もちろん美味しい話には裏があるはずなんだけど。
「裏」にリスクとかはぜんぜんなくて、純粋に美味しい。
そこに冒険に憧れる王女さんが現れて一緒に飛び立つことに。
空を飛んだ先には何があるのか……、そんなお話。
第17話は、前編・中編・後編の3回に分けて投稿します。
本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』の二次創作です。
ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した二次創作です。
『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「飛行士」→「飛行士さん」
PC「機械屋」→「機械屋さん」
等々となっています。
先に記しとく設定、
飛行士(主人公)は男性、
作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
と言うことで。
使った(引いた)カード
キャラクター:飛行士
イントロダクション:未知なる大陸へ
シーン1:お忍びの王女様
カード1:光:金塊
シーン2:がれきの下の希望
カード2:闇:機械おんち
シーン3:名誉あるひとこと
カード3:光:タフガイ
シーン4:空賊の襲来
カード4:闇:ゴシップ好き
シーン5:船長との出会い
カード5:光:筆まめ
クライマックス:古代文明の復活
クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.
翌朝。
4時前に空港はもう動き出していた。
機体の最終チェック、積んでる荷物の最終チェック、すべきことはたくさんある。
おいらももちろんそれらをしている。
4時をそれなりにすぎた時刻。
王女がディケイドスピーダーに来た。
王女の服装に驚いた。ツナギの航空服。かなりしっかりした服を着ていた。
「あんた、本気で冒険に出るみたいだな」
「おかしいですか?」
王女は「不本意ですわ」と言う表情になった。
「いや、良い格好だ。
むしろハイキング気分で来られたら困ってた」
4時半くらいか。
各機体の乗組員がそれぞれの船に乗り込み始めた。
おいらと王女もディケイドスピーダーに乗り込んだ。王女はフロントシート、おいらがリアシート。
5時。
飛行機械の離陸が始まった。
初めに王立アカデミーの大型調査船、今回の船団の旗艦、が離陸した。
次にあちこちの研究機関の関係者が乗った大型船が何隻か。
続いて中型船がかなりの数。
その次に小型機。
その後、空中燃料補給用の超大型船。
最後に空軍の船、護衛部隊が離陸した。
護衛部隊には驚いた。
軍の船は大規模艦隊と言っていい規模だった。
つまりそれだけリスクのある仕事なのか。
おいらはぞくりと緊張した。
全機の離陸が終わった後、巡航高度まで上がる。
少しずつ加速しつつ、機体の配置を整え編隊を組む。
巡航速度まで加速したら、王立アカデミーの船、船団の旗艦に飛行操作を同期させて自動操縦にする。
自動操縦になるまでは緊張するが、自動操縦になってくれると緊張がいくらか解けた。
後は問題が起きたときに備えれば良い。
自動操縦になると飛ぶのは楽だが、することがなくなるので退屈になる。
できることと言うと、話をするか、インフォメーション端末で本を読むか、それくらいだ。
どれくらいの後か、王女が話し出した。
王女は右手の甲の金色の紋様『勇敢なる覇王』の紋様のことは、父親、国王にも、母親、王妃にも話していないとのことだった。
子供のときに紋様に助けてもらったときも、言ってはいけない気がしたので話さなかったらしい。
もちろん左手の銀色の紋様『祝福と幸運』の紋様についても誰にも話していなかった。
ただ、ふたつの紋様が何なのかわからないのはやはり気味が悪い。だから自分で調べた、と王女は言った。
金色の紋様は、歴史書によると第二次統一戦争、300年くらい前の戦争、の際に現れた、と言うのがいちばん古い記録だったそうだ。
この戦争では当時の国王が『勇敢なる覇王』の強大な力を使って連戦連勝だった。
けど、首都を奇襲された際の首都防衛戦で、敵軍に向けて使った力が暴走して首都が焦土になった、と記録されていた、とのことだ。
これについて、王女が言うには「力が暴走した」のではなく「勇敢なる覇王の怒り」が原因と見た方が良いだろう、だそうだ。
その後も金色の紋様を持つ人物の記録はいくつかあったが、紋様の力が使われたことは一度もなかったらしい。
王女は、金色の紋様を持っていることを隠し通したい、と言った。
それがいちばん無難だろう。
銀色の紋様については、いろいろな歴史書、神話の研究書、紋様についての書物、等々をかなりの数調べたが、どこにも記載されてなかった、とのことだ。
つまり、よほど特別な紋様、と言うことだろう。
しかし神々からもらった紋様だ。とてつもない力が宿ってるのは間違いない。
紋様の話題はこれで終わった。
また音がなくなった。
いくらかの間をおいて、再び王女が話し出した。
「あなたの会社『スピーダー特急便』はどんな会社なの?」
王女はおいらに会社のことを聞いてきた。
「ん?
そのままだけど?
航空輸送の小さい会社だ」
「では、10人か、それくらいの会社なの?」
おいらはちょっと言いにくいように感じた。が、気にはならない。
「いや、もっと小さい。
おいらが社長で、社員はおいら一人だ」
「では会社のことはぜんぶあなたがしているの!?」
王女は驚いたようだった。
「まあ、おいらが全部してる」
「機体の整備も自分で?」
王女はおいらのことに興味津々なようだ。
「そりゃ、おいらひとりの会社だからおいらがしてる」
「整備ができるなんて、手先が器用なのね」
おいらは苦笑した。
「それが昔はひどかったんだ。
機械はぜんぜんダメ。
おいらが機械を触るとその機械は絶対に壊れる。
それくらいだった」
王女は信じられない、そんな感じらしかった。
「でも、空を飛びたいって真剣に思うようになってから、
細かい作業の練習を始めた。
で、今はそれなりに器用になれた」
「すごいわ、努力すればかなうのね」
「そう言ってもらえるとすごく嬉しいけど、
ちょっと照れるな」
二人で少し笑った。
「空を飛びたいって言うのは昔からですの?」
「ああ、子供のころから、かな。
何となくだけど、飛べたらかっこいいな、って。
そのときは子供っぽい夢だったと思う」
子供のときのことを思い出す。
「では本気で考えたのはいつから?」
「ありがちだけど『機械屋』のスピーチを聞いたときからだ」
王女はふっと笑みを浮かべた。
もちろん悪い笑いじゃない。
「機械屋って人はよほどのエンジニアなのね。
機械屋の影響で、って言う人にはたくさん会っているわ。
やはり惑星一周レースの話かしら?」
「んー、もちろんそれもあるけど、ほかにもいっぱいあるかな。
機械屋の話はすごいことばっかりだ。
エンジニアなんだけど、いろんな冒険、それも大冒険をして、
国を動かしたことも何回もあったらしい」
おいらは何となく話題をかえた。
「あんた、座りっぱなしで疲れてないか?」
「ぜんぜん疲れてません。
私にとってはまだまだすごく楽ですわ」
実際、王女の言葉から疲れた様子は感じられない。
「タフなんだな」
「もちろんです。
宮殿の儀式は2時間3時間立ちっぱなしが当たり前ですから」
なるほど、タフじゃないと務まらないし、タフにもなるだろう。
そんな感じで話をしてるうちに日が暮れてきた。
ピコ、ピコ、との電子音と共に計器盤の小さいランプが点滅した。
自動操縦解除の合図だ。
これから空中燃料補給をする。
おいらの心にも体にも緊張が走った。
超大型の燃料補給船に小型機が近づき、補給船からのびたホースを通して補給を受ける。
順番に補給作業をする。
ディケイドスピーダーの番がきた。
おいらは少しずつ機体を動かす。
少しずつ補給船の後ろにつく。
次に補給船との距離をつめる。
機体の右前にのびる燃料補給管を補給船からのホースに合わせる。
十分に位置が決まると、ガチンと音がした。
燃料補給が始まる。
計器盤の燃料メーターが上がっていく。
じきに満タンになった。
ガチンとの音でホースが外れた。
今度は少しずつ補給船から離れる。
十分な距離を取った後、編隊の中に戻った。
日が沈みきる少し前に全機の補給が終わった。
補給作業が終わると、また旗艦、アカデミーの船、に同期して自動操縦に入った。
何もなければこのまま大陸まで自動操縦だ。
夜。
真っ暗な中を船団が飛ぶ。
夜のうちにしっかり休んでおかなきゃならない。
ぐっすりと眠ってしまうわけにはいかないが、うつらうつらと仮眠をとる。
王女も同じようにしたようだった。
続