剣も魔術も使えぬ勇者   作:138ネコ

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第4話「ダンジョンウッド」

「冒険者ギルドには俺らが顔出しといてやるから、お()ぇらはさっさと宿見つけて休んどけ」

 

「良いんですか?」

 

「快適な馬車とはいえ、やっぱ数日間馬車の中に居るのはキチィからな。明日朝に冒険者ギルドに来てくれ。話はつけておいてやるよ」

 

 それなら父さん達も疲れてるだろう。

 そういう僕に「父親らしい事をさせてくれ」と言って、父さん達は真っ直ぐ歩き出した。

 

「ありがとうございます」

 

 お礼を言って、僕らは宿を探しに街を散策をした。

 特に安くも無く高くも無い、風呂付の宿を見つけた。

 サラの家にずっと寝泊まりしていたせいか、この微妙に硬いベッドがなんだか懐かしく感じる。

 

「それで、この部屋分けの理由は何か意味があるの?」

 

「うん。アリアやフレイヤは良く寝ぼけて僕のベッドに入り込んでくるからね」

 

 部屋割は僕、サラ、リン。

 もう一つの部屋にアリアとフレイヤだ。

 

 寝てる僕のベッドにアリアやフレイヤが潜り込んでそのまま朝を迎えれば、サラが怒りだすのが目に見えている。

 

「サラやリンならそんな事しないしね」

 

「……そうね」

 

「……はいです」

 

 おや、ちょっと間があった気がするぞ。

 いやいや、この2人に限ってそんな事したりはしないよね?

 

 確かにサラにもリンにも好きと告白されたけど、寝てる所を襲って来るような事はしないはず。

 ……しないよね?

 

 その日の晩、サラとリンが襲ってくるような事は無かった。

 翌朝、僕のベッドにアリアとフレイヤが潜り込んでいただけで。

 

「あんたらどうやったら部屋とベッド間違えるの? わざとでしょ!? わざとやってるでしょ!?」

 

 朝から正座をさせられ、サラの説教を受けるアリアとフレイヤ。

 アリアの目に涙が溜まって来たし、そろそろ助け舟を出すかな。

 

「相変わらずの光景です」

 

「そうだね。なんだかやっと戻って来たって気がするよ」

 

 呆れて、アホを見るような目でアリアとフレイヤを見ているリンの頭を撫でる。

 そうそう、これだよな。

 

 ……なんだかリンの頬が赤らんでる気がするけど、きっと気のせいだろう。

 こっちに飛び火がしない内に、助け舟を出すか。

 

「サラもその辺にしてあげて、今日は仕事なんだから、あまりテンションを下げ過ぎてもいけないし」

 

「ったく。あんたら、反省した?」

 

「はーい」

 

「反省した」

 

 アリアはいつもの無表情だけど、反省したようには見えないな。

 元気よく手を上げるフレイヤは論外だ。

 

「ほら、朝食食べて行くよ」

 

 サラの第2波が飛ぶ前に、朝食を急かした。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 冒険者ギルドに顔を出すと、チャラーさんが僕らに声をかけて来た。

 

「おはようございます」

 

「おう、思ったよりも早く来たな」

 

「はい。昨日は早めに宿を取ってぐっすり眠れたので」

 

「そうか。準備は良いか? 良いなら早速行くが」

 

「大丈夫です」

 

「よーし。おーいアレク、ダール。エルク達が来たから行くぞー!」

 

 チャラーさんが大声を上げると、ギルド職員のドアが開き、父さんとダールさんが出て来た。

 

「エルク、準備は良いか?」

 

「それならもう俺が聞いたから大丈夫だ。とりあえずエッダの屋敷まで行くぞ」

 

 先導をするチャラーさんの後を、僕らはついて行った。

 街中を歩き、奥の開けた土地にデカい建物が一軒建っているのが見えた。

 あれがエッダの屋敷だと、チャラーさんが指を差して説明してくれた。

 

「すまないが、ここから先は通行止めになっている」

 

「俺達は冒険者ギルドから依頼で来たんだが、話は聞いていないか?」

 

 エッダの屋敷に行く途中の道は封鎖をされているようだ。 

 兵士が数人程、通せんぼをする形で立っている。

 

 チャラーさんが何か紙を渡すと、兵士がそれを確認している。

 

「失礼しました。どうぞお進みください」

 

 兵士が頭を下げて道を譲る。

 どうやら問題ないようだ。

 

 しばらく進んだ先に、ひと際大きな木の周りに冒険者らしき人達が何人かいるのが見えて来た。

 近くに行くと、冒険者らしき人達は7人。

 2つのパーティが僕ら以外に来ているようだ。

 

「おーっす。俺らは冒険者ギルドから来た職員だ」

 

「俺はこいつらのリーダーのブライトだ。仕事内容はここから出入りする奴が居ないか見張るように言われている」

 

「俺はマリク、見張りの補佐だ。もし手におえない場合はさっさとギルドに報告するように言われている」

 

「あぁ、こっちもそう聞いている。何か変わった事はねぇか?」

 

「いえ、今の所何も」

 

「そうか。それじゃあここは俺達とエルクのパーティで突入するから見張りをよろしく頼む」

 

「はい」

 

 仕事内容がブッキングしていないか等の確認を全てチャラーさんがやってくれた。

 僕の仕事は、お互いのリーダーに軽く自己紹介をするくらいだ。

 

「Bランクパーティなのに、リーダーが勇者って……」

 

「あー、あのゴッドハンド勇者マスクマンじゃないか?」

 

「……なるほど、疑って済まない。なのでそちらの女性をけしかけたりしないでくれよ」

 

 そう言ってブライトさんとマリクさんが同時に笑う。

 一体僕の評判はどうなっているのか、気になるけど聞くのが怖い。

 

「楽しそうに話してたけど、何の話してたの?」

 

「ただの雑談だよ。それよりダンジョンについて話を聞こう」

 

 流石にサラがさっきの話の内容を聞いたら暴れかねないし。

 

「チャラーさん、ダンジョンってもしかして、この木の中ですか?」

 

「そうだ。コイツはダンジョンウッドって呼ばれてる木でな」

 

「なんだかハウスウッドみたいな名前の木ね」

 

「なんだ、ハウスウッドを知ってるのか。じゃあ話は(はえ)え。人間が住みやすい場所を作るのがハウスウッドで、モンスターが住みやすい場所を作るのがダンジョンウッドだ」

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