極振りを殺す魔法   作:四脚好き

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気が付いたら前回の投稿から2か月たってたので気紛れ投稿です。


牛を殺す魔法

第三回イベント当日

────────────────────────―――――――――

 

「始まってるのぅ」

 

 午後7時過ぎ、『New Wolrd Online』第三回イベント実施に伴うメンテナンス、アップデートは延長などもなく定刻通りに配信されました。私は夕飯と風呂を済ませてからのログインなのでイベント開始から40分ほど遅れてのログインです。火山館の私室から出てエントランスの方に視線を向ければ炎帝の国に所属している多くのプレイヤーが慌ただしく動いていました。あるもの達はメンバーを誘ってモンスターの討伐に、あるものは大規模掃討に向けてアイテムの買い出しに、あるものは各地の討伐隊からの報告を受けてどこが一番効率の良い狩場になり得るのかを考察して、それぞれが出来ることを懸命に果たしてランキング上位を目指しています。さて、私は……どうしましょう―――あ。

 私は何やらゴソゴソと様々なアイテムを準備しているマルクスさんの元に向かいます。

 

「マルクス」

「うへぇ!? あ、く、クヴァールか。びっくりしたなー」

「む、すまん。次からは正面に回ってから声をかけた方がよいか?」

「いやいや、別にそこまでしなくても大丈夫だよ。僕がビビりなだけだから」

「そうか。して、それは何の準備だ?」

 

 『New Wolrd Online』は基本的に何も装備しなくてもそれなりにアイテムを収納できるアイテムボックスがデフォルトであります。しかしマルクスさんが準備をしているのは装備の装飾で実際には機能しないオシャレアイテムのカバンではなく、ちゃんと装備枠を使う『追加ストレージ』の大型リュック。

 

「あぁ、これは今回のイベントモンスターにどの罠が一番効果的か、どの設置の仕方が最もバレないかを検証する為の試作トラップだよ」

「こんなにか」

「そ、今から設置に行ってテストしようと思って」

 

 え、多分それ全部エディットで作ったオリジナル魔法ですよね? ……え、イベントの告知から多少時間あったとはいえその量のトラップを作るための魔素周回の事とか考えたら恐ろしいんですけど。しかも、全部試作って言ってましたよね。効果的なトラップ発見したら量産するんですよね。……この人、化け物か? いや、第一回イベントの上位勢なんて大概みな化け物か。

 

「……手伝おう。設置している間は私がモンスターたちの相手をする」

「本当? 助かるよ。僕の方は準備できてるからクヴァールさえ良ければもう出れるけど、どう?」

「問題ない。では行くとしようかのぉ」

 

第二層 荒野

────────────────────────―――――――――

 

人を殺す魔法(ゾルトラーク) 

 

 私の放ったゾルトラークはこちらに向かってきていたモンスターたちの身体を貫通して消滅させました。ふぅ、いくら一撃で消し飛ばせたとしても、MPの消費がまったくないとしても数が多いですね……。さてそれなりにモンスターを引き付けましたがマルクスさんのほうのトラップの配置は上手く行っているでしょうか……?

 

『クヴァール、設置完了。そのままモンスターを引き寄せながら目標ポイントまで撤退して!』

 

 と、そんなことを言っていたらマルクスさんからメッセージが届きましたね。モンスタートレインですか……、普段ならマナー違反ですが……!

 

「指示ならそうさせてもらおうかのぉ」

 

 背後にモンスターたちを引き連れながらマルクスさんがトラップを設置した地点まで走り出す。いや、しかしッ、私もAGIはそれほど高くないので結構ギリギリですね!

 時たまモンスターの攻撃に転びそうになりながらどうにか目標地点に到達しました。私は事前に教えられていたためトラップを回避しながら進んでいきます。そして何も知らないモンスターたちはそのままトラップ地帯に突っ込みまして……! 

 

「ぬおっ!」

 

 けたたましい爆音、揺れる大気、跳ねる地面。気が付いた時には私は地面を転がっていました。……いや、トラップの威力在り過ぎでしょう。私のHPとVITは同レベル帯では平均より低めということを差し引いてもかなり削られましたね……。

 どうやら周りのモンスターは既に消滅したらしく追撃の心配はないでしょう。あ、遠くからマルクスさんが走って来ましたね。

 

「―――もう少しトラップの威力は下げるべきだな」

「だよねぇ、ごめん」

「それから回復役も必要だな。炎帝の国はどちらかというと火力に重点を置いている。それ故、ギルドの平均AGIはそれほど高くない。儂もそうだったが走っている最中に攻撃を受けてしまうからのぉ」

「ギルド内でもAGIが高めの人にタゲをとらせた後大盾の部隊でモンスターの進路を誘導、トラップで数を削るのとさらに誘導、最後にミィやクヴァール、他の高火力魔術師による一斉攻撃で殲滅……これが最善の策かな」

「それは、儂も同意見だ」

 

 トラップの性能試験も終わりモンスターはプレイヤーにタゲが剥いているときはトラップに対して無防備になるということも判明したのでその日は一度ギルドホームに帰ることになりました。そうしてマルクスさん主導で計画された大規模討伐は見事成功して炎帝の国は大きくアイテム数を稼ぐことに成功しました。

 

そうして……

────────────────────────―――――――――

 

 そうして特に何もなく第三回イベントは幕を閉じました。……本当に期間中にあった出来事はマルクスさんのトラップ実験とギルドメンバーの日程が合わさった時に行った大規模討伐ぐらいであとはそれぞれ好きなタイミングでログインしてモンスターを狩るだけの作業ゲーでしたね。沢山アイテムをドロップする代わりに難易度が高い敵や、他プレイヤーを襲ってのアイテム強奪なども出来ないため本当にただNPCのキャラを事務的に処理するだけでした。

 

「そんでこれが最高ランクのギルド報酬かぁ!」

 

 シンさんが牛の頭部の剥製を両手で持ち上げどこに飾るか検討しながらそう話します。……あの頭部、妙にファンシーで火山館の雰囲気と会わないんですよね……。

 

「効果としてはギルドに所属しているメンバーのSTRを3%上昇させるというものだ」

「STRの上昇かぁ……」

「まぁ、ウチの近接隊の面々の火力アップと言うことで喜びましょう」

 

 そんなシンさんを眺めながらミィ、マルクスさん、ミザリーさんが各々の感想を語っています。えぇ、正直気持ちは解ります。なにせウチの幹部メンバーはシンさん以外はSTR上昇の恩恵をほとんど受けませんから。それにそもそもギルド『炎帝の国』はかなり魔法使いのメンバーが多いギルドですからギルド全体としても恩恵は少ない方でしょう。

 

「にしても……相変わらずじゃのう」

「師は何を見て……。『集う聖剣』か?」

「うむ」

 

 私は一人壁面に表示されている今イベントのランキング表を眺めていました。

 

『3rd Event Ranking』

第一位 集う聖剣 1578228ポイント 

第二位 炎帝の国 1102765ポイント

第三位 おさんぽ隊 987351ポイント

第四位 ヤーナムキャンプファイヤー 986471ポイント

 

「確か儂らのギルドとは違い『集う聖剣』は近接職の多いギルドであったな?」

「そうだな」

 

 私の質問にいつの間にか私の隣に腰を下ろしていたミィが答えてくれました。……なにかあったのでしょうか? 私の服の一部をギュっとミィが握っていて離してくれそうにありません。

 

「となると向こうのギルドはかなりの数のメンバーが恩恵を受けることになっただろう……。また力の差が開いてしまうのぅ……」

「師は……」

「む?」

「いや、何でもない」

 

 ミィは何かを言おうとしましたがすぐにやめてしまいました。……何かあったのでしょうか? 何か気になることがあるのなら遠慮なく言ってくれた方が私としては助かるのですが……。

 

「今はこのメンバーと共にイベントの結果を讃え合おう。私は部下たちを労ってくる」

「あぁ行ってくると良い、ミィ」

「……師よではまた」

 

 うーむ、なにか言いたげな目でしたが行ってしまいましたねぇ。なにか失敗してしまったのでしょうか? 踏み込んだ方が良いのか少し時間をおいたほうが良いのか? 私がそんな風に悩んでいると先ほどまでミィが居た場所にするりとミザリーさんがやってきて座りました。

 

「ミィは心配だったんですよ」

「心配?」

 

 なにか心配するようなことありましたか?

 

「ほら、クヴァールさんは元々ソロでプレイしていたでしょ? だからミィは『自分が無理やり頼み込んでギルドに入ってもらった』って思っちゃってるところがあるらしくて。それであなたが熱心に『集う聖剣』を見てたからここから離れて行っちゃうんじゃないかって心配してるんです。さっきのやり取りも一緒に来てほしかったんですよ」

「ぬぅ……」

 

 そういうことなんですねー。いやー、ギルドの移籍とかまったく考えてなくて、ただ一度くらいは勝ちたいよなぁー、みたいなノリだったんですがどうやらミィに要らぬ心労をかけてしまったみたいですね……。

 

「あとではっきり伝えておくべきかのぅ……」

「はい。それが良いと思います」

 

 教えてくれたミザリーさんにはホント感謝です。……けど一つだけ気になることがあるんですよね。

 

「のぅ、ミザリー」

「はい」

「近くないか?」

「普通ですよ☆」

 

 ふつう、普通ですか。なら良いか。

 

 





?「し、師よ……どうしてミザリーとあんなにくっついて……。なんであんな笑って……。いや、ギルドメンバーの仲が良いのは良い事。 ……良い事なのに……なんでこんなに苦しいの……」


師の中の高校生「(いや、ミザリーさんデッッッッッ)
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