転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた   作:大きいホクロ

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ここから俺の冒険は始まるんだ!

ファイティングライフ 竜王黎明 収録カード
『小さな勇者』フレーバーテキスト


罪の果て

「もう行くのか?」

 

「ああ、退学の手続きも済んでる。色々迷惑かけたな。本当に悪かった」

 

月が綺麗に輝いていたあの日に、金髪を揺らしながらある男が頭を下げた姿を思い出す。

 

「許すとは言わないよ。君も……多分許されたくないだろ?」

 

「そうだな、この罪の意識は許されたと思って忘れちゃいけない物だ」

 

彼、一色ソメルはゼンの一件から1週間も経たぬうちに学校から姿を消した。

あの一件が終わってから相談も受けていた為驚きはなかったが、それでも寂しい物があった。

いろいろな事があった、対立もしたし彼の行動が例の一件の起きた原因に大きく寄与しているのも間違いない。

けれども友人であった時間は本物だ。

 

「気を付けて、って言えば良いのかな?」

 

「どうだろうな…例えば包丁突きつけられても逃げる気が起きないし難しいな」

 

彼が向かったのは贖罪の旅、神託カードを使って消した人間の遺族に会いに行ったのだ。

転移者のほとんどは当然家族が居ない。

しかし中には阿久野先生の様に家族が居た人達も居た。そしてその中の何名かは彼ら神託カードを持つものによって消されてしまった。

その被害者家族の前に直接出向くそうだ。

本来彼が殺したのであれば警察に出頭すべきなのだが、警察はカードで消したと言っても方法が荒唐無稽過ぎて取り合ってくれなかったそうだ。実体化技術がより公になればその見解も変わって来るのだろうがそれはまだ未来になるだろう。

しかしそれで証拠ないから無罪でーす、と開き直れる程彼は図太く生きれ無かった。

 

「……ソメル、もしその旅が終わって生きていたら、また会おう」

 

「そうだな、期待しないで待っててくれよ。………ありがとうな、ユウキ。最後まで友達で居てくれて」

 

そう言うと彼は寮から出て行った。

彼の金髪は月明かりを浴びて綺麗に輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「殺されて楽になろうとしてんのが見え透いてんのよ。私の前から今すぐ消えて、そして一生忘れないで。私からあの人を奪った事を」

 

「本当に……すいませんでした」

 

鼻腔をつくのはアスファルトの香り、目の前に広がるのもアスファルト。

俺は今いわゆる土下座をしながら女性からの怒りの言葉を受けている。

 

「言いたい事は言ったからとっとと消えて。すぐに」

 

女性がそう言った後に、玄関のドアを閉める音がした。

 

「……………」

 

これで俺が把握している限りは全員への謝罪が終わった。

DFCが残した行方不明者リストの内、神託持ちの仲間からの情報を照らし合わせて把握した犠牲者の遺族達への。

当然俺を許す者は1人もいなかった。

殴られもしたし呪詛も吐かれた。

しかし誰1人として俺を殺そうとはしなかった。

だから俺はこの日まで生きていた。

耳には今も、俺が殺した転移者達の声が響き続けている。

 

 

 

「これからどうするか……」

 

俺は河原にポツリと座り込んでいた。

学園は退学してるから寮には当然帰れないし、家にも帰りたくない。

俺は両親とは血が繋がっていない。

教会で孤児として育った俺を幼少期に引き取り育ててくれた老夫婦が俺の両親だ。

2人は俺を我が子の様に、いやそれ以上に可愛がって育ててくれた。

 

「ソメル!良いカードが手に入ったぞ!ほら!かっこいい勇者だぞ!」

 

「お爺さん、ソメル!クッキー焼けたから食べなさい!」

 

そんな2人の前に俺は戻りたく無かった。

汚れたこの手を見せたくない。

何かを隠してるとしてもおそらく聞かないでくれる2人の優しさに甘えたく無かった。

 

「父さん……母さん……」

 

会いたい……けれども会いたくない。

水面に映る俺の顔は、その矛盾した思いを示すかのように酷いものだった。

 

 

 

始まりはFL学園で二階堂が破れた日の事だった。いや正確にはもっと前からかもしれない。

 

『ソメル………聞こえるか?ソメル』

 

その声は突然脳裏に響いた。

 

「誰だ!?」

 

『俺は神だ、ソメル』

 

自らを神と名乗るそれの声には、言葉では説明できない神と信じさせる程の何かがあった。

そして俺は教会育ちという事もあり信心深かった。

 

『ソメル、この世界は今危機を孕んでいるんだ………この世界を救ってくれ……』

 

その言葉と共に俺の使っているカードは神託カードへと変化した。

そして俺にはその日から神の声が聞こえるようになった。

それからは神の声に従い……………。

 

 

 そこで俺は回想を打ち切る。

考え込んでても仕方ない、取り敢えず今日寝る場所を探す事にしよう。

そう思い立ち上がると少し大きな声が聞こえて来た。

 

「返してよ!それはパパに貰ったの!」

 

「はっ!お前みたいな弱虫には勿体ねえっての!」

 

「そうだそうだ!俺たちが使ってやるよ!」

 

小学生らしき男の子2人が同年代の少女からカードを取り上げているようだ。

 

「返してよ!」

 

「やだよ泣き虫!」

 

「悔しかったら取り返してみろよ!」

 

少女は泣き出してしまっていた。

見てられないな………。

 

「こらこら坊主ども、意地悪はよくないぞー!」

 

そう言いながら背後からカードをサッと取り上げる。

 

「なんだよお前!」

 

「おい、やめとこーぜ!ふりょーだぜあの髪!」

 

坊主どもは俺の髪の毛を指差して大きな声を出しながら怯え出した。

 

「そうだぞ、不良だぞ俺は!」

 

「ちぇっ!ママに言いつけてやる!」

 

「覚えてろよ!」

 

やはり小学生だ。目に見えて体格差がある俺を相手にすぐに逃げていった。

 

「ほら、お父さんのなんだろ?」

 

ポカン、と状況を見ていた少女にカードを差し出す。

 

「ありがとうお兄さん!出張に行ってるパパから貰った大切なカードなの!」

 

親から貰った大切なカード、俺の勇者も同じ境遇だったから助けたのかなと今になって思う。

 

「そりゃ大事だな。気を付けて帰れよ!」

 

「お兄さん、助けてくれたお礼してあげる!お家来て!」

 

「いや、大丈夫だよ」

 

「良いから!お母さんのお菓子すっごい美味しいんだよ!」

 

そう言う少女に押し負けて俺は彼女の後ろをついていった。

 

「こっちこっち!」

 

住宅街に入った所で俺は居心地が悪くなった。

その住宅街はちょうど先ほど謝罪に行った家の近辺だったのだ。

 

「ここ!ママに話してくるね!」

 

そう言いながら少女が指差す家は、俺が先ほど行った家そのものだった。

少女は玄関の門を開け中に入っていった。

 

「う、うわぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ」

 

気が付いたら俺は走っていた。

彼女のパパは出張からは帰って来ない。俺が殺した。彼女から奪ったのだ、父親を。

理解していた。理解していた筈なのに、俺は……俺は……………

 

「うわああああああああああ」

 

怖くなってただただ遠くまで走り続けた。俺が犯した罪の重さ、それに対する実感が今、かつてない程に俺にのしかかっていた。

 

そして俺は誰もいなさそうな路地裏に一人蹲っていた。

 

『ソメル……ソメル…』

 

幻聴だろうか?神様がまた俺を呼ぶ声が聞こえる。

 

『俺はお前ら神託者に背負わせすぎた。だからせめて、これは罪滅ぼしだ』

 

これは都合の良い幻聴だろう。俺は相当参ってしまっているようだ。

 

『封印してやる、被害者達とお前らのその辛い記憶を』

 

それは駄目だ。俺は背負わなければならい、命の重さを……………

 

 

 

「……の勝者、捻咲選手ー!!……」

 

電気屋でガラス越しに展示されているテレビから聞き覚えのある名前が耳に入り立ち止まる。

 

「へえ、シラユリちゃん凄いなぁ。三月先輩に勝つなんて」

 

ガラス越しにかつての同級生を眺める。

当時圧倒的な強さを誇っていた先輩を打ち負かした彼女に賞賛を心の中で送った。

 

『ソメル、また例の奴らだ』

 

「オーケイ神様」

 

神様に記憶を消すかと言われたあの日、俺はそれを拒んだ。

そうしたら神様は提案した。

まだこの世界に残る問題の解決の為にこれからも生きないかと。

DFCが帰還した今でも、日々カードを使った事件は起こり続けている。

だからこそ対抗できる力を持つ俺は都合が良かったのだろう。

俺は受け入れた。命を奪わないという制約と引き換えに。

 

「さてと、頑張りますか」

 

命の重さは秤に乗せるのも烏滸がましい。

しかし何よりも軽いこの命、俺は世界の為に使い潰す。

 




時系列補足

DFC対ユウキ→ユウキ達入学→二階堂の一件
     →神託者の勧誘開始→一色に神託

一色に神託が降りたのが二階堂の一件後だったのは当時会長側の二階堂がフィールドを完成させた事で保険としての神託者を用意したくなった。
その結果近くにいる中で信心深くかつ実力もある一色が選ばれた形です。
そして更に保険として声を掛けて反応が良かった者達が神託者になりました。(ケン、ゼンに挑んだアイツ等)
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