予想を超える者だった』

 

 眼球の欠損、そして武器の消耗を踏まえても尚、彼は勝てるかどうかが分からなかったと、まるで嬉しそうに言った。

 

『彼は勇者ではない。だが間違いなく、魔王に届きうる者だった。――もしあの時、彼の一撃を防げていなければ、私はあの時に死んでいたかもしれないな』

『……よく言う。その時も、ずっとお前はシステム的不死の状態だったんだろ』

『――どうかな』

 

 吐き捨てるように言ったその言葉に、茅場は、楽しそうに否定した。

 

『ペインアブソーバーのレベルを書き換える程の、あれこそ、人間の脳が行きつく極致。創造主(わたし)のとは違い、自力で辿り着いたオーバーアシスト並の超加速。ありえない事は、逆にありえないのだよ』

 

 あの時、ギリギリの戦いを制した茅場の内心を埋め尽くしたのは、虚無感。

 あれほどの、己の心を揺さぶる逸材を、魔王という己の役割(ロール)を後に果たす為に、どうしてもあの瞬間に、口封じをしなければいけなかったのだ。

 

『それにどういう訳か、彼は既に、私の正体にも気づいていたらしい』

 

 狂気を偽装し、殺意を纏って放浪していたからこそ…なのだろうか。

 それとも、彼には他者とは違う何かが見えていたのかもしれない。

 0と1で全てが表現できる、仮想世界で唯一、一人で極致に辿り着けた者の考えは、分からない。

 分からないからこそ、今も茅場晶彦の中で、こうして第七十五階層まで登ってきても尚、心の中に彼が射座っているのだと。

 そう、嬉しそうに言っていた。

 

 

 

《それでは、本日のお便りです!》

 

 テレビから聞こえてくる、キャスターであろう女性が出す、軽快な声。

 それが耳に入り、意識が過去の回想から浮き上がり、現実世界に戻る。

 画面の向こうでは、視聴者から送られてきたのであろう手紙を、律儀に両手で広げていて。

 

《「現在、私はあるゲームにハマっています、しかし一つだけ、プレイヤーネームに悩んでいます。〇〇さんならどうしますか?」》

「…」

 

 SAO事件のせいで、VRMMOに限らず、ゲーム業界全体に、深刻な風評被害が発生した。

 この企画も、テレビの向こう側では予め、取り扱う便りは選別しているであろうから、これは計算された流れなのだろう。

 少しでも風評被害を抑えたい、誰とは、どの界隈の差し金とは言わないが、地道で健気なものだ。

 

《ゲーム内での名前ですかぁ…そうですね……私ならインターネットミームの…失礼。それ以外でなら、まず身近な何かを組み合わせます》

 

 どうやら、今回のキャスターは中々話が分かる人間らしい。

 画面の中では、わざとらしさが一切ない、自然体のまま、頼りの質問に答えている様子が見える。

 

《好きな食べ物、好きな地名。……もしくは、()()()()()()()()()()から取るのもいいでしょう。そのまま取るもよし、自分の本名を織り交ぜるもよし。…あ!でも本名そのままは駄目ですよ!インターネットは危ないですから》

「ふふ」

 

 つい、笑ってしまった。

 本名そのまま。……愛おしい、この世で最も好きな彼女は、まんまと本名をそのまま使ってしまっていたから。

 こみ上げる寂しさと、愛おしさ。

 

《それでは、今週はこの辺で、また明日!》

「っと、もうこんな時間か」

 

 それに耽ったのは一瞬で。 

 テレビ画面の端っこに映る現在時刻。

 それを見て、自分がぼーっとしている間に、それなりの時間が過ぎていた事を、ようやく自覚した。

 着替えは既に終わらせている為、このまま財布、そして家の鍵を手に外へ出るだけでいい。

 一応のリハビリを終えてから、毎日続けている、今も眠り続けている、愛おしい彼女の眠る場所。

 つい、テレビの電源を切るのを忘れて、和人は扉を開けて、玄関まで走る。

 

《お早うございます、朝のニュースです――》

 

 画面は変わり、明るいエンターテインメントの時間が終わり、始まるニュースの時間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《昨日、ガラ区の雑居ビルで、男性6名の遺体が発見され――》

 

《調査の結果、被害者はあの、SAO事件の生還者であったことが判明――》

 

《街では近年、殺人事件数が増加の傾向にあり。人々の間にも不安が募って──》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知ってるかァ?この街。この辺の地区じゃ、殺人事件数No.1だってよ」

「あーニュースでやってんなァ。…でも、住んでて治安悪くねぇけどなァ」

「なー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………――

 

 ──完。




 元々はメインで連載している作品がネタ切れ→でも何か書かないと気分が落ち着かない…とりあえずなにか書いてみよう。
 との事で始まった今作でしたが、昨日見た時なんと二次創作日間ランキング3位になっていて驚きました。
 全体的に短く纏めた本作ですが、楽しんで貰えたなら何よりです。
 とりあえず次回は《BoB》にボケた老人アバターで参戦でもさせますかね。
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