もちろん美味しい話には裏があるはずなんだけど。
「裏」にリスクとかはぜんぜんなくて、純粋に美味しい。
そこに冒険に憧れる王女さんが現れて一緒に飛び立つことに。
空を飛んだ先には何があるのか……、そんなお話。
第17話は、前編・中編・後編の3回に分けて投稿します。
本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』の二次創作です。
ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した二次創作です。
『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「飛行士」→「飛行士さん」
PC「機械屋」→「機械屋さん」
等々となっています。
先に記しとく設定、
飛行士(主人公)は男性、
作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
と言うことで。
使った(引いた)カード
キャラクター:飛行士
イントロダクション:未知なる大陸へ
シーン1:お忍びの王女様
カード1:光:金塊
シーン2:がれきの下の希望
カード2:闇:機械おんち
シーン3:名誉あるひとこと
カード3:光:タフガイ
シーン4:空賊の襲来
カード4:闇:ゴシップ好き
シーン5:船長との出会い
カード5:光:筆まめ
クライマックス:古代文明の復活
クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.
おいらは飛行士。共和国の地方の空港を拠点にして航空運輸の仕事をしてる。
愛機は「ディケイドスピーダー」。
元はかなり古い機体だけど、ちょっとずつパーツを交換して、改造して、今では高速便にでも通用する飛行機械になってる。
仕事。いろいろあった末においらにはすごい幸運がついた。
だからだろうか、いい具合に仕事が入ってきてくれてる。
その儲けでディケイドスピーダーをちょっとずつ強化してる。
そんなふうにお金を使ってるけど、それでも贅沢はできないが十分すぎる生活ができてる。
ありがたいことだ。
おいらは朝いちばんの仕事が好きだ。
ディケイドスピーダーの仕事はだいたいが短距離。
朝いちばんで飛ぶと昼前に向こうに着く。
行った先で昼メシを食って、昼すぎにはこっちに帰ってくる準備が整う。
だから、運が良いと向こうからこっちへの昼便にありつける。
帰りに仕事が入っても入らなくても、夕方には帰って来れる。
そうなると、明日以降の準備をゆっくりとできる。
今日もありがたいことに帰りにも荷物を運べた。
ディケイドスピーダーを離着陸床から貨物取り扱いスペースに移動させる。
いちばん小さいサイズの標準コンテナを一個、機体から降ろした。
荷降ろしはこれだけ。ディケイドスピーダーにはこのサイズのコンテナ一個しか積めない。
だからこれだけだ。
コンテナを降ろして、機体を駐機スペースに動かす。
これで今日はおしまい。
と、おしまいじゃなかった。
インフォメーション端末にギルドからメッセージが届いた。
ギルドに来るように、とのこと。
無視はできない。
このところのおいらの飛び方なら叱られることはないだろう。
きっと良い話だ。間違いない。
ギルドで話を聞いて驚いた。
おいらを指名しての仕事の依頼だった。
スピーダー特急便を信頼してくれてる、と言うことだ。
依頼主は連合王国の王立アカデミーだった。
5日後の午前中に連合王国の首都空港に来て欲しい、とのことだ。
仕事の内容は「未知の大陸の調査」の資材と機材の運送。
仕事の期間は短くて5日、長くなると10日くらいだそうだ。
報酬。これにも驚いた。相場の三倍か四倍かくらい。
それに燃料等々はぜんぶ向こう持ち。おいらは安全に飛べばそれで良い。
断る理由は何もない。
即決で請け負った。
ただ、この仕事はかなりの距離を飛ぶので空中燃料補給が必要だった。
ディケイドスピーダーには空中燃料補給の装備はない。
次の日から3日かけて、ディケイドスピーダーを改造して空中燃料補給をできるようにした。
加えて、おいらはシミュレーターで空中燃料補給の訓練を繰り返した。
仕事を請け負ってから5日後の早朝、日が昇る2時間くらい前。
おいらは空港から飛び立った。今から飛べば昼前まで十分に連合王国の首都空港に着く。
飛行に問題はぜんぜんなかった。
昼前に首都空港に着いた。
管制塔に着陸許可を求める。返ってきたのは「着陸の順番待ち」のメッセージだった。
着陸待機空域で待機してくれ、とのこと。
おいらはその空域に入って機体を止めた。
垂直離着陸ができる機体の強み。その場でホバリングして順番を待った。
15分くらい後、着陸許可がでた。
だけど、空港の民間機用の離着陸床じゃなくて、首都空港の隣にある空軍の離着陸床を指定された。
まあ、おいらにとってはどっちでも良い。指定された離着陸床に着陸した。
ディケイドスピーダーを駐機スペースに移動させる。
駐機スペースには大型機、中型機、小型機、たくさんの飛行機械がならんでいた。
もしかすると、これ全部で船団になるのか? だとしたらすごいことだ。
ひとつ気になった。泊まってるのは、見たところ全部、垂直離着陸ができる船だった。
ディケイドスピーダーから降りると空港のスタッフがすぐにおいらの所に来た。
『14時に講堂に来られたし』
とのことだった。
まだ十分に時間がある。
ディケイドスピーダーの機体のあちこちのパネルを開けて、簡単に状態の確認をした。
確認を済ませた後、空軍の食堂で昼メシを食った。
軍の食堂のメシだ、ボリュームがあった。加えて、タダメシだった。
指示された時刻、14時に余裕を持って講堂に入った。
講堂はかなり広い。イスがたくさんならんでいた。
これがいっぱいになるのか? まさかそんなことはないだろう。
けど、そうじゃなかった。時間が近づくにつれて人がどんどん増えてきた。
時刻、14時には講堂は人でいっぱいになった。
イスに座りきれず、講堂の壁際やならんでいるイスの後ろに立ってる人もたくさんいた。
14時をわずかにすぎた。
今回の「作戦」についての説明が始まった。
目的は「未知の大陸の調査」。
連合王国の北西の海上に半月ほど前に突如出現した「謎の大陸」、大陸と言ってもかなり小ぶり、の調査だそうだ。
明日の朝5時から参加する機体が順次離陸を始める。
全機が離陸した後、編隊を組んで出発とのこと。
「未知の大陸」へは1日と少し、明後日の昼ごろに到着の予定。そう説明された。
到着後は大陸の海際に着陸。各種機材と資材を降ろした後、王立アカデミーのスタッフが調査を始める。
大陸に降りるのか。なるほど、垂直離着陸ができる機体でなければならない訳だ。
調査が終わり、データ発信機を大陸の各地に設置した後、帰ってくる。
以上。
これで説明が終わった。
説明が終わって解散。
講堂の出入り口から集まっていた面々が出ていく。
出入り口は混雑している。そう急ぐことはない。
出入り口がいくらか静まってから、おいらは講堂を出た。
ディケイドスピーダーに向かおうとしたところを呼び止められた。
おいらを呼び止めたのは白を基調にした制服を着た二人だった。軍のスタッフではないようだ。
二人は各々のインフォメーション端末を見せてくれた。二人は宮殿のスタッフらしい。
おいらもインフォメーション端末を取り出して見てもらった。
二人が言うには、おいらに宮殿に来て欲しい、とのことだった。
ただし秘密で、と加えられた。
ここまで来て悪いことにはならないだろう。
おいらは宮殿に行くことにした。
二人の後をついて駐車場に向かった。
真っ白な立派な自動車に乗せられた。
宮殿は首都の中心にある。
街外れの空港から自動車でいくらか走った。
首都に入って宮殿を目指す。
宮殿が見えてきた。
自動車は交差点のひとつで宮殿への方向から外れた。
疑問を感じたが、考えたら簡単なことだ。宮殿の正面から入るはずはない。
裏口、関係者用の出入り口に向かうのだろう。
その通りだった。少し走ると詰所とゲートが見えてきた。
ゲートで一旦、自動車が止まった。
詰所のスタッフとちょっとしたやり取りをした後、ゲートが開いた。
自動車は再び走り出したが、すぐに止まった。
自動車から降りる。二人のスタッフが言うには宮殿の関係者用の出入り口だそうだ。
そこから建物に入った。特に何もなく進む。
建物の中は特別に変わったところはない。ありきたりなデザインだった。
けど、扉のひとつを通ると激変した。
まさに白亜の宮殿、いかにも宮殿らしいきらびやかな、でも落ち着いたデザインだ。
少し歩いてから立ち止まった。エレベーターだった。三階へ上がった。
また歩く。大きな扉が並んでいる。そのひとつの前で止まった。ここが目的の部屋らしい。
おいらをここまで連れて来てくれたスタッフのひとりが、インフォメーション端末を扉の横にある端末に同期させた。
すぐに扉が開いた。
扉の向こうには女性がひとり、たぶんこの人だろうな、と思ってた人物、王女がいた。
おいらは王女に促されて部屋に入った。
二人のスタッフは王女と二言三言、言葉を交わした後、部屋を後にした。
王女はおいらを案内した。
ひとつめの部屋を通り抜けて、その奥の部屋に入った。
シンプルながら立派なテーブルセットがあった。
王女はおいらに座るよう促した。おいらが座るとおいらの前に王女が座った。
王女は少々厳しい表情で言葉を発した。
「単刀直入に言います。
私を調査に連れて行って欲しいの」
そう言うことか、だからスピーダー特急便が指名されたのか。
「さすがにそれはできない。
あんたは調査隊のメンバーに登録されてないだろ」
おいらは断った。今回は出た先で何があるかわからない。王女を危険にさらす訳にはいかない。
王女が言う。
「調査隊のメンバーの件は大丈夫ですわ。
私はメンバーに登録されています」
王女はインフォメーション端末を操作した。今回の調査隊のメンバーを示すエンブレムが表示された。
「なるほど……、じゃあ問題ないってことか」
そう言うしかない。
「それと」
と言いつつ王女は何かを取り出してテーブルに置いた。
「私を連れて行って頂く分の報酬です」
テーブルに置かれたのは、ガラス板に封入された「純金」だった。
たいていの決済はインフォメーション端末で行う。
端末に記録を残したくない、あるいは記録が残ると困る取り引きでは現金が使われる。
現金すら動かしたくない取り引きで使われるのが「純金」だ。
王女は純金が入ったガラス板を、おいらの方に動かした。
おいらはこれをどうするか、王女が取り出したときに決めていた。
ガラス板を王女の方へ戻した。
「これは受け取れない。
あんたは調査隊のメンバーだ。
スピーダー特急便のスタッフになってもらう」
こうなるだろう、王女に会ったときから薄々感じていた。
調査隊のメンバーでなければもちろん断っていた。純金を出されても。
けど、王女はメンバーに登録されてた。
じゃあ問題はない。
「明日は5時から離陸が始まる。
4時半までにはディケイドスピーダーに来て欲しい。
場所はわかるか?」
王女はインフォメーション端末を操作してディケイドスピーダーの駐機位置を確認した。
「ええ、わかりましたわ」
これで王女の件は決まった。
「んじゃ、これで空港に戻っても良いか?」
「そうですわね、
係りの者を呼びますわ」
王女がインフォメーション端末を操作した。
少しして、おいらをここに連れて来てくれた二人が来た。
おいらは王女に軽くあいさつした後、スタッフに空港へ送ってもらった。
夕方の少し前に空港に着いた。
お礼を言って二人のスタッフと別れた。
夕方までの間においらはまた、ディケイドスピーダーのチェックをした。
長距離を飛ぶ。何回チェックしてもチェックのしすぎと言うことはないだろう。
晩メシも軍の食堂で食った。もちろんタダメシ。本当にありがたい。
晩メシを食った後はすることがない。
駐機スペースには照明がほとんどないから機体のチェックはできない。
ディケイドスピーダーに乗る。リアシートに座った。
インフォメーション端末で明日からの予定をチェックした。
と言っても特に注意すべきことはない。
首都空港を離陸。
「未知の大陸」を目指して飛ぶ。
着いたら大陸に着陸して、機材と資材を降ろす。
調査が開始される。
調査が終わったら、機材と資材を船に積んで帰ってくる。
以上。
あえて言うなら、空中燃料補給に注意すべきか。
行きの補給は明日の夕方の予定。
帰りはどうなるかわからないので、様子を見て行う段取りになってる。
シミュレーターでの訓練は何回も行った。
訓練では上手くいってる。
けど、実際にするのは明日の夕方が初めてだ。
これがいちばん難しいところだろう。
そんなことを考えてるうちに眠たくなってきた。
おいらはディケイドスピーダーのコックピットで眠った。
続