もちろん美味しい話には裏があるはずなんだけど。
「裏」にリスクとかはぜんぜんなくて、純粋に美味しい。
そこに冒険に憧れる王女さんが現れて一緒に飛び立つことに。
空を飛んだ先には何があるのか……、そんなお話。
第17話は、前編・中編・後編の3回に分けて投稿します。
本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』の二次創作です。
ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した二次創作です。
『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「飛行士」→「飛行士さん」
PC「機械屋」→「機械屋さん」
等々となっています。
先に記しとく設定、
飛行士(主人公)は男性、
作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
と言うことで。
使った(引いた)カード
キャラクター:飛行士
イントロダクション:未知なる大陸へ
シーン1:お忍びの王女様
カード1:光:金塊
シーン2:がれきの下の希望
カード2:闇:機械おんち
シーン3:名誉あるひとこと
カード3:光:タフガイ
シーン4:空賊の襲来
カード4:闇:ゴシップ好き
シーン5:船長との出会い
カード5:光:筆まめ
クライマックス:古代文明の復活
クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.
夜明け。
まぶしい朝日で目が覚めた。
ここまで飛ぶと大陸までもうすぐだと感じる。
ピッピッピッピッ、と高い電子音が鳴った。
自動操縦変更の合図だ。合図に対する「確認」のボタンを押す。
なんでこんなところで自動操縦解除なんだ?
気になるが機体は手動操縦になってる。
操縦に集中しつつ、改めて自動操縦に切り替える。
切り替えた先の船を確認して驚いた。
同期した相手は空軍の司令艦だった。
と言うことは、空賊か何かが近づいてきている、と言うことか。
船団の全機が司令艦からの自動操縦に切り替わったようだ。
船団の編隊が変わり始めた。
空軍の船の8割くらいが船団の左側に壁のような配置になった。
おいらたちの船団の左側から、こっちに向かってくる大船団がかすかに見えた。
大型艦が5隻か6隻、中型艦が多数、小型艦はもっとたくさん。
向こうの大型艦からの砲撃が始まった。
同時に中型艦と小型艦が一気にこちらとの距離をつめてきた。
大型艦からの砲撃、プラズマ砲だ、が次々と空軍の船に直撃、したように見えるけど船は無傷。
プラズマ緩衝シールドがある。軍艦なんだから当たり前だ。
こちらからの砲撃も始まった。こちらもプラズマ砲だが向こうとはパワーが雲泥の差だ。
向こうにもプラズマ緩衝シールドがあるだろうが、シールドを貫通して船体に着弾、ダメージを与える。
大型艦の3隻が沈んだ。
こちらに近づいてきていた中型艦と小型艦にはレーザー砲とレーザー機銃で対処する。
空賊の機体が次々と沈む。
なんとか生き残った船がこちらの船団から離れていった。
追いかければ全滅させるのは簡単。
だけど今の任務は「大陸に行く」。
だからアカデミーの船に同期を戻して、元の編隊に戻った。
その後はまた、何事もなく飛んだ。
日が出て以降、王女とは特に何も話してなかった。
王女をちらりと見ると、インフォメーション端末で何かの本を読んでいた。
読書に集中してるところに話しかけるのは悪いかな、と思いつつも王女に話しかけた。
「何を読んでんだ?」
王女はこたえてくれた。
「雑誌よ」
「雑誌? どんな雑誌なんだ?」
王女は少し面白そうにこたえた。
「三流誌、と言えばいいのかしら。
ゴシップだけの雑誌よ」
「そっか、
意外だな、あんたがそんな雑誌を読むなんて」
王女はまた面白そうに言った。
「王女と言っても人間よ。
人のことがあれこれと書かれているのには興味があるわ。
誰と誰がくっついたとか、離れたとか、訴訟とか、炎上とか。
悪趣味かもしれないけれど、読んでいて楽しいわ」
「でもそんな雑誌だったら、
……あんたのことも書かれるんじゃないのか?」
王女はさらに面白そうに言った。
「それこそいちばん楽しいわ。
私のことがどんなふうに書かれてるのか、
私の何を取り上げて、どれくらい話が盛られてるのか、
ソースが『王室関係者』だったら誰なのか考えたり、
楽しいことばかりよ」
王女がタフなのは体だけじゃない。心もタフだ。そう思った。
「話がかわりますけど、
あなたは『黒髭船長』はご存知?」
『黒髭船長』、子供向けの絵本。
まっくろな潜水艇の船長、黒髭船長が冒険をする話だ。
「もちろん知ってるよ。
何回読んでもワクワクした」
「同じね。
私もワクワクしたわ。
冒険したいと思うようになったのは『黒髭船長』の影響ね」
ピッ、と言う電子音が会話をさえぎった。
おいらはメモ帳を取り出して、計器盤に表示されている数字のひとつを書き込んだ。
王女がおいらに尋ねた。
「あなた、時々何か書いているけど、何を書いているの?」
「今のか?
飛行ログだ。帰った後でギルドに報告する」
いたってアナログだ。
王女からそれも尋ねられた。
「機体のロガーが自動で記録してくれてんだけど、
ロガーの故障がないとは言えないからね。
結局はアナログなのがいちばんなんだ」
「そうなの?
飛行機械で飛ぶのは難しいのね」
そこからまた、おいらと王女は何となくの話をした。
そうしてるうちに大陸が見えてきた。編隊を組んだままで大陸のまわりを飛ぶ。
大陸はほぼ円形、中心に広大な森があった。
ピコ、ピコ、との電子音と共に、計器盤の小さいランプが点滅した。
自動操縦解除の合図。
ここから先は手動で編隊を組んで飛ぶ。緊張する。
事前の予定通り、船団が3つに別れる。
それぞれの指揮船の指示に従って、大陸の3ヶ所に着陸することになってる。
おいらたちの調査隊は大陸の南側に着陸する。
目的地点に近づく。
速度を十分に落として、地面の様子を見ながら飛ぶ。
少しの時間の後、着陸に良い場所が見つかったらしい。
全機がホバリングして位置を決めてゆっくりと着陸した。
着陸した場所は予定通り、大陸の海際だった。
キャノピーを開ける。
「さて、と」
おいらはコックピットから地面に降りた。
「さすがに疲れましたわ」
王女もシートから降りた。
「じゃ、仕事にかかるか」
「えっと、何をすればよろしいのですか?」
王女も仕事に入ってくれるらしい。ありがたい。
「んじゃ、こっちに来て」
機体の後ろにまわる。
ディケイドスピーダーの荷台にはコンテナが一個積まれてる。
コンテナの扉を開ける。次に荷台に上がるためのステップを引き出す。
ステップを上ってコンテナの中に入る。
まずは折りたたんである不整地用、浮遊式の台車をふたつ取り出した。
地面にいる王女にそれを渡す。王女は手際よく台車を開いた。
「プラ箱、赤いのと黄色いのを降ろすから、台車に分けて」
「わかりましたわ」
プラ箱のサイズは30cm×30cm×50cmくらい。重さは軽いのもあれば重いのもある。
おいらはコンテナからプラ箱を取り出して王女に渡す。
王女はふたつの台車にプラ箱をわけて積んだ。
それぞれの台車に10個、プラ箱を積んだところでおいらは荷台のコンテナから降りた。
「こっちのを黄色の旗の所に運んでくれ。
おいらは赤い方を運ぶから」
「置いてくれば良いのね」
おいらと王女でそれぞれ台車を押して、プラ箱を色ごとの集積場に運んだ。
集積場でプラ箱を降ろしてディケイドスピーダーに戻る。
もう一回、コンテナからプラ箱を降ろして運ぶ。
三回目、これで最後、コンテナからプラ箱を降ろしていると、突然、地面が揺れた。
「地震!?
いったい何ですの!?」
王女の声は困惑していた。
立っていられないほどの揺れではない。
けど、揺れがおさまる気配がない。揺れ続けてる。
王立アカデミーの調査員たちがあわただしく走りまわり始めた。
調査員のひとりが小型望遠カメラで大陸の中心、森の方を見た。
「森の中に塔? がある。
さっきはなかった。
森が上がっている」
調査員が状況を伝える。
他の2ヶ所と連絡を取る。
どちらも同じ状態らしい。
大変なことになってるようだ。
でも調査員はみんな冷静だった。
こうなるのも想定してたのかもしれない。
「古代超文明の遺跡で間違いない。
おそらく要塞型、AD-3Bだ」
「そうだ、動力がまだ生きていたらしい」
連絡を取ってる調査員の声が聞こえる。
「AD-3Bが生きてる!?
大変じゃない!!」
王女が驚きの声を上げた。
おいらには何のことなのかさっぱりわからない。
「どう言うことなんだ?」
王女に聞いた。
「AD-3B型古代超文明遺跡、
古代の超兵器のなれの果て、だと言われてるの。
今までに見つかってるのは全部、動力が死んでて完全に遺跡になってたのよ」
「超兵器が生きてるってことか!?」
おいらも何となく驚いた。
王女は続けた。
「AD-3Bだとしたら、この大陸全部が本体。
完全に生きているのなら、街のひとつふたつ簡単に消し飛ばせるわ」
王女の話をおいらなりにまとめた。
『世界の危機』
大変なことだ。
王女は何かを考えた後、つぶやいた。
「でも、『勇敢なる覇王』なら余裕ね」
王女は紋様の力を使うつもりだ。
おいらはあわてて王女を止めた。
「紋様で余裕なんだったら使っちゃだめだ!」
「え!? ええ」
王女は少し驚いた後、落ち着いてくれた。
「『勇敢なる覇王』は攻撃とか破壊の力じゃないんだろ?
だったら下手したらおいらたちみんなが巻き込まれかねない」
「ええ、そうね、その通りだわ」
王女は完全に落ち着いた。
「遺跡に関しては調査隊の方が詳しいわね。
彼らの指示に従えば問題ないわ」
王女の言葉が終わって少しの後。
調査隊からの指示が出た。
全機、緊急離陸。
各調査隊の指揮船の指示に従って大陸から退避せよ。
おいらと王女はすぐにディケイドスピーダーに飛び乗った。
全力で上昇する。
ディケイドスピーダーは指揮船よりも早く飛び上がっていた。
指揮船が上がってくるのを待った。
上がってきた指揮船はすぐに指示を出した。
その指示に従って全機が全速で大陸から離れた。
軍の大型艦だけが大陸の近くに残った。
それ以外の船はとにかく飛んだ。
全機が十分に大陸から離れたと思えたくらいの頃、
軍の船からの一斉射撃が始まった。
強力なプラズマ弾が大陸の中心へと飛んだ。
次々と命中する。
プラズマ弾の光が収まると、塔があった辺りに緑色の光が現れた。
軍の船からの第二射。改めてプラズマ弾が大陸の中心、緑色の光に命中した。
ゴウッ! と大陸の中心が爆発した。
一瞬の間をおいて衝撃波がディケイドスピーダーを襲った。
機体がひどく揺れたが耐えてくれた。
大陸は崩れながら海に沈んでいった。
攻撃をした軍の船がおいらたちに追いついてきた。
他の2ヶ所に降りていた調査隊と合流した。
王立アカデミーの船が首都への帰還を決めた。
おいらたちは首都に帰ることになった。
何も成果のない仕事になった。
おいらはおいらなりに心が沈んだ。
王女は王女なりに心が沈んでいるようだった。
「私は何もできませんでした」
王女がつぶやいた。
「いや、保険として十分だったと思うよ」
「……保険?」
おいらの言葉に王女が反応した。
「人の力でどうにかできた。だから紋様の力はいらなかった。
でも、もし人の力でどうにもできなかったら……、
そのときのための紋様じゃないかな」
「そうね、
私はまだ紋様のことをわかってませんわ」
王女は少し前向きになれたようだった。
「紋様のこと、もっと考えます。
私が紋様にふさわしくなるために」
王女は前を向いていた。
おいらも王女を見習わなきゃならない。
紋様にふさわしくなれるように。
了