隻腕のシド・カゲノー   作:読者0

4 / 4
めちゃんこ短くなった
許してちょ


吐き出す

「う、うう」

 

気絶していたクレアは自室で目を覚ました。

 

「お嬢様!」

 

控えていた侍従が話しかけてくるけれど、全く頭に入ってこない。

屋敷に帰って来てからの記憶がない。

凄く大事な事を忘れている気がする。

でも思い出そうとすればするほど頭が痛くなる。

 

「シド.....シドは?」

「あ....その」

 

侍従が黙るのを見て思い出した。

 

「シド!!」

 

ベッドから飛び起きて部屋を飛び出す。

裸足で走りながら弟の部屋を目指す。

 

(違う違う違う違う....違う!!絶対に違う!!そんな訳ない!絶対に違う!!あれは夢なのよ!悪い夢なのよ!!)

 

悪い夢であって欲しいと願う。

でももうそこまで現実は迫っている。

 

「シド!」

「あ、姉さん」

 

そして現実はやってきた。

悪夢だと思いたかった。

でもそれはどうしようもなく理不尽で変えようのない現実だった。

 

「う、うぇぇ」

 

吐いた、吐いてしまった。

受けいれられない現実を前にして、心が耐えらなかった。

内容物が口から溢れ出てくる。

手で押さえてもどんどんと出てくる。

 

「姉さん大丈夫?」

「シド...うぇぇ」

 

心配してくれた弟が背をさすってくれている。

でも止まらない、止められない。

吐き出せるものなんて胃の中にはないのに吐き気が収まらない。

 

「ごぇんねぇ.....ごめんねぇ」

「え、ああ大丈夫だよ。こんなの全然大した事じゃ....」

「ごめんねぇ....駄目なお姉ちゃんで」

 

 


 

姉さんにゲロぶっかけられた。

ゲロ自体はなんとも思ってない。修行の際に無理したり、耐久訓練で打ち所が悪かった時に一杯吐いた。それこそ数え切れないほど吐いた。

内容物じゃなくて胃液だけぶちまけた事だってある。

服が汚れたのも特に何も思わない。

服には特にこだわりがあるわけでもないし、何十着とある同じデザインの服の内の一着が駄目になっただけでそれも特に何とも思わない。

ただ血縁にゲロぶっかけられた事にはちょっとダメージを受けた。

僕を見てから吐くもんだからまるで僕が「吐くほど気持ち悪いもの」にでもなった気分だ。

いい気分ではない。

 

「シド.....シド」

 

さっきから姉さんが抱きついて離れてくれない。

ちゃんと綺麗にしてから抱きついてるから汚いとかそういうのはない。

ただ抱きついてきてから2時間もそのままのは流石に長すぎるし。

なんか辛そうだから押しのけるのも罪悪感が凄い。

 

「起こさないと駄目だよな」

 

そしてトイレに行きたい。

凄く行きたい、漏れそう。尿意のタイミングが悪い。

 

「姉さん起きて」

 

揺すってみるけど起きない。

 

「起きてよ姉さん」

 

もう一度揺すってみると起きた。

 

「僕トイレに....」

「ごめんなさい!!」

「ぐへぇ」

 

起こしたのは失敗だった。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!駄目なお姉ちゃんでごめんなさい!!もう絶対にこんな事させないから!」

「う、うん。それよりも」

「もう離れないから!!絶対にこんな事起こさせないから!!」

「は、離して欲しい....です」

「ごめんね!!苦しくなかった!!ごめんね!!ごめんね!!」

「うん、大丈夫だから。トイレに行かせて欲しいんだ」

「トイレね、分かったわ。行きましょう」

「付いてくるの?」

 

異性が近くにいる状態でトイレできる程、図太くないぞ。

排泄の音を身内に聞かれるとかどんな拷問だよ。

 

「どうしても?」

「お願いついていかせて、我儘言ってるのは分かってる。でももう駄目....駄目なの」

「駄目なんだ」

「ちょっと離れるのももう無理なの、頭がおかしくなりそうなの。少しでも離れたら...私の目の届かない所で同じ事が起きたら.....私耐えられない」

「うん、分かった。分かったよ」

「ありがとう、ありがとう」

「取り敢えずトイレ行かせて」

 

尿意がもうそこまで来てるんだ。トイレ行かせて。

 


 

ごめんね。

ごめんね、駄目なお姉ちゃんで。

ごめんね、肝心な時に傍にいなくって。

駄目なお姉ちゃんでごめんなさい、酷い事してごめんね。

 

「んん」

 

腕の中で身じろぎする弟の体は軽い。

前に帰って来た時よりも体は成長しているのに、軽くなった。

腕一本分の重さ、その重さが罪としてのしかかってくる。

もっと早くに帰ってきていればこんな事にはならなかったのに、どうしてもっと早く帰ってこなかったんだろう。

後悔ばかりだ。

 

「今度はちゃんとお姉ちゃんが守ってみせるから」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

もしベアトリクスがクソ強かったら(作者:菜麻沙)(原作:陰の実力者になりたくて!)

「君はいつか出会うだろう。闇を切り裂く月光に」▼アルファがアルファになる前の記憶。▼大好きな叔母の言葉。▼※タイトルそのまんま。クソ強いです。▼最強はシャドウだよ


総合評価:121/評価:-.--/連載:6話/更新日時:2026年03月01日(日) 11:40 小説情報

広げろ、陰の実力者の、解釈を!!(作者:実験者)(原作:陰の実力者になりたくて!)

 平凡な劣等生の下級貴族。しかし裏では世界を食い物にするディアボロス教団と聖教の闇部を磨り潰す陰の実力者……という行動にマンネリを感じていた。▼ 勇者や魔族はお互いに争い、各地地方から放たれる少数精鋭の勇者パーティーと、圧倒的な性能と物量の魔王軍がぶつかり合った。▼ 勇者勢力と魔王勢力は激化する戦いによって進化を始めている。▼ 今置いていかれているのは僕。▼…


総合評価:41/評価:-.--/連載:13話/更新日時:2026年04月06日(月) 10:41 小説情報

兎の群れ√ 出会いの果ての未来(作者:サイセンサイ)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

英雄となったベル・クラネル▼その後の続く人生で大人となり親となった▼修羅場はあれどハーレムの主となった▼それを得て少しだけ変わった彼と彼の妻達と子供達が今もオラリオで暮らしている


総合評価:908/評価:8.78/連載:41話/更新日時:2026年05月12日(火) 18:50 小説情報

最古の英雄王になりたくて!(作者:sk20100626)(原作:陰の実力者になりたくて!)

前世で「理想の最強キャラ」を演じることに命を懸けていた青年は、不慮の事故(という名の自業自得)で命を落とす。しかし、神から提示された異世界転生のチャンスに、彼は迷わず「人類最古の英雄王」の肉体と、過去・現在・未来のあらゆる財宝を収めた『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を要求した。▼転生先は、魔力が支配する世界。そして、隣にいたのは「陰の実力者」に憧れる狂…


総合評価:656/評価:6.89/連載:17話/更新日時:2026年02月17日(火) 23:28 小説情報

陰の実力者になりたくて!addition(作者:読者0)(原作:陰の実力者になりたくて!)

シリーズを混ぜ合わせそこに作者の妄想を混ぜ合わせております。▼頑張ってヤンデレを書きます。▼4/16日 天丼のアレクシアの部分修正したよ!


総合評価:3841/評価:8.28/連載:72話/更新日時:2026年05月11日(月) 19:10 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>